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58:サボテンの森
しおりを挟む醜態を見せたが、いやなものはいやだ。
人を試すようなことも。
マティスが朝起きたときもあんな気持ちだったんだろうか。
9割はそんなことはない、とわかったいる。あとの1割が恐怖に震える。
扉君のもとを離れて、3時間ほどだろうか?
目の前に緑色が広がった。
砂丘を超えてすぐ、眼下に広がる。
食卓でよく見るサボテンも手前にあるが、
奥は、なんだっけ?バオバブ?上から蔓が降りその先に実がなっている。
が、はるか上空。ビルの20階建てぐらい?目がよくてもかろうじて実だとわかるぐらいだ。
元の世界なら実も蔓も見えないね。
「あれだ、酸味のある果実は。
実が落ちて、風に飛ばされて森近くに転がってくることがある。
飛べるから取り放題だ。あの蔓もロープとして優秀だぞ。」
お宝を目の前にしたようではしゃぐマティス。
酸味のある果実はぜひとも欲しい。
「よし、根こそぎ・・取るのはよくないけど、ある程度いただいてしまおう!」
サボテンの葉、これは新芽が柔らかくてジューシー。
バオバブもどきの実。正式名は逆さの木だそうだ。バオバブもそんな話もあったな。
小動物もいた。モグラのようなもの。
マティスが気づいた瞬間投げナイフを飛ばす。
「それ?おいしい?」
「丸焼きがうまい。中に米を詰めたものを食べたことがある。
うまかったぞ。小麦焼きばかりだが、チャクという小粒の穀物もある。それを詰めて食べてみよう」
湯に溶かしていた穀物のことかな?
「おお!!それはぜひとも食べたい!毛も使えそうかな?
あ、そのナイフいいね。柄がおしゃれだ。槍の柄もかっこいいしね。」
柄に金と銀の象嵌を施している。槍もそんな感じだったね。
「ああ、好きなんだ。こういう細工物が。」
「そうなんだ、きれいだね。作業部屋の素材どんどんつかってよ?
それでなんか作ってほしいな。指輪はあるから、ピアスがいいな。耳飾り。」
「・・・ああ。」
なんか、歯切れが悪い。またしてもこの世界ではいけないことだったか?
「あの、ダメならダメって教えてよ?
耳飾りがダメ?女性がねだるのがダメな奴?」
マティスは慌てて抱きしめてきた。
「ちがう!指輪をもらってしまったから、もらってばかりだから、
耳飾りを送ろうとして作っていたんだ。
それを言われてしまったから・・・」
「あはっ!そうなの?うれしい。耳飾り、欲しかったの。
ほんとにうれしい。待ってるね。」
プレゼントの中身を当てられたらそりゃがっかりするわな。
でも、うれしい。ちょっと落ち込んでるマティスもかわいい。
「もう少しなんだ。帰ったら渡せる。
・・・ああ、客次第か。」
「いいよ、そんな楽しみがあるなら、寛大な心で流せるよ。」
「そうか?そうだな。」
また抱きしめてキスされた。かわいいなー。
それから、森の中央に入り、バオバブもどきの実、
食べれそうなもの、珍しいもの、
知らないものを採取していった。
地面には大型な動物はいない。空にはいる。
大きい鳥もどき。鳥とはいいたくない大きさだ。
「あいつらは草食だ。逆さ木の実やサボテンの実を食べる。」
「砂トカゲはいないね?」
「サボテンの実はあるが、ここまで奥にくると砂漠石がない。」
「そういえば主食は砂漠石か。砂漠石って消化するの?
