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第一章 現役女子高生、異世界で超能力に目覚める
05:珍しい楽器を吹くストリートミュージシャン
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次の日、私はベルから教えてもらった場所に向かった。
「市場の辺りはにぎわっていると思うねぇ。色々な人に聴いてもらいたいならここがいいよ」
地図を片手に、アルトサックスが入ったケース(かばん)を背中に、周りを見渡す。
まだ地図が読めるからいいけど……全部ヨーロッパみたいな建物ばっかだから見分けがつかないって! よく見れば『鍛冶屋』とか『青果店』とか『服屋』とか分かるんだけどね。
前世は建物の見た目で分かるやつも多いし、もっと目印になるような高い建物があったからね。
あんまりお店の近くじゃ迷惑だから、ちょっとひらけたところがいいな。
さっきからどこからかの視線が気になっている。
「ねぇ、何あの髪?」
「異国の人かしら?」
「それにしても、ピンク色の髪なんて見たことないな」
前世で鍛えられてしまった地獄耳が、今世でも残ってしまっているようだ。
私だって染めてもいいなら茶髪くらいにしたいよ! でも、そういうのができるところはないらしいし……。
どこから見ても目立ってしまうこの髪色。しかし私はそれを逆手に取ろうとしている!
「ここ、めっちゃいいじゃん!」
市場から少し離れたところに大きな噴水を見つけた。噴水を原点に、放射状に伸びた道からたくさんの人がぞろぞろと歩いてきている。
私が今歩いてきた市場への道や、王城に続く道、富裕層が住む南地区への道など、全部で五本の道路が交わる場所なのだ。
「ベルぅ、こういうところ教えてくれればいいのに」
待ち合わせの場所として使われているらしく、数分人間観察をしていればすぐに分かった。
要は、たくさん人が集まる場所である。
私はケースを地面に下ろしてサックスを組み立てると、噴水の縁に座った。音出し(ウォーミングアップ)をして楽器を温め、指をほぐす。
そしてベルの家から借りてきた看板に、「演奏がいいなと思ったら ぜひお金を入れてください!」と書いてみた。
ベルとルークによると、ストリートミュージシャンを見たことがないらしい。それなら投げ銭の文化もないだろうし、楽器のケースを投げ銭入れとして使うことも知らないよね?
そもそも音楽をたしなむことなど、上流階級がするものなのだそう。確かに街中に音楽はなく、人が生み出す雑踏しかなかった。
「よし……準備完了」
私はスクッと立ち上がると、コンクールの本番前さながらの緊張を飲みこみ、サックスを奏で始めた。
足音と話し声でごった返す噴水広場に、ある一つの旋律が響き渡る。
人の声にも似た、きらびやかでもあり艶やかな音色。
その場所にいる誰もが、未知の音楽を耳にした。
「何あれ? 楽器よね?」
「こんなところで吹いていいのか?」
「あの金色のやつ見たことないぞ」
興味を示すものの、こちらを振り向いては「ふぅん」と言って去っていく。
思っていたものより厳しい世界だ。
ストリートミュージシャンってなかなかお金入らないらしいけど、ホントにそうだった。コンクールの時、私のソロを審査員にほめてもらったけど、あれは私が高校生だからかな……。
でも、ベルと約束しちゃったし。やらねば。
二曲まるまる吹き終わり、三曲目に入ろうとしたその時。
パチパチパチ……
私の前を素通りせずピタッと足を止め、拍手をする少し裕福そうな男性が一人。
「その楽器、なんて言う楽器ですか?」
「サクソフォンです」
「それ、昨日までうちにあったやつじゃ……?」
昨日までうちにあった? だってサックスってこの世界じゃ珍しいのにうちにあったって…………あ。
「もしかして、これを売ったベルのお相手ですか?」
「ベル……イザベルか。そうです。珍しいと思って博覧会に出そうとしていたのに、昨日男が返してほしいって取りに来て」
これって……返してくれってこと? そうは言ってこないけど、そんな感じだよね。
黙ったまま、その男性は私の相棒を凝視している。
「えっと……何か?」
「これを吹く人がいないなら私が預かろうと思ったのですが、いるので大丈夫ですね。もうちょっとサクソフォンの音を聴いてから行こう」
そう言うと数歩下がって腕を組んだ。
半ば「やれ」と言われているこの状況。ソロコンテストを思い出させる。
「それでは……『まどろみのむこうに』、お聴きください」
それならと、ベルとリリーとルークに吹いてあげたソロコンテストの曲を選んでみる。昨日ばっちり練習したから今日は大丈夫でしょ!
