悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき

文字の大きさ
54 / 125
恋愛編

53

しおりを挟む
公務の合間にやっととれた休憩時間
アルベルトは積み上げられた封筒を前に、眉間に皺を寄せていた

「睨み付けていても減りませんよ」

涼しい顔で書類を確認しながら声をかけてくるのは皇太子付きの文官であるウェルシュ・クラヴァット
代々宰相を排出するクラヴァット伯爵家の長男であり、自分の乳母の息子でもある
本来なら乳兄弟が側近になるものなのだが、俺の乳兄弟は女だったため、変わりに7つ年上の兄であるウェルシュが側近になったのだ
物心ついたときには側にいたお目付け役なので気心知れた間柄だが、幼い頃の失敗も数多く知られているため必要以上に子ども扱いしてくるのが難点だ

「わかってる」
「お解りなら早く手を付けてください
あぁ、言っておきますが婚約者ができた以上、今までのようにすべて不参加にするわけにはいきませんからね」
「それもわかっているさ」

返事をし、ため息をつきながら休憩を切り上げ一番上の封筒に手を伸ばした

今俺の目の前に積み上げられているのはすべて社交界への招待状だ
ざっと見積もって数十はある
これでも俺のもとに来るまでに差出人や内容が吟味され、俺が直接返事をしなければならないと判断されたものばかりなのだから、全てあわせるとどれだけの数になるのやら・・・
恐ろしい話だ

招待状に目を通し、参加と不参加に振り分けていく
数枚振り分けて次の封筒を手にしたところでふと動きを止めた

手に取ったのは上質なクリーム色の封筒
学校に入学して以来、この季節になると毎年目にするものだ

裏返して印璽を確認しやはりと頷く
それは間違いなくアンバー王国王家からの…レオナルドからの誕生パーティーの招待状だった

さて、どうしたものか・・・

友人とはいえ、相手は他国の王族
正式に招待されたのならば外交もかねて多少の無理はしてでも参加するべき
それはわかっているのだが、どうしても気が乗らない
気が乗らない原因もわかっている
あいつの最近の言動のせいだ

最近のレオナルドは人の気分を逆なでするような言葉を使ったり、胡散臭げな笑みを浮かべたり…
そして何より、やけにセシリアに絡む

さりげなく触ったり、まるで口説くような発言をしてみたり…
並の令嬢であればすぐに恋に落ちてしまいそうな事ばかりしている
セシリアは今のところさらりと躱しているが、人の気持ちはいつどう変化するかわからない
せっかく恋心を自覚し、今は距離を縮めている最中
邪魔はされたくない

なので出来ることならあまりセシリアとレオナルドを会わせたくないのだが・・・

「・・・なぁ」
「なんでしょう」
「俺が参加するならもちろんセシルも参加になるよな?」
「当たり前でしょう
婚約者なんですから」

何を言っているんだといいたげな視線を向けられるが、気にせず続ける
こいつと話をする時にいちいちこの態度を気にしていては話が進まない

「レオナルドから誕生パーティーの招待状が来てるんだ」
「?毎年の事じゃないですか」
「そうだが…今までは一人で参加していただろ?」
「そうでしたね。まだ婚約者もいらっしゃいませんでしたし、あくまでご学友としての非公式な招待でしたから」
「今年は正式な招待らしい。印璽が押してある」
「そうですか
では正式にアンバー王国に訪問するよう予定を組まなくてはなりませんね」

そう言ってスケジュールを調整しだすウェルシュ
その姿をみながら質問をつづけた

「・・・今までのように一人で参加してもいいと思うか?」

そう尋ねると再び呆れたような視線を返された

「いい訳がないでしょう」
「…やっぱりそうか?」
「当たり前です
他の女性を伴うならともかく一人で参加はあり得ません
一国の皇太子がパートナーすら用意できないと思われては威信にかかわります」
「…他のパートナーか・・・」

会わせないためならその手もありか?
そう思って口にするとウェルシュが残念なやつを見るような目で俺を見てくる

「何を本気に・・・
もしかしてまたセシリア様と何かあったのですか?」
「いや、そうではないんだが…」
「それなら何故一人や他の女性と参加しようとなさるんですか」

問われて口ごもる
理由は明白
レオナルドとセシリアを合わせたくないからだ
だがそれを素直に言ってしまっては…

友人に嫉妬している器の小さなやつじゃないか・・・
ただでさえこいつにはセシリアとの間にあったことを知られた時も散々器が小さいと叱られたのに…

当時を思い出して眉をしかめる
本来なら不敬罪になりなねない言葉で叱られた
あれはもはや叱っているのではなく罵っているといった方が正しい
あれは二度とごめんだ
心が折れてしまう