内臓の中に残ってないの?」
「食べるときにかみ砕くからほとんど残らない。
内臓はサボテンの実を消化するためにあるようなものだ。
だから臭みもないだろ?」
「なるほどね。」
「このサボテンの森の向こうはなにがあるの?」
「ここに来るまでの5倍ほどの距離を行くと、
同じような砂漠の終わりがある。別の国だ。」
そんなはなしをしながら、サボテンの肉巻きや、バケットサンド、
トカゲ肉の干し肉を食べた。飲み物は冷たい炭酸水。
中央から少し進むと開けたところに出た。
「わ!綿花だ!すごい!!」
コットンボールが一面に広がっていた。
「これが綿花なのか?これが木綿になるのか?」
「うん、わたしも生えてるのをはじめてみた。
小学校の理科室に標本があったんよ。それで、この綿花から糸にする方法がパネルに書いてあった。
うる覚えだけど、木綿の布ができるよ!!こんなとこで役立つとは!」
「学校?すごいな、高度な知識があるわけだ。」
「ん?小学校は子供のころに通うんだよ、全員。」
「全員か?すごいな。学校に通うのは貴族の一部だけだ。」
「そうなの?マティスは?」
「私は通うのではなく、教師がついていた。」
「おお、家庭教師。なんか、やっぱり違うね。街の人の識字率、文字を読めるの人ってどれくらいいてる?」
「少ない。本も高価だしな。数は覚える。教えてもらってるくくはないがな。
それではいけないということで、最近は無料の学校ができたそうだが、
みな、食べるので必死で通う子供は少ないそうだ。」
「なるほどね~。それはいつごろからあるの?」
「弟に代替わりしてすぐだ。」
「お、やるね~知識は財産だからね。」
「・・・弟を褒められると腹が立つ。」
「あははは、そういうない。子供を学校に通わすには給食を出せばいいのよ。」
「きゅしょく?食事か?それだけで?」
「そう、食べるのに必死だから働くわけでしょ?
一食分浮くなら、その一食分を稼ぐのに必要だった時間に
勉強ができるわけよ。で、出す給食は栄養がいいものね。
これで、病気もしなくなる。ま、お金はかかるけどね。将来のことを考えれば安いもんよ。」
「・・・素晴らしい!」
「あ、これ、わたしの考えじゃなくて元の世界も昔はそうだったって話。」
「それで、子供たちは学校に通ったのか?」
「うん。そうらしいよ。わたしの世代ではあたりまえだったもの。すごく昔の話。」
「やはり素晴らしいな。」
「もう少ししたら誰かが思いつくよ、元の世界のちょっと昔の時代って感じだもの。」
「そうか、ではいつか、愛しい人のように聡明な考え方の人間がたくさんできるということだな? 」
「ぶっ!聡明って、それは惚れた欲目よ。いろいろ問題もあるよ。
給食ひとつとっても、食べられないものがあったり、体が受け付けないものがでたり、
食中毒だったり。子供が集団ですごすからいじめとかね、そういうの。」
「いじめ?しごきか?隊でもあるぞ?」
「そういう奴のもっと陰湿なやつ。わたしの子供時代より、最近のはひどかったよ。
ニュース、うーんと全国に知らせるぐらいに。」
「全国?国中に?それはひどい。」
「なんでも元の世界のものがいいってわけでもない。
で、これってとってもいいかな?
