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第3章 東と西 赤の書編。
第105 大地と太陽。
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「私達の仲間になりませんか、弁護士の品川修二さん?」
水城は合意を求める為、修二へ握手の返答を待っていた。
「……ふっ、仲間ねぇ……悪いが、初対面でタイマン張れねぇ奴等と仲良しごっこするつもりねぇよ。クソ喰らえ」
煙草のフィルターを強く噛みながら、満面な笑みで、水城へ右中指を立て、誘いは蹴ったのだ。
「じゃあ、我々の敵になるという事で良いですか?」
水城は断った修二に対して、好意的な視線ではなく――敵として見ていた。
「構わねぇよ。テメェを倒してアトラス財団について聞くからよ?」
そう修二が中指を下げ睨みながら告げる。と、猛烈な速度の右アッパーが顎を目掛けて飛んで来た。
けれど、そんな不意討ちは見透かしていた様に、右手で水城の右拳を受け止めていた。
「舐めんなよ?」
「フンッ!」
受け止められたのなら、修二ごと飛ばせば良いと判断し、水城は右腕に膂力を込めて、大きく吹っ飛ばしたのだ。
吹っ飛ばされた修二は地面に体が接触する前に、後方倒立回転で水城から間合いを取り、離れたのだ。
「……」
「流石だな、品川修二」
本性を現した水城は口調が変わり、荒々しくなっていた。
「敵となったら口調が変わりやがったな? まあ、それぐらいがテメェを殴りがいがあるけどな……」
本番として修二は両腕に『太陽』の炎を纏い、ファイティングポーズを取った。
「テメェ等、チンピラがエリート出身の俺に喧嘩売ることが間違いだと教えてやるよ。あぁ? チンピラ弁護士」
水城も修二と同じように両腕へ『土』を纏わせ、柔道の構えを取った。
「ウオラァッ!」
先に出たのは修二だった。
助走つけた走りで水城へ向かってジャンプし、右ストレートを放った。
そんな事ぐらい見切っていた水城は左手で攻撃を受け止めた。受け止めた瞬間、土が修二の腕に侵食し、固めていた。
『太陽』の炎は『土』によって鎮火し、右手を封じられた。
「こっちだぁッ!」
右手を封じられたのなら、素早い左足ミドルキックで、水城の右脇腹に猛烈なダメージを与えた。
水城は痛みで空気を吐き、苦悶の表情を浮かべていた。膝から崩れそうになったが、ここは耐えて、震える右手で修二の頭を掴み、鼻へ目掛けて頭突きをかました。
「この程度か!」
修二も苦悶の表情は浮かべた。が、この程度は日頃として経験済みで耐えられた。
そしてお返しと言わんばかりに、水城の額に頭突きをお見舞いした。
「うぐぅッ!」
ついに痛みに耐えられなくなった水城が、修二の右手を離し、後ろへと後退したのだ。
「もう一丁!」
チャンスだと思った修二は助走つけた走りで、右足を大きく後ろへ引っ張り、缶けりの如く、水城の顔へ蹴りを入れた。
ガードできずモロに顔へ受けて、大きく吹っ飛び、木箱に衝突した。木箱は粉々となり、粉塵が倉庫内で舞った。
「警官に本気で蹴り入れらるとは夢にも思わなかったな……」
咥えていた消えた煙草を唾と一緒に吐き捨てる。
「おい、伸びる前にアトラス財団について聞かせてもらうぞ!」
修二は水城が言っていたアトラス財団の事を尋ねようと進もうとした。が、右足に違和感があり、真っ直ぐと前へ進めなかった。
よく確認してみると『土』が右足を覆い、拘束されていたのだ。
「おい、マジかよ」
