3 / 49
序章 パーティ追放、アーチャー家追放

03:悪夢の始まり、武術大会

しおりを挟む
 ついに来てしまった、武術大会当日。今年からアーチャー家の末っ子も大会に出るという情報は、もはや参加者全員に伝わっているようだ。
 参加者や観戦者でごった返す、会場に着いた。

 昨日の夜はあまりの緊張で、たびたび目が覚めてしまった。顔色も悪いだろう。

「あれ、クリスタルも出るの?」

 久しぶりに会った。姉である。肩くらいまである茶髪を風に揺らしている。

「お父さまから『もう出てもよい頃だろう』と言われたので」
「ぷっ……! 本当に出るの? お父さまから言われたのなら仕方ないけど、出るからにはちゃんと成績残してよね。あんな下手くその姉だなんて思われたくないし」

 やっぱり変わらない。常に私を見下し、馬鹿にし、邪魔者として扱う。

「はい、頑張ります」

 それしか言えない。
 父も姉も、おそらく兄たちも、アーチャー家は一番であるべきだと考えている。本当は一番いい成績じゃないといけないけど、私だから一番じゃなくても許してくれるはず……。

「じゃあねー」

 余裕そうな態度で、私に背を向けて手を振る姉。小さい時には悔しいと思ったが、今となってはそんな気持ちはない。姉には一生を費やしても敵わない。

「冒険者二年目の参加者は準備に入れー!」

 大会の実行人が大声で呼びかける。重い金属を飲みこんだような気持ちで、私は準備にとりかかった。





 私が本番のために練習している間、冒険者一年目の人たちの部門が始まっていた。

 射るところから、四ヤトロ(二十メートルくらい)離れた的へ、より中心近くに当てられた人から高い順位となる。
 三回挑戦し、三回全ての順位を足して一番数が少ない人が優勝だ。

 冒険者一年目の中では、さすがに真ん中に当たったのは二回だったらしい。それでもすごいって。

「次は冒険者二年目、前から順に並べ」

 冒険者一年目の参加者は少ないものの、二年目からは倍くらいに増えるという。確かに多い。こんな人たちの中でいい成績を取らなきゃいけないの……!

「クリスタル」

 名前を呼ばれて振り返ると……父がいた。一人用のイスの背に寄りかかって座り、大きな態度である。横には来賓がいる。過去に大会で優秀な成績を残した人たちだ。
 父の険しい顔を見てしまい、私の緊張はピークに達する。

 ああ、どうしよう。ここで失敗したらお父さまが……。せめて当てないと。

 そう臨んで放った二本の矢は見事に外れてしまった。
 三回目の番を待つ私の顔色は、病気をした時よりも青ざめていたかもしれない。

 前の人が最後の挑戦を次々と終える中、私の手は震えていた。
 最後に私の番が回ってきた。的に刺さったいくつもの矢がプレッシャーとなっている。

 弓を引いた。矢が離れた。思っていたよりは少し外れたところを飛んでいき、なんとか的に当てられた。

「……やった!」

 七回やって一回当たるくらいなのに、三回に一回は当たるというところまで上達しているようだ。それでも底辺であることには変わりないが。

 三回挑戦した結果、最終順位は同率で二十五位となった。一番下でないだけまだマシだと思う。





 アーチャー家にはあるまじき結果を聞かされた私のところに、父がズカズカと眉間にシワを寄せてやってきた。

「お、お父さま……」
「何だあのザマは」
「申し訳ございません!」
「お前のことだから、三回とも中心に当てろとは言わなかったが……せめて三回全ては的に命中するべきだろう」

 確か、兄や姉は三回とも当たり前のように命中させ、上位三位の中を争うほどだった。それが当たり前だと思っている父は、私に少し妥協しても許せない結果なのだ。

「……次、長距離で結果を残さなかったら、どうなるか分かっているよな」

 父の顔にできた影がいっそう暗くなり、私は体を縮こませながら「はい」と口にする。





 大会にはもう一つ、いかに遠くの的に当てられるかを競う、長距離部門がある。
 あいにくなことに、午後から強い風が吹いてきていて、より難易度が上がっている。

「これは中止か決めかねるところだな」と父が言うほどだ。こんな風でまともに矢が飛んでくれる気がしない。

 まずは、さっきの倍の八ヤトロ(四十メートルくらい)からだ。正直、私はこの距離でも十回くらいしか当てたことがない。
 その『さっき』と同じように、一回目も二回目も外してしまった。