「いや…特に理由はない」

誤魔化すようにそう告げるとウェルシュが片眉をあげた
本当かと問いた気な視線を投げかけた後、ため息をついて口を開く

「婚約破棄をする気がないのなら滅多なことは仰らないでください
セシリア様の立場がなくなってしまいますよ」
「…そうだな、今のは忘れてくれ」
「畏まりました
では、セシリア様に同行していただくように書状を出しておきますね」
「あぁ、頼んだ…」

書状を準備し始めたウェルシュをみてため息をつく

結局つれていくことになってしまった
まぁ…二人で会わせず自分がセシリアの側にいればいい話か

そう考え、気持ちを切り替え仕事を再開した
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと

淡麗 マナ
恋愛
2022/04/07 小説ホットランキング女性向け1位に入ることができました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。 第3回 一二三書房WEB小説大賞の最終選考作品です。(5,668作品のなかで45作品) ※コメント欄でネタバレしています。私のミスです。ネタバレしたくない方は読み終わったあとにコメントをご覧ください。 原因不明の病により、余命3ヶ月と診断された公爵令嬢のフェイト・アシュフォード。 よりによって今日は、王太子殿下とフェイトの婚約が発表されるパーティの日。 王太子殿下のことを考えれば、わたくしは身を引いたほうが良い。 どうやって婚約をお断りしようかと考えていると、王太子殿下の横には容姿端麗の女性が。逆に婚約破棄されて傷心するフェイト。 家に帰り、一冊の本をとりだす。それはフェイトが敬愛する、悪役令嬢とよばれた公爵令嬢ヴァイオレットが活躍する物語。そのなかに、【死ぬまでにしたい10のこと】を決める描写があり、フェイトはそれを真似してリストを作り、生きる指針とする。 1.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。 2.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。あえて人から嫌われることで、自分が死んだ時の悲しみを減らす。(これは実行できなくて、後で変更することになる) 3.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。 4.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。 5.お父様と弟の問題を解決する。 それと、目に入れても痛くない、白蛇のイタムの新しい飼い主を探さねばなりませんし、恋……というものもしてみたいし、矛盾していますけれど、友達も欲しい。etc. リストに従い、持ち前の執務能力、するどい観察眼を持って、人々の問題や悩みを解決していくフェイト。 ただし、悪役令嬢の振りをして、人から嫌われることは上手くいかない。逆に好かれてしまう! では、リストを変更しよう。わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらうのはどうでしょう? たとえ失敗しても10のリストを修正し、最善を尽くすフェイト。 これはフェイトが、余命3ヶ月で10のしたいことを実行する物語。皆を自らの死によって悲しませない為に足掻き、運命に立ち向かう、逆転劇。 【注意点】 恋愛要素は弱め。 設定はかなりゆるめに作っています。 1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。 2章以降だいぶ殺伐として、不穏な感じになりますので、合わないと思ったら辞めることをお勧めします。

乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「イザベラ、お前との婚約を破棄する!」「はい?」悪役令嬢のイザベラは、婚約者のエドワード王子から婚約の破棄を言い渡されてしまった。男爵家令嬢のアリシアとの真実の愛に目覚めたという理由でだ。さらには義弟のフレッド、騎士見習いのカイン、氷魔法士のオスカーまでもがエドワード王子に同調し、イザベラを責める。そして正義感が暴走した彼らにより、イザベラは殺害されてしまった。「……はっ! ここは……」イザベラが次に目覚めたとき、彼女は七歳に若返っていた。そして、この世界が乙女ゲームだということに気づく。予知夢で見た十年後のバッドエンドを回避するため、七歳の彼女は動き出すのであった。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。 【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。 三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。 目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。 私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。 ムーンライトノベルズにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜

みかん桜
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。 ここは、乙女ゲームが舞台の小説の世界だった。 悪役令嬢が主役で、破滅を回避して幸せを掴む——そんな物語。 私はその主人公の姉。しかもゲームの妹が、悪役令嬢になった原因の1つが姉である私だったはず。 とはいえ私はただのモブ。 この世界のルールから逸脱せず、無難に生きていこうと決意したのに……なぜか第一王子に執着されている。 ……そういえば、元々『姉の婚約者を奪った』って設定だったような……? ※2025年5月に副題を追加しました。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

処理中です...