前みたいに力づくで脱出しようと試みた。が、前より『土』は泥々と力強く粘って地面から離れようとしなかった。
無理に足を引き抜こうとしたら、ガッチリ拘束されているので切断する可能性があった。
「お前が蹴った時に付けておいた。お陰で良い物を喰らったけどな……」
ダメージを受けて、フラフラな身体で水城は立ち上がり、動けない修二へゆっくりと近づいた。
そして修二の無防備な腹へ目掛けて、右拳アッパーで抉り込むように殴った。
思い切り殴られた修二は、口から空気を吐き出し、険しく苦悶の表情を浮かべた。膝から足が崩れ、水城を見上げる状態となっていた。
「さっきのお返しだ。初めてだよ、お前みたいなチンピラ程度に膝を着かされたのはな!」
水城は修二の顎をサッカーボールが如く、蹴り上げた。顎から蹴られたので唇が切れ、小さく出血した。
「お前を銃で撃ち殺しても構わないが、そんなんじゃ俺の気が治まらねぇ!」
修二の毛髪をガッチリと掴み、鼻へ目掛けて右膝蹴りで何度も負傷させる。
鼻からは多量出血し、マトモに呼吸ができない状態だ。
「このボケッ! テメェごときがエリートの俺に手間取らせんじゃねぇ!」
そして顔を地面へ叩きつける。倒れた状態で追撃として後頭部に右足を乗せて、ジワジワと膂力を込める。
それも修二が痛みから苦しんでいる事で、水城は愉悦に感じ笑いながら実行していたのだ。
「……良いこと……教えてやるよ……」
水城を嘲笑うように修二は伝える。
「あぁ? なんだゴミ?」
水城は修二の余裕な事に不機嫌と感じながらも、毛髪を掴み上げて、聞こえるように耳を近づけた。
「お前より……エリート以上の天才は存在するんだぜ?」
その時、倉庫の入口が轟音と共に激しく破壊された。
水城は硬い『土』の壁を形成し、飛び散る破片を防いだ。
「おい! クソリーゼント! 迎えに来てやったぞ! 生きてたら返事しろ!」
その声の主は仕事仲間であり犬猿の仲でもある南雲だ。ついでに気だるげな桐崎と弁償となったらと心配する木戸がいた。
三人はズケズケと倉庫へ入り、修二を探す。
「おーこっちだ!」
呑気にも修二は手だけ上げて、居場所を教えていた。が、水城は素早く修二の首へ左腕を回し、コメカミへ拳銃を突き付けていた。
「動くな!」
水城は南雲達へ向けて、威圧で怒りの咆哮を発した。
南雲達は立ち止まり、マジマジと拳銃を見つめる。
「動いたら殺すぞ! 俺がトリガーを引けばコイツは即死だからな! いくら人間じゃない体力のお前達でも脳髄を破壊されたら簡単に死ぬだろうな!」
水城は『覇気使い』全員が敵になると思い、修二を人質と取ったのだ。
だが……
「殺れよ。別にソイツが死んでも構わないぜ? 俺には関係ねぇからよ」
南雲は非常にも修二を殺せと水城に命令したのだ。
「だそうだぞ? 早く引き金を引けよ。エリートさんよ?」
修二も早く引き金を引けと水城を急かしていた。煽る目的もなく真面目に殺せと言っていたのだ。
「な、何言ってるんですか!? 桐崎さんも止めてくださいよ!」
「修二……死んでも地獄で元気でな!」
満面の笑みでサムズアップし、地獄行く前提で話を進めていた。
「桐崎さんまで!」
「ほら、早く殺れよ。じゃないとテメェから殺るぞ、ボケ!」
「早く殺れボケ!」
南雲が先に言って、何故か人質なのに強気な修二まで言い初め、水城の頭は戸惑い躊躇していた。
(どうする? コイツを殺せば俺は助かる。だが、次はコイツ等の仲間と戦わないといけなくなる。ここで殺さないってなると、チンピラのコイツにボコボコされる……どっちを選ぶべきだ?)
