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第四章 元冒険者、真の実力を見せつける
45:乱入者、あふれ出る怒りと憎悪
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大人数が敵の一点を狙ったせいで何本かは互いにぶつかり合ってしまった。しかし、放った矢のほとんどが狙ったところに命中する。
グォッ
デス・トリブラスの体が後ろに反り返る。
「今だ!」
後衛で待機していた剣使いの半分くらいが斬りかかる。だが、そう簡単にはいかない。
すぐに体勢を立て直したデス・トリブラスが、『枝』部分を大きく振りかざしたのだ。
茎のような見た目からは想像できないほどしなりを利かせながら、地面をなでるように攻撃してくる。
「これか!」
冒険者たちから聞いていた、あの物理攻撃である。剣使いはすぐさま攻撃をやめて避けたり、剣で防御した反動で逃げたりして、なんとか逃れられた。
確かにこれを頭に喰らったら、そりゃあ、ああなるよね。
ふいに頭に包帯をぐるぐる巻きにした、サム兄の姿が思い起こされた。
となると、デス・トリブラスの攻撃は聞いてる範囲では、残り一つだね。
弓を構えた。
ヴォォォォッ!
「トゲだ!」
予想どおりだった。連続撃ちで小さなトゲを一つ一つ撃ち落とすが、私の超能力的な何かが活躍してくれた。
直接命中したトゲだけではない。矢の進んだところにあったトゲが、なぜかその場で飛ぶ力を失って地面に落ちていくのだ。
なるほど。
私はあえてまっすぐではなく、曲がっていく矢を放つ。今ならできる。『下手な弓』をわざと再現することを。
「い、今のはなんだ!?」
まっすぐな矢しか飛ばしたことがないであろうリッカルドが、私を一瞬振り返って目を見開いている。
「以前の私を再現しただけですよ」
今度は大きく蛇行するように発射した。もはや弓から撃った矢が進む軌道ではない。
こうすることで、よりトゲの雨の中を進む時間が長くなる。
パラパラパラパラ……
止まることなく撃ち続け、ほぼ私一人でトゲを一掃することができた。
「「うそ、だろ……」」
「うそ、でしょ……」
ほとんど同時に、同じようなセリフを言いながら、こちらを振り返る兄たちと姉。なにかの喜劇かと吹き出しそうになったが、半笑いくらいに留めておく。
「もう一度『がく』を狙うぞ!」
すぐに切り替えたサム兄が、弓使い全員に指示を出した。
デス・トリブラスが次の攻撃をしかける前に、こちらから攻撃を浴びせる。
大量の弓矢がまたも弱点に命中したときには、剣使いがデス・トリブラスの懐まで入りこんでいた。
「これで終わりだ、デス・トリブラス!」
パワーのあるディスモンドが正面から、機敏性を生かして回り込んだオズワルドが背後から、同時に『がく』を斬り落とした。
ドスンッ!
花のような部分が、轟音を立てて地面に転がった。茎も根もしおれ、自立できない人形のように倒れこんだ。
「た、倒したな」
デス・トリブラスの花や茎・根の部分を確かめたサム兄が、息を弾ませながら宣言した。
「よし」
「やはり数の力は大きいな」
「やった!」
あの三兄弟もさすがに手ごたえはあったようで、満足げな表情を浮かべている。
冒険者どうしはハイタッチ、騎士どうしはグータッチをし合っている。戦う者どうし、勝利の称え方はどこか似てくるのかもしれない。
リッカルドが言った『数の力』は大いにあるだろう。おかげで誰一人として大きなケガをすることなく倒せた。
その時。
「あら、間に合わなかったみたいね」
その声に反射的に後ろを振り返る。
「は……?」
その人たちを見た姉の目が、勝利の興奮から一気に冷めきる。私は思わず一歩退いてしまう。
ディエゴとイアンとジェシカであった。
「……お前ら、どうしてここに来られた?」
今や中級冒険者に成り下がった三人が、以前より難しくなったダンジョンに侵入するなど、自殺行為である。
「ここのみんながモンスターを、ほっとんど倒してくれたからな」
「……おかげで、ここまでモンスターと一回も遭遇していない」
ディエゴとイアンが、相変わらず上から目線で話してくる。騎士もいるというのに。
「あーあ、せっかくうちら三人でトドメの一撃をおみまいしようと思ってたのに!」
「少しでも戦闘に加われば、中級冒険者だって一気に英雄だ。計画が台無し」
