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魔力検査と話し合い

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今日は魔力検査の日です。

この王国では、15歳になる貴族の子息令嬢は魔力の有無を検査し、王立学園への入学資格がある事を証明するの。

そして、確か学園には魔力が無いと入れないが、魔法の授業がある訳では無かった筈。
魔法を教わるのは…学園を卒業してから、王立魔法学院へ行くのよね…?

何故かと言うと、成人前に魔法を習うと大事故に繋がってしまうから…

過去に未成年の魔法使用で暴走が起こり、王都の一部が壊滅したらしい。

なので、学園では魔力の制御、循環、譲渡を徹底的に教え込むという…

(まぁ…感情の起伏が激しい未成年では当然の事だわね)


「シア。用意出来たかい?」

「ええ、お兄様。 行きましょうゲイル」

「ああ」



私達が馬車でやって来たのは王立学園です。
ここで、来年入学する為に魔力検査をするのですわ。

「では、この水晶に触れて下さい」

「はい」

透明な水晶に触れると、またたに銀色の光があふれ出した。

「っ!? これはっ!」

係の人が慌てていますが如何どうしたのでしょうか…?
よく見ると、水晶からあふれ出した銀の魔力に薄い虹色の粒子りゅうし螺旋らせんの様に絡み付いていますわ…

「カストリア公爵令嬢。申し訳ありませんが、此方こちらで少々お待ち頂いても宜しいでしょうか…」

水晶がある部屋の奥に案内されましたが…何か不味まずかったのかしら…

「私では判断致しかねますので、学園長を呼んで参ります」

「分かりましたわ…」

何故? 水晶が光ったら魔力有りで終わりではないの…?

(ゲイル、聞こえるかしら…?)

『何だ?』

(学園長を呼びに行かれてしまったのだけど…)

『あゝ…言って無かったか‥…お前の魔力は珍しいのだよ』

(……はい!?)

『銀の魔力保持者は、ここ1000年近く出現していないんだ』

(………はぃいいっ!?)

え!? ゲームのフェリシアにそんな設定無かったわよっ!?

『最初に良い魔力だと言っただろ? で無ければ神獣がホイホイと契約なんぞする訳無かろう』

(ちゃんと言っておいてよ!)

『言っても結果は変わらん』

(しれっとしないでよぉ…心構えと言うものがあるんです!)

『お…おぅ…悪かった…』

まったくもう……

『ではフェリシアよ……』

(なに?)

前以まえもって言っておこう』

(なによ…?)

『お前の魔力量は……』

(魔力量…?)

『桁外れだ…』

(?…どういう事?)

『普通の人間の魔力が100として、お前の魔力は……100000だ』

(…………)

『………フェリシア…?』

10万……? 普通が100で……10万……?(じゅうまんんっ!?)


あゝ…扉をノックする音が聞こえる……

「失礼しますぞ…」

私……化け物扱いされるのかしら……

「カストリア公爵令嬢、私はこの学園の……カストリア公爵令嬢?」

このまま危険人物として捕まるんだわ……

「君っ! 入口に居る警備の騎士を呼んで来なさい! カストリア公爵令嬢が放心状態だ!」

「はいっ!」

「…取り敢えず、医療室で様子を見よう……確か、カストリア家の子息が2年に在籍していたな」

「令嬢は殿下方の婚約者でもありますので…」

「そうだな、殿下にもお知らせしておこう…」



          ◇



「シア!!」

「フェリシア!!」

フェリシアの様子がおかしいとの知らせを聞いて、急いで医療室に駆け付けたのだが…

「静かに……今眠っているよ」

「お前は確か……」

「ゲイル・スタンリードだ」

「カストリア公爵が、隣国から預かっている伯爵子息だったな…」

「ゲイル、シアの様子は…?」

「心配ない…自分の魔力に驚いて放心していただけだ」

驚く…?

