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第二部:事の始まり
容赦はしない
しおりを挟む風も無いのにふわりと靡く闇より濃い黒い髪。
それと同様の色合いで煌めく瞳は、闇を現す色で有るのに、所々光が混じり不思議な色に輝いている。
目鼻立ちはハッキリしていて、一つ一つのバーツがバランス良く配置され、左右対象に並んでいた。
其れだけでもう人間離れしているのに、色白で餅肌の持ち主の彼であっても、なよなよしくも女のような仕草も無かった。
寧ろ、その動きは滑らかで、水が流れるように、風がそよぐように、その所作は洗練されていた。
それは正に人外の者。
男は、
「ひいぃぃぃぃ………… 」
と、悲鳴を上げた。
「解ったよ。とりあえずは彼女は無事な訳だ。けれど、君は色々と心を入れ替えなきゃならないようだから、やっぱり地獄へ行っておいで。牛頭馬頭に宜しくね。あぁ、そう、地獄ってのは、私の世界の地獄を模しておいたから、結構しんどいよ。其処で心を入れ替えておいで。なーに、ここの時間にしてほんの一時間程だ。いってらっしゃい…… 」
そう言った薬師は、赤い唇を弧の字に歪め、婉然と笑った。
その瞬間、
「ひぎゃあぁぁぁぁぁ…… 」
と、男の口から断末魔の悲鳴が上がった。
逸れを聞いて、女性二人がプルプルと震える。
女達に聞かせる状況と言う訳では無いのだが、少々配慮に欠けるかこの男。
漸く震え上がる女二人を見定めて、「あぁ…… 」と配慮に欠けた事に気付く薬師。
「すいません、女性には少し刺激が強かったですかね? 」
そうは言ったものの、今更感は拭えない。
申し訳無さそうな表情を見せても、怖がらせた後では何の意味もなさない。
薬師は、「まいったなぁ…… 」と、呟いて、未だ阿鼻叫喚に染め上げられたままの周囲を跨いで、朱雀と青龍の元へと歩んだ。
そして、数歩手前で歩みを留めると、薬師はしゃがみ込む彼女達の目線まで膝を折って屈み、優しい口調で彼女達に言った。
「これ以上は少し過酷になるから、君達は帰りなさい。此処まで付いて来てくれてありがとう。此処から先は私だけで大丈夫だから」
そう言った薬師だが、ふるえる彼女達にも意地がある。
特に朱雀は、自国の神殿の中で襲われたのだ。
あの中で強かったのは、『宵闇の女神』と呼ばれるナディアと『西の白虎』と呼ばれるルナティ。
此処だけの話だが、ナディアの側にルナティが引っ付いているのなら、彼女の居場所は楽勝であった。
ルナティにはウル○ラ○ン宜しく、カラータイマーが付いている。
漏れなくGPS付きのが。
そして、元の姿にも戻れる。
三分間と言う制限付きだが。
だから彼女は無事だと。
薬師は確信していた。
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