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諸悪の根源
あちらとこちら
しおりを挟む「と、言う訳でね朱雀が怖がって泣くから毘伽羅から本地仏の釈迦に戻って貰った訳」
「はぁ、理由は解りました。で、どうします? こんな矮小世界に如来が二人では世界との均衡が保てません。それ意外に脇侍二人と悪童二人まで居ます。流石にキャパオーバーしてしまいますね」
意外と軽い口調の日光に、何故だか投げやり感が漂うのは気のせいでは無い気がすると、薬師はリビングのソファーに深く腰掛けたまま足を組み替えつつ考え込む。
どうも予想外の事が転がり込んで来てばかりの今日この頃だ。
はぁ、癒やしが欲しい。
可愛いくて心優しい俺の番。
今は深夜だからきっと夢の中だ。
近くに居るのに触れられない、このやるせなさ。
薬師は、今一度深い溜め息を吐いた。
「ごめんね、薬師。僕が此処に居るせいで頭抱えてるんでしょう? 」
そう良いながらナディアの部屋(今は朱雀が寝ている場所)から、悉陀が出て来た。
「朱雀はどうだ? 」
「すやすやと気持ちよさそうに寝てるよ。今は痛みは無いらしい」
「悉陀、お前にしては珍しいな。朱雀がよほど気に入ったのか? アレはこの世界の住人だぞ…… 」
薬師が、気づかわしげに眉を寄せて悉陀を見ると、彼は苦笑いで今の気持ちを薬師に返した。
彼の内に有るのは、複雑な感情。
それが顔に現れた。
「朱雀は似てるんだよね。昔僕が王子だった頃連れ添った奥さんにね。そりゃあ大昔の話だから顔なんか忘れちゃったんだけどね、魂がそっくりなんだよ」
ほんのりと目元を朱に染めて照れ笑いをする悉陀に、薬師と日光は目を見開いて驚いてしまった。
因みに、一切会話に参加していない月光がどうしているのかと言うと、途中退出してルナティの後を追っていた。
体長18センチの二足歩行のぬいは、果たしてこの夜半中に皇妃の元にたどり着けるのだろうかと危惧した為に、慌てて部屋を後にしたのだ。
案の定扉から数メーターも離れていない場所によちよちと二足歩行するぬいを発見。
今までが薬師かナディアに抱えられての移動だったルナティだ。
ひとりで行動するに当たって今更ながらに気が付いた、ルナティと月光。
月光は、ルナティの背後から、一所懸命歩く彼を唐突に抱え上げた。
「フギャッ」
急に宙を浮いたので出たルナティの悲鳴。
驚いて振り返って見ると、自分を抱え上げているのは月光で。
「やっぱりね~。まだこんな所にいた~。さ、俺と一緒にいこ~な、ルナティ。案内たのむよん」
泣き笑いの表示で月光を見たルナティは、月光の胸板にグリグリと額を擦り付けると、わ~んと大泣きしてしまった。
「ハイハイ、なかないの~。行くよ~」
「取り敢えず此処真っ直ぐ~ぐしぐし」
よしよしと月光はルナティを撫でるとにかっと笑ったのだった。
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