こんだけあるってことは誰か栽培してるのかな?」
「いや、それはない。砂漠の民がここで栽培していたかもしれないが、
人が出入りしている様子はない。砂漠の民はタロスで最後なんだ。
昔、砂漠の民はここら辺を拠点にしてたらしい。この場所はタロスが教えてくれたんだ。
タロスの何代か前で、辺境に移り住んでる。それがみな街に移り
最後がタロスなんだ。そのタロスもここまで奥に入った事はないはずだ。
2人で来たときは会わずの月の前の日に出発して、サボテンの実と、
逆さの木を拾えればいいほうだった。すぐに戻らないと月が昇るからな。」
「そうか、野生化したもの?」
「そうだろう。いま、綿の栽培しているのは高原だ。
砂漠でも育つとは知らなかった。」
「んー、砂漠に強い植物だったよ、それで、塩害にも強い。たしか、ね。
全く同じじゃないけど、植物の進化の過程は大体同じっぽいから。」
「そうだな。これを摘んでいこう。そうすれば綿に困ることはないんだろ?」
「うん。呼び寄せるよ。中の種ごと。少しだけ残して、もらって帰ろう。」
『綿花、コットンボール、分けてくださいな。
ここで生きるに必要な分だけ残って。」
武器用の鞄、結局なんでもいれになったかばんの口を開けて
そういうと、ぽつりぽつり残り、後はすべて納まった。
「大収穫ですよ!!マティスさん!!」
「そうか、よかったな。さ、森が終わる。戻ろうか?」
「月が沈むまでどれくらい?」
綿花が広がった向こうの砂丘に2つ月が見える。
少しだけ離れている満月2つ。
そうか、月の満ち欠けがないんだ。
夜の砂漠、欲望が増長する。マティスはわたしがいればそれ以外の欲望がないといった。
わたしもそうだ。マティス、食欲、睡眠欲と。
「扉から出てここに到着したぐらいの長さだな。
ゆっくり飛んで帰っても大丈夫だぞ?帰りに狩りはしなくていいからな。」
「うん、じゃ、お風呂入っていこう。」
「え?風呂?なんで?がばちょするのか?ここで?」
がばちょが出し入れの意味合いになってる。
「いや、露天風呂。月見風呂。すぐ作るよ。そこで待ってて。」
不思議石を薄く伸ばして湯舟を作る。
これだと、ビニールプールみたいだから、砂に埋め。
固くした砂を突き詰める。岩肌風。
海峡石で湯を入れれば出来上がり。
「じゃーん、露天風呂。」
拍手の嵐だ。
「月見酒もしようか?寒くはないから冷でおいしかった日本酒を出すよ。」
それらしいグラスを作り、バッカスの石で酒を注いだ。
マティスは若いサボテンの葉を切ってくれている。
酸っぱい実もだ。味見させてもらったが、固くて、
噛むとグレープフルーツのような味だった。甘酸っぱい。
目を戻し、月明かりだけの中で風呂を楽しんだ。
温泉欲だ。
風呂に入るという。
見る間に、砂地に湯が満ちていく。素晴らしい。
外で、砂漠で、月明かりの下で湯に入るとは。
彼女に出会ってからは贅沢すぎる。
風呂も便所もそうだが、
目が覚めた後に湯を浴びるとか、コーヒーとか、
あの柔らかいくっしょんとか。
これはそれらの上を行く贅沢さだ。
その上を行く彼女の裸体。
恥ずかしげもなく、服を脱ぎ、こちらを向く。
「もう、洗わなくていいから、ざぶんとはいっちゃおう。
あ、服とかはそっちにおいてね。あふれたお湯で濡れちゃうよ。」
横に作ったのであろう棚に脱いだものを置いた。
トレーに酒が入ったグラスと切ったサボテン、逆さ木の実を並べている。
2人でつかるとなるほど湯があふれる。
トレーを浮かし、酒を注いでくれた。
「はい、召し上がれ。冷たくて飲みやすいけど、
お湯の中だから酔いが回りやすいよ。少しだけね。」
なるほど、水のように呑める。うまい酒だ。
「はぁぁ、おいしいね。この酸っぱいのもおいしい。カリコリする。」
湯につかり、酒を呑み、見上げれば月。
横には愛しい人。
「ん?どうした?」
グラスを横に置き、彼女が私にまたがるように
抱き付いてくる。
「悲しいわけじゃないよね?」
目じりに口づけを落とす。涙が流れていたようだ。
「悲しい?ああ、悲しい。
いつか、2人でいることが終わる。そう思うと悲しい。」
「ふふ、こまったマティスちゃん。いつかのことなんかどうでもいいから
いまのこと楽しんで?わたしといっしょに楽しんで?」
月を背に微笑む彼女はうつくしかった。
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