いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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124:激しい鍛錬

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「おや?以前より鋭くなってますね?なのに、おかしいですね?
頭部が記憶にあるままだ。マティス君?鍛錬をさぼっていたんですか?」
「鍛錬をしたからといって禿げるわけないだろう!!」
「そんなことはない!!激しい鍛錬をしたからこそわたしは禿げたんですよ!」
「ぶほぉぉぉぉ!!!」

彼女がのけ反って笑っている。こうなったらもうだめだ。
呼吸が落ち着くまで放っておかないと何を言っても笑い転げる。

「えっと?彼女?奥さん?大丈夫ですか?」
「・・・ああ、大丈夫だ。落ち着くまでほっておいてくれ。」

とりあえず、木の根元に座らせる。
はげしいはげ、はげるとつぶやいてはまた笑いだしている。

「ワイプ、こちらに。さっきいっていた、パンの菓子と
コーヒーを出してやろう。菓子、ラスクというんだがな、
これは私が作ったものだ。飲み物はこの組み合わせが好きなんだ。」
「マティス君の手作りだったとは!なんてついているんだ!いただきましょう!」

ラスク2種類とミルクがたっぷり入った甘いコーヒーを出してやる。

「なるほど、甘いものにはさらに甘いものですね。
乳と乳酪、それで草原に行くのですか?」
「いろいろだ。」

彼女が復活したようで、涙を拭きながら近づいてきた。
「失礼いたしました。初めまして、マティスの妻、モウと申します。」
また小さい声で、もうともうといいながら笑いをこらえている。
「ほら、モウ!お前の分も入れたから飲んで落ち着きなさい。」
「はーい。」
ワイプ、私、彼女の順に倒木に腰かけ、
ラスクを食べる。サバスの新作の飴の味やガムの話で
2人は仲良く話していた。私を挟んで。
「それで、なぜ空腹で倒れたんだ?お前らしくない。」
「そうなのです。今回の仕事は、詳し事は省きますが、ここの領主に
財産譲渡の時は前もって連絡を寄こすようにとの通達と
彼の兄上たちの財産譲渡の受領書を渡しにきたのです。
そんなことで、わたしが動くこともないのですが、
はんばあぐが目的だったんです。
それで、なにも用意せず向かってしまたんですよ。
はんばあぐ、これは王都で食べられるからいいんですがね。
それで、サバス殿に見送られて、
何も食べずに馬を走らせたのです。寝ずに。
寝ないことはしょっちゅうなのでかまわなかたんですが、
何も食べずにというのがまずかったようで。生き返りましたよ。
ああ、馬たちに水を、あ、何やらご機嫌のようですね。」
「ああ、お馬さんたちにはお水をあげときましたよ?」
「そうですか、奥さん、すいません。彼らはよく働いてくれるんですが、
約束を破ると後が大変なので助かりました。」
「昨日は私と気付かなかっただろう?なぜ今?」
「ああ、昔こうやって食べ物を出してくれた人がいたなと思い出したんですよ。
自慢じゃないが食べ物関連の記憶はいいほうなんですよ。」
「そうだな、自慢じゃないし、食べ物関連だけだな。サバスの名前は覚えられたのか?」
「ええ、彼のおかげですからね、彼は、わたしに一つの指針を光を与えてくれた恩人なのです。
名を覚えることなぞ当然ですよ。」
「・・・そうか。」
「で、食べ物関連と数字以外記憶にないのですが、一度覚えたことは後からいつでも思い出せる。
あなた?何やってるんですか?確かここの領主の兄君でしたよね?ん?
本格的に騎士団に入団する前に辞めたと記憶してますが、いままで何をしてたんですか?
料理の腕を磨いていたんですか?」
「ははは、そうだ、料理の腕をな。さっき食べた肉もうまかっただろう?」
「ええ!あれはうまかった。なんですかあれは?あの白い塊も!!あの黄色いものは卵ですよね?」
「白いものと卵は、モウ、妻が作ったんだ。」
「そうなんですか!奥さん!すばらしいですね!」
「ありがとうございます。あの2つだけは作れるんですよ。
そのほかはすべて主人が。」
「では最初に頂いたパンにはさんだものも?
マティス君、王都に行きましょう。いえ、わたしの家に!
そして毎日にわたしのご飯を作ってください!!」
「あははは、ワイプ様、その言葉は我が故郷では求婚の言葉ですよ?」
「ん?そうなるのですか?そのあたりは疎いもので。でも、どうですか?」
「ワイプ、お前は数字と食べ物と鍛錬のこと以外には無関心すぎる。
私も世間を勉強しろとはいわれたが、お前はそれ以上だ。
私は、王都にいかないし、ましてやお前の家なぞにはいかない。
今日の話は、生産院のメディングの財産が真名の宣言の書式に置いて
セサミナに移ったんだろう?
コットワッツの年間予算20年分を、引き取りに来てすぐ出せと言われても
用意できないから前もって知らせろと?違うか?」
「え?知っていたのですか?ああ、弟君ですもの、領主殿は。
そうなんですよ。知っているのなら話は早い。
箝口令が出てますが、そこまでご存じならいいでしょう。
20年分というのはわたしも知らなかった話です。しかし、20年ですか?それはそれは。
最近の資産院は王都中央院よりでね。今回のことは大騒ぎでしたよ。」
「資産院は辺境とも王都ともどちらに付かない公平な部署だと聞きましたが?
ね?あなた?」
彼女が心配そうに聞く。あなた!なんていい呼び掛けなんだ!!
 「え?マティス君?なにニヤついてるんですか?
お二方の笑いのとらえ方がわたしにはわかりませんね。
 ええ、奥さん、そうなんですよ。皆の資産を管理するので、常に公平です。
しかし、最近はダメですね。ダード院長になってから何かと王都側を優遇していますね。
資産院はみなの資産を預かって運営もしてるんですよ、融資とかね。
言葉はいいが、金貸しですがね。
それが露骨に王都寄りになっている。
ああ、思い出した。ダート院長はあなたの兄、名前は知りませんが、
その方の母親の兄にあたるなのだとか。その方も資産院で働いていますよ。
どこの部署のどの仕事とかは知りませんが。
資産院にも食堂がありましてね、そこが彼女の一言でなくなったんですよ。
その場所にサロン?を作るとかで。
だから覚えています。遅い時間でもだれかいてくれてましてね、いつでも、
暖かい食事ができたのに!!そとに出ればいくらでもありますよ?
しかし、その外に出る時間が惜しいのですよ!
わかりますか?」
「わからん」
「わかります!こう、勢いで仕事するからせめてその建物内で食事は済ませたいんですよね?
でもいったん外に出てしまうと流れは止まって帰りたくなる。
帰ると仕事は間に合わない!なにも食べずにすると効率は落ちる!その悪循環!!」
「そうです!そうです!それなんですよ!お偉い方にはそれをわかってもらえない!!」