私の中にふつふつと沸きあがるものがあった。怒り――ここにいるみんなが感じているだろうが、私はただの怒りではない。
過去にこの人たちにされたことへの怒りと憎悪も混じっている。あぁ、この人たちに追放されて分かった。この人たちは根から腐っている。
サム兄がディエゴの胸倉をわしづかみした。いつも余裕そうな言動のサム兄だが、こんなにも感情を表に出しているのは初めて見る。
「ふざけたことを言うな。俺らが最初にデス・トリブラスに挑み、絶望したのがどれほどか分かっているのか。俺は死にかけたんだ。他の仲間も重傷で、ギルドに戻ったとたんに倒れこんだ。普通、そんな経験をしたらもう二度と戦いたくないよな。だが、俺らは恐怖に打ち勝ち、またここに来た。それなのに最後のおいしいところを持っていこうだと?」
感情の赴くまま、矢継ぎ早に事実を突きつけるサム兄。普通の人なら怖すぎて震え上がるところだが、ディエゴは普通ではない。
「おいしいところを持っていける人が、将来生き残れる人だ」
薄く笑った。
私はなにか嫌な気配を感じて、視線を右上に持って行った。
その光景は笑えなかった。
「みんな、下がってくださいっ!!」
ヴォォォォォォォォォォォォォォッ!!
デス・トリブラスは復活していた。復活どころか、さらに進化していた。
斬り落とした花はいつの間にか元の位置に戻っている。さらに花がヒマワリのように完全に開き、ヒマワリならば種が詰まっているところに『目』のようなものがあった。
花びらを半開きだと思った私の勘は当たっていたようだ。
目が現れたということは……。
思い返せば、今までのデス・トリブラスからの攻撃は、全体をまんべんなく攻撃しているようである。物理攻撃であっても、全体をさらうような感じだ。
音は聞こえているはずだ。攻撃をするのは前側のみ。後ろに攻撃するメリットがないことは分かっている様子。前回サム兄を狙ったのも、兄がなにか指示を出していて、その声を目がけて攻撃したとすれば辻褄が合う。
パワーに優れたデス・トリブラスの命中率が上がった……。
私は弓から双剣に武器を切り替え、防御の構えをした。
グォッ
デス・トリブラスの体が後ろに反り返る。
「今だ!」
後衛で待機していた剣使いの半分くらいが斬りかかる。だが、そう簡単にはいかない。
すぐに体勢を立て直したデス・トリブラスが、『枝』部分を大きく振りかざしたのだ。
茎のような見た目からは想像できないほどしなりを利かせながら、地面をなでるように攻撃してくる。
「これか!」
冒険者たちから聞いていた、あの物理攻撃である。剣使いはすぐさま攻撃をやめて避けたり、剣で防御した反動で逃げたりして、なんとか逃れられた。
確かにこれを頭に喰らったら、そりゃあ、ああなるよね。
ふいに頭に包帯をぐるぐる巻きにした、サム兄の姿が思い起こされた。
となると、デス・トリブラスの攻撃は聞いてる範囲では、残り一つだね。
弓を構えた。
ヴォォォォッ!
「トゲだ!」
予想どおりだった。連続撃ちで小さなトゲを一つ一つ撃ち落とすが、私の超能力的な何かが活躍してくれた。
直接命中したトゲだけではない。矢の進んだところにあったトゲが、なぜかその場で飛ぶ力を失って地面に落ちていくのだ。
なるほど。
私はあえてまっすぐではなく、曲がっていく矢を放つ。今ならできる。『下手な弓』をわざと再現することを。
「い、今のはなんだ!?」
まっすぐな矢しか飛ばしたことがないであろうリッカルドが、私を一瞬振り返って目を見開いている。
「以前の私を再現しただけですよ」
今度は大きく蛇行するように発射した。もはや弓から撃った矢が進む軌道ではない。
こうすることで、よりトゲの雨の中を進む時間が長くなる。
パラパラパラパラ……
止まることなく撃ち続け、ほぼ私一人でトゲを一掃することができた。
「「うそ、だろ……」」
「うそ、でしょ……」
ほとんど同時に、同じようなセリフを言いながら、こちらを振り返る兄たちと姉。なにかの喜劇かと吹き出しそうになったが、半笑いくらいに留めておく。
「もう一度『がく』を狙うぞ!」
すぐに切り替えたサム兄が、弓使い全員に指示を出した。
デス・トリブラスが次の攻撃をしかける前に、こちらから攻撃を浴びせる。
大量の弓矢がまたも弱点に命中したときには、剣使いがデス・トリブラスの懐まで入りこんでいた。
「これで終わりだ、デス・トリブラス!」
パワーのあるディスモンドが正面から、機敏性を生かして回り込んだオズワルドが背後から、同時に『がく』を斬り落とした。
ドスンッ!
