いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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153:カニ尽くし

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みなが一様に便所を経験して震えている。
それを見ながらセサミナは得意げに笑っていた。
「ここはまだ小さいからましなほうだ。これでそのようではダメだな。」
ワイプもぷるぷるしているのが面白かった。

「さ、風呂だ。彼女曰く、露天風呂だそうだ。
脱いだ服はここに。着替えはここにあるから。靴もこれにな。
石鹸は置いてある。たおるも。洗い場で軽く流してからはいれ。
シャワーの使い方はセサミナに聞け。
その緑のボタンはじゃぐじいだ。セサミナ、あまり長湯になるな?」

みなを風呂に案内し、テーブルに戻る。
彼女が皿にウニ、カニみそと身をあえたもの。
豚の煮込み、ハム、などを少しずつきれいに並べている。
「これは?」
「ま、先付けかな?準備するまでのつなぎに食べてもらうの。
鍋が始まるともう、なにがなんだかになるから、それを説明する間ね、
食べながら聞いてもらうの。」
「ほう。」
「適当よ。お風呂上り、ビールでしょ?まずはね一杯だけ。で、梅酒で乾杯して
これをつつきながら、カニ刺しとカニしゃぶの食べ方、鋏でさばき方、それ説明して
あとはご自由にってことね。ああ。クツクツの説明もね。」

「姉さん!この靴いいですね!この服も。」
「はい、お帰り。それ、ゴムだから簡単にできると思うよ。
耐久性はないから、お安く作らないとね。
服は綿で、ゴムを使ってるだけ。ジャージだね。ご飯食べるからそれにしたけど
タオル地のローブも作ってあるから、あとで着てみ?」
「はい。」
「さ、座って。ワイプさんも。お風呂どうでしたか?」
「はい、モウ殿。食と数字と鍛錬以外ではじめて興味がわきました。」
「そう?お風呂でお酒を飲むのもいいよ?」
「おお!それもぜひ。」
「うん、まずはカニね。北で落ち着くつもりがいろいろあってね。ま、その話はいいか。
ルグとドーガー?ん?湯あたりした?」
「いえ!あのぷくぷくが!下からぷくぷくが!!」
「うん、気持ちよかったでしょ?さ、座ってくださいな。」

みな、席に着き、置いてあるビールにくぎ付けになっている。
「ささ、まずは、お風呂上り、ビールで喉を潤してください。」

おお!と、みなごくごくと飲んでいく。

「さ、みなさま、お疲れ様です。今日はカニ尽くしということで
故郷の食べ方で味わってください。その横にあるのが食前酒です。
少し甘めのお酒ですね。あ、どうぞ食べながら聞いていってくださいな、マティスもね。
まず、右から順に、、、、」

ひとつ説明を聞きながら、口に入れ、酒をのみ、次の説明を聞き酒を飲む。

「それでですね、クツクツはそちらでもう少し火にかけた方がいいのでお待ちくださいね。
で、これです。カニ刺し。カニの脚ですね。殻をそいで、氷水に付けると
こう、身がしまって花が咲くようになるのです。これを、魚醤か三杯酢でどうそ。」
「モウ殿!これは本当にカニの脚ですか?それを生で?」
「ええ、新鮮だから大丈夫ですよ。あ、鋏持ってきてくれてます。」
「はい、姉さん、人数分、ドーガー出してくれ。」
「あ、一人ずつにわたして、ありがとう。それの使い方は次ね。
とりあえず、どうぞ?あ、だめ?ワイプさん?行っちゃってください。」

皆の目線がワイプに行く。ワイプも抵抗があるのだろう、うまいのに。

「え?わたしですか?ああ、ああ、行きますよ!はい!!」
三杯酢を付けて一口で食べた。

「!!!!!!!!!!」

そこからか各自一斉に食べる。
「これは、うまい!」
「はー、うまい、うまい」
「ああ、甘いんだ。」

「おいしいでしょ?これがカニ刺し。で、ここに山とあるのが
カニの脚ね。こっちは焼きで、こっちは蒸してます。
こうね、鋏でこことここを切って、こう押すと身が出る。先は鋏を縦に入れて。
さっきのカニ刺しもここにあるので、こう、昆布をいれたお湯の中に、
1、2回くぐらせて食べるのもおいしいです。
殻のまま、ここに入れてもいい感じであげてたべてもおいしい。。殻をむくのが面倒だけどね。
カニ関係はこんな感じかな?あっちの鍋はお肉をしゃぶしゃぶしてください。
ごまだれがおすすめ。
こっちはウニ鍋。ウニを溶かしてるの。ここでもお肉もカニも試してください。
野菜も食べてください。
そっちはエビマヨ、ウニ焼き。
ではでは、説明はそんな感じで。はい、召し上がれ。」