「……どうやらできねぇ様だな。じゃあ、しょうがねぇな」
拳銃を右手でガッチリと包み、『太陽』の熱で溶かした。
溶かした後、首締めしている水城ごと持ち上げて立ち上がり、気だるげな表情だった。
「お、お前……あれだけ殴られて、何故元気なんだ!?」
それもそうだ。人間の急所ばかり狙って攻撃し、戦闘不能まで追い込んだ筈だったのに……元気にピンピンと立ち上がっているから、水城は唖然とするしかなかった。
「あ? アレか? 鼻痛いけど、折れてもねぇし、歯も折れてねぇから大丈夫だ。あの程度のことは輝さんから散々やられた。耐性ついてねぇのがおかしいぜ」
どうやら修二は五年間、輝から瀕死に近い攻撃ばかり受けて、急所に対する攻撃は我慢できる程だ。
耐えられると言っても痛いには変わりないのだ。
「さてと……よし、ここから選手交代だ。おい、木戸! 俺と変われ」
急激な新展開に木戸の頭は理解できず、呆然とするしかなかった。それは敵である水城も同じだった。
「し、師匠! 私はまだ未熟ですよ。ちゃんと『覇気』を扱える訳じゃないですし……」
あまりにも急遽過ぎて準備できていない状況なので、時間を欲しいと修二に木戸は訴えるのだった。
「関係ねぇよ。誰しもちゃんとした準備なんてできやしねぇよ。俺もコイツもお前もな?」
「でも、経験が!」
「だったら逃げるか? 俺は構わねぇぞ、お前がケツまくって逃げたら俺がコイツをボコして終いだ。けど、今しかねぇぞ? 今しか全員に認められないぞ? コレがお前に与える最終試験だ」
木戸の身体は震え鳥肌が立ち、足りない頭で考えた。
(今……本当に今しかない……師匠に勝手で巻き込まれてしまっただけなのに……けど、もう引き返さないから……いや引き返したくないから……)
「……やります……私が、その人を倒します!」
色々と悩みに考えた結果、決意が固まり、木戸は覚悟した瞳で修二を見て、返答した。
「聞いた通りだ。悪いが水城さんよ……離れてくれねぇか? 交代なんだよ。今すぐ降りねぇと……その腕潰すぞ?」
修二から人間とも思えない凄味を感じ、水城は怯えながら腕を緩め、遠くまで離れたのだ。
「あ~疲れた。さて、始めるか時間もねぇからな……」
「ま、待て! 俺が勝ったらどうするんだ? 追わないと約束してくれるか?」
ハッと我に帰り、水城は自分が勝利した時の待遇を尋ねた。
「好きにしろよ。物足りねぇなら、今巻き付いている『土』で、俺の足を潰して良いぜ? それならどうだ?」
「そ、それで構わない……」
水城にとっては、これ程の厚待遇は無かった。邪魔者である品川修二の右足を潰せて、更に逃走できて追いかけられない、一石二鳥なのだ。
それも今から戦う小娘は、まだちゃんとした『覇気』が使えない人間、これも水城にとっては好都合だ。
(適当に倒して、早く逃げよう。コイツと一緒にいると俺の経歴に傷がつくからな……)
気を取り直した水城は再び柔道の構えで、木戸と相見える。
動けない修二に南雲は近づいて、コソコソと耳打ちで話す。
「木戸で大丈夫なのか?」
「まあ見てろ。一番努力した奴が覚えたてのエリートごときに負ける訳ねぇって証明してやるよ」
「エリートね……俺は天才だから関係ないが、エリート様が何処まで出来るのか見せて貰おうじゃねぇか」
「偉そうなこと言ってる所悪いが、アイツは『土の覇気使い』だ。地面って通電しねぇから相性かなり悪いぞ?」
かなり相性が悪いと知り、南雲は不機嫌な表情で考え込むと……
「……行け、木戸! ソイツは殺しても構わん! 後で口裏合わせて事故で済ませてやるから!」
弁護士なのに物騒な事を言い出した南雲へ対して、木戸はドン引きしていた。
そうやりとりしていると木戸は油断している為、水城は間合いへと入り、遠慮なく顔へ目掛けて左ストレートで倒そうと来た。
(これで終わりだ!)
