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146:いい商品
しおりを挟む首周りの布を下した時から、漂う匂い。
昔はこんなことはなかったはずだ。
街中ではいいが、人と話すときは失礼だろうと
彼女が言うので下したが、これはきついな。
おもわず、顔をしかめてしまう。
彼女は平気なのか?
驚いた顔はしている。
とにかく、はやく部屋に入ってしまおう。
「2人だ。数日泊まりたい。
衛兵の方に、ここのカニ料理が一番うまいと、宿もいいと紹介してもらったんだ。」
「ああ、そうですか。それはようこそ。海の幸と毛皮の都へ。
あの方は、よいお客様を紹介してくれるので助かりますよ。
どうぞ、カニを堪能していってください。
そこの向こうが食堂です。
5日で15リングを先にお願いします。」
15リングは少し高いと思ったが、
ここれ長居をするわけでもないし、値段の交渉もする気もおきないほど
臭い。
私の持っているリングでは足らないな。
「足しとくね。」
「そうだな。いや、手を入れて呼べば?」
「いや、そうなると際限なく使うよ?少しづつ移しておこう。」
「そうか。」
彼女が植木鉢を下さないで器用に鞄から出してくれた。
際限なく使っても、大丈夫なのに。
彼女は必要最低限なものしか欲しがらない。
食に関する以外は。
部屋にいくと、なるほど、15リングか。
窓、ガラスが嵌めてある。
彼女の作る砂漠石のほどの透明度はないが、
外からの明かりが入る。これはいいな。
彼女がテーブルに植木鉢を置き、背負子を下すと
また、植木鉢を抱え込んだ。
?
「どうした?」
「マティス、こっち、抱えてみ?」
「ん」
なんだ、そのうれしい誘いは。
彼女を後ろから抱きしめ、彼女の首元の匂いを思いっきり吸い込んだ。
はー、生き返る。
「なんで、そうお約束なの!説明が悪かったけど!」
彼女が嬉しそうに怒っている。
かわいいな。
なるほど、茶のガムか。
いいかもしれんな。
鋏はあるが、彼女が欲しがるのだ、必要で食に関係するものだろう。
「いってらっしゃい、気をつけてね。」
「ああ、行ってくる。何かあたらすぐ知らせろ。」
なんてすばらしい会話だろうか。
彼女は、照れながら、頬にきすもしてくれた。
ああ、もう一度。
ご飯食べる時間もそのあとの時間も無くなるよ?
といわれ泣く泣く離れた。
もう一度。
「いってらっしゃい、気をつけてね。」
「ああ、行ってくる。何かあたらすぐ知らせろ。」
ザバスの店まで移動すると、ちょうど客が出ていくところだった。
今は、ザバスだけか?ちょうどいい。
「ザバス。今いいか?」
店に入り、気配を戻す。
「はい、いらっしゃい。!!おい、どうした!
帰ったのか?嫁さんはどうした?やっぱり逃げられたか?」
「どうして、やっぱりなんだ。遣いを頼まれたんだ。
わるいが、これでガムを作ってほしい。
これで、作れる量の半分だけ。あとは好きなようにしてもいいと。
コムの茶葉だ。明日が一番茶だ。しってるか?」
「ああ、もちろん。合わさりの月の夜が1番茶だろ?
そこから4番、5番が馬の餌だ。
なるほど、鉢植えにすれば外に出なくても摘めるな。
ここはやはり砂漠が近いから合わさりの月の夜は外には出れないからな。
興味はあったんだ。茶の味のガムな、いいな。
ん?コムに行って戻ってきたのか?」
「そこらへんは気にするな。茶の味というか、今日摘めば味はしない。
その代わり今摘んで口に含むと、いやな臭いが消える。消臭だな。」
「なんだ、それじゃ、いつものガムと同じじゃないか?」
「いや、それは自分の口の匂いだけだろ?
吸い込む匂いが、いやな匂いが消える。葉先を噛んで、便所にいってみろ。
それでわかる。」
言われたことを半信半疑で試したザバスはこれはいいなと喜んでいる。
「茶葉はコムの特産品だ。セサミナに言えば取引できるようになるだろう。
いろいろ試してくれ。おそらく、明日摘めば、茶の味はするだろうが、
消臭効果はないかもしれない、もっと別の効果もあるかもしれない。
とにかく、今の段階で、この茶葉、半分でガムを作ってほしい。」
「そりゃかまわんよ。窯も空いてるし。薬草とおなじだ。
刻んで、混ぜればいい。なんだ?急ぎか?」
「まぁ、そうだ。妻を待たせているしな。それと、固いものでも切れる細身の鋏を2つ。」
「なんだ?それ?何に使う?」
「わからん、妻の要望だ。」
「はっ!妻ね。そういうときは本人と一緒にこいよ、ほかにもいろいろ
ザバスおすすめの商品があるんだからさ。」
「はは、そうなるから、今は我慢するんだと。よろしくと伝えるように言われている。
落ち着いたら連れてくるさ。」
「そうか?ま、おれはここにいるんだ。いつでもいいさ。」
「そうだ、ここに王都の人間が来ただろう?」
「おう!来た来た!ここに来る途中でガムをもらったとな。
お前たちのことだろ?あのパンの菓子も。
あいつはなかなか話のわかる奴だった。食うこと以外は間抜けだったがな。
最後には涙を流して、俺のことをザバス殿だとよ!笑ったね!!」
「あいつは、昔の知り合いなんだ。あいつに名を覚えられるのはよっぽどだぞ?
