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序章 パーティ追放、アーチャー家追放
03:悪夢の始まり、武術大会
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ついに来てしまった、武術大会当日。今年からアーチャー家の末っ子も大会に出るという情報は、もはや参加者全員に伝わっているようだ。
参加者や観戦者でごった返す、会場に着いた。
昨日の夜はあまりの緊張で、たびたび目が覚めてしまった。顔色も悪いだろう。
「あれ、クリスタルも出るの?」
久しぶりに会った。姉である。肩くらいまである茶髪を風に揺らしている。
「お父さまから『もう出てもよい頃だろう』と言われたので」
「ぷっ……! 本当に出るの? お父さまから言われたのなら仕方ないけど、出るからにはちゃんと成績残してよね。あんな下手くその姉だなんて思われたくないし」
やっぱり変わらない。常に私を見下し、馬鹿にし、邪魔者として扱う。
「はい、頑張ります」
それしか言えない。
父も姉も、おそらく兄たちも、アーチャー家は一番であるべきだと考えている。本当は一番いい成績じゃないといけないけど、私だから一番じゃなくても許してくれるはず……。
「じゃあねー」
余裕そうな態度で、私に背を向けて手を振る姉。小さい時には悔しいと思ったが、今となってはそんな気持ちはない。姉には一生を費やしても敵わない。
「冒険者二年目の参加者は準備に入れー!」
大会の実行人が大声で呼びかける。重い金属を飲みこんだような気持ちで、私は準備にとりかかった。
私が本番のために練習している間、冒険者一年目の人たちの部門が始まっていた。
射るところから、四ヤトロ(二十メートルくらい)離れた的へ、より中心近くに当てられた人から高い順位となる。
三回挑戦し、三回全ての順位を足して一番数が少ない人が優勝だ。
冒険者一年目の中では、さすがに真ん中に当たったのは二回だったらしい。それでもすごいって。
「次は冒険者二年目、前から順に並べ」
冒険者一年目の参加者は少ないものの、二年目からは倍くらいに増えるという。確かに多い。こんな人たちの中でいい成績を取らなきゃいけないの……!
「クリスタル」
名前を呼ばれて振り返ると……父がいた。一人用のイスの背に寄りかかって座り、大きな態度である。横には来賓がいる。過去に大会で優秀な成績を残した人たちだ。
父の険しい顔を見てしまい、私の緊張はピークに達する。
ああ、どうしよう。ここで失敗したらお父さまが……。せめて当てないと。
そう臨んで放った二本の矢は見事に外れてしまった。
三回目の番を待つ私の顔色は、病気をした時よりも青ざめていたかもしれない。
前の人が最後の挑戦を次々と終える中、私の手は震えていた。
最後に私の番が回ってきた。的に刺さったいくつもの矢がプレッシャーとなっている。
弓を引いた。矢が離れた。思っていたよりは少し外れたところを飛んでいき、なんとか的に当てられた。
「……やった!」
七回やって一回当たるくらいなのに、三回に一回は当たるというところまで上達しているようだ。それでも底辺であることには変わりないが。
三回挑戦した結果、最終順位は同率で二十五位となった。一番下でないだけまだマシだと思う。
アーチャー家にはあるまじき結果を聞かされた私のところに、父がズカズカと眉間にシワを寄せてやってきた。
「お、お父さま……」
「何だあのザマは」
「申し訳ございません!」
「お前のことだから、三回とも中心に当てろとは言わなかったが……せめて三回全ては的に命中するべきだろう」
確か、兄や姉は三回とも当たり前のように命中させ、上位三位の中を争うほどだった。それが当たり前だと思っている父は、私に少し妥協しても許せない結果なのだ。
「……次、長距離で結果を残さなかったら、どうなるか分かっているよな」
父の顔にできた影がいっそう暗くなり、私は体を縮こませながら「はい」と口にする。
大会にはもう一つ、いかに遠くの的に当てられるかを競う、長距離部門がある。
あいにくなことに、午後から強い風が吹いてきていて、より難易度が上がっている。
「これは中止か決めかねるところだな」と父が言うほどだ。こんな風でまともに矢が飛んでくれる気がしない。
まずは、さっきの倍の八ヤトロ(四十メートルくらい)からだ。正直、私はこの距離でも十回くらいしか当てたことがない。