顔に一発だけ当たれば後は気絶し、こっちの勝利だと確証した。と、水城は予想し行動に出た。
だが、そんな浅はかな思考が仇となった。
「え?」
水城は顎に痛みがあり、何故か近づいたの筈が、逆に木戸から遠く離れていた上、仰向けで倒れていた。
「……」
水城から木戸を見ると右アッパーで殴り終わった後の構えだった。
(一体……何が! おかしい、確か俺が先に……どういう事だ!)
水城は困惑し、状況が全く理解できなかったのだ。
「敵さん、わけ分かんねぇっていう顔してんな?」
「当たり前だ。今まで『覇気』の能力ばかり頼ってきたんだ。木戸との発動時間が桁違いだ」
修二と南雲は水城がダメージを負った理由は理解していた。そして木戸の動きや攻撃も細かくしっかりと見ていた。
「……」
木戸はただ倒れている水城を見ているだけだった。
「舐めやがって!」
勝手に見下した態度と思い水城は激情し、立ち上がり、なりふり構わない突進で、木戸へ襲撃したのだ。
「……」
しっかりと動きを見ている木戸は、大して苦労する事もなく、避けれる。そのがら空きとなったボディへ木戸は、岩漿を覆った膝で蹴ったのだ。
水城は今まで味わった事のない、痛みで絶叫し、倒れた。
「おい、立てよオッサン。まだ終わってねぇぞ!」
ヤンキーモードに入った木戸は、容赦なく倒れている水城の脇腹へ、思い切り岩漿纏った状態で蹴った。
水城は土を纏っている筈なのに、火傷を感じるのがおかしかった。蹴られた痛みと同時に焼かれる痛みもあるので耐えられなかった。
その理屈は簡単だった。岩漿というのは火を含んだ土であり、土で防御してもマグマを防ぐ事は不可能だったのだ。
「はあはあはあはあ……」
荒く水城は息を繰り返して、恐怖さえ感じていた。もうコレ以上は戦いたくないと、エリートとしてのプライドはズタズタになっていた。
「オラァッ!」
最後として木戸は水城に再び思い切り蹴る素振りを見せた……
「ま、参った! 俺の負けだ! 許してくれぇぇぇぇぇッ!」
水城の必死な慟哭が木戸へ降参を告げた。
「……」
蹴るのを止めて木戸は、泣いて踞る水城をジッと見ていた。
「終わりだ木戸、帰るぞ」
拘束されている修二は右足に纏った土を自力で破壊して解放された。木戸へ近づき、帰ろうと提案する。
「はい!」
木戸のヤンキーモードが解除され、歓喜でスッキリした表情で返答した。
「ちょっと待ってくれるか?」
入口まで全員で向かう途中、修二は何か思い出して、水城へと近づいた。
「おい、『アトラス財団』って何だ? お前の雇い主か?」
「……」
恐怖で水城は返答することが出来なかった。
「……まあいいや。じゃあ、今回だけは見逃してやるよ……とっとと消えろ、それから二度と刑事さんに近づくな。分かったな?」
「は、はい」
立ち上がり、裏口へ向かって水城は逃走したのだ。
「良い情報あったのか?」
「まあな。敵の名前が分かった……『アトラス財団』だ。次の喧嘩相手は……」
水城は合意を求める為、修二へ握手の返答を待っていた。
「……ふっ、仲間ねぇ……悪いが、初対面でタイマン張れねぇ奴等と仲良しごっこするつもりねぇよ。クソ喰らえ」
煙草のフィルターを強く噛みながら、満面な笑みで、水城へ右中指を立て、誘いは蹴ったのだ。