私は息を吐ききった後、すばやく息を吸ってサックスに息を入れる。目の前の男性だけじゃなくて、もっと遠くまで音を乗せて。
これでもソロコン、三位だったんだからね!
吹き終わると男性は緑色の袋を取り出す。
「サクソフォンという楽器にも、あなたの奏でる音色にも心が踊りました。これはどこに入れればいいですか?」
「じゃあこのケースの中に」
「この楽器を買い取った時と同じ金額と……演奏料の銀貨五枚」
ジャラジャラと重たそうな絹の袋と、緑の袋から取り出した銀貨をケースの中に入れてくれた。
「えっ、こんなに!?」
私は屈んで絹の袋の中身を確認する。そこには目がくらむほどの金貨と、その中に混じって数枚の銀貨が入っていた。
「誰かに盗られないようにだけは気をつけてくださいね」
「は、はい」
投げ銭第一号はまさかの、ベルが私の相棒を売った人だったのである。金額にして、金貨五十枚と銀貨七枚。投げ銭の分が銀貨五枚。
最初はどんな人かって思ったけど、まさかこんないい人だとは。本音は財産として、このサックスを持っておきたかったのだろう。だが強引に自分のものにしようとしなかった。
サックスを返してくれた上に、売った時のお金までくれたんだよ! 神じゃん!
私はその後も二時間ほど噴水広場に居座り、四人から銀貨や銅貨を投げてもらったのだった。
初日から収穫やばすぎだって!
「市場の辺りはにぎわっていると思うねぇ。色々な人に聴いてもらいたいならここがいいよ」
地図を片手に、アルトサックスが入ったケース(かばん)を背中に、周りを見渡す。
まだ地図が読めるからいいけど……全部ヨーロッパみたいな建物ばっかだから見分けがつかないって! よく見れば『鍛冶屋』とか『青果店』とか『服屋』とか分かるんだけどね。
前世は建物の見た目で分かるやつも多いし、もっと目印になるような高い建物があったからね。
あんまりお店の近くじゃ迷惑だから、ちょっとひらけたところがいいな。
さっきからどこからかの視線が気になっている。
「ねぇ、何あの髪?」
「異国の人かしら?」
「それにしても、ピンク色の髪なんて見たことないな」
前世で鍛えられてしまった地獄耳が、今世でも残ってしまっているようだ。
私だって染めてもいいなら茶髪くらいにしたいよ! でも、そういうのができるところはないらしいし……。
どこから見ても目立ってしまうこの髪色。しかし私はそれを逆手に取ろうとしている!
「ここ、めっちゃいいじゃん!」
市場から少し離れたところに大きな噴水を見つけた。噴水を原点に、放射状に伸びた道からたくさんの人がぞろぞろと歩いてきている。
私が今歩いてきた市場への道や、王城に続く道、富裕層が住む南地区への道など、全部で五本の道路が交わる場所なのだ。
「ベルぅ、こういうところ教えてくれればいいのに」
待ち合わせの場所として使われているらしく、数分人間観察をしていればすぐに分かった。
要は、たくさん人が集まる場所である。
私はケースを地面に下ろしてサックスを組み立てると、噴水の縁に座った。音出し(ウォーミングアップ)をして楽器を温め、指をほぐす。
そしてベルの家から借りてきた看板に、「演奏がいいなと思ったら ぜひお金を入れてください!」と書いてみた。
ベルとルークによると、ストリートミュージシャンを見たことがないらしい。それなら投げ銭の文化もないだろうし、楽器のケースを投げ銭入れとして使うことも知らないよね?
