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第三章 風の鍵の乙女
04.これが噂の魔女裁判。
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やっぱりだ。やられた。
異世界に放り出された。
途中からいやな予感はしていた。あり得ないほど深いほら穴。まあなんてベタな場所なんでしょう? それにまんまとハマってしまった自分が腹立たしい。
念のため穴を戻ってみたが、やはり元の場所には戻れなかった。先ほどの深さはかけらもなく、あっさりと湿った土の壁に突き当たった。
つまり、ぼくらはまたも着の身着のままで、べつの世界に飛ばされてしまったというわけだ。
これには軽くへこんだ。馬車にはいろいろなものが積んであった。水や食料、貨幣やその他の生活必需品、あるいは魔法具やまじないの小道具、武器。
それらを何一つ持ってこられなかった。今は水筒すら持っていない。
(困ったな)
当初の探し物、ディベリアと司祭さまも一向に見つからなかった。元の世界に戻ったか、それとも先にあの街に降りたか。前者であることを願うばかりだが。
失意にうちひしがれながら、ぼくは街を見やった。
街は、ごく大ざっぱに言ってしまえば、「洋風」、ヨーロッパの雰囲気を感じた。石造りの建物がぎっしりと並び、石畳の道がその間をぬって縦横に走っている。中世、いや近世か。
産業革命前後の、工業化著しい活気がうかがえる。だが、どうにも我慢できない違和感があった。
「ものすごく空気が悪いですね」
サキが声をひそめて言い、クルルはだまらず咳込んだ。
「なにこれ。ものすごく喉が痛い。目も……しみるわ」
要するに、公害だった。
空気はかすんで視界が悪い。ゴミか、埃か、化学物質か。
喉が、いがいがする。これはマスクがないと、かなりつらい。いや、命があぶないレベルだ。
街をよく観察してみると、あちこちに工場があるのか、煙突が立ち並び、黒い煙をもくもくと吐いている。おそらく石炭をふんだんに使っているのだろう。そして粉塵は捨て放題だ。
(こいつは参ったな)
しかし、この地でしばらくは過ごさなければならないのだろう。いやだとばかりも言っていられなかった。ぼくはサキとクルルを促して、街へ行ってみることにした。
「これは、何かのエレメントが足りないせいなのかい?」
ぼくは鴉――ナユタに訊いてみた。
「その通りだよ。風のエレメントが欠けているんだ」
なるほど、それで汚れた空気が流れていかず、よどんでいるわけか。ことによると、ヒートアイランド現象なども起きているかも知れない。
街にはすぐに到着した。
けっこうな数の人がせわしなく行き交っている。人種はアングロサクソン風が多いか。魔族や獣人、エルフのような種族は今のところ見当たらない。
前の世界、アンカスター国より、文明はかなり進んでいるようだ。これはかなり近代的な生活が期待できるかもしれない。
+ + + + +
そして期待を裏切らず、ぼくらは牢屋にぶちこまれていた。
場所は教会の地下。明日にも宗教裁判にかけられる予定だ。
「まったく。いくらよそ者だからって、いきなり牢に閉じ込める?」
憤懣やるかたないといったクルルのとなりで、サキも一緒に怒っている。
「まったくです。人の話を聞きもしないなんて!」
ぼくは怒る気にもなれず、苦笑した。
ぼくの風体は、元の世界のシャツとジーンズに、上からクルルの世界の上着を被っている。この世界の風俗風習からすればかなり異質な、見るからに怪しい異邦人だ。
そして両脇に控えるは。
左側には肩に鴉をとまらせた、黒髪黒目も麗しいミステリアスな黒衣の『魔女』。
右側には首に枷をはめられた、猫耳猫目が印象に残る精悍な美少女の『使い魔』。
ここまで型通りに異端の魔導士を再現して見せて、異端審問官が引っかかってくれなかったら、そっちの方ががっかりする。ぜひとも知力のかぎりを尽くして、ぼくらを吊し上げてもらいたい、などと自嘲気味に笑うぼくだった。
もっとも、サキとクルルが本気で暴れたら、どれほどの捕吏だろうと余裕で返り討ちにできる。
しかし、ただやっつければいいというものでもない。この世界で生きていくなら、この世界の助けなしにはやっていけない。食べる物や寝るところさえ、今のぼくらにはない。
暴れるなら、彼らに感謝される形で力を使い、報酬を手に入れないと。
とりあえず今夜は、食べ物と寝る場所は確保できた。また牢屋というのが不本意だけれど、ぜいたくを言えばきりがない。
宗教裁判かあ。どうやってクリアしよう?
+ + + + +
ぼくらの前には、審問官がずらりと並んで座っている。誤解を承知で言うなら、みんな目をきらきらと輝かせている。
それはそうだろう。どうみても魔女、本物の魔女。それを自らの信じる正義によって裁くことができる。こんなにやりがいのある場面は、なかなかないだろう。おそらく審問官の立候補が殺到したものと思われる。
後ろにはたくさんの聴衆。こちらも興味津々、怖いもの見たさで目を輝かせている。
こちらもことによると抽選とか?