「じゃあ、我々の敵になるという事で良いですか?」
水城は断った修二に対して、好意的な視線ではなく――敵として見ていた。
「構わねぇよ。テメェを倒してアトラス財団について聞くからよ?」
そう修二が中指を下げ睨みながら告げる。と、猛烈な速度の右アッパーが顎を目掛けて飛んで来た。
けれど、そんな不意討ちは見透かしていた様に、右手で水城の右拳を受け止めていた。
「舐めんなよ?」
「フンッ!」
受け止められたのなら、修二ごと飛ばせば良いと判断し、水城は右腕に膂力を込めて、大きく吹っ飛ばしたのだ。
吹っ飛ばされた修二は地面に体が接触する前に、後方倒立回転で水城から間合いを取り、離れたのだ。
「……」
「流石だな、品川修二」
本性を現した水城は口調が変わり、荒々しくなっていた。
「敵となったら口調が変わりやがったな? まあ、それぐらいがテメェを殴りがいがあるけどな……」
本番として修二は両腕に『太陽』の炎を纏い、ファイティングポーズを取った。
「テメェ等、チンピラがエリート出身の俺に喧嘩売ることが間違いだと教えてやるよ。あぁ? チンピラ弁護士」
水城も修二と同じように両腕へ『土』を纏わせ、柔道の構えを取った。
「ウオラァッ!」
先に出たのは修二だった。
助走つけた走りで水城へ向かってジャンプし、右ストレートを放った。
そんな事ぐらい見切っていた水城は左手で攻撃を受け止めた。受け止めた瞬間、土が修二の腕に侵食し、固めていた。
『太陽』の炎は『土』によって鎮火し、右手を封じられた。
「こっちだぁッ!」
右手を封じられたのなら、素早い左足ミドルキックで、水城の右脇腹に猛烈なダメージを与えた。
水城は痛みで空気を吐き、苦悶の表情を浮かべていた。膝から崩れそうになったが、ここは耐えて、震える右手で修二の頭を掴み、鼻へ目掛けて頭突きをかました。
「この程度か!」
修二も苦悶の表情は浮かべた。が、この程度は日頃として経験済みで耐えられた。
そしてお返しと言わんばかりに、水城の額に頭突きをお見舞いした。
「うぐぅッ!」
ついに痛みに耐えられなくなった水城が、修二の右手を離し、後ろへと後退したのだ。
「もう一丁!」
チャンスだと思った修二は助走つけた走りで、右足を大きく後ろへ引っ張り、缶けりの如く、水城の顔へ蹴りを入れた。
ガードできずモロに顔へ受けて、大きく吹っ飛び、木箱に衝突した。木箱は粉々となり、粉塵が倉庫内で舞った。
「警官に本気で蹴り入れらるとは夢にも思わなかったな……」
咥えていた消えた煙草を唾と一緒に吐き捨てる。
「おい、伸びる前にアトラス財団について聞かせてもらうぞ!」
修二は水城が言っていたアトラス財団の事を尋ねようと進もうとした。が、右足に違和感があり、真っ直ぐと前へ進めなかった。
よく確認してみると『土』が右足を覆い、拘束されていたのだ。
「おい、マジかよ」
前みたいに力づくで脱出しようと試みた。が、前より『土』は泥々と力強く粘って地面から離れようとしなかった。
無理に足を引き抜こうとしたら、ガッチリ拘束されているので切断する可能性があった。
「お前が蹴った時に付けておいた。お陰で良い物を喰らったけどな……」
