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第二部:事の始まり
ナディアと二匹のお付き様
しおりを挟む「あっ、ごめんなさい。何故か身体が勝手に…… 」
そう言うナディアに、ライオンちゃんのぬいがいじけた感満載で地面にのの字を書いている。
呟く口調は、
『どーせどうせ、おいらは嬲られキャラですよ。解ってるもん! うっ、うっ…… 』
と、既に涙がちょちょ切れている。
あぁ、余談ではあるが、ルナティはライオンちゃんのぬいの皮を被った生き物である。
以前、食べ物を食べている仕草があったが、その口の中は柔らかな舌と内壁があった。
だから鼻水も出れば涎も涙も出る。
と、言う設定であった(忘れていたけれど… )。
そんなルナティが、俊傑に慰められている。
のを俊傑は途中で放り投げて、ナディアに話し掛けた。
そんな所は、主人となった薬師に段々似てきている俊傑である。
「それはそうと、一つお聞きしたい事があります」
それはやけに神妙な顔(と言っても今は完全獣化している俊傑だから良く解らない顔付きである)をしている。
俊傑は、ナディアの返事も待たずに話しを続けた。
「貴女様は、私やあの生き物をご存知でしょうか? それに宜しければ貴女様のフルネームを教えて頂きたいのですが…… 」
と、至って真面目に問い掛けた俊傑の意図とは。
その辺の事が一切掴めないルナティはナディアから離れた場所で首をこてんと傾げた。
「うーん、と、ごめんなさい。貴方がたはどちら様でしょうか? 改めまして、わたくし、シルベスタ公爵が長女、ナディア=シルベスタと申します。助けて頂いてありがとう御座います」
と、彼女が挨拶すると、俊傑は頭を抱え、ルナティは絶句したまま『!』を飛ばした。
「マジかよ……。洒落になんねぇ…… 」
その場で伏せって、うなだれる俊傑。
きっと人型であれば、額に手を当てて困り果てた顔をしていたであろう。
『えっ、えぇぇぇぇ!! ナディアさまぁぁぁぁっ!! おいらルナティですってばぁ!! 忘れちゃったんですか!? 』
「えっ? 私、何も忘れていませんよ。ルナティ様と言えば、白虎様の事ですわね。それに私、ナディア=シルベスタと申しましたでしょう? 」
と、ルナティの言葉に、ナディアは反論した。
「まぁ、そうでしょうね……。今の所は…… 」
俊傑は苦い声でそうナディアに告げると、ポンっと言う怪音を伴って人型に変身すると、再度ナディアに獣化していた時より鮮明で真剣な声音でナディアに言った。
「貴女様は、薬師様、カイ=ルリコウ様を知っておられますか? 」
と。
「いいえ、その方はどなたですの? 聞いたことが有りませんわ」
俊傑の言葉にナディアはその人は誰?と言う不思議そうな表情を彼に向けた。
それは本気で知らないようだった。
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