126 / 220
蜜月
蜜月
しおりを挟むお互いに見つめ合って、コツンと額をひっつけあって、どちらからともなく微笑み合う。
「緊張……してる? 」
してないと言えば嘘だ……。
そうナディアは心の中で呟く。
「俺は情けない事に緊張しまくり」
へらっと笑う薬師にナディアは、きょとんとして彼を見た。
彼が緊張?
思いもしなかったから驚いた、ナディア。
「薬師様も、緊張なさるのですね」
ふふっと笑うナディアに、ふわりと笑う薬師。
「薬師ってのをやってるとね、表情筋が役目を果たしてくれないんだよね。だから感情が面に出ないだけなんだよね」
今の薬師からは、『薬師』であっても敬語が出ないのは、素の本人に近いからだ。
櫂で有ればもう少し言葉が崩れるからまだまだ彼は緊張している最中と言う訳だ。
果たしてそれがナディアに伝わるのか?
「お互い様なのですね。私達、夫婦ですから、こう言う事には慣れている筈ですのに。不思議ですわね」
「ん~、ナディアとするのは初めてだからかな? 無理強いはしたく無かったのにこんな事になって、半ば強制的だから俺自身、戸惑ってる。君に嫌われたくは無いからね…… 」
そんな内心を暴露して、薬師は不安と困ったような感情をない交ぜにした、複雑な表情をして見せた。
そんな薬師を見て、ナディアはそっと彼の頬に手をやった。
薬師も、戸惑う事無く、首を彼女の手が有る方へ傾け、そっと自分の手を重ねた。
昔からやっていた彼等の心の交流の仕方。
ナディアの中に、凪の記憶が無ければ出来ない仕草に、薬師は悟。
『良いのだ』と。
ナディアの中に、ちゃんと薬師への愛が存在しているのだと。
彼女はそっと自分から、重ねるだけの優しいくちづけを薬師の唇に落とした。
それが合図だった。
たった三日しか無い彼等の『蜜月』の。
始まりの合図であった。
そっと合わせるだけの口付けから、互いの気持ちを、愛し合う方向へ高める為の口付けに変わるのに、さほど時間は要らなかった。
ナディアの歯列をなぞり口を開けてと行為で示す薬師に、彼女は恐る恐る彼を招き入れた。
中へと入り込んだ彼は、逃げ隠れするナディアの舌を探し出すと絡め取って引き出した。
そして今度は自分の口内へと誘い込む。
ぷるりと震えるナディアの身体は、薬師に翻弄されて、少しずつ熱を帯びて行った。
「んっ……んんっ…… 」
喉の奥から快楽に陥るくぐもった乙女の声が零れて、薬師は彼女を抱えて主寝室へと消えて行った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる