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第二部:後宮
白昼夢
しおりを挟む広めのサロンには、午後の柔らかい日差しが大きな窓から差し込んでいた。
目前には白いテーブルクロスの掛かった円テーブルが、3つ、椅子が4脚ずつ並べてある。
否、真ん中のテーブルは、椅子が2脚だ。
だが、ナディアが見ていたのはそんな光景では無かった。
目前には巨大な一枚板の上質な硝子が、遮る物が何もないかのように向こう側の景色を見せ付けていて、掃き清められて塵一つ無い真っ白なバルコニーが、庭園へと降りられるよう階段式になっている。
その先には色取り取りの薔薇が植えられていて、見事な花を咲かせていた。
そして部屋内には暖炉とチェスト、そして真ん中には大きな一枚板の磨かれたテーブルと応接セットが鎮座している。
その規模からして、此処に集まる事が出来る人間の多さが垣間見れる。
ソファだけでも全部で十名だろうか、座れるだけのスペースがあった。
テーブルの上では、ルナティが、誰かに何か言いながらあたふたしていて、一人ずつ座れるソファには、金髪の青年と、銀髪の青年と少年の間位の年頃の男の子が、カップを持ったまま多分笑っている。
目線を少しずらすと、目下にはワゴンとティーセットとドレスを纏ったナディアにしがみつく女の子が居る。
漸く歩けるようになってやんちゃな盛なのよね。
と、ふと思う己が居るのをナディアは気付いていない。
お茶を入れている光景から、ナディアは黒髪の男の子が小さな女の子を捕まえて、転けないように抱き締める光景を目に映し、ソファから立ち上がりナディアの元に歩み寄る人物を、その瞳に映した。
すらりと均整の取れた体つきに長い足、近付いてくる歩調は、とても優雅だ。
服装は、周り皆がそうなのだが、ナディアの知っている服と違って変わった生地質と縫製とデザインだった。
よくよく考えれば、ナディアが飛空挺で助けられた時も、彼女が良く知る形のワンピースではあったが、生地がまるで違っていた。
『どうした? ナディア』
そう側で聞こえた気がした。
己に向かって彼の手が伸びていた。
あぁ、やはりこの方だわ……。
そう感じた瞬間、ナディアは白昼夢から覚めてしまった。
「……さま、ナ……ア様。……ナディアさまっ!? 」
ハッと正気に返ったナディアの前には、品の良い婦人が、心配そうにナディアの顔を覗き込んでいた。
その人は、ひと目で第一夫人だと判る程優雅で、凛としていて厳かであった。
そして思ったような人では無く、思いやりに溢れたご婦人であったのだった。
─────────────────
お知らせです。
『女神に殺されて死神にされました。でも助けた令嬢がドストライクで困ってます 改訂版 』
を、新しく連載させて頂いてます。
短編への書き直しなのですが、滅茶苦茶加筆されています。
新しく「改訂版」で公開しておりますので検索よろしくお願い致します
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