いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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49:トランポリン

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マティスの部屋は空間とトイレだけでいいと言われた。
残念、乙女チックにしたかったのに。
トレーニングルームというか小運動場をさらに地下に作る。
天井も高くした。トイレとシャワールーム。風呂まではいらぬとのこと。
床は土のままのところと、少し固めのタイル、
そして少しやわらかめのクッション性のある床。
ものすごくふわふわとした床。

「これは?」
「おわったの?」

肉の仕込みと自分の部屋の改造が終わったのか、
下に降りてきたマティスが床をふみふみやってきた。

「こっちきてみ?その荷物はそっちに置いて。
 そんでこう、わたしと組みあってみ?」

「組み合う?こうか?」
「・・・違います。これは抱き合ううです。」
「はは、そうか?」
「ほれ、剣士の訓練とかで2人一組で格闘するみたいな組み手。乱取り。」
「ああ、わかる。ん?お前にするのか?」
「そうそう、してみ?」
「うむ」

ふふ、なにを隠そう、少しの心得はあるのだよ。
ただ、組に行くまでがどんさくて、どうしようもなかった。
組めば、先手必勝。

バタン

「え?」

体落としである。

「どう?」

「え?」
「いやいや、放心しすぎだよ?え?脳震盪?うそ?やだ!」

頬をさするが、目線だけこちらによこす。
「投げられたのか?」
「投げる、というより払った?」
「戦闘の経験もあるのか?」
「ないない、これだけ。相手が今みたいに組んでくれないとできんのよ。
ちょっと、思い出してね。これの練習でね、こう、ゴムを引っ張って腰をひねるんだけど、
それのおかげで太ってる割には腰は細かったんよ。おなかは出てたんだけどね。」
「・・・そうか」
「で、ちょっと投げてみたくて床はちょっとやわらかめ。で、こっち。」

ふわふわの床の上に2人で立つ。トランポリン状態。

「ちょっと、飛んでみよう。ほら。」

ぼよーん、ぼよーんと屈伸運動から上へと飛び上がる。
そして落下。その反動でまた上に。
「こ、これは、楽し、い、な。」
「うん、シェイプアップになるよ。」
「減量?」
「で、こう。」

上で止まる。
「え?」

マティスはわたしが浮かせている。
浮く、飛べる。
夢の中だと思っていたから理屈もなくできたものだ。
よかった。最初にこれができて。
いろいろ分かった状態でこれはできない。ブレーキがかかる。
でも、一度できてしまえばこんなものだと、適当法が適用される。
思い込みだ。

「わたしは浮けるし、飛べるのよ。
 こうね、物が下に落ちるのは重力が働いてるから。これは向こうもこっちも同じ。
 でもさ、その重力、こう、下に引っ張る力ね、これと飛び上がる力が強ければ飛ぶ。
 でも、飛び上がる力は筋力に比例するから、引っ張る力を少なくする。で、飛ぶ。
 同じにすれば浮く。早く移動するのは、慣性の法則で加速する。空気抵抗をなくす。」

物理の教授が怒りそうだが、すいません。思い込みが大事なので。

「???」
マティスはわたしの手を握ったまま、きょとん顔だ。

「ま、理屈はわからなくていいよ、できるってことが分かれば。」

浮くのをやめ、落下。ボヨンボヨンと止まる。
固い床に移動すれば違和感だけが残る。この感覚が結構好き。

「俺も飛べる?」
「うん、大丈夫だとおもうよ~。
飛び上がる感覚覚えて、少しづつ止まってみ?ほれ、練習!練習!」

今度は一人でトランポリン。
ボヨンボヨンと上で止まる滞空時間が長くなる。
さすがだ。

けど、ちょっと単純すぎる。
人間やればできる。ってことか?

