いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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26:砂漠人は長寿

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これが、恥ずか死ねるというものなのだろうか?
経験がないわけではないし、少ないこともない。
だが、こっぱずかしい。

すぐにシャワーを浴びようとすると、マティスが後ろから抱き着いてきた。
「洗ってやろう、おなじ香りをまとうのだろう?俺と同じように洗わないとな。」

なんだ、その理屈は?
手慣れている。ん?20歳の時に砂漠にほりだされて、怪我したんだよね?
あの傷でダメになったと。てか、あんた、いくつ?1年が同じ長さではないとは思うんだけど。

いつの間にか使いこなしているシャワーでやわらかい暖かな湯を出し、
うすいグリーンの石鹸を泡立てていたマティスに聞いた。

「マティスさんや、君は今いくつなのかね?」
「なんだ、そのしゃべり方は?ほら、うしろを向いて。
いくつ?歳か?次の雨の日で58だ。」
「うそ?やっぱり1年は短いの?えっとじゃ、その平均寿命ってどれくらい?タロスさんはいくつで亡くなられたの?」
思わず振り返った。
「なんだ?前から洗ってほしいのか?」
「いや、違うから」
後ろを向き、背と腰とを丁寧に洗っていく。手で!

「タロスは長生きだった。砂漠人は長寿だ。216歳だ。平均は170ぐらいかな?」
「・・・」

時間の流れが完全に違う。
40回で1度の合わさりの月が18回。720日。1年は1年で1日が短いと思っていた。
成長の速度も違うんだ。単純に2から3倍の違いだとしても
20で家を出るということはその時にはもう成人してるってことだ。

考え込んでいると、両の胸を後ろから洗い始めた。
あ、気持ちい・・ではないっ!!

「マティスさんや、残念なお知らせですよ。」
「え?いやな香りだったか?」
「・・・香りにこだわるね。ううん、好きだよ。そうじゃなくて、
 こういう聞き方嫌なんだけど、わたし、いくつに見える?こちらの世界的に。」
「?成人したてのようだが、話しぶりや、しぐさを考えると同じぐらいか、少し下か、48ぐらいか?」
「・・・正解。なぜ、あてるんだ?もうね、りっぱなおばさんなのよ。さっきの子供の話もたぶん授からないよ。」
「おばさん?何を言う。そのおばさんってのは中年の女性の事だろう?同じ意味だよな?
  おばさんって呼ばれるのは130ぐらいだ。これは、女性によっては大問題らしいが。」
「130?50ぐらい?そうね、人によっては大問題だけど、その感覚は同じだね。
 でね、わたしの世界の平均寿命は80ぐらい。48にしてはいいからだけど、これ、願望が入ってるから。
 120歳ぐらいでも素敵な女性いるでしょ?それだと思って。熟女的な。
 それで、子供をもう授からない年齢ってあるとおもうんだけど、その年齢ぐらいなの、わたし。
 んで、わたしもあと30年ぐらいで死んじゃう。わかるかな?」

「どうして?どうして?」

力の恐ろしさを知った時より青ざめている。

「時間の長さと成長速度が違う。そして寿命も。」
「たった30年なのか?どうして?」
「1年の長さが違うからマティスの言う30年とわたしの30年は違うからマティス的にはもっと短いかな?」
「いやだ、いやだ!!」
「あ!!駄目よ。落ち着いて、ね?」

振り返り、また泣いているマティスを抱きしめた。
結構泣くね。時間の流れまで干渉してしまうとそれこそ収拾がつかない。
生きるのがつとめだ。その長さを変えることはない。努力はするが。

「この石鹸で髪も洗えるの?いいね。マティスの髪はさらさらだものね。
マティス、お風呂に浸かっておいで?あとはちゃちゃと自分で洗うから?ね?」

放心してるマティスの背中を押し、湯舟に浸かるようにいう。
ふらふらと、入っていく。あ、手摺付けよう。

思ったよりも泡立ちのいい石鹸で、髪も、おまたも洗う。
全身シャンプーいいよね。
年齢問題寿命問題。さすが異世界。尺が違うとは。
いや、エルフが長寿で悲哀ってのはあったな?パターンGぐらい?
まだまだ心のどこかで物語のようだと思っている。


分かっている、現実問題だ。



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