有名人の裁判の傍聴席かよ。
まあ娯楽には飢えていそうだからなあ。
この世界に魔法があるのか、ないのか、それはまだ判断がつかない。もっとも仮にあったとしても、サキとクルルの魔力は別格なので、やはり異端には違いないのだが。
審議は、正直にいうとぼくらをまったく必要としていなかった。ぼくらを置き去りに弁論が進み、特に弁護人がいて反論を述べることもなく、順調に結論へ向けて進んでいった。
「最後に被告人。なにか言いたいことはあるか?」
もう最後かよ。べつにぼくら要らないじゃないの。
かと言って何も言わないのもしゃくだったので、ちょっと皮肉を言ってみることにする。
「ええと、あなた方の神は偉大なんですよね?」
「その通りだ」
「その神さまに、ぼくらが帰依したいと言ったら受け入れてくださいますかね?」
「そのための審議を現在行っている」
「なんだ、結局殺す気なんだ。神さまも存外器量が小さいですね」
予想通り、怒りに触れた。
そもそも器量が小さいのは神さまじゃなくて、こいつらなんだけどね。
「ぼくは異端の者だから処断されるのは仕方ないとして」
ぼくは両側の少女ふたりを指して言った。
「その者に使役されていた哀れな子羊たちを救ってやろうという度量はありませんかね? 神さま?」
「うるさい! みだりに神の名を口にするでない! きさま神を愚弄するか!」
まあ、こんなものか。
状況が変わるとは思っていなかったので、現状はこれで満足。だけどこの後どうしよう。
サキとクルルの力を見せつけて、神の御業と言いくるめるか? 神の御使いという肩書が手に入ったなら、後々すごくやりやすそうだけど。
ほどなく、判決の時間となった。
魔女であるサキは、聖なる火によって浄化し、神の御許に返すため、火刑。
「笑止、なのです」
サキはうすく笑った。
「あなたがたの火でわたしを焼き尽くせるものか、試してみるとよいのです」
使い魔であるクルルは、神の御心に逆らうものであるか審判するために水の試練。
つまり、水に沈めて浮かんで来れば魔女であるから極刑、そのまま沈めば身の潔白は証明されるが溺死、という、どちらに転んでも最初から生かす気のない判決である。
「へえ、おもしろい」
クルルは不敵に笑った。
「このあたしに水責めかい? せいぜい頑張ってみることだね」
ああ、かわいそうに。
この後の教会関係者の驚嘆と悲嘆を思うと、ぼくはわくわくが抑えられなかった。
異世界に放り出された。
途中からいやな予感はしていた。あり得ないほど深いほら穴。まあなんてベタな場所なんでしょう? それにまんまとハマってしまった自分が腹立たしい。
念のため穴を戻ってみたが、やはり元の場所には戻れなかった。先ほどの深さはかけらもなく、あっさりと湿った土の壁に突き当たった。
つまり、ぼくらはまたも着の身着のままで、べつの世界に飛ばされてしまったというわけだ。
これには軽くへこんだ。馬車にはいろいろなものが積んであった。水や食料、貨幣やその他の生活必需品、あるいは魔法具やまじないの小道具、武器。
それらを何一つ持ってこられなかった。今は水筒すら持っていない。
(困ったな)
当初の探し物、ディベリアと司祭さまも一向に見つからなかった。元の世界に戻ったか、それとも先にあの街に降りたか。前者であることを願うばかりだが。
失意にうちひしがれながら、ぼくは街を見やった。
街は、ごく大ざっぱに言ってしまえば、「洋風」、ヨーロッパの雰囲気を感じた。石造りの建物がぎっしりと並び、石畳の道がその間をぬって縦横に走っている。中世、いや近世か。
産業革命前後の、工業化著しい活気がうかがえる。だが、どうにも我慢できない違和感があった。
「ものすごく空気が悪いですね」
サキが声をひそめて言い、クルルはだまらず咳込んだ。
「なにこれ。ものすごく喉が痛い。目も……しみるわ」
要するに、公害だった。
空気はかすんで視界が悪い。ゴミか、埃か、化学物質か。
喉が、いがいがする。これはマスクがないと、かなりつらい。いや、命があぶないレベルだ。
街をよく観察してみると、あちこちに工場があるのか、煙突が立ち並び、黒い煙をもくもくと吐いている。おそらく石炭をふんだんに使っているのだろう。そして粉塵は捨て放題だ。
(こいつは参ったな)
しかし、この地でしばらくは過ごさなければならないのだろう。いやだとばかりも言っていられなかった。ぼくはサキとクルルを促して、街へ行ってみることにした。
「これは、何かのエレメントが足りないせいなのかい?」
ぼくは鴉――ナユタに訊いてみた。
「その通りだよ。風のエレメントが欠けているんだ」
なるほど、それで汚れた空気が流れていかず、よどんでいるわけか。ことによると、ヒートアイランド現象なども起きているかも知れない。
街にはすぐに到着した。
けっこうな数の人がせわしなく行き交っている。人種はアングロサクソン風が多いか。魔族や獣人、エルフのような種族は今のところ見当たらない。