ダメージを受けて、フラフラな身体で水城は立ち上がり、動けない修二へゆっくりと近づいた。
そして修二の無防備な腹へ目掛けて、右拳アッパーで抉り込むように殴った。
思い切り殴られた修二は、口から空気を吐き出し、険しく苦悶の表情を浮かべた。膝から足が崩れ、水城を見上げる状態となっていた。
「さっきのお返しだ。初めてだよ、お前みたいなチンピラ程度に膝を着かされたのはな!」
水城は修二の顎をサッカーボールが如く、蹴り上げた。顎から蹴られたので唇が切れ、小さく出血した。
「お前を銃で撃ち殺しても構わないが、そんなんじゃ俺の気が治まらねぇ!」
修二の毛髪をガッチリと掴み、鼻へ目掛けて右膝蹴りで何度も負傷させる。
鼻からは多量出血し、マトモに呼吸ができない状態だ。
「このボケッ! テメェごときがエリートの俺に手間取らせんじゃねぇ!」
そして顔を地面へ叩きつける。倒れた状態で追撃として後頭部に右足を乗せて、ジワジワと膂力を込める。
それも修二が痛みから苦しんでいる事で、水城は愉悦に感じ笑いながら実行していたのだ。
「……良いこと……教えてやるよ……」
水城を嘲笑うように修二は伝える。
「あぁ? なんだゴミ?」
水城は修二の余裕な事に不機嫌と感じながらも、毛髪を掴み上げて、聞こえるように耳を近づけた。
「お前より……エリート以上の天才は存在するんだぜ?」
その時、倉庫の入口が轟音と共に激しく破壊された。
水城は硬い『土』の壁を形成し、飛び散る破片を防いだ。
「おい! クソリーゼント! 迎えに来てやったぞ! 生きてたら返事しろ!」
その声の主は仕事仲間であり犬猿の仲でもある南雲だ。ついでに気だるげな桐崎と弁償となったらと心配する木戸がいた。
三人はズケズケと倉庫へ入り、修二を探す。
「おーこっちだ!」
呑気にも修二は手だけ上げて、居場所を教えていた。が、水城は素早く修二の首へ左腕を回し、コメカミへ拳銃を突き付けていた。
「動くな!」
水城は南雲達へ向けて、威圧で怒りの咆哮を発した。
南雲達は立ち止まり、マジマジと拳銃を見つめる。
「動いたら殺すぞ! 俺がトリガーを引けばコイツは即死だからな! いくら人間じゃない体力のお前達でも脳髄を破壊されたら簡単に死ぬだろうな!」
水城は『覇気使い』全員が敵になると思い、修二を人質と取ったのだ。
だが……
「殺れよ。別にソイツが死んでも構わないぜ? 俺には関係ねぇからよ」
南雲は非常にも修二を殺せと水城に命令したのだ。
「だそうだぞ? 早く引き金を引けよ。エリートさんよ?」
修二も早く引き金を引けと水城を急かしていた。煽る目的もなく真面目に殺せと言っていたのだ。
「な、何言ってるんですか!? 桐崎さんも止めてくださいよ!」
「修二……死んでも地獄で元気でな!」
満面の笑みでサムズアップし、地獄行く前提で話を進めていた。
「桐崎さんまで!」
「ほら、早く殺れよ。じゃないとテメェから殺るぞ、ボケ!」
「早く殺れボケ!」
南雲が先に言って、何故か人質なのに強気な修二まで言い初め、水城の頭は戸惑い躊躇していた。
(どうする? コイツを殺せば俺は助かる。だが、次はコイツ等の仲間と戦わないといけなくなる。ここで殺さないってなると、チンピラのコイツにボコボコされる……どっちを選ぶべきだ?)
