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62:4番目の息子
しおりを挟む「いらっしゃいませ。もう店は終わりなんですが?」
「すまないが、主を呼んでもらえないか?砂漠石を買い取ってもらいたい。」
「買い取りですか?そちらにお掛けになってお待ちください。」
あれから泣き崩れ、月が昇るぎりぎりまで待っていたが
彼女が戻ってくることはなかった。
夜になれば欲望が膨れ上がる。
彼女を求めるあまり、彼女の身によくないことが起こってしまうかもしれない。
急いで砂漠から離れ、人に見つからぬように街まで飛んで逃げた。
どうすればよかったのか、考えても答えは出ない。
帰るという言葉だけで別れなければならなかったのか?
いつか、帰るから?彼女は帰る場所もないのに?
私の感情に吐き気がしたといった。
あのとき、どんなことを考えた?
彼女の力を使えばなんでもできると?
使えば?物のように扱った?彼女を?
石使いが石を使うように、感謝の気持ちもなく?
ああ、吐き気がする。
弟のことを片付けないと彼女は会ってはくれない。
ゼムは大きな商店の主だ。売りも買いもする。
石の取引もするが、食料を扱うのが主体だ。
吐き気を無理やり抑え、静かに待つ。
応対をした若い男が大きな声でゼムを呼んでいた。
「だんな~ゼムのだんなー、お客さんですよ~。
石の買い取り依頼ですぅ~」
どんな奴だと聞いたんだろう、大きな声で、
「薄汚い辛気臭い顔をした男ですぅ~
盗んできた石の買い取りかもしれませんよぉ~」
奥からドスドスとゼムが慌ててやってきた。
「間抜け!そんなことをでっかい声で言うんじゃない!!
どーもお客様、若いもので物をしりません、どうか、ご容赦・・を?」
揉み手で近寄り顔を上げると、私の顔をみると、満面の笑みで笑い出した。
「なんだなんだ、お前さんか!!どうした、こんな時期に珍しいじゃないか?
お?そうか?わかったぜ!任せろ!な?」
「・・・ゼム、話があるんだ、人払いできるか?」
「そりゃ、そうだ、こいつはすまない。奥に行こう、な?」
若い男に大事な商談だから誰も来るなと、
人の風体を大声で言うなと、さっきの若い男の声より大きな声で話していた。
「さ、ここでいいだろ?貴族様との取引で使う部屋だ。
防音も石を使ってしてるんだ。座れ、座れ。
で?どんな女がいいんだ?どんな女でも紹介するぜ?
腕も目も治したんだ、もてるぜ、お前さんは。
タロスの再来っていわれるかもな!!
ん?目は赤いな?治りきってないのか?痛むのか?」
「ゼム、女の事じゃない。貴族の、領主セサミナと話がしたい。
繋ぎをつけてほしい。誰にも内緒で。」
「・・・それは。」
「知ってるんだろ?あいつは俺の弟だ。俺は前領主の4番目の息子だ。」
「・・・ああ、知ってる。街のだれもが知ってるさ。砂漠に住んでる息子だと。」
「そうか、ほかには?」
「容姿は知らないが、目と腕をやられてる、
タロスのところで世話になってそのまま居ついてる、
その、これは街のもんの認識だぞ?
統治者の責任を果たしていない放蕩息子で、けがを理由に領主に無心して生活していると。」
「ああ、あってるよ。なにも間違ってはいない。
その領主様に会いたいんだ。頼めるか?」
「頼めるかっていうが、どうして?」
「その噂通りだよ。生活できなくなったから無心するのさ。」
「何考えてるんだ!
石の採取で街のもんより稼ぎがいいお前が何をいってるんだ!え?」
「はは、ああ、稼ぎはよかったな。ゼムのおかげだ。ありがとう。
俺が直接行ってもおそらく門前払いになる。お願いだ。」
「何をいってる?お前が礼をいうのも珍しいが、
いままで、なにもなかったんだろ?今更どうして?」
「どうして?こっちが聞きたい。それを聞きに行くんだ。
早いほうがいいんだ。頼む。」
「頼むってどうしたんだ?取引があるから商談があると言えば、会えるだろう。」
「今からでも行けるか?」
「今から?もう月は昇ってるぞ?それにこの時期の夜はみな家に籠る。
早くても月が沈んで半分だ。」
「月が沈んですぐだ。」
「どうして?・・・ああ、わかった、わかった。沈むと同時に屋敷に向かおう。
珍しいものが手に入ったとかいえば、あってくれるだろう。それでいいか?」
「ああ、ありがとう。」
「また礼をいう、どうしたんだ?」
「・・・そんなに俺は礼を言ってなかったか?」
「そうだな、商人ではないんだし、貴族様なんだ、普通は礼は言わないだろ?」
「そうか?そうだな、傲慢だな。」
「いやいや、そんな風には思ってない。」
「頼みついでに月が沈むまでここで泊めてもらえないか?」
「そりゃ、今から砂漠に戻るのは無理だから構わないが、
それこそ女のところにいかないのか?その、あっちの方もなおったんだろ?」
「はは、それもみんな知ってるんだな。」
「そういう下世話な話のほうがみな飛びつくんだよ。で、どうだ?紹介するぞ?」
「いや、いいんだ。泊めてくれればいい。」
「そうか?それじゃ、飲みに行こう。この日はしけ込むか
酒を呑むかだ。な?」
「ゼムのおかみさんの相手をしなくてもいいのか?」
「昨日たっぷりだ。今晩は結構ですだとよ。がははは。」
「そうか、仲がいいな。」
