いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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91:散歩

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もともと長風呂のわたし。
母によくどこを洗ってるのだと聞かれていたが、別に何もしていない。
上せては浴槽の縁に座り、冷えたらまたつかる。

からだを洗い、髪も洗う。
上を見上げ星を見る。
口ずさむのはババンババンバンバンだ。
天井はないけどね。

かなり長いこと浸かってはいたが、星は動いてない?
真上に見えた、少し大きめの星はずっとあの位置だ。
ん?そういうものなのか?
やはりここの宇宙も知っている宇宙とは違うようだ。


石鹸屋さんがお祝いにとくれたものは、
ブラシとおそらくボディークリームだ。
石鹸と同じ香りのもので、肌に付けるとスッとなじむ。
いいな、これ。
ブラシも、髪をとくだけでまとまる。
こちらのブラシがすごいのか、髪質が変わったのか?

レースで作った下着を身に着け、
普通に服を着る。
細工は流々仕上げを御覧じろ、だ。ん?ちょっと違うか?

衝立の向こうからいい匂いがする。
マティスが料理上手で本当によかった。

「のぼせてないか?そろそろできるぞ?」
「はーい。」


テーブルに並べられた品々は、
今まで食べておいしかったもの、つまりすべてだ。
それを少しずつ。

「すごいすごい!ごちそうだね。」
「いま、窯でぴざも焼いている。もうすぐ焼けるぞ?」
「すごいー!!ピザ、あの説明でわかったの?」
「パンを薄くしたものに野菜と肉をのせてチーズも載せて焼くだけだろ?」
「そうだけど!うわー!うれしい!たべよう!飲み物は?
ビール?マティスのお酒?」
「この酒でどうだ?」

飲んだお酒はスパークリングワインのような軽めのものだ。
冷たくあっさりしてうまい。

「はー、いっぱい飲んじゃうね。ありがとう。」
「ああ、たべよう。」


出来立てのピザはうまかった。
チーズは伸びるようなものではなかったが、
うまく焦げ目がついてサクサクだった。
ここでもトカゲ肉は大活躍である。
焼きトマトもうまく酸味が出ておいしい。

そして数々の肉料理。
ローストビーフもある。いつのまに作ってくれていたのか?

デザートもあった。
最後のリコッタチーズで、木苺とサボテンの実、
リンゴもどきを混ぜ込んだものだ。もちろん、樹液蜜がかかってあり、
濃厚なお酒もかけるという。

「あ、ちょっとまって。」

明かりを落とし、
お酒をかけたあとに、赤の海峡石をつかって火をつけた。
フランベだ。

「おお!!」

青白い炎が甘い香りを炙る。

ふっと消えたときに、マティスがキスをしてくれた。
・・・照れる。


もちろん、デザートは1番のおいしさだった。



片付けを終え、指輪の加工に入る。


「え?裏に付けないの?」
「いつも見ておきたい。」
「見せびらかすもんでもないよ?何かにあたて、飛んで行ったら泣くよ?」
「・・・裏でいい」

うまくはめ込むことができたので
改めて指輪の交換となった。
石の大きさの関係で、少し大きめの指輪になったが、
砂漠石大先生にお願いして、ツートンの指輪になった。


「ありがとう」
「ありがとう」


2人同時にいったので笑ってしまった。

これから2人で星空のものと空中散歩に出かけるのだ。

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