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中編

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そして約束が守られた結果、シンシアは金の髪の男…ミハエルと新婚初夜にソファに並んで座っているというわけだ。

ぽつりぽつりと他愛もない話を交わし、時折無邪気にころころと笑って見せてやれば、緊張も解けてきたのだろう。
ガチガチに強張らせていた肩の力を抜き、私の話に笑みを浮かべて、自分から話を続けるまでになった。
その様子を見て心の中で小さく笑う。


律儀に約束を守ってくださるだけでなく、気まで許してくださるとは…
ほんとうに、真面目でお可愛らしいこと…。


あの顔合わせの日の宣言から色々調べた。
どうやら彼は人々から慕われる、とても真面目で模範的な皇太子であったらしい。

そう、1年ほど前までは。

1年前に突如彼の前に現れた、男爵家の養女となった一人の令嬢。
彼女は見目こそ、それなりに可愛らしいものの、礼儀作法や常識には欠けており、よく言えば天真爛漫な…色々と規格外な少女であったらしい。
今まで硬い貴族社会で育ってきた彼はその言動の突拍子のなさと目新しさに惹かれ、自分の立場に苦悩しながらも、彼女を側に置くようになったとか。

まるで流行り物の物語のような話に、調査結果を聞きながら笑ってしまったものだ。
しかも、彼は彼女を恋人として側に置きながらも、この国での慣習を守り、抱き合うどころかエスコート以外で手すら繋いだことがないらしい。

真面目にも程がある。

まぁ…そんな性格だからこそ、私に向かっても正直に彼女の存在を明かしたのだろうし、私も容易く手綱を握ることができるのだが…


そんなことを考えつつ、半分以上減ったワインボトルを見やる。
続いてミハエルに目をやると、酔いが回ってきたのだろう。ほんのりと頬に赤みが指していた。



さて、そろそろ良い頃合いね。
仕掛けましょう…


下ろしていた髪をかき上げ、片側に流す。
隣の男の意識が自分へと向いたことを確認しつつも気づかないふりをして自分のグラスを手に取った。
グラスをゆっくりと傾け、目を伏せてこくりと喉を鳴らす。
ほぅ、と小さく息を漏らすと隣から熱い視線を感じた。
そちらに視線を向ければ、ぽーっと私を見つめるミハエルの姿。
先程までとは違い、少し色を載せて微笑めば、目に見えて動揺し、慌てて目をそらす。
顔を背けたせいでこちらに向けられた耳までもが赤く染まっている。


「…少し、酔ってしまいました」

囁くように呟いて頭を彼の胸元に寄せてみる。
固まってしまった彼とは裏腹に、彼の鼓動は破裂しそうなほど高鳴っていた。

あまりにも予想通りの状況に、口角が上がる。
この調子なら、私の計画道理に進みそうだ。



…そう、公妾を迎える約束までの3年で、彼を彼女から寝取ってしまうという計画道理に。




ねぇ、旦那様?
彼女の目新しさに惹かれたならば、私がさらに新しいことを教えて差し上げますわ…




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