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第一章 現役女子高生、異世界で超能力に目覚める
12:大仕事!? 国王の病気を治して!
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翌日、起きるとすぐに、夜なべをしたであろうベルのもとに走っていった。
「なんとか、間に合ったようだねぇ。どうだい?」
そこには、シワひとつついていない、オーダーメイドのスーツができあがっていた。自分の体がそのまま収まりそうな、見るからにジャストサイズである。
「着てみてもいい?」
「ああ、どうぞどうぞ」
どこもダボダボとしたところはない。さすがベルだなぁ。
十八歳のはずなのに、髪が短いせいもあって、どこかオトナな雰囲気をまとっている。
「お姉ちゃん、すっごくかっこいい!」
「そう? かっこいい?」
「なんかね、かっこいいの!」
リリーの語彙力がないせいだと思うが、それでも精一杯褒めてくれていることは間違いない。
「すごい! ありがとう、ベル!」
「喜んでもらえてよかったよかった。やりがいがあるわい」
ベルの目元のシワがくしゃっと増え、口元がゆるむ。
私はスーツを脱ぐと、木のハンガーに優しくかけておいた。
お日様がもう少しで一番高いところに昇るころ。そろそろ行く準備っと。
さっきのスーツを着て……そうだ、ファンの人からもらったあの白いカチューシャして……この間こっそり買った、大きなリングのイヤリングもして……できた。
あとは昨日もらった『入城許可証』とサックスを持って……。
「いってきまーす!」
「はい、いってらっしゃい」「お姉ちゃん、頑張ってねー!」
ベルもリリーもご機嫌そうに送り出してくれる。
よ~し、頑張っちゃうぞ!!
一旦いつもの噴水広場を通り、北の方に続く王城への道を歩いていく。広場からも見えるほどの大きくゴツい城だが、その入口が見えてきた。
「おぉ……着いた」
何となく服装に乱れがないか確認し、胸ポケットに入れた『入城許可証』を取り出す。
ここで出すんだよね?
槍を十時に重ねる門番に、それを見せる。
「確認いたしました。どうぞお入りください」
城壁のほうよりかは気品がある門番を通過して、私は緊張しながら広い庭のど真ん中を歩いていく。
もし私がいい身分だったら、家まで迎えに来てくれて、この道も一人で歩くことはないんだろうなぁ。
あくまでも扱いは平民ってことか。
重厚なドアを自分で開けると、昨日声をかけてきた上から目線の側近のトリスタンが出迎えてくれた。
「ようこそ」
「おじゃまします」
「ようこそ『お越しくださいました』」くらい言ってもいいんじゃないかと心の中では思いつつも、前世の吹奏楽部で鍛えた営業スマイルで怒りを押し殺す。
階段を上って四階まで行くと、きらびやかな扉の前でトリスタンが足を止める。
「陛下がおやすみになっているのはここだ」
コンコンコン
「失礼いたします。例の者を連れてまいりました」
さすがに国王の前となると、私よりはるかに丁寧で柔らかい言い方になる。うわぁ、感じわるっ!
私も「失礼します」と学校の職員室ぶりのワードを口にすると、国王の部屋に踏みこんだ。
重い病気って、どれくらい悪いんだろ? 別に私は医者じゃないから、何の病気か言われたところで分かるわけないし。そうはいっても国王のことだからぷくぷくに肥えてるでしょ?
「おぉ、女か!」
まさかのこれが、私が初めて聞いた国王の第一声だった。天蓋つきベッドなので、姿はまだ見えない。
「お初にお目にかかります。そこの噴水広場で毎日楽器を吹いている、グローリア・プレノートと申します」
「……プレノート家か。だが……娘はここまで大きくないはずだが……」
「あ、養子です。ただ拾ってもらっただけなので」
さすがは国王らしい尊厳を感じる声をしているが、やはり弱々しくも感じる。
「陛下は何を患われているのですか」
「胃の病だ。薬をお飲みになっても、お食べになるものを変えても治りやしない。どの医者でもお手上げだ」
手帳を見ながらトリスタンが説明する。
「症状は胃痛、食欲不振、胸やけ、体重の急な減少、便に血が混じる、だな」
聞いたことしかないけど、体重が急に減るって……ガンじゃない?
何回かうなずいて分かったフリをしておく。どれくらい痩せてるんだろ?