 最後の三射目、深呼吸して気持ちを整える。
 これで外せばもうおしまい。さっきのように絶対命中させる。

 強く心に誓った矢は、今度は私の思った通りの方に飛んでいく。風に流されるも想定内。見事ど真ん中に命中した。

「はっ……やっ、やった‼︎」

 今までの一番の出来に、私は思わず後ろを振り返る。父は久しぶりに私にうなずいてくれた。

 それからの私は、人が変わったかのように大躍進を見せた。この悪天候に他の人は苦戦する中、私は一発成功を連発。

「なんだ……あの子」

 来賓の人たちを目を見張っているほどだ。
 ついに私ともう一人だけ残った。既に最初の倍以上の十八ヤトロ(九十メートルくらい)を成功させている。
 次は私の兄の最高記録、二十ヤトロ(百メートルくらい)だ。

 もう一人の一射目、風に流されて大きく外れる。私の一射目、同じく風のせいで矢が届かない。

 もう一人の二射目、的の支柱の部分に刺さる。私の二射目、的の上をかすめていく。

 もう一人の三射目、最初はよかったが風であらぬ方向に飛んでいく。

 今度こそ最後だ。これで私が外したら、支柱に当てられたもう一人の方が一位。当てたら単独一位。
 心のざわめきをしずめるため、目を閉じた。

 荒い風が私の体に吹きつける。直感で狙いを定める。二射目よりはほんの少し下に……。

 最後の矢は……風に流されてしまった。
 が、なんと、風向きとは逆の方に飛んで軌道が元に戻り、的に命中したのだ。

 自分でも何が起こったのか分からなかった。

「えっ……うそ……」

 私の放った矢は真ん中に刺さっていたのだ。
 周りの観衆がどよめく。午前中の普通部門では、下から数えた方が早いくらいのパッとしないヤツだったのに、と。

「大会記録タイで、クリスタル・フォスター・アーチャーの優勝だ!!」

 私はうれしさと驚きで膝からくずおれ、拍手に包まれた。
 ハッと我に返り立ち上がる。私にとっては奇跡としか言いようがないこの現象に、無意識で礼をしていた。





 武術大会での結果をもとに、パーティの組み分けがなされた。
 私は上級パーティに入れられてしまった。……父の希望通りに。

「さすがアーチャー家ですね、あの悪条件でよくあそこまで粘れましたよ」
「あそこは四きょうだいみんな優秀ですねぇ」

 今年の大会でも兄と姉は好成績を残している。大会が終わってから、父は色々な人からチヤホヤされていた。
 上機嫌の父だが、私は不安でしかなかった。

 わ、私が上級パーティ!? だって大会のやつは偶然だし、いつもは全然できてないのに! 絶対足引っ張る……。

 私はまぐれで大会で優勝してしまったがために、自らの首を絞めることになったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

異世界に無一文投下!?鑑定士ナギの至福拠点作り

花垣 雷
ファンタジー
「何もないなら、創ればいい。等価交換(ルール)は俺が書き換える!」 一文無しで異世界へ放り出された日本人・ナギ。 彼が持つ唯一の武器は、万物を解析し組み替える【鑑定】と【等価交換】のスキルだった。 ナギは行き倒れ寸前で出会った、最強の女騎士エリスと出会う。現代知識とチート能力を駆使して愛する家族と仲間たちのために「至福の居場所」を築き上げる、異世界拠点ファンタジーストーリー!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~

しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。 それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること! 8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。 どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ! 「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」  かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。 しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。 「今度こそ、私が世界を救って見せる!」 失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!   剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。 イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。 小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

令嬢失格な私なので

あんど もあ
ファンタジー
貴族の令息令嬢が学ぶ王都学園。 そこのカースト最下位と思われている寮生の中でも、最も令嬢らしからぬディアナ。 しかしその正体は……。

処理中です...