ん?子供のころにあこがれたカンフーもいけるか?
からだが動くか?夢の中では、蛇拳と酔拳もマスターした。

おお、動く、コザックダンスのように低い位置からの回し蹴り、バク転、バク中。

はぁはぁ・・・
体力は続かない、筋肉きれそう。

「すごいな!高原の民でもそんな軽やかな動きはできないぞ!」

「はぁ、はぁ、そ、な、の・・?」

高原の皆さんは戦闘民族なのか?
そんなことより、もう、死ぬ。
よよよ、と横になる。

「持久力はないのだな?ほら?飯は持ってきてる。ここで食べるか?
まずは水か?」


声も出ずうなずき冷たい水をもらう。はぁー、生き返る。
「いやー、体は動くけど、体力がない。明日は筋肉痛だ。」
「きれいな動きだった。舞のようだった。どこで習得したんだ?師は?」
「いやいや、師というか、こういうのをやっている人がいたのよ.
 子供のころ、まねて遊んでたのね。
 で、この世界では思った通り動けるでしょ?それでやってみただけ。」
「そうなのか?その人は名のある武闘家なのだな。」
「・・・うん、超有名。」
「そうだろうな。あ、飯はどうする?」
「マティスは?」
「もうすこし、飛ぶ練習をしたい。もう少しで習得できそうなんだ。」
「そっか、んじゃ、練習してて?わたしはもう少しごそごそしときたい。
 ご飯は後でいっしょに食べよう。」
「そうか?待たせはしないとおもう。もう少しなんだ。」
「うん、そんな感じだね。人間やればできる。」

トランポリンに戻るマティスを見つつ、
もうすこし、ゆっくり型を思い出していく。

久々に汗がでる。
あ、最初に作ったトイレはサウナに大改造だ!

ふぅー、と息を吐き、両手を合わせて礼。なんとなく。

「見てくれ!ほら!」

見上げるとマティス。
おお、飛べてるね。

「すごいな!これは!」
「ははは、マティスはすごいなが口癖だね。」
「ああ、すごいが口癖だ!!」

うれしそう。
誰だって空が飛べればうれしいか。

「飛べても、最後に物をいうのは体力、筋肉だからね。
 筋肉は裏切らない。さ、ご飯にしよう。腹が減っては戦はできぬ。」
「・・・当たり前のようで、なかなか言葉にはしない、なんというか、
ものすごく納得できることをいつも言うな?」
「ん?名言ではないけど、こういうのないの?
そもそも言葉が違うから、理解してるだけで、こう、
韻を含んだ意味合いとか違うと思うよ?
ま、そこまでたいしたこと言ってないけどね、おなかすいたって話よ?」
「ははは、そうだ、飯にしよう。」

ちょっとやわらかい床に座って、ご飯にする。
リクエスト通り干し肉とサボテン、冷たい炭酸水。
汗をかいたので干し肉の塩辛さがちょうどいい。

「水にね、塩と砂糖をちょっといれると、汗かいたときにいいよ?
 レモン、すっぱい柑橘類を絞ればもっと飲みやすい。」
「ここにはないな。野菜類はサボテン以外はすべて乾燥させている。
 赤茄、玉葱とかな。芋類はそのままか。」
「赤茄?うまうましっぽに入って奴、トマトね。?へー、そこらへんはわかるよ。
 玉ねぎあるならハンバーグできるね。」
「ん?」
「お肉をさ、ミンチ、細かくして丸めて焼く。」
「わざわざ、細かくしてまた丸めるのか?」
「うん、そういうの。香辛料は?」
「胡椒と香子ぐらいだな。」
「胡椒はわかるけど、こうし?はしらないな。あとで教えて。」
「ん?」

なぜに、興味をしめす?料理はしないのだろう?という顔をするな。

「ハンバーグは作れるんよ。それが思ってる香辛料だったらね。」
「そうか、それは楽しみだな。」
「あ、期待はしないでよ。作れるってだけだから。味は別問題よ?」
「そうか?でも食べたい。」
「ハンバーグだけしかしくれんからね?あとの小麦焼きとかサボテンのサラダとかはお願いします。」
「ああ、2人で作ろう。」
「へへ、照れるね。」
「そうか?」
「うん、じゃ、上に行こう。シャワーも浴びたい。
あ、最初に作ったトイレ、サウナにしていい?」
「?それがなにかわからないが、便所は部屋にもあるにここにもあるのだろう?
好きにしてくれてかまわない。」
「うん、お風呂とつなげるれサウナにするね。」
「そうか、楽しみだ。」


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