「ここだよ?マティス!
 あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからんのです!」

「え?」
「うーん、近いけど、ちょっと違うか。」
「ああ、そういう風に使うのだな。そうだな、近かったな。」
「なんでしょうか?」
「いや、こちらのことだ。3番目の兄、リップルだな。そうか、資産院だったか。」
「まずいね、セサミンが取りに行っても文句言われそう。」
「そうだな。どうするか。・・・ワイプ?王都に戻るのか?」
「ええ、そうですよ?ここに向かう途中で、あなた方もあったでしょ?王都の人間。
あれに戻りは遅くなると伝えているんですがね。
あなた方の足が早ければ草原まで追うつもりだったので。
ここで会えてよかった。それで、申し訳ないですが、少し食料を分けてもらえないですが?
すぐに出たのでまたしてもなにも用意してないのです。
あなた方が一緒に来てくれれることが一番いいのですが、いかがです?」
「行かない。しかし、そうだな、もう月が昇る。
晩飯と、ここから王都までの食料を見繕ってやろう。
その代わり、セサミナがメディングの財産を受け取りに来た時に立ち会ってくれ。
彼がすることになんら問題がなければ、誰にも文句は言わせないでくれ。」
「?それはもちろん。わたしもそれなりに地位は有りますので立ち合いも同席するでしょうし、
問題がなければ、誰も文句はないでしょう。もちろん言わせませんよ?」
「必ずだ、必ず同席してほしい。誰が何といっても、病気になってもだ。」
「はぁ、必ず。ええ、必ずですね。お約束いたします。
それで、晩飯と王都までの食料をいただけるのでしたら。
この資産院のワイプ、必ず約束を果たしましょう。」
「よかった。一人でも公正な人がいればセサミンに分があるものね。
じゃぁ、晩御飯はなににしょうか?ここで、簡単にできるものって焼肉?」
「肉ですか?それはいいですね!それにしましょう!!」
「お前が決めるな!でも、それが一番手軽か。
もう少し進んで、森を抜けてしまおう。ここで暢気に食べているときに
もうひとりの王都の人間にかち合うのもまずいだろう。
私たちは先に抜けて、準備をしておくから、ワイプお前は馬たちに飼葉をやっとけ。
お前が空腹で倒れると同じで、彼らも空腹だろう。」
「ああ、そうですね。そうします。では、お手伝いはできませんが
それが終わったらそちらに行きますので。」
「じゃ、モウ、向こうに出てテントを張ろう。」
「はい、あなた。」







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