前の世界、アンカスター国より、文明はかなり進んでいるようだ。これはかなり近代的な生活が期待できるかもしれない。
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そして期待を裏切らず、ぼくらは牢屋にぶちこまれていた。
場所は教会の地下。明日にも宗教裁判にかけられる予定だ。
「まったく。いくらよそ者だからって、いきなり牢に閉じ込める?」
憤懣やるかたないといったクルルのとなりで、サキも一緒に怒っている。
「まったくです。人の話を聞きもしないなんて!」
ぼくは怒る気にもなれず、苦笑した。
ぼくの風体は、元の世界のシャツとジーンズに、上からクルルの世界の上着を被っている。この世界の風俗風習からすればかなり異質な、見るからに怪しい異邦人だ。
そして両脇に控えるは。
左側には肩に鴉をとまらせた、黒髪黒目も麗しいミステリアスな黒衣の『魔女』。
右側には首に枷をはめられた、猫耳猫目が印象に残る精悍な美少女の『使い魔』。
ここまで型通りに異端の魔導士を再現して見せて、異端審問官が引っかかってくれなかったら、そっちの方ががっかりする。ぜひとも知力のかぎりを尽くして、ぼくらを吊し上げてもらいたい、などと自嘲気味に笑うぼくだった。
もっとも、サキとクルルが本気で暴れたら、どれほどの捕吏だろうと余裕で返り討ちにできる。
しかし、ただやっつければいいというものでもない。この世界で生きていくなら、この世界の助けなしにはやっていけない。食べる物や寝るところさえ、今のぼくらにはない。
暴れるなら、彼らに感謝される形で力を使い、報酬を手に入れないと。
とりあえず今夜は、食べ物と寝る場所は確保できた。また牢屋というのが不本意だけれど、ぜいたくを言えばきりがない。
宗教裁判かあ。どうやってクリアしよう?
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ぼくらの前には、審問官がずらりと並んで座っている。誤解を承知で言うなら、みんな目をきらきらと輝かせている。
それはそうだろう。どうみても魔女、本物の魔女。それを自らの信じる正義によって裁くことができる。こんなにやりがいのある場面は、なかなかないだろう。おそらく審問官の立候補が殺到したものと思われる。
後ろにはたくさんの聴衆。こちらも興味津々、怖いもの見たさで目を輝かせている。
こちらもことによると抽選とか?
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まあ娯楽には飢えていそうだからなあ。
この世界に魔法があるのか、ないのか、それはまだ判断がつかない。もっとも仮にあったとしても、サキとクルルの魔力は別格なので、やはり異端には違いないのだが。
審議は、正直にいうとぼくらをまったく必要としていなかった。ぼくらを置き去りに弁論が進み、特に弁護人がいて反論を述べることもなく、順調に結論へ向けて進んでいった。
「最後に被告人。なにか言いたいことはあるか?」
もう最後かよ。べつにぼくら要らないじゃないの。
かと言って何も言わないのもしゃくだったので、ちょっと皮肉を言ってみることにする。
「ええと、あなた方の神は偉大なんですよね?」
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そもそも器量が小さいのは神さまじゃなくて、こいつらなんだけどね。
「ぼくは異端の者だから処断されるのは仕方ないとして」
ぼくは両側の少女ふたりを指して言った。
「その者に使役されていた哀れな子羊たちを救ってやろうという度量はありませんかね? 神さま?」
「うるさい! みだりに神の名を口にするでない! きさま神を愚弄するか!」
まあ、こんなものか。
状況が変わるとは思っていなかったので、現状はこれで満足。だけどこの後どうしよう。
サキとクルルの力を見せつけて、神の御業と言いくるめるか? 神の御使いという肩書が手に入ったなら、後々すごくやりやすそうだけど。
ほどなく、判決の時間となった。
魔女であるサキは、聖なる火によって浄化し、神の御許に返すため、火刑。
「笑止、なのです」
サキはうすく笑った。
「あなたがたの火でわたしを焼き尽くせるものか、試してみるとよいのです」
使い魔であるクルルは、神の御心に逆らうものであるか審判するために水の試練。
つまり、水に沈めて浮かんで来れば魔女であるから極刑、そのまま沈めば身の潔白は証明されるが溺死、という、どちらに転んでも最初から生かす気のない判決である。
「へえ、おもしろい」
クルルは不敵に笑った。
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