いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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月が沈んだ後の明るさなのに、月が昇っている。
さくさくと砂を踏み固めて歩く。
街中ではく靴よりも一回り大きい。やわらかい革底を使っている。
沈まず疲れない。

彼女の手を引き、砂漠の奥へとすすむ。
砂トカゲが眠っている場所だ。
普段は競争のように石を集めまわり、お互いに攻撃しあうが、月が昇るとみな同じ場所で眠りにつく。
サボテンの近くは人気の場所のようでよく固まって眠っている。
固まるから余計に砂と区別がつきにくい。

合わさりの月の夜は砂漠にはでない。
しかし、ほかの夜には出ることもある。食料の調達のためだ。

爆裂を避けるように石を集め、トカゲと奪い合う。
石とトカゲが手に入れはそれでいいのだが、トカゲに邪魔されずに収穫していくと
トカゲが手に入らない。
石が多い代わりに食料がないのだ。
ゼムが来れば、いつも以上に集めた石を食料に変えればいい。だが、それまでは心もとない。
石があっても、食うに困るのだ。

なので、もうけすぎると夜に砂漠に出る。
タロスは、

石があるってことは余裕があるってことだ
欲に流されることはすくない

といっていた。
たしかに、食料目当てなのだから、その欲だけが膨れ上がる。
しかし、押えないと砂トカゲを狩りつくす。
はやくかえってうまい料理にする、はやくかえって湯あみをする。

早く帰るという欲も同じように出す。
過ぎたる欲は身を亡ぼすが、次につながる。

タロスの木でできた扉を閉じて彼女はまたひと撫でした。

「では、行ってきます。留守中よろしくお願いします。」

見る間に見えなくなった。
これでは、焼け跡を探しても何も見つけられなかっただろう。


「では食料を確保に行こう!早く帰ってピザを作ろう!
ピザは明日のお昼がいいかな?それより肉だよ、うまい肉!」

「若い砂トカゲを狩ろう。干し肉にしないですぐに食べるのなら若いほうが格段にうまい。」
「おお、かわいそうなんてびた一文思わん!行こう!」

手をつなぎ砂漠の奥へと向かっていく。
最初は楽し気にあたりを見、空を見上げ、明るい、ほしがないなどと話をしていた。

黙って2人で進む。

月も砂漠も馬、駱駝。
同じものがある。違うのは月の数、生殖、時の長さ。

これから変わるかもしれないと、いった顔が物悲しかった。
同じ音で言葉を話し、同じ時間を生きたい。

抱きしめ、口づけを送る。
彼女の欲が手に取るようにわかる。

欲と同じにあふれる蜜。
砂漠での欲の抑え方を知らない彼女はただただ求める。

これがわたしより先に老いていくのか?
年老いていくのはいい、同じ時間を進むのならば。
それとも、突然ここに来たように突然戻るようなことがあるのか?
母がいなくなった時の父のように受け入れられるのか?

縋りつく手に指輪が光る。
銀色の指輪。石はお互いが送りあおうと、緑の石を欲しがった。
この世界で一番ものを送ろう。

雨の日に契を交わし、指輪を送る。
指輪を送る意味も同じだというが、こちらのほうが強いだろう。
契約の証。相手を縛る。指輪を嵌めている女性は契の相手がいる。
雨の日に来ず、次の日に指輪を嵌めていれば、
男は指輪を嵌めていない違う女を誘うことになる。
男が指輪をすることはない少ない。数人の女性と契を交わすのだから
その数分指輪を嵌めることになる。
私はこれから先この指輪以外を嵌めることはない。
彼女はいう、
マティスのものはわたしのもの。わたしのものはわたしのもの。

彼女は誰のもの?

『お前は私のものだ。私と一緒に生きるんだ。』


黒い瞳を見つめ、力を込めて、無意識ではない、そう願った。
これで私のものだ。

蜜があふれ、滴るのが分かる。
少し困ったように微笑みながら、彼女は崩れ落ちた。


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