「フェリシアの魔力は…!?」

「こいつの魔力は10万だ」

「10万だとっ!?」

王族の俺でも4千なのにか!?

「それ程の桁外れな魔力…制御出来るのか…?」

「大丈夫だ。 現に9歳から制御している…」

「!? どういう事だ?」

疾風はやてを見つけた時、お前も居たのだろう…?」

「ああ…」

「あの怪我を、魔力を注いで治したのはフェリシアだ」

「初耳だ…」

そのあと、フェリシアが目を覚まして、ジルベールとゲイルと3人で帰って行った。

流石にそれ程の魔力量では、父上に報告が行くだろうな…



          ◇



「よく来てくれたな、フェリシア嬢」

「お久しぶりでございます。国王陛下」

「さて、マクシムよ…先日の魔力検査で学園長から報告があったが…」

「はい、フェリシアは9歳の時に仔犬の怪我を治す為、魔力感知をしてしまいましたが…驚きはしたものの、まだ子供であった為に魔力量などは調べなかったのです」

「フム……では今回の魔力検査で初めて魔力量を知ったのだな?」

「その通りです」

「それと、銀の魔力だとの報告を聞いた…これは世に1000年近く出現していない。 王族は金の魔力を所持しているが、それでも歴代最高の魔力量は1万だ…」

「娘の魔力は、記憶持ちと関係あるのでしょうか…前世の記憶を思い出した時に、髪が銀色に変わった様ですが…」

「あまりに昔の事で、銀の魔力に関する文献が少ないのだ…それに、虹色の粒子りゅうし螺旋らせんの様に絡み付いていたと聞いたが…」

「…………」

「フェリシア嬢よ…以前其方そなたの話を聞き、命に係わるとして契約をしたが…まだ息子達は信用出来ぬか?」

「お2人の人柄は信用しております…ですが、まだ複数の人間が関与していますので…」

『フェリシア。国王に俺の事を話せ…』

(え!? 話しても大丈夫なの?)

『当初は第1王子との婚約がまぬがれぬからと躊躇ちゅうちょしていたが、今はもう関係あるまい?』

(………それもそうね…)

「お父様。疾風はやてが自分の事を陛下に話せと…」

「!?……そうか…」

「陛下。…私が9歳の時に助けた仔犬は、フェンリルだったのです…」

私のそばに居た疾風はやてが姿を現した。

「っ!? おおっ!!」

そして、陛下と話す為だろう…成人の人型へ変わった。


「国王よ、この娘には我の加護を与えている…虹色の魔力はその所為せいだ。そして、前世の話も聞いている。 その上で、我から其方そなたに話がある」

「神獣様が私にですか…!?」

「今まで何度もこの娘と話し合って来たが…来年学園に入学して来る問題の女生徒は、もしかしたら魅了魔法を使えるのかもしれぬ…」

「魅了魔法とな!」

「そうだ。 で無ければ、理解出来ない程の行動であろう? 高位貴族の令嬢を裁判も無しにいきなり処刑など…」

「確かに…それは私も考えていたが……そうか、魅了魔法か…」

「それに、常識的な判断を狂わす精神系の魔法も考慮に入れるべきだな」

「魅了される上に操られると…?」

「可能性は限りなく高いぞ?…長年、我と接していたからある程度の耐性は付いていると思うが…」


その後も、陛下とゲイルの会話は続き…結論としては攻略対象者に、精神系の魔法防御が付与されたピアスを着けさせる事に決まった。

「だが、魅了魔法だけは防げぬ……あれは失われたいにしえの魔法だ…」

「我にもそれに対抗する知識は無いな…」

「ゲイル…殿下方が常識的な判断さえ失くさなければ、あとは何とか…」

「フェリシア嬢。私も何か気付いた事があれば知らせよう……すまぬな…息子達の婚約者にと望んだばかりに……マクシムよ、そんなににらむな…」

「気のせいですよ、陛下」




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