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恋愛編
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「見てくださいな
姫様とラピスの皇太子殿下ですわ」
「本当ですわね、姫様が随分と楽しそう…仲がよろしいのかしら?」
「あら、ご存じありませんの?姫様の初恋…有名な話でしてよ?」
「まぁ…そうでしたの?存じ上げませんでしたわ」
「お二人ともお美しくて…物語の登場人物のようですわね」
近くで談笑していたご婦人方の会話が耳に入ってくる
私はそれを受けて踊り始めた殿下とローズマリー姫に視線を向けた
確かに、絵本の一ページみたいだわ…
ローズマリー姫の着る、フリルがたっぷりと使われたベルラインの黄色いドレスがターンの度にふわりと広がり、ハーフアップにされた金色の髪は彼女の動きに合わせてさらりと揺れる
殿下を見つめる瞳は甘く潤み、もともと可愛らしい顔は素顔を活かした薄めのメイクによって更に可愛らしさを増していた
相手をする殿下は我が国の王族の正装である黒の軍服と藍色のマント姿
黄金に輝く勲章は、まるでローズマリー姫の髪と対になっているようだ
「……」
「セシリア嬢」
ぼんやりと二人の姿を眺めていると声がかけられる
そちらを見ると、王太子殿下が立っていた
「王太子様…ご機嫌麗しく」
礼をして挨拶すると王太子殿下はにこりと微笑んで距離をつめる
「お一人ですか?アルベルト殿は?」
「…ローズマリー様と踊っておられますわ」
「おや!それはそれは…このように美しい人をお一人にしてしまうとは
我が妹も酷いことをする」
近くのご婦人達に限らず、先程から会場は殿下とローズマリー姫の話が飛び交っている
自分も気がついているであろうに、白々しく尋ねた上に驚いたような顔をする王太子殿下に仄かな苛立ちを感じた
それにも気がつかず、彼は調子よく言葉を紡ぐ
「もしよければ妹の償いを私にさせていただけませんか?」
言葉と共に恭しく差し出された手
私はそれを見て心の内でまたかと呟いた
毎日毎日飽きもせずに…
この方は本当に何を考えておられるのかしら…
だいたい、償いにダンスに誘うなんて失礼じゃない?
こういう場面ではお世辞でもいいから自分が踊りたいと言うものだと思うのだけど
そうは思うが、自分は一国の王太子からの誘いを無視したり断ったり出来るような立場ではない
諦めてその手を取ろうと動いた瞬間、こちらもまたかと言うようなタイミングで再び自分の名前が呼ばれた
「あぁ、セシリア嬢!」
朗らかな笑顔を浮かべて近づいてきた本日の主役に、私は安堵の、王太子殿下は苛立ちの表情を浮かべる
「レオナルド様」
「よかった、やっと見つけたよ
ファーストダンスが終わってからずっと探してたんだ」
「まぁ…そうでしたか
それは申し訳ございません」
「ううん、いいんだけどね
……あ、いや、良くないってことにしとこうかな」
「え…?」
首をかしげた私にレオナルド様はイタズラっぽい笑みを浮かべて手を差し出した
「お詫びに一曲踊ってくれる?
