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2・依頼人④小野寺瑛二

スイートルーム3

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ケントさんは、俺のビチョビチョの髪をタオルで拭いてくれながら、ケントさんの知り得た情報を話してくれた。

以下、コドアラノートに書き綴る。



11月16日(土)ケントさんより


11月8日(金)東雲病院にて
馬場園みなみ(24)は外来看護師をしていたときに、患者から回収した残薬(飲み忘れなど)を利用し、クラブXにおいて転売をしていた。
購入者の一人が、家族関係に悩んでいた小野寺楓(20)。大量に服薬したことにより、病院搬送される。姉の小野寺桜が薬の販売者を探し出そうと、クラブXにやってきたことで、発覚を恐れた馬場園は偽の情報を暴露サイトに投稿した。そして、同僚の谷口ミカサ(24)にも嘘の噂を流す。谷口と小野寺桜が高校の同級生であることを知っていたため、噂が桜に届くだろうと予想していた。
なお、訪問看護ステーションに異動後は、訪問する患者さん宅から薬を集めていた模様。
薬局長は別口で転売の噂を聞きつけ、薬局から盗まれてるのか、過剰に処方されているかだと推測していた。本日馬場園が谷口に会いに来た際、外来の残薬回収ボックスから根こそぎ盗ったため(今までは少量ずつだった?)、犯人を特定できた。

「と、こんな感じってことですね」
俺はコドアラノートを閉じた。

俺はケントさんに予備のシャツを借り、上だけ着替えた。下着が汚れてしまったので、仕方なく下半身にバスタオルを巻いたままにした。
ケントさんは変わらずバスタオルだけだ。
俺は、目のやり場に困った。


「に、しても。谷口さんと話してたら薬局長もやってきて、外来の残薬回収ボックスが減ってて、その日馬場園さんが薬盗みに来てたなんて、偶然がすぎやしませんかっ」

「谷口さんと薬局長と3人で話を擦り合わせたら、答えにたどり着いただけだよ」

「うわー……そんでその日残業してた北園さんともおしゃべりしたんですね。情報収集めちゃくちゃ得意じゃないですか。俺の得意技だったのに」
東雲病院の受付で『見た』情報。それで俺はケントさんの偽名や谷口さんのシフト、志村さんの訪問先を知り得たわけだが。ケントさんは少し話しただけで犯人まで捕まえてしまった。なんたる格差。西の高校生探偵に謝れ俺。


「そういや、お前、カメラアイなんだな」
ビンゴゲームでの出来事を、ケントさんはみていたようだ。


「あー。そう言うみたいですね。調べたことはあるんです。でも、俺は思い出せないこともあるんで、まあカメラアイの劣化版、かな。中2病みたいですみません」
俺は弄ばれた仕返しに、自嘲気味に言ってやった。
するとケントさんは意外にも、素直に謝ってくれた。
「……この前は悪かった。あまねを傷つけようと思ったわけじゃないんだ」

「い、意地悪く言ってすみません、嘘です。気にしてないです」
俺は慌てて訂正する。

「……あのときは、もう犯人は分かっていたから、素人が動くより警察にまかせようと判断したんだ」


あのとき。


あのときは、一ノ瀬が『ケントさんが嫉妬しているんだ』と言った。

「一ノ瀬が言ってたんですけど……ケントさん、あの、」


俺のこと好きなんですか、と聞けばいいのに、俺は口をつぐんだ。意を決して聞いた朝、オモチャと言われたのを思い出したからだ。



拒絶されるのは、怖い。



とても聞けなかった。



「あと、一ノ瀬くんが仲良さそうに探偵ごっこして、嫉妬した」

「!!」
ケントさんが素直に、えらく正直に話してくれている。俺は驚いて声が出なかった。

「オレがはっきり言わなかったのが悪かったな。高校生のあまねに、こんな年上のオレが気があるなんて言うと怖いかなと思って。cafeリコで会ったときから、好きになってたよ」

「……ッ」
こんなかっこよくて、素敵な人でも謙遜するのか。あきらかに俺の方が分不相応じゃないか。

「気になって、気になって、お前を家に連れて帰って……言葉より先に手を出してしまった。あまねにどう思ってるか聞かれたときも、……まあオレの態度で分かるだろうと思ってふざけてしまった。さっきも、好きすぎて、話す前にまた抱こうとした」

俺は、ケントさんの話を聞いて、力なく椅子に腰かけた。

「……」

「好きすぎて、抱きつぶしたくなる。俺の腕の中で喘ぐお前を見たい。そして、いっしょにごはん食べたり、出かけたり、少し意地悪もしたい。お前の、喜ぶ顔を見てオレも喜ぶのは、同情じゃない。愛情だ」

「……」
俺は、涙が溜まるのを感じた。

「あまねの、家庭環境とか……そういうバックグラウンドも含めてお前だろ。そういうあまねが、俺は好きなんだ。まっすぐで、きらきらして、ちょっと自分に自信がなくて、相手を思いやるところが、好きなんだ」


「迷惑じゃなかったですか」
溜まった涙が、頬をつたう。


「……俺……、ケントさんのこと、好きになって、いいんですか」



「ばかだな、オレ『が』、お前をドロドロに甘やかしたいんだよ」

俺は、ケントさんに抱きついた。

「あと、鈍感なとこも好きだよ」

ケントさんは頭を優しく撫でてくれた。

「……ごめんなさい……」





結城直哉さんのこと。

馬場園さんのこと。

俺は聞きたいことがたくさんあるのに、ケントさんからの告白を受けてその全てを放棄した。
そして、今ケントさんから愛情を感じる愛撫を受け、悶え、喘いでいる。

息を吐いても、吐いても心臓が高鳴って苦しい。

ローションを垂らされた後孔をケントさんがクチュクチュと刺激し、緩ませていく。性器は、先走りが止まらない。

トロトロと蜜を出し、苦しくて、気持ちよくて、嬉しくて、時おり意地悪く乳首を噛むケントさんが、愛おしい。舌を絡ませてケントさんの唾液を受け、唇を噛み、舐めて恍惚となる。

ケントさんが欲しい。もっともっと、俺にください━━━。



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