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神獣青龍『香燕』
極彩色の楼閣②
しおりを挟む「はあっ!? 」
日光が声を荒げて振り返る。
彼が今一度声を上げる前に、日光の隣にいたナディアが、
「薬師様っっ! 」
抱き付こうとして、駆け寄ったがするりと通り抜けてしまった。
『ナディア、ごめんね。今は触れ合えないみたい……。けど大丈夫、心配いりませんよ』
そう言った薬師の向こう側が、ゆらりと透けて揺れ動いた。
「何やっちゃってるんですか! 薬師様とあろう人が」
『いやぁ、うん、みなまで言わなくても解ってるよ。日光』
茫然自失する月光に、うるうるするナディア。
「マズいじゃん、薬師様の魂が此処に居るって事は、魄が無防備になってるって事じゃん! 早く探しに行かないとっ!! 」
と月光が慌てふためくと、何故か薬師は落ち着いた口調で其処にいた皆に言った。
『身体は放っておいても大丈夫。あっちは囮に使うから。それより、白龍を探すよ。彼を早急に動けるように治さなければ。彼が今後の善し悪しを決めるから』
そう言うと薬師は総ての状況を理解しているかのように唇の端だけでにっと笑った。
総て想定内だと言うかの如く。
『身体の方は、世界最強の防御力を授けた『らいおんちゃん』をくっつけておきましたから、誰も手を出せない筈ですよ? 多分ね…… 』
薬師は、言い切った。
「薬師さまの……ど、Sぅぅぅ~」
と、青龍にさらわれる身体の首根っこにしがみついて、一緒にさらわれるルナティが居た。
「結界張っとこ。折角薬師さまが目覚めさせてくれた能力だし、怖いし……。青龍の説得、おいらがするんだよね。聞いてくれるかなぁ。今でも気付かれない位だし? 」
そう独り言を延々と続ける事で気を紛らわせるルナティであった。
さてさて、ルナティの方は今の所は放置しておいて、薬師達の方だが。
建物内部を探索し、地下まで降りてきた薬師達一行。
「此処まで誰にも会わなかっただなんて、おかしいですよね? 」
と、不思議そうにナディアが言う。
『誰も居ませんからね。此処には私達と青龍と、白龍………… あ、悪童が今来ましたねぇ』
と、何処かのんびりとした口調で薬師が言った。
「つっ、のんびりしてる場合では無いですよねっ! 」
月光の物言いに、薬師が言い返す。
『大丈夫ですよ。ルナティの貼る結界は強固です。悪童如き太刀打ちなど出来る筈がありません。うん、多分』
「多分って………… 」
月光が、がっくりと肩を落とした。
その隙に地下を進む薬師は、人の手による通路から洞窟にシフトした道の先を見て、漸く目的地に着いた事を確信した。
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