その『さっき』と同じように、一回目も二回目も外してしまった。
最後の三射目、深呼吸して気持ちを整える。
これで外せばもうおしまい。さっきのように絶対命中させる。
強く心に誓った矢は、今度は私の思った通りの方に飛んでいく。風に流されるも想定内。見事ど真ん中に命中した。
「はっ……やっ、やった‼︎」
今までの一番の出来に、私は思わず後ろを振り返る。父は久しぶりに私にうなずいてくれた。
それからの私は、人が変わったかのように大躍進を見せた。この悪天候に他の人は苦戦する中、私は一発成功を連発。
「なんだ……あの子」
来賓の人たちを目を見張っているほどだ。
ついに私ともう一人だけ残った。既に最初の倍以上の十八ヤトロ(九十メートルくらい)を成功させている。
次は私の兄の最高記録、二十ヤトロ(百メートルくらい)だ。
もう一人の一射目、風に流されて大きく外れる。私の一射目、同じく風のせいで矢が届かない。
もう一人の二射目、的の支柱の部分に刺さる。私の二射目、的の上をかすめていく。
もう一人の三射目、最初はよかったが風であらぬ方向に飛んでいく。
今度こそ最後だ。これで私が外したら、支柱に当てられたもう一人の方が一位。当てたら単独一位。
心のざわめきをしずめるため、目を閉じた。
荒い風が私の体に吹きつける。直感で狙いを定める。二射目よりはほんの少し下に……。
最後の矢は……風に流されてしまった。
が、なんと、風向きとは逆の方に飛んで軌道が元に戻り、的に命中したのだ。
自分でも何が起こったのか分からなかった。
「えっ……うそ……」
私の放った矢は真ん中に刺さっていたのだ。
周りの観衆がどよめく。午前中の普通部門では、下から数えた方が早いくらいのパッとしないヤツだったのに、と。
「大会記録タイで、クリスタル・フォスター・アーチャーの優勝だ!!」
私は嬉しさと驚きで膝からくずおれ、拍手に包まれた。
ハッと我に返り立ち上がる。私にとっては奇跡としか言いようがないこの現象に、無意識で礼をしていた。
武術大会での結果をもとに、パーティの組み分けがなされた。
私は上級パーティに入れられてしまった。……父の希望通りに。
「さすがアーチャー家ですね、あの悪条件でよくあそこまで粘れましたよ」
「あそこは四きょうだいみんな優秀ですねぇ」
今年の大会でも兄と姉は好成績を残している。大会が終わってから、父は色々な人からチヤホヤされていた。
上機嫌の父だが、私は不安でしかなかった。
わ、私が上級パーティ!? だって大会のやつは偶然だし、いつもは全然できてないのに! 絶対足引っ張る……。
私はまぐれで大会で優勝してしまったがために、自らの首を絞めることになったのだった。
参加者や観戦者でごった返す、会場に着いた。
昨日の夜はあまりの緊張で、たびたび目が覚めてしまった。顔色も悪いだろう。
「あれ、クリスタルも出るの?」
久しぶりに会った。姉である。肩くらいまである茶髪を風に揺らしている。
「お父さまから『もう出てもよい頃だろう』と言われたので」
「ぷっ……! 本当に出るの? お父さまから言われたのなら仕方ないけど、出るからにはちゃんと成績残してよね。あんな下手くその姉だなんて思われたくないし」
やっぱり変わらない。常に私を見下し、馬鹿にし、邪魔者として扱う。
「はい、頑張ります」
それしか言えない。
父も姉も、おそらく兄たちも、アーチャー家は一番であるべきだと考えている。本当は一番いい成績じゃないといけないけど、私だから一番じゃなくても許してくれるはず……。
「じゃあねー」
余裕そうな態度で、私に背を向けて手を振る姉。小さい時には悔しいと思ったが、今となってはそんな気持ちはない。姉には一生を費やしても敵わない。
「冒険者二年目の参加者は準備に入れー!」
大会の実行人が大声で呼びかける。重い金属を飲みこんだような気持ちで、私は準備にとりかかった。
私が本番のために練習している間、冒険者一年目の人たちの部門が始まっていた。
射るところから、四ヤトロ(二十メートルくらい)離れた的へ、より中心近くに当てられた人から高い順位となる。
三回挑戦し、三回全ての順位を足して一番数が少ない人が優勝だ。
冒険者一年目の中では、さすがに真ん中に当たったのは二回だったらしい。それでもすごいって。
「次は冒険者二年目、前から順に並べ」
冒険者一年目の参加者は少ないものの、二年目からは倍くらいに増えるという。確かに多い。こんな人たちの中でいい成績を取らなきゃいけないの……!