花のような部分が、轟音を立てて地面に転がった。茎も根もしおれ、自立できない人形のように倒れこんだ。
「た、倒したな」
デス・トリブラスの花や茎・根の部分を確かめたサム兄が、息を弾ませながら宣言した。
「よし」
「やはり数の力は大きいな」
「やった!」
あの三兄弟もさすがに手ごたえはあったようで、満足げな表情を浮かべている。
冒険者どうしはハイタッチ、騎士どうしはグータッチをし合っている。戦う者どうし、勝利の称え方はどこか似てくるのかもしれない。
リッカルドが言った『数の力』は大いにあるだろう。おかげで誰一人として大きなケガをすることなく倒せた。
その時。
「あら、間に合わなかったみたいね」
その声に反射的に後ろを振り返る。
「は……?」
その人たちを見た姉の目が、勝利の興奮から一気に冷めきる。私は思わず一歩退いてしまう。
ディエゴとイアンとジェシカであった。
「……お前ら、どうしてここに来られた?」
今や中級冒険者に成り下がった三人が、以前より難しくなったダンジョンに侵入するなど、自殺行為である。
「ここのみんながモンスターを、ほっとんど倒してくれたからな」
「……おかげで、ここまでモンスターと一回も遭遇していない」
ディエゴとイアンが、相変わらず上から目線で話してくる。騎士もいるというのに。
「あーあ、せっかくうちら三人でトドメの一撃をおみまいしようと思ってたのに!」
「少しでも戦闘に加われば、中級冒険者だって一気に英雄だ。計画が台無し」
私の中にふつふつと沸きあがるものがあった。怒り――ここにいるみんなが感じているだろうが、私はただの怒りではない。
過去にこの人たちにされたことへの怒りと憎悪も混じっている。あぁ、この人たちに追放されて分かった。この人たちは根から腐っている。
サム兄がディエゴの胸倉をわしづかみした。いつも余裕そうな言動のサム兄だが、こんなにも感情を表に出しているのは初めて見る。
「ふざけたことを言うな。俺らが最初にデス・トリブラスに挑み、絶望したのがどれほどか分かっているのか。俺は死にかけたんだ。他の仲間も重傷で、ギルドに戻ったとたんに倒れこんだ。普通、そんな経験をしたらもう二度と戦いたくないよな。だが、俺らは恐怖に打ち勝ち、またここに来た。それなのに最後のおいしいところを持っていこうだと?」
感情の赴くまま、矢継ぎ早に事実を突きつけるサム兄。普通の人なら怖すぎて震え上がるところだが、ディエゴは普通ではない。
「おいしいところを持っていける人が、将来生き残れる人だ」
薄く笑った。
私はなにか嫌な気配を感じて、視線を右上に持って行った。
その光景は笑えなかった。
「みんな、下がってくださいっ!!」
ヴォォォォォォォォォォォォォォッ!!
デス・トリブラスは復活していた。復活どころか、さらに進化していた。
斬り落とした花はいつの間にか元の位置に戻っている。さらに花がヒマワリのように完全に開き、ヒマワリならば種が詰まっているところに『目』のようなものがあった。
花びらを半開きだと思った私の勘は当たっていたようだ。
目が現れたということは……。
思い返せば、今までのデス・トリブラスからの攻撃は、全体をまんべんなく攻撃しているようである。物理攻撃であっても、全体をさらうような感じだ。
音は聞こえているはずだ。攻撃をするのは前側のみ。後ろに攻撃するメリットがないことは分かっている様子。前回サム兄を狙ったのも、兄がなにか指示を出していて、その声を目がけて攻撃したとすれば辻褄が合う。
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私は弓から双剣に武器を切り替え、防御の構えをした。
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