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60:帰る
しおりを挟むマティスはいろいろ考え込んでいる。
余計な事言ったかもしれない。
階段を下りたところで、灰だらけな体をきれいし、
とりあえず、まだ改造していないトイレにマティスをほり込んだ。
そのあいだ、薬草たちを植木鉢に移し、わたしは自分の部屋のトイレに。
ふーすっきり。
用は済ましたのか、トイレのそとで、ぼーっとしてる。
そのまま手を引き、風呂場に。
服を脱がせ、シャワーを掛け、頭から順に洗っていく。
目をつぶって、手をのばして、うーってして。
指示を出すと、そのように動く。
湯舟につからせ、水も飲ます。
ごきゅごきゅのんでる。
その間、わたしもさっくり洗う。
「さ、上がろう。」
わたしは湯舟に入らず、出る。これ以上は行ったらふやける。
下着だけはかせて、部屋に向かった。
荷物の整理は明日だ。
ベットに横になると、マティスはいつもとは逆に私の胸元を
ぐりぐりしてきた。
「疲れたね?変な時間だけどちょっと寝よう。ね?」
「うん。」
ポンポンとリズムよく背中をたたくと、マティスは眠りに入った。
さて、どうしたものか。
お家騒動のパターンここで展開したくはないな。
マティスも思うところはあるのだろう。
不安な気持ちというか、どろどろした気持ちが伝わってくる。
わたしがここにこなければどうなっていた?
まず、地響きが起こっていない。
ゼムのなんでもない祝いに食料も多めに持ってこない。
合わさりの月の日の石の数に変化があっても疑問はわかない。
たまたま変化があって、疑問が起きて、問答が始まったとしても、
あのまま、火をつけられて死ぬことはない。
わたしがそのまま眠らせただけだ。すぐに気が付いたかもしれない。
タロスの鞄に有った石を全部使ってそれこそ地下に逃げるだろう。
見張りを躱して、街に行くか?ゼムを頼って?
そこからは?やはり砂漠にいられないからどこかに行く?
どこ?違う砂漠?
弟君はそうしてほしかった?
この砂漠から出ていかせるタイミングを待っていた?
そうだとして、なんで?今?
時間の長さが違うと言っても、いままでほったらかしだったのに。
そもそも、マティス自身はなぜここにいた?
タロスさんに助けてもらってそのまま居ついたというのはわかる。
亡くなった後は?惰性?家を家探しされ、監視付きなのに?
国を離れることはやはり抵抗があるのか?
剣士になって辺境や隣国との国境まで行ってたのに?
母親と同じに自分もここではないどこかに行くのだろうって思っていたのに?
・・・わからんちん。
コーヒー飲もうかな。
こういう場合も起こしたほうがいいのか?
お互いの気配がわかるようになってるから大丈夫か?
感情まで分かるのは余計だったな。
・・・コーヒー。
呼び寄せてここで飲もうか?うん、そうしよう。
「・・・帰ろうと思う。」
「そう。」
コーヒーを飲むタイミングでマティスが起きてきた。
マティスはベットに、わたしは壁際の椅子に座っている。
「私は・・」
「あ、先にいいかな?」
マティスの感情がドロドロすぎて吐きそうだ。
『マティスとわたしはお互いが見える、認識できる。目視時のみ』
「?」
「どうぞ?」
「・・・弟、セサミナのもとに帰ろうと思う。
きっとなにかあったんだ。ここを離れる前に話をしておきたい。」
「そう、じゃ、早いほうがいいね。とりあえず、服着て、外に出よう。」
「・・・」
「早く!」
「ああ。」
2人で、外に出るためにまた準備を始めた。
心の中は驚くほど冷静だった。
彼女が家に帰ろうと言っている。
帰る?どこに?
「ああ、帰ろう。」
答えた後は、感情がうまく制御できない。
促され、便所、風呂、寝床へと移っていったのはわかる。
少し寝ようと、心地よく肩をたたいてくれるが、体は眠りに入ったのに、頭は逆に冴えてくる。
どうして?死んでほしくない?私が?
監視はあったがなにも接触してこなかった。
なにかあったのか?ここにいないほうがいいのか?
どうして?どうして?
コーヒーの香で目が覚める。
彼女がそばにいる。彼女に話さないと。
「・・・帰ろうと思う。」
「そう。」
ここで入れたのか?カップを口にしながら短く答えた。
「私は・・」
「あ、先にいいかな?」
『マティスとわたしはお互いが見える、認識できる。目視時のみ』
「?」
言霊を使ってる。なんだ?
「どうぞ?」
話を促された。
「・・・弟、セサミナのもとに帰ろうと思う。
きっとなにかあったんだ。ここを離れる前に話をしておきたい。」
「そう、じゃ、早いほうがいいね。とりあえず、服着て、外に出よう。」
「・・・」
「早く!」
「ああ。」
にこやかに服を着替え始める。なんだ、悩むことはなかった。
「先に植木鉢を外に出しとくね~」
部屋に戻った私に扉から顔をだして声を掛けてきた。
「重くないのか?はこぶぞ?」
「大丈夫浮かすから。そのまま外でまってるね~」
急いで身支度をし、耳飾りを小袋にいれた。
きれいだといった薄い赤い色をした砂漠石を金と銀で縁飾りをしたものだ。
気に入ってくれると嬉しい。
もう、上に上がったのか彼女の気配がない。
慌てて上がると、扉を外して立てかけていた。
「あのさ、この扉もらってもいいかな?」
「扉君か?いいぞ?持っていくんだから。」
「うん、ありがとう。薬草たちはまた戻しておいたよ。
せわしないことしちゃったね。大丈夫かな?」
「薬草は強いから大丈夫だ。
・・・また、そのドテラ?を着るのか?」
「うん。あ、鞄もってるね。」
『マティスのものはマティスの鞄に。あとはわたしの鞄に。』
「?」
「あ、扉君も入ったね。タロスさんの服、こっちにはいちゃったみたい。いい?もらっても?」
鞄に手を入れながら彼女がいう。
「いいさ。もうそれはお前にものだ。でも、なぜ分けるんだ?」
「言葉の力はうまく使うようにしないとね。
石の力を使ってる風にしないとだめだよ?気を付けてね。
制限掛けることもできると思うけど、ま、それは餞別ということで。
気付いた人の特権だろうし。」
「餞別?なに?」
「ん?ここで別れるのだよ。世話になったね。」
「なにを言ってる!!一緒に行くんだ!!離れないといった!!」
彼女はなにを言ってるんだ?別れるってなんだ?
