無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした

黄色いひよこ

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第二部:後宮

女達の逆襲

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驚いた顔の夫人が霞んで見えるナディアは、ふと己が泣いている事に気付いて驚愕した。


「ちょっと貴女、椅子にお座りなさいな…… 」


そう言ってナディアを真ん中のテーブルへと促す夫人に、他の女性達がわらわらと二人を囲みに近寄って来た。

夫人はナディアを座らせると、そっと手持ちのハンカチで涙を拭ってあげた。

それも心配そうな顔で……。


「ごめんなさいね。わたくしの夫があなたに無理をさせてしまって。貴女を誘拐させるなんて、どう謝っても許される事では在りませんが、先ずは謝罪させて下さいまし」


そう言って、夫人はナディアの涙を拭った後、深々と彼女にお辞儀をして、左右の女性達に目配せをした。

ナディアが顔を上げた時には、女性達は夫人を真ん中にずらりと横並びになり、夫人の言葉に耳を傾けていた。

一体何が起こるのか。

呆然として目を見張るナディアの涙は、もう既に引っ込んでいる。


世界樹ユグドラジルの管理者であり、『この世界に捕らわれし神』薬師如来様の細君、ナディア=ナギ=ルリコウ様、わたくし共、西河領を代表してこたびの失礼、お詫び申し上げ奉ります」


そう夫人が言葉を発した瞬間に、彼女等は一斉に腰を折って頭を下げた。

至極丁寧な詫びに、逆に慌てたのはナディアであった。

有る意味、事情を知らない彼女に取って慌てるのは当たり前の事で、対して、総じて総ての事情に理解を深めてしまった夫人等に取っては、この先、死活問題とも言える出来事に青くなりつつ、誠心誠意の元、頭を下げるしか無かったのだが……。

まぁ、薬師の不況を買うと、この西河省は滅びると言う理解が、夫人達にはあったのだろう。

それが理由で彼女等は、誠心誠意ナディアに頭を下げた、と言う現在に至っている。

単に、薬師が怖かったとも言えるが、それは今のナディアには預かり知らぬ事柄である。

そんな彼女等ですら、ナディアが薬師に溺愛されていると言う事実を理解しているのだ。

その理解の範疇に無いのは、お馬鹿な国守だけと言う訳だった。

あ、勿論、薬師の事を忘れているナディアも、理解の範疇に無かった訳だが……。


「御丁寧な謝罪をありがとう御座います。けれど、其処まで貴女様方が気に病む必要は御座いませんわ。ご婦人方が悪いのではありませんもの…… 」


と、暗に攫った国守が悪いのだと言う事を含めた言葉をナディアが言うと、夫人達は一斉に横に首を振った。


「それは違いますわ、如来様の奥方様。問題は其処に無く、何故そんな事をしたか、ですの。この計画を知らず実行させてしまったわたくし共にも大きな非があるのです。ですから、お迎えが来られるまでわたくし共西河省の者が一丸となって貴女様を御守り致しますわ。我が夫から…… 」


そう言いきった夫人の決意は並々ならぬ闘志が伺えるようであった。

勿論、夫人の左右に居並ぶ国守の愛妾達の瞳にも、決意が見え隠れしている。


「わたくし以外の彼女達は皆、望んで此処に居る子達では有りませんの。恋人や夫、両親達から無理やり引き離されたり拐かされたりして婚姻を結ばされた者達ばかりです。此処の国守は顔だけの愚か者です。今までわたくしも耐え忍んで参りましたが、それも我慢の限界ですわ…… 」


そう言って夫人は、静かな怒りを沸々と漲らせていた。

ナディアが驚いて呆然とする位には……。
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