「クリスタル」
名前を呼ばれて振り返ると……父がいた。一人用のイスの背に寄りかかって座り、大きな態度である。横には来賓がいる。過去に大会で優秀な成績を残した人たちだ。
父の険しい顔を見てしまい、私の緊張はピークに達する。
ああ、どうしよう。ここで失敗したらお父さまが……。せめて当てないと。
そう臨んで放った二本の矢は見事に外れてしまった。
三回目の番を待つ私の顔色は、病気をした時よりも青ざめていたかもしれない。
前の人が最後の挑戦を次々と終える中、私の手は震えていた。
最後に私の番が回ってきた。的に刺さったいくつもの矢がプレッシャーとなっている。
弓を引いた。矢が離れた。思っていたよりは少し外れたところを飛んでいき、なんとか的に当てられた。
「……やった!」
七回やって一回当たるくらいなのに、三回に一回は当たるというところまで上達しているようだ。それでも底辺であることには変わりないが。
三回挑戦した結果、最終順位は同率で二十五位となった。一番下でないだけまだマシだと思う。
アーチャー家にはあるまじき結果を聞かされた私のところに、父がズカズカと眉間にシワを寄せてやってきた。
「お、お父さま……」
「何だあのザマは」
「申し訳ございません!」
「お前のことだから、三回とも中心に当てろとは言わなかったが……せめて三回全ては的に命中するべきだろう」
確か、兄や姉は三回とも当たり前のように命中させ、上位三位の中を争うほどだった。それが当たり前だと思っている父は、私に少し妥協しても許せない結果なのだ。
「……次、長距離で結果を残さなかったら、どうなるか分かっているよな」
父の顔にできた影がいっそう暗くなり、私は体を縮こませながら「はい」と口にする。
大会にはもう一つ、いかに遠くの的に当てられるかを競う、長距離部門がある。
あいにくなことに、午後から強い風が吹いてきていて、より難易度が上がっている。
「これは中止か決めかねるところだな」と父が言うほどだ。こんな風でまともに矢が飛んでくれる気がしない。
まずは、さっきの倍の八ヤトロ(四十メートルくらい)からだ。正直、私はこの距離でも十回くらいしか当てたことがない。
その『さっき』と同じように、一回目も二回目も外してしまった。
最後の三射目、深呼吸して気持ちを整える。
これで外せばもうおしまい。さっきのように絶対命中させる。
強く心に誓った矢は、今度は私の思った通りの方に飛んでいく。風に流されるも想定内。見事ど真ん中に命中した。
「はっ……やっ、やった‼︎」
今までの一番の出来に、私は思わず後ろを振り返る。父は久しぶりに私にうなずいてくれた。
それからの私は、人が変わったかのように大躍進を見せた。この悪天候に他の人は苦戦する中、私は一発成功を連発。
「なんだ……あの子」
来賓の人たちを目を見張っているほどだ。
ついに私ともう一人だけ残った。既に最初の倍以上の十八ヤトロ(九十メートルくらい)を成功させている。
次は私の兄の最高記録、二十ヤトロ(百メートルくらい)だ。
もう一人の一射目、風に流されて大きく外れる。私の一射目、同じく風のせいで矢が届かない。
もう一人の二射目、的の支柱の部分に刺さる。私の二射目、的の上をかすめていく。
もう一人の三射目、最初はよかったが風であらぬ方向に飛んでいく。
今度こそ最後だ。これで私が外したら、支柱に当てられたもう一人の方が一位。当てたら単独一位。
心のざわめきをしずめるため、目を閉じた。
荒い風が私の体に吹きつける。直感で狙いを定める。二射目よりはほんの少し下に……。
最後の矢は……風に流されてしまった。
が、なんと、風向きとは逆の方に飛んで軌道が元に戻り、的に命中したのだ。
自分でも何が起こったのか分からなかった。
「えっ……うそ……」
私の放った矢は真ん中に刺さっていたのだ。
周りの観衆がどよめく。午前中の普通部門では、下から数えた方が早いくらいのパッとしないヤツだったのに、と。
「大会記録タイで、クリスタル・フォスター・アーチャーの優勝だ!!」
私は嬉しさと驚きで膝からくずおれ、拍手に包まれた。
ハッと我に返り立ち上がる。私にとっては奇跡としか言いようがないこの現象に、無意識で礼をしていた。
武術大会での結果をもとに、パーティの組み分けがなされた。
私は上級パーティに入れられてしまった。……父の希望通りに。
「さすがアーチャー家ですね、あの悪条件でよくあそこまで粘れましたよ」
「あそこは四きょうだいみんな優秀ですねぇ」
今年の大会でも兄と姉は好成績を残している。大会が終わってから、父は色々な人からチヤホヤされていた。
上機嫌の父だが、私は不安でしかなかった。
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