「うん、わたしのことを一番に緑の目で欲してくれてるんだったらね。
いまはきれいな青だよ?」
「何の話をしている?緑の目?そんな話はしていない!」
彼女が私の目を覗き込む。
「んー、残念だ。わたしもまさかこんなに早く離れるとはおもわなかったよ。
わたしが死ぬ時だとおもってた。
弟君のところに”帰る”んでしょ?なにか困ってることがあったら助けるつもりで?
ここにずっといたのもそう?いつか帰るつもりだった?なにかあったら駆けつけるとか?
いいね、兄弟は。そこに、わたしはいらないのよ。」
「どうして!!」
「わたしマティスの事好きだもの。弟を助けることになったらわたしも手伝ってしまう。
それはダメだ。村人一人助けるのと領主を助けるとでは規模が違いすぎる。
責任は持てない。
マティスはわたしの力をすこしは当てにしたでしょ?」
「・・・少し、少しだ。」
「うん、わかってるよ、立ってるものは親でも使えってね。
でも、寝起きのマティスの感情はちょっときつかった。
人の気持ちは知らないほうがいいね。」
「感情?」
「そう、お互いを認識するために掛けた言葉に感情まで入ってたから
だから目視のみに変えたでしょ?」
「目視?」
「目で見えないと認識できない。」
「?」
「姿が見えないと、後ろにいてもわからないってこと。」
「なにをいってる?それよりどうして、それで別れるんだ?
弟のところに帰えらなければいいのか?
もう、帰らない、このまま街に行こう、野菜と布を仕入れて、違う砂漠に行こう。」
「いや、もう遅いよ。帰る場所は弟のところだよ。
今じゃなくても、いつか何かあったら
帰ることになる。」
「・・帰るといったからか?そんな言葉だけで?」
「そういっちゃうとそうだけど、わたしたちの会話は言葉の意味を
どういう気持ちでいってるかを理解してるでしょ?
帰るが行くに、尋ねるってなっても、伝わる気持ちは帰るになってるよ。」
「もう言わない!」
「うん、それとね、マティスは知ってる?マティスが本当に願ってる、欲してるときは
瞳が緑になってるの。だから緑の石がほしかった。さっきからずっと青いままだよ?」
「そんなのは知らない!私がほしいのはお前だけだ!!」
「うん、わたしもマティスだけ。でもね、マティスは弟君のところに行くことが、
なにか手助けすることが一番なってる。当たり前だよ。きっとなんかあったんだ。
兄弟だもの助けなきゃね。だからずっとここに居たんだもの。」
「だったら一緒でもいいじゃないか?何もしなくていい、横にいるだけでいいから!」
「無理だよ。寝起きのマティスの感情はドロドロしすぎて吐きそうだった!!」
「そんなのは知らない!」
「そうだね、自分でもわからない感情を他人が理解なんかできない。
今のわたしの気持ちをマティスが感じたら同じように吐くよ。」
「どうしてそんなことをいうんだ?これからいっしょに、
同じ時間を生きるって・・・2人で・・・」
「うん、なんでだろうね。
ははは、こうなったのがわたしがここに来たからだとおもったら、
ここから離れないといけない気がしてね。ごめんね。」
「謝るな!!どうして!どうして!!!」
「うん、どうしてかな?
あ、月が昇るまでに街に行きなよ。わたしはこのまま、
いろんなところに行ってみるよ。」
「ダメだと言ってる!」
「うん、一緒にいるのはダメだ。さ、時間がないよ。じゃあね。あ、指輪。」
彼女が指輪を外して私に握らせる。
「なんで?」
どうして?なんで?なにがだめだったんだ?
帰るといった言葉だけで?弟の事ことを考えたから?彼女の力に頼ろうとしたから?
「いや、なんかお揃いのもの持ってる、というのがね?
もう、いっしょにいないんだし。
返してもらうのも違うしね。悪いけど捨ててくれる?
売るのはまずいとおもうから」
彼女が私から離れていく。
なかったことにしようとしている。
「ふふ、マティス。優先順位ってのがあるのよ。
親兄弟のことが一番なのが当然よ。
この世界にわたしの親兄弟がたとえ死んでいたとしても、この世界にいたんなら
ついて行けたと思うよ。逆の立場でも、ついてきてほしい。
でもね、ここには親もいないし兄弟もいない、友達も。わたしだけだ。
わたしにはマティスだけ。なのに、マティスはわたしだけじゃない。
ひどい感情だわ、これ。まだまだおこちゃまだったね。
帰る場所がわたしだったらよかったのに。
わたしの瞳の色が変わるならいまはきっと緑だよ。」
「いってることが分からない!!理解できない!!」
「********?*******!」
「え?言葉がわからない?どうして?」
「!!!********?**********」
急に彼女と出会った時のように言葉がわからなくなった。
彼女は何か言ったが、にこりと微笑み頬に口づけをした瞬間に消えてしまった。
どこにもいない。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
世界が暗転する。
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