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秘密
大好きな貴方④
しおりを挟む離宮の調理場で、薬師は簡単なサンドイッチとサラダを貰っていた。
それにオレンジジュース。
この世界にも在るんだな、オレンジが。
他にもいちご、葡萄、りんごだって有る。
めぼしい果物全てが揃っている事に、別段不思議とは思っていない薬師。
弥勒が創った箱庭世界だから、現実に自然発生した世界を模倣する事など、難しくは無いのだ。
だからこの世界は、薬師達の世界に似た所があった。
勿論、世界規模は此処の比では無いが。
薬師は食べ物が入ったバスケットを握り締め、離宮の廊下を進む。
此処にはあの世界のような『電気』は無いが変わりに『魔法』で灯した灯りが良い感じで燭台に灯されている。
それは炎では無く『光魔法』の『ライト』と言う術な為に光量も電球並みに有り、等間隔で置かれている上に、熱くもなく手を翳してみても焼けたりしないので、安全かつ便利な道具だった。
その恩恵を受けて、廊下は普通に歩ける程には明るい。
科学か魔法か、成り立ちは違うが便利さはある種、地球世界と差ほど変わらないなと、薬師は感じた。
暫く廊下を歩いていると、不思議なものに出くわした。
臙脂色の絨毯に、不釣り合いな気配。
青白い顔の少年が二人、並んで立っている。
白いブラウスに半ズボン。
コレにランドセルと黄色い野球帽を被らせたら、それはまさしく『ピカピカの一年生』だった。
クスッ。
薬師が忍び笑いを浮かべる。
── なる程、コレが月光の遭遇した双子か… ──
まるでとある映画のワンシーンのようだが、微妙に所々違って、クオリティーの低さが伺える。
それらの事象が、薬師に含み笑いをさせている訳なのだが。
「どうせならもう少し正確に作れば良いのにね」
そんな薬師の言葉に双子が同時に眉を寄せる。
同時に行う同じ動作に、双子以上の繋がりを感じて薬師はふっと笑った。
双子の後ろに有る扉の中心の合わせ目から、まるでダムが決壊するかのように血液に似た何かが溢れて来た。
まるで、あの映画のワンシーンみたいに。
「違うだろ…… 」
動揺一つしないところが、月光と薬師との違いだろうか。
薬師がすっと、右手を溢れ来る血のような赤い水に向けて翳すと、ググッと水の勢いが止まった。
薬師の口角が、微笑みの形にゆっくりと上がる。
「こっちとら、怪奇現象には慣れてるもんでね。この程度じゃ驚かないんだよ」
そう言って目を細めた。
その瞬間だ。
まるで巻き戻すかのように、赤い水が引いていく。
何も無かったのように。
総てをリセットするかのように。
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