【R18】胡散臭い宗教団体を潜入調査したら信者にバレて大ピンチ!

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 彼の家は本当にすぐ近くにあって、綺麗なマンションの一室だった。
 片付いた広い部屋に通されると、私はタオルを貸してもらった。

「良ければお風呂にも入って行ってくださいね」

 と言われてさすがに遠慮しようと思ったのだが、濡れ鼠のような状態でお宅にお邪魔するのも失礼だと思い、ご好意に甘えることにした。

 濡れた服を脱いで着替えを借りた。下着は無事だったのでそのままで、彼が普段使っているであろうシャツを身に着けると、なんだか彼シャツみたいで少し落ち着かない。

 私と入れ違いに東雲さんはお風呂に入って行った。待っている間、私は手持ち無沙汰なので部屋を物色することにした。

 怪しい宗教にハマる人の部屋がどんなものか、単純に興味があったし、こんな時でも動画のネタを探していた。
 しかし期待に反して、特に部屋に怪しいものもなく、見れば見るほど真っ当な部屋、という印象だ。

 しばらくして東雲さんがお風呂から出ると、温かいお茶を用意してくれた。

 ソファーに隣り合って腰掛ける。

「本当に何から何まで……ありがとうございます」
「いえ。寒くないですか?」
「平気です……」

 いつもと比べると彼の態度はどこか素っ気ない。やっぱり幸福の会ありきの関係だったんだと少し寂しくなる。

 彼のいつもの爽やか笑顔が見たい、と思った時にはやっぱり彼のことが好きだったんだな、と気が付いて心が苦しくなった。

「そういえば、伺ってませんでしたね。良かったら退会の理由を聞いても良いですか?」

 おもむろに彼が口を開いて私に問いかける。
 私は少し考える。

「……えっと、実は私、フリーターだって言ってましたよね。本格的に就職しようと思ったんです。それで忙しくなるから、もう通えないなぁと思って……」

 とっさに嘘を吐いた。
 彼の方を窺うと、「そうですか」と呟いた。

 そして彼は信じられないようなことを口にした。

「動画のネタが尽きたからだと思ってましたが」
「……!!」

 ぎくりとして、耳を疑った。
 彼は今、なんて?
 握っていた湯呑みを落としそうになってしまう。

「な、なんて……?」
「動画、撮っていたんでしょう? なるなるちゃんねるの、なるみんさん」
「!!」

 私の動画チャンネル名をはっきりと口にした彼に、私は何と言えば良いのかわからなかった。
 心拍数が上昇する。

 すると、彼は録音レコーダーとペン型のカメラを取り出して、机の上に置いた。
 そういえば、私の着てきた服は彼に預けっぱなしだった。

「ど、どうして……知って……」
「本当にたまたまでした。おすすめされたんですよ。潜入調査という響きに惹かれて見てみれば……聞き慣れたあなたの声じゃありませんか」
「……!!」
「がっかりですよ」

 感情のない目で、彼はそう言った。

「あ……。ご、ごめんなさい……」
「あなたはひどい人だ」

 この状況でどうすれば良いというのだろうか。
 どうにかして弁解しようと必死に言葉を探すが、何を言えば良いかわからない。

 しどろもどろになりながら、何とか取り繕う私を冷たい目で彼は見下ろす。

「幸福の会は、両親を失った僕の心の拠り所でした……。あなたにとってはただの怪しい宗教団体でしょうが、僕にとってはもう一つの家のようなものなんですよ。それをあなたは大衆娯楽のために踏み躙った」
「ごめんなさい……」
「それにあなたのことを信頼していた。幸福の会のため、勧誘に奔走したり、愚痴を一身に引き受ける毎日に僕は正直疲れていたんです。そこにあなたが現れた。あなたの目はきらきらと輝いていて、なんでも快く応えてくれて、明るくて、健康的で。あなたの側は心地良かった。いつもニコニコしながら僕の話を聞いてくれるあなたに、僕がどれほど癒されていたか分からないでしょう? でもその時点で気がつくべきでしたね。あなたは宗教に縋る人特有の心の闇がないんですから……。周りの人とは違うのも、当たり前のことでしたね。それが僕には、一筋の光のように映ったわけですが」

 淡々と話す彼の口調に、私は絶望するしかなかった。謝罪の言葉しか口から出てこない。

 「ごめんなさい」と繰り返しながら口にすると、次第に眠気が私を襲った。視界がぼやけていく。意識が遠のいて行く。
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