俺には君付けだ。」
「はははは!マティス君か?そりゃいいな?
ん?そいつが来たことなんで知ってるんだ?ああ、もういいさ。
さ、すぐに作るから、一応店は閉めておいてくれ。
鋏はその棚、自分で選んでくれ。嫁さんに土産も買っていけ。
新作の飴とガムをな。」
「ああ、そうする。悪いが急いでくれ。」
「わかってるって!!」
細身の鋏はこれだろうか?
同じものを2つ。念のため幅広のもの買う。
飴は赤と黄色。新作はこれだろうか?ガムは定番のものと
枸櫞味。ああ、木苺味はいいかもしれない。
これの飴もあった。
奥で作っているのだろう、大きな声でザバスが話しかけてくる。
「な?知ってるか?卵屋の話。
あいつもゼムと一緒でラーゼム出身だろ?それでか、今度は乳を扱うとかでさ。
領主さんも乗り気でかなりの支援したって話。
で、揺れねえ、氷をふんだんに使った馬車をつかって
乳を売り出したんだ。
しかしよ、そんな乳なんてあんまり飲むもんじゃねーだろ?
そしたら、領主が卵とその乳とをつかったぷりんってのを紹介したんだ。
これが、おまえ、すごいんだ。食べたことあるか?やわらかくてな、なんせ、うまいんだ。
で、卵屋が大儲けだ。みなもこぞって乳を買って、ついでに卵も買って
ちょっと奮発して砂糖と、樹脂蜜買って、自分の家で作ったんだ。
子供も大喜びだ。食堂でも出すようになった。さすが料理人が作ったものはうまいんだ。
それぞれの家で味が違うからな。あのはんばあぐのときのようにおおはやりさ。
そしたら卵屋の野郎、乳と卵の値段を3倍にしやがった。卵はいいさ、
家で飼ってる鶏が生んでくれればいいだ。でも、乳は、ラーゼムから運ぶのも
難しいし、氷もいる。揺れない馬車の仕組みは領主さんが資金を出したんだ、公開して
いまじゃ皆その仕組みを取り入れている。
で、ほかの奴が直接仕入れて来ようってなってな、ラーゼムに行ったんだ。
しかしよ、卵屋とラーゼムの方で話を付けたのか知らねえけど、
そもそもの乳の値段を上げやがった。氷もだ。
氷の取れる道を封鎖したんだ、ラーゼムの人間が。
いままで、そんな話は聞いたことはない。
領主さんもさ、あきれてさ。
乳で儲けが出たのなら、税を納めてもらいたいって。
そしたら、ラーゼムの連中大騒ぎだ。
そんなのは知らないとさ。いままでもここで生きてきて税なぞ納めてない、これからもだって。
いきなり取るわけにはいかないから、乳の販売を手助けしたんだって、
税を納めれば、道の整備もできるし、恩恵もあるって言ったらしいが、
そんなのあいつらが聞くわけがない。
そこで、終わりだ。
ゼムもあきれ返っていたぜ?チーズの扱いもやめちまった。
卵屋はいまでも乳を売ってるよ?5倍でだ。
あと、ゼムが扱ってたものもな。
それでも売れる。あのぷりんはその価値がある。
こうなる前にラーゼムから買ったメーウー4頭を増やす計画ができててな、
みなうまく繁殖できねえかとがんばってるんだ。
だからもう誰もラーゼムにいかない。
ここからラーゼムの道はもう誰も使わない。
使ってるのは卵屋だけだ。
コムまで直接行き来できる道を作ってる。
これもしってるか?コムの赤馬。砂漠まで行くことが少なくなってきて
ここいらじゃ、ゼムが数頭もっていただけだったがな。
あの赤馬はいいな。領主さんも数頭買ったらしい。
次に王都に行くときはあれで行くんじゃないか?
王都の連中驚くぜ?」
ザバスの話は相変わらず長いが、やはりな、と思うことだった。
慣れた手つきで話しながれもも、器用にガムを丸めていく。
すぐに固まるのか、カツンカツンと箱に入っていく。
「ほれ、できたぜ。半分の茶葉で10コだ。
あまり数はできないが、こんなもんだろ。」
「ああ、十分だ。この鋏2と、この形の違う鋏、
飴とガム、全部で合わせていくらだ?」
「そうだな、ああ、いい鋏を選んだな。ちょっと高いぞ?
3リングってとこだな。この茶のガムの金はいい。
うまくいったらこっちが儲かりそうだからな。
そうだ、爪切りにやすり付けた奴な、いま
スパイルで作ってもらってるんだ、いい考えだって言われたぜ?
うまく出来たら、買ってくれよ?
それに、耳かきな、あれ、ひそかに売れてんだ。
爆発的に売れないがあのくらいの間隔でうれる商品てのが
息の長い、いい商品なんだ。爪切りもそうなってくれると思うぜ?」
「ああ、そうか、それは楽しみだな。じゃぁな。また、寄らせてもらう。」
「寄るって、まぁ、いいか。嫁さんによろしくな?今度は連れて来いよ。」
「ああ。」
荷を抱えて、一応外に出ると、
愛しい人の声がする。
(マティス?今大丈夫?
(今店を出たところだ。なにかったか?)
(気配を消して帰ってきて?部屋に人が入ってきた。)
(!)
部屋に移動すると、扉の横で彼女が手招きをしてる。
部屋には男が2人、ちょうど部屋に入ってきた。
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