無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした

黄色いひよこ

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第二部:事の始まり

貴方は誰?

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気を失ったナディアは夢を見ていた。

嫌、正確には記憶、だろうか。

俊傑の言う通り、ナディアの深層心理には、消えることなく六年分の記憶が毒の作用で封じられていた。

ルナティの防御能力のお陰で賊からは逃げおおせたものの、逃げ出す先にこの谷があった事は誤算としか言えなかった。

まだまだ謎が多すぎる。


そして、気を失っても尚、ナディアに取って思い出せる事は少なすぎた。

花の力は其れ程までに強力だったのだ。


暗闇に居るナディアは、不安で心が押し潰されそうな気持ちでいっぱいだった。

深層心理とはこんな物なのか。

上下左右も判らないこの場所で、不安になるなと言うほうが可笑しい。

ナディアは闇を司る女神だが、その自覚が無い現在、普通の人の反応と同じく闇を怖がっていた。

そんな時だった。

ナディアは、目前に人が立っている事に気付いた。

目が暗闇に慣れて来ると、佇む人が男性だと言う事に気付く。

けれど、顔は見えない。

胸から上が闇が濃く姿を浮かび上がらせないでいたのだ。


「あなたは……だれ? 」


  ── 凪、何かあったら必ず俺を呼ぶんだよ──


ナディアの問い掛けに帰ってきた言葉はちぐはぐで。

明らかに男性の声音は次々と言葉を紡ぎ出す。


──丁寧な挨拶、痛み入る。私の名は『薬師』。人は私を『薬師如来』と呼びます。けれど、貴女には『櫂』かいと呼んで欲しい…………──


──ねぇ、ナディア。君は俺がまもるから今のままでいてくれよ──


──世界樹ユグドラジルを創る。その為の一歩、ナディア、俺の子を産んでくれないか? ──


ナディアはそれらの言葉が、己が無くしてしまった記憶なのだと悟った。

目前の男性が紡ぐ言葉に、自然と涙が溢れてしまう。

そんな折、彼女の背後からふわりと抱き締められる感触と温もりを、ナディアは感じ取った。


「必ず見付け出してやる。だから、泣くな…… 」


その声は至極甘く、優しかった。

声に反応して振り返ろうとするも、抱き締める本人が許してくれない事に憤る。


「今は駄目だ、時期目が覚める。君が夢に入ればすぐ判るから、その時に同時に私が君の夢を渡ればすぐに逢える……。だから…… 」


言葉は其処で途切れた。

温もりも、もう既に無い。

目覚めたナディアの目前には、大穴が開いた飛空挺から谷間の出口が見えていた。


「ナディアさまぁっ!! 」


飛空挺が傾き、穴から落下して行くナディアを、ルナティは這々の体で捕まえると、彼女と共にドラゴンの一団の元へと、空を流されて行くのであった。

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