「……どうやらできねぇ様だな。じゃあ、しょうがねぇな」
拳銃を右手でガッチリと包み、『太陽』の熱で溶かした。
溶かした後、首締めしている水城ごと持ち上げて立ち上がり、気だるげな表情だった。
「お、お前……あれだけ殴られて、何故元気なんだ!?」
それもそうだ。人間の急所ばかり狙って攻撃し、戦闘不能まで追い込んだ筈だったのに……元気にピンピンと立ち上がっているから、水城は唖然とするしかなかった。
「あ? アレか? 鼻痛いけど、折れてもねぇし、歯も折れてねぇから大丈夫だ。あの程度のことは輝さんから散々やられた。耐性ついてねぇのがおかしいぜ」
どうやら修二は五年間、輝から瀕死に近い攻撃ばかり受けて、急所に対する攻撃は我慢できる程だ。
耐えられると言っても痛いには変わりないのだ。
「さてと……よし、ここから選手交代だ。おい、木戸! 俺と変われ」
急激な新展開に木戸の頭は理解できず、呆然とするしかなかった。それは敵である水城も同じだった。
「し、師匠! 私はまだ未熟ですよ。ちゃんと『覇気』を扱える訳じゃないですし……」
あまりにも急遽過ぎて準備できていない状況なので、時間を欲しいと修二に木戸は訴えるのだった。
「関係ねぇよ。誰しもちゃんとした準備なんてできやしねぇよ。俺もコイツもお前もな?」
「でも、経験が!」
「だったら逃げるか? 俺は構わねぇぞ、お前がケツまくって逃げたら俺がコイツをボコして終いだ。けど、今しかねぇぞ? 今しか全員に認められないぞ? コレがお前に与える最終試験だ」
木戸の身体は震え鳥肌が立ち、足りない頭で考えた。
(今……本当に今しかない……師匠に勝手で巻き込まれてしまっただけなのに……けど、もう引き返さないから……いや引き返したくないから……)
「……やります……私が、その人を倒します!」
色々と悩みに考えた結果、決意が固まり、木戸は覚悟した瞳で修二を見て、返答した。
「聞いた通りだ。悪いが水城さんよ……離れてくれねぇか? 交代なんだよ。今すぐ降りねぇと……その腕潰すぞ?」
修二から人間とも思えない凄味を感じ、水城は怯えながら腕を緩め、遠くまで離れたのだ。
「あ~疲れた。さて、始めるか時間もねぇからな……」
「ま、待て! 俺が勝ったらどうするんだ? 追わないと約束してくれるか?」
ハッと我に帰り、水城は自分が勝利した時の待遇を尋ねた。
「好きにしろよ。物足りねぇなら、今巻き付いている『土』で、俺の足を潰して良いぜ? それならどうだ?」
「そ、それで構わない……」
水城にとっては、これ程の厚待遇は無かった。邪魔者である品川修二の右足を潰せて、更に逃走できて追いかけられない、一石二鳥なのだ。
それも今から戦う小娘は、まだちゃんとした『覇気』が使えない人間、これも水城にとっては好都合だ。
(適当に倒して、早く逃げよう。コイツと一緒にいると俺の経歴に傷がつくからな……)
気を取り直した水城は再び柔道の構えで、木戸と相見える。
動けない修二に南雲は近づいて、コソコソと耳打ちで話す。
「木戸で大丈夫なのか?」
「まあ見てろ。一番努力した奴が覚えたてのエリートごときに負ける訳ねぇって証明してやるよ」
「エリートね……俺は天才だから関係ないが、エリート様が何処まで出来るのか見せて貰おうじゃねぇか」
「偉そうなこと言ってる所悪いが、アイツは『土の覇気使い』だ。地面って通電しねぇから相性かなり悪いぞ?」
かなり相性が悪いと知り、南雲は不機嫌な表情で考え込むと……
「……行け、木戸! ソイツは殺しても構わん! 後で口裏合わせて事故で済ませてやるから!」
弁護士なのに物騒な事を言い出した南雲へ対して、木戸はドン引きしていた。
そうやりとりしていると木戸は油断している為、水城は間合いへと入り、遠慮なく顔へ目掛けて左ストレートで倒そうと来た。
(これで終わりだ!)
顔に一発だけ当たれば後は気絶し、こっちの勝利だと確証した。と、水城は予想し行動に出た。
だが、そんな浅はかな思考が仇となった。
「え?」
水城は顎に痛みがあり、何故か近づいたの筈が、逆に木戸から遠く離れていた上、仰向けで倒れていた。
「……」
水城から木戸を見ると右アッパーで殴り終わった後の構えだった。
(一体……何が! おかしい、確か俺が先に……どういう事だ!)
