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93:解釈
しおりを挟む砂漠石の膜まで戻り、
こういうことはさっさと済ますよっと、舞台を作りあげた。
左右から光を当てている。
舞台装置らしい。
私は離れたところで椅子に座っている。
彼女は腹の前に手を組み
目を閉じて歌い上げた。
愛し君を慈しむ
あなたが望むまで
小さな石がまた大きな石になるように
その石が世界に溶け込むまで
彼女の生まれた国の、国の歌だと。
いろいろ解釈はあるが、平和を願う歌だよと、
やたら念押しをされた。
愛の歌だった。
少しの沈黙。
惜しみない拍手を送った。
彼女は照れ臭そうに笑い、私の胸に飛び込んでくる。
ぐりぐりと頭をこすりながら。
「どんなふうに理解できた?」
「いや、音は拾えた。意味は頭の中で理解できた。
さざれ石が小さな石?いわおというのが大きな石?」
「あ、そんな感じに理解できたのね。あってるよ。」
「平和を願う歌なのか?愛の歌だと理解できたんだが。」
「あー、解釈はいろいろ。
最初の君を何に当てはめるかで違ってくるかな?
あなたでもいし、その時代の君主でもいいし。
なんせ、ずーっとだよーって意味。」
「・・・それはものすごく簡略化しているのはわかる。
だが、ありがとう。詩と言い、歌といい、私は幸せ者だな。」
「そういってもらうのはうれしいけど、
もう、賭け事の賞品が歌とかそういのはもう無しね。
あー、恥ずかしかった。
でも、思いっきり歌えてすっきりした。」
そうしてまた頭をぐりぐりしてきた。
これは照れ隠しなのか?
「今日は眠たくならないね。これだけ暗いのに。
興奮してるんだね。きっと。
さ、次は何しようか?森の中を探検しようか?
昼でも夜でもない、この時だけ咲く花とかがあるかもしれない。
虫はいやだけど。」
「そうだな。会わずの月の日にここまで来ることはなかったから、
さっきの石のようにこの日だけの何かがあるかもしれないな。
行ってみよう。念のため虫よけと、少し飯も持っていこう。」
「さすが、マティス。んじゃ行こうか。」
次は森を散策となった。
静かだった。
生き物はみな寝ているのか、夜行性の動物の気配もない。
虫もいない。
2人の足音だけが響く。
ガラスを組み合わせたものに光の海峡石をいれ、
宙に浮かしながら進む。
呼び寄せの応用らしい。
「難しく考えちゃだめよ?この光が浮いてれば持たなくていいから
便利よねーって思ってみ?」
彼女の力の発揮するところは、便利、楽、簡単がいい、だ。
「ん、んーーー、お、できた!」
「ね?あとは、ちょっと前に進んで光らせてーってお願いすればいいよ?」
「お願いか?なるほど。ああ、進んでくれてるな。ありがとう。」
「そ、感謝ね。これが当たり前になってしまうとだめなんよ。
と、いっても感謝の言葉を言ってるだけなんだけどね。」
「その心掛けが大事なんだろう?」
「そうだね。」
ピチョン
「ん?」
「ん?」
ピチョン
「・・・なんか水滴の音がするね。」
「そうだな。もっと奥からだ。」
森の中央には逆さ木の枯れた大木があったはずだ。
葉もなく実もつけない。
甘い匂いが立ち込める。
「これ、ちょっとまずい匂いだね。」
「・・・」
なにがまずいのだろうか?
はやくあの木のもとに行かなければ。
「マティス!!」
彼女が立ち止まり、手を引く。
なにを?早くいかないと。
彼女の手を思いっきり引き前に進む。
どん
「え?」
彼女がわたしの上に乗っている。
「これで、口と鼻押さえて。」
細長い布で口と鼻で塞いできた。
あ、2人の香りがする。
「あれ?」
「マティスマティス、しっかりして。」
しばし呆然となった。
彼女が言うには、この匂いはなにかを引き寄せるものだという。
元の世界でも匂いを出して、虫や動物を捕獲する植物があるそうだ。
「お前は大丈夫だったのか?」
「わたし、こういう甘ったるいにおい好きじゃないのよ。
で、自分の肌の匂いをかいでたの。ほれ。」
手首裏を鼻に持ってきた。
石鹸より柔らかい匂いがする。
「これ、石鹸屋さんがくれたローションの匂い。体に塗るオイルみたいなものね。」
「・・・あの木のもとに行かないといけに気がしていた。」
「うん。そのタオルに黒い実の樹液付けてるからそのまま巻いといて。
そんで、なにを引き寄せてるか観察しよう!」
「?」
「いままでこんな匂い嗅いだことなかったでしょ?
今日だけ。ということは、今日のこの日に何かを呼び寄せてるんだよ。
あの木のうろに水滴が落ちてるか、あふれてるか。
あの枯れている逆さ木が栄養を取るために動物を呼び寄せてるかも。
虫かもしれないけどね。匂いを嗅げて動ける動物なのは確かだ。
それとも、匂いは副産物で、もっと違う何か?
これはちょっと楽しくなってきたね。
どこぞにテントを張って、待機だよ!!」
彼女は嬉々と少し小さめのてんという砂漠石の幕を作り、
その中に寝そべるれるようにとクッションをならべ、
匂いが入らないようにすると、コーヒーを入れ出した。
ぽっとなるものに最初から入れたあるのだそうだ。
それでも、カップは祝いの白磁。砂糖も出してきた。
要は休憩である。
しかし、彼女がいなければ、私はあのままどうなっていたのだろうか?
とりあえず、匂いは入ってこなくなったので
彼女を後ろから抱き、彼女の匂いを嗅いで落ち着くことにした。
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