せっかく友人として来てくれたんだから、ファーストダンスの次は最初に君と踊りたいと思ってずっと探してたんだよ」
「あら…」
差し出された手に私は困惑の表情を浮かべる
それを見てレオナルド様はキョトンとしたような表情で首をかしげ、そこでやっと王太子殿下に視線を向けた
「…おや?兄上ではないですか
すみません、気がつきませんでした。ご機嫌麗しく」
「……うん、お前もね」
「あ、もしかして兄上も彼女をダンスに?」
「……あぁ、そうだよ
お前よりも先にね」
「それはそれは!大変失礼を…」
「そう「本来なら引き下がるべき所ですが、今日は僕の誕生パーティー
心の広い兄上なら今日ばかりは僕に譲って頂けるはず」
いつものように返答をさえぎり、輝かしい笑顔で言葉を繋げたレオナルド様に王太子殿下の頬がひくつく
しかし彼はそんな兄の反応を無視し、その笑みのまま私に視線を戻した
「と、言うことで…セシリア嬢
お手をどうぞ?」
方やキラキラ
方やイライラ
私は張り付けた笑みのまま、こちらを伺っている周囲に視線を巡らせ、そっとレオナルド様の手をとった
「……王太子様はお優しいですものね
レオナルド様、よろしくお願いいたします」
姫様とラピスの皇太子殿下ですわ」
「本当ですわね、姫様が随分と楽しそう…仲がよろしいのかしら?」
「あら、ご存じありませんの?姫様の初恋…有名な話でしてよ?」
「まぁ…そうでしたの?存じ上げませんでしたわ」
「お二人ともお美しくて…物語の登場人物のようですわね」
近くで談笑していたご婦人方の会話が耳に入ってくる
私はそれを受けて踊り始めた殿下とローズマリー姫に視線を向けた
確かに、絵本の一ページみたいだわ…
ローズマリー姫の着る、フリルがたっぷりと使われたベルラインの黄色いドレスがターンの度にふわりと広がり、ハーフアップにされた金色の髪は彼女の動きに合わせてさらりと揺れる
殿下を見つめる瞳は甘く潤み、もともと可愛らしい顔は素顔を活かした薄めのメイクによって更に可愛らしさを増していた
相手をする殿下は我が国の王族の正装である黒の軍服と藍色のマント姿
黄金に輝く勲章は、まるでローズマリー姫の髪と対になっているようだ
「……」
「セシリア嬢」
ぼんやりと二人の姿を眺めていると声がかけられる
そちらを見ると、王太子殿下が立っていた
「王太子様…ご機嫌麗しく」
礼をして挨拶すると王太子殿下はにこりと微笑んで距離をつめる
「お一人ですか?アルベルト殿は?」
「…ローズマリー様と踊っておられますわ」
「おや!それはそれは…このように美しい人をお一人にしてしまうとは
我が妹も酷いことをする」
近くのご婦人達に限らず、先程から会場は殿下とローズマリー姫の話が飛び交っている
自分も気がついているであろうに、白々しく尋ねた上に驚いたような顔をする王太子殿下に仄かな苛立ちを感じた
それにも気がつかず、彼は調子よく言葉を紡ぐ
「もしよければ妹の償いを私にさせていただけませんか?」
言葉と共に恭しく差し出された手
私はそれを見て心の内でまたかと呟いた
毎日毎日飽きもせずに…
この方は本当に何を考えておられるのかしら…
だいたい、償いにダンスに誘うなんて失礼じゃない?
こういう場面ではお世辞でもいいから自分が踊りたいと言うものだと思うのだけど
そうは思うが、自分は一国の王太子からの誘いを無視したり断ったり出来るような立場ではない
諦めてその手を取ろうと動いた瞬間、こちらもまたかと言うようなタイミングで再び自分の名前が呼ばれた
「あぁ、セシリア嬢!」
朗らかな笑顔を浮かべて近づいてきた本日の主役に、私は安堵の、王太子殿下は苛立ちの表情を浮かべる
「レオナルド様」
「よかった、やっと見つけたよ
ファーストダンスが終わってからずっと探してたんだ」
「まぁ…そうでしたか
それは申し訳ございません」
「ううん、いいんだけどね
……あ、いや、良くないってことにしとこうかな」
「え…?」
首をかしげた私にレオナルド様はイタズラっぽい笑みを浮かべて手を差し出した
「お詫びに一曲踊ってくれる?
せっかく友人として来てくれたんだから、ファーストダンスの次は最初に君と踊りたいと思ってずっと探してたんだよ」
「あら…」
差し出された手に私は困惑の表情を浮かべる
それを見てレオナルド様はキョトンとしたような表情で首をかしげ、そこでやっと王太子殿下に視線を向けた
「…おや?兄上ではないですか
すみません、気がつきませんでした。ご機嫌麗しく」
「……うん、お前もね」
「あ、もしかして兄上も彼女をダンスに?」
「……あぁ、そうだよ
お前よりも先にね」
「それはそれは!大変失礼を…」
「そう「本来なら引き下がるべき所ですが、今日は僕の誕生パーティー
心の広い兄上なら今日ばかりは僕に譲って頂けるはず」
いつものように返答をさえぎり、輝かしい笑顔で言葉を繋げたレオナルド様に王太子殿下の頬がひくつく
しかし彼はそんな兄の反応を無視し、その笑みのまま私に視線を戻した
「と、言うことで…セシリア嬢
お手をどうぞ?」
方やキラキラ
方やイライラ
私は張り付けた笑みのまま、こちらを伺っている周囲に視線を巡らせ、そっとレオナルド様の手をとった
「……王太子様はお優しいですものね
レオナルド様、よろしくお願いいたします」
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