水城は困惑し、状況が全く理解できなかったのだ。
「敵さん、わけ分かんねぇっていう顔してんな?」
「当たり前だ。今まで『覇気』の能力ばかり頼ってきたんだ。木戸との発動時間が桁違いだ」
修二と南雲は水城がダメージを負った理由は理解していた。そして木戸の動きや攻撃も細かくしっかりと見ていた。
「……」
木戸はただ倒れている水城を見ているだけだった。
「舐めやがって!」
勝手に見下した態度と思い水城は激情し、立ち上がり、なりふり構わない突進で、木戸へ襲撃したのだ。
「……」
しっかりと動きを見ている木戸は、大して苦労する事もなく、避けれる。そのがら空きとなったボディへ木戸は、岩漿を覆った膝で蹴ったのだ。
水城は今まで味わった事のない、痛みで絶叫し、倒れた。
「おい、立てよオッサン。まだ終わってねぇぞ!」
ヤンキーモードに入った木戸は、容赦なく倒れている水城の脇腹へ、思い切り岩漿纏った状態で蹴った。
水城は土を纏っている筈なのに、火傷を感じるのがおかしかった。蹴られた痛みと同時に焼かれる痛みもあるので耐えられなかった。
その理屈は簡単だった。岩漿というのは火を含んだ土であり、土で防御してもマグマを防ぐ事は不可能だったのだ。
「はあはあはあはあ……」
荒く水城は息を繰り返して、恐怖さえ感じていた。もうコレ以上は戦いたくないと、エリートとしてのプライドはズタズタになっていた。
「オラァッ!」
最後として木戸は水城に再び思い切り蹴る素振りを見せた……
「ま、参った! 俺の負けだ! 許してくれぇぇぇぇぇッ!」
水城の必死な慟哭が木戸へ降参を告げた。
「……」
蹴るのを止めて木戸は、泣いて踞る水城をジッと見ていた。
「終わりだ木戸、帰るぞ」
拘束されている修二は右足に纏った土を自力で破壊して解放された。木戸へ近づき、帰ろうと提案する。
「はい!」
木戸のヤンキーモードが解除され、歓喜でスッキリした表情で返答した。
「ちょっと待ってくれるか?」
入口まで全員で向かう途中、修二は何か思い出して、水城へと近づいた。
「おい、『アトラス財団』って何だ? お前の雇い主か?」
「……」
恐怖で水城は返答することが出来なかった。
「……まあいいや。じゃあ、今回だけは見逃してやるよ……とっとと消えろ、それから二度と刑事さんに近づくな。分かったな?」
「は、はい」
立ち上がり、裏口へ向かって水城は逃走したのだ。
「良い情報あったのか?」
「まあな。敵の名前が分かった……『アトラス財団』だ。次の喧嘩相手は……」
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「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
小さなパン屋の恋物語
あさの紅茶
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住宅地にひっそりと佇む小さなパン屋さん。
毎日美味しいパンを心を込めて焼いている。
一人でお店を切り盛りしてがむしゃらに働いている、そんな毎日に何の疑問も感じていなかった。
いつもの日常。
いつものルーチンワーク。
◆小さなパン屋minamiのオーナー◆
南部琴葉(ナンブコトハ) 25
早瀬設計事務所の御曹司にして若き副社長。
自分の仕事に誇りを持ち、建築士としてもバリバリ働く。
この先もずっと仕事人間なんだろう。
別にそれで構わない。
そんな風に思っていた。
◆早瀬設計事務所 副社長◆
早瀬雄大(ハヤセユウダイ) 27
二人の出会いはたったひとつのパンだった。
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作中に出てきます三浦杏奈のスピンオフ【そんな恋もありかなって。】もどうぞよろしくお願い致します。
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