そもそも音楽をたしなむことなど、上流階級がするものなのだそう。確かに街中に音楽はなく、人が生み出す雑踏しかなかった。
「よし……準備完了」
私はスクッと立ち上がると、コンクールの本番前さながらの緊張を飲みこみ、サックスを奏で始めた。
足音と話し声でごった返す噴水広場に、ある一つの旋律が響き渡る。
人の声にも似た、きらびやかでもあり艶やかな音色。
その場所にいる誰もが、未知の音楽を耳にした。
「何あれ? 楽器よね?」
「こんなところで吹いていいのか?」
「あの金色のやつ見たことないぞ」
興味を示すものの、こちらを振り向いては「ふぅん」と言って去っていく。
思っていたものより厳しい世界だ。
ストリートミュージシャンってなかなかお金入らないらしいけど、ホントにそうだった。コンクールの時、私のソロを審査員にほめてもらったけど、あれは私が高校生だからかな……。
でも、ベルと約束しちゃったし。やらねば。
二曲まるまる吹き終わり、三曲目に入ろうとしたその時。
パチパチパチ……
私の前を素通りせずピタッと足を止め、拍手をする少し裕福そうな男性が一人。
「その楽器、なんて言う楽器ですか?」
「サクソフォンです」
「それ、昨日までうちにあったやつじゃ……?」
昨日までうちにあった? だってサックスってこの世界じゃ珍しいのにうちにあったって…………あ。
「もしかして、これを売ったベルのお相手ですか?」
「ベル……イザベルか。そうです。珍しいと思って博覧会に出そうとしていたのに、昨日男が返してほしいって取りに来て」
これって……返してくれってこと? そうは言ってこないけど、そんな感じだよね。
黙ったまま、その男性は私の相棒を凝視している。
「えっと……何か?」
「これを吹く人がいないなら私が預かろうと思ったのですが、いるので大丈夫ですね。もうちょっとサクソフォンの音を聴いてから行こう」
そう言うと数歩下がって腕を組んだ。
半ば「やれ」と言われているこの状況。ソロコンテストを思い出させる。
「それでは……『まどろみのむこうに』、お聴きください」
それならと、ベルとリリーとルークに吹いてあげたソロコンテストの曲を選んでみる。昨日ばっちり練習したから今日は大丈夫でしょ!
私は息を吐ききった後、すばやく息を吸ってサックスに息を入れる。目の前の男性だけじゃなくて、もっと遠くまで音を乗せて。
これでもソロコン、三位だったんだからね!
吹き終わると男性は緑色の袋を取り出す。
「サクソフォンという楽器にも、あなたの奏でる音色にも心が踊りました。これはどこに入れればいいですか?」
「じゃあこのケースの中に」
「この楽器を買い取った時と同じ金額と……演奏料の銀貨五枚」
ジャラジャラと重たそうな絹の袋と、緑の袋から取り出した銀貨をケースの中に入れてくれた。
「えっ、こんなに!?」
私は屈んで絹の袋の中身を確認する。そこには目がくらむほどの金貨と、その中に混じって数枚の銀貨が入っていた。
「誰かに盗られないようにだけは気をつけてくださいね」
「は、はい」
投げ銭第一号はまさかの、ベルが私の相棒を売った人だったのである。金額にして、金貨五十枚と銀貨七枚。投げ銭の分が銀貨五枚。
最初はどんな人かって思ったけど、まさかこんないい人だとは。本音は財産として、このサックスを持っておきたかったのだろう。だが強引に自分のものにしようとしなかった。
サックスを返してくれた上に、売った時のお金までくれたんだよ! 神じゃん!
私はその後も二時間ほど噴水広場に居座り、四人から銀貨や銅貨を投げてもらったのだった。
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