逃げてもいいですか?…ダメ?…なら契約を…

ねこママ

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ジルベールの失念…

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『―――銀髪の女―――』

アルフォードの発した言葉が脳内で繰り返される…

「ちょっと待て…」


(只でさえ銀髪は珍しい……シア以外でこの学園に居たか?)


どれだけ記憶をあさっても居ない…当然だ。
学園どころか、国単位で探しても居るかどうか…

「アルフォード…銀髪なのは、僕の妹だけだ…」

「…ああ、知っている」

「だから此処へ来たのか…だが、犯人は見ていないと言ってたな?」

「そうだ。 アリエル嬢が教室に辿り着く前に、銀髪の女が出て行くのを見ただけらしい」

「ミランダル殿。 彼女は私と弟の婚約者です。 インジャスタ男爵令嬢に憶測で噂をされても困ります。 貴殿からではなく、令嬢から直接話を伺いたいと思いますが」

「俺もそうするべきだと思う…が、恐らく、本人では無い可能性が強いだろう。カストリア公爵令嬢の事はジルベールからよく聞いている…」

「それは…どういう事でしょう?」

「ゲイル・スタンリード…カストリア公爵令嬢の傍には、常に彼が付いている筈だろう?」

アルフォードは、ヴェルド殿下と話をしながらも…最後の問い掛けは僕に視線を向けて来た。


(確かに、ゲイルの事を話した記憶は在る……だが…)


「ジルベール…俺はこれでも隣国、ミランダルの王族だ。 スタンリード伯爵家の事も知っている…ゲイル・スタンリード、彼はしん…「アルフォードっ!!」」

僕は慌てて彼の言葉をさえぎった。
ヴェルド殿下が驚いた様子で此方こちらを見る。

「ゲイルの話は彼の個人的な事柄だ! 勝手に話していい事ではない!」

失念していた…!
疾風はやてに爵位を譲ったのは隣国の公爵…王族がその話を知らない訳が無い!
社交界に姿を見せないスタンリード伯爵の事を王族が秘匿ひとくしていたんだ。


「ミランダル殿。 ゲイルは幼少の頃より訳ありでカストリア公爵家に預けられたと聞く。詳しい理由までは知らないが…幼い頃はともかく、今はフェリシアの護衛をしてくれている」

「それは聞いている。 だからおかしいのだ…銀髪の女だけが教室から出て来たのが」

言われてみれば確かに…
シアの傍に誰も居ない時にゲイルが離れる事は無い。

「アリエル嬢は、その銀髪の女を知らない人だと言っていた。彼女とお前の妹は面識がないと思っていいだろう」

「男爵位で、貴族になって間もない…知らなくても当然だろうな―――」

「フェリシアに成りすました者が居ると…?」


(っ!? ぐ……息がっ)


「―――殿下っ。 魔力を抑えて下さいっ…!」

「!!……すまん…」

その時、応接室に設置されている呼び出しの音が鳴った。

ビィィィッ!!

「クィンザ殿下です。 ヴェルド殿下の魔力を感知したんでしょう…」

「ミランダル殿、後日改めてインジャスタ男爵令嬢に話を聞きます」

「分かった。伝えておく」

「アルフォード、この教科書は此方こちらで預かっておくよ?」

「ああ。 宜しく頼む」


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