「ん?なんだ、いままでこういう話は、そのよくないと思っていたが、
そうか、そうか、どれ、俺の嫁は世界一って話を聞かせたやろう。」
「え?俺の嫁は世界一?」
「そうだぞ!聞きたいか?そうか、そうか、じゃ、行こうか!!」
酒屋はゼムと同じように今晩はいいと断られた愛妻家や、
相手を見つけられなかったもの、今口説きの真っ最中なもの
結構な賑わいだった。
片っ端から高い酒を呑んでいく。
ゼムも上機嫌で、東西の食べ物や米のこと、綿花の事、
いろいろ話していく。どこの話になっても最後は
俺の嫁は世界一だという。
そう、私のことを称えくれていたのに。
はやく、迎え行かなくては。
ゼムがつぶれるまでの飲みあかし、
彼の屋敷の一室に泊まった。
少しすれば月が沈む。
彼女と一緒ではないと、眠くもならない。
ゼム自慢の風呂も借りたが、比べることもできない。
なにもかも違うのだ。
身支度を整えるために鞄の中を探る。
トカゲの革で作ってもらった鞄は
ゼムも絶賛してくれた。
染がないがその分、柄で動きがある。
売ってくれとまで言われたが、当然断った。
左手に付けた指輪と小指に嵌めた彼女の指輪も目ざとく見つけ、
準備がいいと笑われた。次はいい女を紹介してやると、また笑う。
もう嵌める相手は決まっているし、預かっているだけなんだ。
手を入れると中身が分かる仕様は食品庫と同じだ。
口に薄い砂漠石がついている。
元から家にあった家具類はこちらに来ている。
くっしょんもだ。
ああ、食料はすべてこっちだ。
はやく、はやく彼女を迎えに行かなければ、腹を空かせているに違いない。
いつでも使えるようにと分けてくれた砂漠石も大量にある。
金と銀も。
「ああ、バッカスの石もか。」
私の認識ではなく、彼女にの認識で振り分けられているのか?
街に行ったら売るつもりだった小さな海峡石もある。
しかし、小袋に入れた耳飾りがない。
彼女のものだと私が認識していたから?
気づいてくれているだろうか?
身につけてくれているだろうか?
月が沈むと同時に領主屋敷に向かった。
商人見習の風体だ。
珍しい色の海峡石が手に入ったから献上するという話にした。
一応現物をゼムに見せる。酒を出せることは言わなかった。
「おいおい、これはまた素晴らしい色、形だ。売ればいくらになるか?
いや、逆に売れねえな。大きすぎる。献上という形で領主様に媚を売るのが
一番の儲け方法だ。」
馬車の中で、今回のことで世話になったゼムに丸く成型した砂漠石を5つほど渡した。
こちらのほうがゼムにとっては大金になるようだ。
あのとき渡した石もうまく売りさばいたらしい。
こんなにもらえないと、さすがに恐縮していたが、米と小麦、布製品などを用意してもらうことにした。
「なんだ?嫁を迎える準備なのか?紹介はいいっていうし、もう相手は決まってるのか?
で、領主様に報告ってことか?なるほどな。
暗い顔してたから、心配して損したぜ。祝いはこれらとは別にさせてくれ。」
「ああ、ありがとう。」
「ははは、いいな、感謝の言葉は。」
「そうだな。」
たわいのない話をしているうちに屋敷へ付き、門番に取次ぎをしてもらう。
珍しい海峡石が出たから献上しに来たとゼムがいうとすぐに通してくれた。
私はうつむき加減で後ろを付いていく。
昔と変わらない。いや、無駄な豪華さがなくなっている。
取次ぎが領主の到着を報告する。
頭を下げたまま声がかかるのを待った。
「ゼム、久しいな?うむ。」
私たちの前に座る。
「ゼム、ご苦労、下がっていいぞ。兄上と内密の話があるからな。」
「へ?はっ、失礼いたします。」
ゼムはそそくさと部屋から出ていった。
顔を上げると嬉しそうに笑っている弟がいた。
大失敗である。
目の前に広がる砂漠に、落とし穴を作り小さくした石を撒いた。
じっと見ている時間ももったいないので、その間に、
サボテンの実、サボテンの若葉、マティスが喜んでとっていた黒い小さな実、
逆さ木の実、ロープにする蔓、これは食べれるのか?と要検証物件の実を取っていった。
もうすぐ月が昇るのか、少し薄暗くなってくる。
夜にトカゲは動かないから、採取は切り上げてわなを見に行く。
何もございませんでした。
だって、ここに石があるって誰もしらないもん。
今日はサボテンの実と葉でやけ酒だ!
なのに、バッカスの石がない。
呼んでも来ない。
どこかに引っかかっているのかと、すべての荷物を出したがない。
ああ、あれはマティスが決めた石だ。だからマティスのもの。
ちくしょう!食べ物の恨みはこわいぞ!!
取り出した荷物をまた鞄に戻していく。
食料関係は食糧庫に石関連は裏地で作った初代鞄に。
その他はトカゲ鞄。
見慣れない小袋があった。
ん?
「ああ、きれいだ。」
開けるとピンクの砂漠石を金と銀で縁取りしている。
マティスが作ったピアスだ。わたしにプレゼントするつもりだったから
こっちに来たのか。
もらってもいいかな?
いいよね。
でも付けられない。だって、耳に孔は開いてない。
親にもらった体だ。孔は開けたくなかった。
お守りになっちゃうね。大事にしよう。
あー、それにしてもお肉食べたい。
仕方がない、月が昇ったら、海峡石探しと
トカゲ狩りだ。
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