弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり

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ラディッシュ

「ああ、ごめんね。怪しいよね、今の言い方じゃ。モロコシに聞いてくれれば分かると思うけど、僕もちゃんと、ここで働いているんだよ。鍛治師のガンテツとは友人でもあるし」


 そんな風に慌てるラディッシュは、長い前髪をかきあげて困っているようだった。

 少し話をすると、彼は西の大国のニズラッシェリルの貴族だと言う。


 四大精霊の一人、地の精霊ノーム (大地や鉱物を司る、小柄で頑丈な精霊)の子孫らしい。




◇◇◇
 そもそもその地は、開国から長寿であるエルフが暮らしており、人口も少なかったそう。

 開国後から数百年経った、遠い昔のこと。
 一人のエルフが、ノームが作り出す彫刻に心を奪われ猛烈にアタックし、結婚はしないものの子が生まれた。

 その子供は芸術の才能を受け継いでおり、父と同じように芸術品を作り続けた。勿論母であるエルフも、その子を大切に育てていた。

 穏やかな暮らしを続けていたある日、北の国に住む傲った人間達が、エルフの住む広大な大地を奪おうと進撃してきたのだ。

 突然のことに動揺している間に、力の弱い子供達が拐われてしまう。怒ったエルフ達は全力魔法で人間達を黒焦げに焼き、子供達を取り返した。

 一撃で屠らずに、捕虜とした人間から聞いた言葉は醜悪で、結局言い分を聞いてから殺した。


「エルフは美しく丈夫で長寿で、その上綺麗な者が多い。だからこそ力を封じて奴隷にすることを、国王に命じられた。大人は魔法が強いから、子供を狙ったんだ。このまま国王に逆らえば、大変なことになるぞ! 早く俺を解放しろ、そこの馬鹿エルフ!」

 自白剤を盛られた兵士は、拠りにも拠ってこんなことを宣ったからだ。


 北の国は軍人が多く、武器の開発が進んでいる大国だった。周辺国を軍事力で支配し、次にニズラッシェリルにまで手を伸ばしたのだろう。

 けれどニズラッシェリルにはノームから力を受け継いだ子供達がいた。
 溢れた魔力を再吸収して再循環できる場所(地に装具を埋め込みした場所)を、エルフ達だけが分かるように共有し、強度を増強する装具品や剣、盾などを作製し身に付けさせた。


 ノームを愛したエルフが、彼から得た知識で緊急事態に備えていたのだ。


「エルフは強いが、人間は数が多くてズル賢い。それが嫌でワシらは、このエルフの国に来たのだから。ワシらは海や空では生きられん。土と共にしか生きていけないからだ。
 昔は各々の土地で、様々に創作活動をしていたが、人間は背が低くて自分達とは違うワシらを蔑む。そして下のようなものと見下し、奴隷のように扱おうとするのだ。

 だから団結して逃げて来た。
 捕らえられる前にな。
 矜持を曲げて生きていることは、出来ないからな(そんなことがあれんば皆、死を選ぶから)。


 地の最高精霊であるワシノームは、姿を変えて逃げられるが、人間や他の人種との混血では変身できないことが多い。 
 囚われてから逃げるのは困難を伴う。
 だからこそ、体の特徴があったり才能が特出する者は、エルフの国であるニズラッシェリルで暮らさせたいのだ。

 良いだろうか?」


「勿論ですとも。こちらこそ、よろしくお願い致します。ノーム殿」



 ノームを愛したエルフは、女王の末娘だったらしい。
 エルフの王は代々その魔力量で決まる。それは世界樹には多くの魔力が必要で、王が魔力を補給する役割が含まれているからである。

 末娘のクレアは未婚のまま、次期女王となることが決定していた。




 エルフの現女王、エブラント・カルコーム・キエフレクトは、ノームとクレアと協力し、数が少ないエルフの弱点を克服していた。

 結果、西に位置するエルフの国を守り切ったのである。
 その後は魔道具で、外敵が入れぬように国に結界を展開。

 そして報復のように、豊富に取れた作物は北の国や周辺国に売却することを辞め、空間転移魔法で東の国や南の国へ売ることにしたのだ。
 (エルフと、ノームの血を引き継いだ)仲間のことも調査し、可能な限りニズラッシェリルに連れ戻っていた。


 そのことで食料が不足し、北の国とその周辺国では多くの餓死者が出た。


 北の国の国王は多くの者から批判を受け、王位を退いた後は民衆に銃で撃たれ死亡した。けれどその後も、エルフ達の国、ニズラッシェリルとは国交を断絶したままの状態でいる。





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