「なるほど、お顔を拝見してもよろしいでしょうか」
「どうぞ、こちらに」
国王が自ら、私を招き寄せた。
「!」
確かに、(素人から見ても)異常だった。
ほほは痩せこけ、私に伸ばす手も華奢というよりガリガリである。そのネグリジェを着ていなければ、国王と言われても貧相なイメージしか持たないだろう。
「こんな姿を民にさらすわけにはいくまい……」
弱音を吐く国王に、私はすでにあることを忘れていた。
この目の前の人こそが、農民に圧力をかけている張本人だということを。
それどころか、痛みに耐えきて辛かっただろうという『同情』の想いが働いてしまったのである。
楽器をさっと組み立てて、国王にまた向き直る。
「分かりました。全力をつくします」
「よろしく頼むぞ……」
医者でも治せなかったものを、私に治せと。コンクールの時よりプレッシャーなんですけど!
治らなかったらどうしようと不安を抱きつつも、私はマウスピースをくわえた。
透き通る小川のような音色が部屋中に響き渡った。
さっきから湧き上がってくる『同情』の想いを、音に乗せていく。もしかしたら、私が死んだ時に感じたあの痛みと同じくらいのものを、耐えているのかもしれない。
私にかかってるんだ。
「おぉ……」
音楽の教養はあるであろう国王も、思わずため息が出る。
痛みはおさまり、むしばまれたところは癒され――
一曲まるまる吹き終わった。
「……ご気分はいかがですか」
私が問いかけても、国王は胃のあたりに手を当てて呆然としている。そして、ささやくような声で言った。
「痛くないぞ……苦しくないぞ……」
「それならよかった――」
「なんなんだ、これはぁぁぁぁっ!!」
歓喜のあまり、両手を広げて大声で叫ぶ国王。
うわわわっ、急に大声出されたら心臓に悪いって!
「ど、ど、どうなっているんだ!?」
「私自身もよく分かっていないんですけど、感情をこめて演奏すると、どうやら病気やケガを治せるみたいで……」
「でかしたぁぁっ!! そなたは私の命の恩人だぁっ!!」
涙目で勝手に私の手を取って握手をする国王。
ちょっと、演奏家は手が大事なんだからね! 急には危ないって!
「謝礼は後にたんまりと差し上げよう。あと、その面白い楽器、私も気に入ったぞ」
「あ、ありがとうございます」
元気になったとたん、超ハイテンションでしゃべりつづける国王に、私は混乱しつつも営業スマイルで乗り切る。
なんか……私はただ演奏しただけなのに……すごいことになっちゃったなぁ。
まぁ、国王の前で演奏できるなんてそうそうない機会だし、喜んでもらえてよかった!
「なんとか、間に合ったようだねぇ。どうだい?」
そこには、シワひとつついていない、オーダーメイドのスーツができあがっていた。自分の体がそのまま収まりそうな、見るからにジャストサイズである。
「着てみてもいい?」
「ああ、どうぞどうぞ」
どこもダボダボとしたところはない。さすがベルだなぁ。
十八歳のはずなのに、髪が短いせいもあって、どこかオトナな雰囲気をまとっている。
「お姉ちゃん、すっごくかっこいい!」
「そう? かっこいい?」
「なんかね、かっこいいの!」
リリーの語彙力がないせいだと思うが、それでも精一杯褒めてくれていることは間違いない。
「すごい! ありがとう、ベル!」
「喜んでもらえてよかったよかった。やりがいがあるわい」
ベルの目元のシワがくしゃっと増え、口元がゆるむ。
私はスーツを脱ぐと、木のハンガーに優しくかけておいた。
お日様がもう少しで一番高いところに昇るころ。そろそろ行く準備っと。
さっきのスーツを着て……そうだ、ファンの人からもらったあの白いカチューシャして……この間こっそり買った、大きなリングのイヤリングもして……できた。
あとは昨日もらった『入城許可証』とサックスを持って……。
「いってきまーす!」
「はい、いってらっしゃい」「お姉ちゃん、頑張ってねー!」
ベルもリリーもご機嫌そうに送り出してくれる。
よ~し、頑張っちゃうぞ!!
一旦いつもの噴水広場を通り、北の方に続く王城への道を歩いていく。広場からも見えるほどの大きくゴツい城だが、その入口が見えてきた。
「おぉ……着いた」
何となく服装に乱れがないか確認し、胸ポケットに入れた『入城許可証』を取り出す。
ここで出すんだよね?
