いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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148:カニ

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宿屋に入ると部屋に入ってきた2人が出迎えた。
お出かけだったのですね、と。

「ああ、みなが勧める毛皮屋まで行ってきた。
やはり、あの服では悪目立ちしていたようだ。」
「そんなことは有りませんよ。しかし、そうですね、寒そうだなとは思いますでしょうか?
良い買い物をなさいましたね。どちらでお買いになったか伺っても?」
「トックスという方がしている店だ。肉屋は果物屋も勧めてくれたからな。」
「ああ、トックス。いいところで買いましたね。少し値が張りますが、良い品です。
肉屋と果物屋が勧めたのはいい意味ではないですよ?」
「それはどういう意味だ?」
「くくく。いや、去年ですが、少し暖かかったんです。そうです、ここ数年ずっと。
それで、毛皮もなしでそこそこ温くて見目の良いトックスの上着が流行りましてね。
あの2人はそれが買えなかったんですよ。それはもう、文句たらたら。
それなのに、ついこの間から、逆に宣伝しだしましてね。
どういうことかと、ま、顔なじみなんで聞いたんですよ。そしたら、
宣伝すれば、早いこの時期からも買いに行くだろう、去年のこともあるし、と。
でも、この時期から上着を作ってるわけじゃない。
買いに行った奴はがっかりするし、トックスの奴は客を逃す、ざまーみろってことらしいですよ?」
「ははは、それは、考えたな。宣伝してる分には文句も言えまい。
だが、その上をトックスを行くようだな。」
「?」
「買いにいったらな、たくさんの上着が並べてあった。去年のこともあるので早めに用意したらしい。
いいものが買えたよ。
しかも、今きれないのは残念だと嘆く妻に今の時期に着ることのできるこの上着をすすめてきた。
なかなかの出来だ。新作らしい。あの御仁は、うまく利用して商売繁盛のようだ。」
「なるほど、やはり賢い人間が儲かるということですな。」
「そうだ、賢い人間がな。」
「ふふ、お客様、食事は今からでしょう。よろしければ、荷物はお預かりしますよ?
このところ物騒なんで、手元に置いていても盗まれるんですよ。」
「そうか、しかし、これを預けるのは・・・」
「でしたら、部屋に頑丈な箱を備え付けています。持ち運びなんぞできません。
その中に入れて鍵をおかけなればいい。食事もゆっくり楽しめますよ。」
「それは素晴らしい考えだな。そうさせてもらおう。」
「では、すぐに食事を?」
「ああ、荷を置いたら。」
「では、テーブルの用意を。トメ!準備をするんだ!」
「はい!」
「なにかご注文は有りますか?カニ、海鮮、いろいろありますよ?」
「ああ、それは任せる。楽しませてくれ。」
 「はい、わかりました。お任せを。」


部屋に戻り、荷物をすべて、鞄に直して、
ずっと口に入れたままだったガムを捨てた。
すこし、臭いは感じるが、茶縄のおかげか、まだましだ。

先ほどから彼女は一言も話をしていない。
「どうした?」
「ん?なに?」
「先ほどからなにも話をしていない。いつもなら、宿のおかみとか、
お茶屋主人とかにも寄ってまで挨拶もするし、そのときのいろいろな報告をするではないか?」
「あ、そうだね。聞いてもらいたい人にはね。でも、話す価値のない人には何も言うこともないし
話はしないよ?」
「ああ、そいうことか。」
「それに頭の中はカニでいっぱいだ!行くよ!!」
「そうだ、カニだ。」




下に降りると、トメと呼ばれた人が案内してくれた。
では、あの皮の餌食になるのはここのえらいさんなのね。ま、そのほうがいいね。

テーブルの真ん中に小さな炉があり、この火であぶって食べるようだ。
うわーワクワクする。
「モウ、うれしそうだな。」
「うん、ここに連れてきてくれたありがと、ティス。」
「ああ、私もお前と来れてよかった。」

いちゃいちゃしてるとトメに止められた。ぶっ!いかん、また噴き出す。
初めてだと思ってカニの食べ方を説明してくれる。
マティスが行ってた通りだ。脚は?と聞くと、
足元の箱に捨ててくれと言われた。トド漁の撒き餌になるそうな。贅沢!
そのほかの海鮮はタコかイカの足?ウニのようなもの。
これがまたうまい。タコの足にちょっと付けて炙る。うまうま。
みな火にあぶって食べる。醤油はなかったが、魚醤があった。
独特の味と匂いだが、これは大丈夫だ。ここでも買えるというので、
小さな樽で1つ買うことにした。
お酒は少し辛味があるもので、十分海鮮に合う。が、日本酒の敵ではない。
煮込みもでた。やはり臭みは一切取っていない。
うまいが、生臭い。すこし、ショウガか、ネギを入れるだけでだいぶ違うのに。
これはあまり進まなかった。
あとはカニだ。掴んでひねって、身が出る。これを足をもって炙る。
ちりちりと泡が出てすこし焦げ目がついたら、味噌をつけてもう一度焼いて食べる。
おいしい!!
「ティス!おいしいね。これ、クツクツと同等だよ?
ワイプさんも期待しすぎなんじゃない?」
「そうか?もちろん、これもうまいが、クツクツも相当うまいはずだ。」
「そうだね、そうかもしれない。うん、甘い。おいしい!!まずはこれを堪能しよう。
カニ食べ始めると、こう、身をね剥かなきゃだめだからみな無口になるの。
でも、これだと話もできるね。ザバスさんの話、教えてよ?」

そうだった、と話してくれた内容は、まさしく、あーあ。というものだった。
もう、どうでもいいや。わたしも砂漠でのメーウー繁殖成功を祈るよ。
それよりも赤馬の行動の早いこと。セサミンがあの馬に乗って王都に行くのは
さぞかしかっこいいだろう。
あ、その時にさっき買った上着をプレゼントすれば喜ぶかもしれない。
マティスに話すといい考えだと言ってくれた。

「いつ王都に行くのかな?」
「合わさりの月の後だと言っていた。合わさりの月の日は砂漠に出て石を集める。
変動があったから集まらないとおもうが、それでも出るだろう。
そのあと、王都に向かうのが通常だ。5日は後だな。」
「そうか、今晩は、お茶づくりするから、早めに作って持って行ってもいい?」
「ああ、かまわない。あいつも喜ぶだろう。」

そんな話をして、そろそろ部屋に戻ろかということになった。
ここの食事代は別料金。魚醤をいれて3リングでした。うん、満足です。

部屋に戻ると、ちゃんと入れていた皮袋がなくなっている。
あの皮は残っていた。さぞ驚いたことだろう。
これももう一度ぬるま湯で洗えば毛並みが復活するかもしれない。
トックスさんが簡単な毛皮の手入れ方法を教えてくれたのだ。
あくまでも魚の皮だが。やってみる価値はある。
さ、宿を出ましょうか。



「大変だ!盗人が部屋にはいたようだ。荷が盗まれた!」

にやりとした顔はまだ皮袋の中にを見てないようだ。

「ああ、だから、荷を預かりましょうと言いましたのに。」
「そうだな。荷が盗まれた部屋にはもう泊まれない。このまま出ようと思う。
かまわないか?」
「それはもちろん。しかし、1日分の料金はいただきますので12リングのお返しです。
しかし残念ですね。もっとゆっくりしていただきたかったのに。」

しっかり、12リング返してもらった。
そこで笑い出すマティス。よ!役者だね!!

「ははは!!」
「え?」
「いや、いった通りだなとおもってな。
なに、あれはとられてもいいような、
ここまでの道中で処理してきた動物の内臓なんだ。
埋めて捨てるつもりだったが、ちょうどよかった。本当の荷は隠していたんだ。」
「なっ!!」
「それで、盗賊は呪われた皮に触ったようだ」
「・・・呪われた皮?とは?」
「ああ、知らないか?砂漠の民に伝わるものだ。

『あれに、触った奴は二度と盗みはできないし、
 自分のいままで一番恥ずかしい思い出を話してしまう。』

では、世話になった。ここを紹介してくれ者にも礼を言ってくれ。
ではな。」

罪を告白させるつもりだったけど、それをわたしたちが行うのも違う気がしたので、
ちょっと恥ずかしい思いだけしてもらうように変えてもらった。
もう盗みができないのならそれでいいかな。

2人そろって、扉の外に出て、そのまま、城壁の外に移動した。
あとがどうなるかどうでもいいのだ。

外にはきれいな合わさりの月が出ていた。
お茶を摘む前に、生臭さとは違う、カニの匂いが染みついた体を洗うべく
お風呂に入ることにした。


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