槍を十時に重ねる門番に、それを見せる。
「確認いたしました。どうぞお入りください」
城壁のほうよりかは気品がある門番を通過して、私は緊張しながら広い庭のど真ん中を歩いていく。
もし私がいい身分だったら、家まで迎えに来てくれて、この道も一人で歩くことはないんだろうなぁ。
あくまでも扱いは平民ってことか。
重厚なドアを自分で開けると、昨日声をかけてきた上から目線の側近のトリスタンが出迎えてくれた。
「ようこそ」
「おじゃまします」
「ようこそ『お越しくださいました』」くらい言ってもいいんじゃないかと心の中では思いつつも、前世の吹奏楽部で鍛えた営業スマイルで怒りを押し殺す。
階段を上って四階まで行くと、きらびやかな扉の前でトリスタンが足を止める。
「陛下がおやすみになっているのはここだ」
コンコンコン
「失礼いたします。例の者を連れてまいりました」
さすがに国王の前となると、私よりはるかに丁寧で柔らかい言い方になる。うわぁ、感じわるっ!
私も「失礼します」と学校の職員室ぶりのワードを口にすると、国王の部屋に踏みこんだ。
重い病気って、どれくらい悪いんだろ? 別に私は医者じゃないから、何の病気か言われたところで分かるわけないし。そうはいっても国王のことだからぷくぷくに肥えてるでしょ?
「おぉ、女か!」
まさかのこれが、私が初めて聞いた国王の第一声だった。天蓋つきベッドなので、姿はまだ見えない。
「お初にお目にかかります。そこの噴水広場で毎日楽器を吹いている、グローリア・プレノートと申します」
「……プレノート家か。だが……娘はここまで大きくないはずだが……」
「あ、養子です。ただ拾ってもらっただけなので」
さすがは国王らしい尊厳を感じる声をしているが、やはり弱々しくも感じる。
「陛下は何を患われているのですか」
「胃の病だ。薬をお飲みになっても、お食べになるものを変えても治りやしない。どの医者でもお手上げだ」
手帳を見ながらトリスタンが説明する。
「症状は胃痛、食欲不振、胸やけ、体重の急な減少、便に血が混じる、だな」
聞いたことしかないけど、体重が急に減るって……ガンじゃない?
何回かうなずいて分かったフリをしておく。どれくらい痩せてるんだろ?
「なるほど、お顔を拝見してもよろしいでしょうか」
「どうぞ、こちらに」
国王が自ら、私を招き寄せた。
「!」
確かに、(素人から見ても)異常だった。
ほほは痩せこけ、私に伸ばす手も華奢というよりガリガリである。そのネグリジェを着ていなければ、国王と言われても貧相なイメージしか持たないだろう。
「こんな姿を民にさらすわけにはいくまい……」
弱音を吐く国王に、私はすでにあることを忘れていた。
この目の前の人こそが、農民に圧力をかけている張本人だということを。
それどころか、痛みに耐えきて辛かっただろうという『同情』の想いが働いてしまったのである。
楽器をさっと組み立てて、国王にまた向き直る。
「分かりました。全力をつくします」
「よろしく頼むぞ……」
医者でも治せなかったものを、私に治せと。コンクールの時よりプレッシャーなんですけど!
治らなかったらどうしようと不安を抱きつつも、私はマウスピースをくわえた。
透き通る小川のような音色が部屋中に響き渡った。
さっきから湧き上がってくる『同情』の想いを、音に乗せていく。もしかしたら、私が死んだ時に感じたあの痛みと同じくらいのものを、耐えているのかもしれない。
私にかかってるんだ。
「おぉ……」
音楽の教養はあるであろう国王も、思わずため息が出る。
痛みはおさまり、むしばまれたところは癒され――
一曲まるまる吹き終わった。
「……ご気分はいかがですか」
私が問いかけても、国王は胃のあたりに手を当てて呆然としている。そして、ささやくような声で言った。
「痛くないぞ……苦しくないぞ……」
「それならよかった――」
「なんなんだ、これはぁぁぁぁっ!!」
歓喜のあまり、両手を広げて大声で叫ぶ国王。
うわわわっ、急に大声出されたら心臓に悪いって!
「ど、ど、どうなっているんだ!?」
「私自身もよく分かっていないんですけど、感情をこめて演奏すると、どうやら病気やケガを治せるみたいで……」
「でかしたぁぁっ!! そなたは私の命の恩人だぁっ!!」
涙目で勝手に私の手を取って握手をする国王。
ちょっと、演奏家は手が大事なんだからね! 急には危ないって!
「謝礼は後にたんまりと差し上げよう。あと、その面白い楽器、私も気に入ったぞ」
「あ、ありがとうございます」
元気になったとたん、超ハイテンションでしゃべりつづける国王に、私は混乱しつつも営業スマイルで乗り切る。
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