そこからは鬼気迫るものがあるが誰もしゃべらない。
もくもくと食べる。酒も好きなものを出せるようになっている。
日本酒はあらかじめ樽に5種類ほど出している。

「あ!クツクツ第一陣もういいよ~」

その声で一斉に群がる。

「ああ!うまい。うまい。」
ワイプはご機嫌だ。
「その中に米を入れるとさらにうまい。」
と、教えてやった。
「なんと!!はー、うまい。それしか言えない。」
「ここで、米を食いすぐるなよ。鍋のあとのスープで飯を炊くそうだ。」
「ああ、想像できます。でも、それはそれです。」
「肉類もあるぞ。あ、これは?」
あまりにカニばかりに行くからせっかく作ったエビが手つかずだ。
ワイプとセサミナの皿にエビマヨ、エビとまよねーずとで炒めたものをおいた。
「これは、また!」
セサミナが食べるのをみてルグとドーガーも食べ始めた。
「マティス君の作ったパンに王都のソースが塗ってありましたね。
これもそうです。隠匿がかかってるはずなのに。
買ったわけではないですよね?日持ちもしませんし。どうやって?」
「作り方を彼女が知っていただけだ。隠匿がかかっていても
それ以前に作り方を知っていれば石の力は及ばない。そうだろ?」
「知っていた?彼女の故郷でですか?」
「さ、そんなことはいいだろ?これがあさりの酒蒸し。貝だ。」
「貝?食べるのですか?いや、食べます。ああ、これはまた、なるほど。」
「クツクツの横でも焼いてるよ?口が開いたら、魚醤か、紹興酒か、日本酒掛けて食べてみ?」
「はい、いただきます!モウ殿!
そうです!モウ殿、アバクスの小型版、あれ大好評です。資産院の皆が欲しいと。
隠匿はせずにみなに広めようと思っています。
手先が器用なものが、もっと使いやすくと改良しています。」
「ああ、そろばんね。へー、アバクスっていうのね、それはいいね。
それ、うまくいったらセサミンの学校でも使えるようにしてよ。
計算早いといろいろいいよ?セサミン、学校で算術教えるとき役立つよ?」
「姉さん?先程から、ワイプ様がモウ殿と呼んでいますが?」
「ああ、名前がないと不便なことがあったから。あ!手配書!
マティスが領主殺害未遂容疑だって?笑ったよ?で、マティスも名前はティスなの。
砂漠の民のティスとモウなの。ね?ティス?」
「ああ、マティスでは不便だから。ワイプ、この件知ってるな?」
「ええ、もちろん。今回の護衛はマティスという野蛮人から領主を守るという仕事が
含まれています、やはり顔を知っていて動かせるのはわたしだけなので。」
「野蛮人か。なぜ領主を襲わなければならないんだ?」
「それはあれでしょ?最終的に領主セサミナ殿に死んでほしいからでしょ?」
「ダードか?」
「そうですよ。わたしこれでも副院長なのですが、わたしに命令できるのは彼だけです。
マティス君はセサミナ殿を襲う。わたしがマティス君を捕縛もしくは殺処分する。
で、コットワッツは王都直属になる。セサミナ殿のご息女2人はまだ幼いので。」
「ん?そもそもなんでマティスがセサミンを襲うの?」
「ああ、それは別に本人でなくてもいいんでしょ。コットワッツ領を離れれば、それはもう、わっさわっさ
来るんじゃないですか?刺客が。」
「で、その刺客がセサミナを始末してからその刺客をお前が始末するのか?もしくは見逃すのか?」
「いえいえ、ダート院長からはマティス君が逆恨みして襲ってくるかもしれないから
セサミナ殿を守れと。で、マティス君も捕縛しろと。しかし、ま、刺客が来るのは間違いないでしょう。
そういう話が昔のコネで入ってきています。」
「それを話してもいいのか?」
「いいんですよ。ダード院長はわたしの実力を知らない。
本当の実力を知ってるのはマティス君ぐらいですよ。
軍部でも数えるほどだ。
暗部にいたことを知っていても、わたしは優秀でしたので、
相手をして生きてるのはあなたぐらいのもんでね。
あわよくば、わたしも始末したいんじゃないですかね?」

この話を、セサミナとルグとドーガーは黙って聞いていた。
ある程度予想はしていたようだ。

「しかし、目的は?いまさら甥の為でもないだろう?」
「ああ、砂漠石です。王都に戻ってからいろいろ調べたんですがね、
今回の変動のようなものがほかでも起こっているかどうかは
不自然すぎるほどわからなかったんですが、砂漠石の収穫量は格段に減っている。
我が国のもう一つの砂漠に至ってはほぼ皆無です。変動があったわけでもないのに。」
「いつから?」
「10年ほど前からですね。だから、石が取れるコットワッツを確実に押さえておきたい、
なのに反抗的だ。そこに変動が来た。完全に石がなくなるとは思っていなかたのでしょう、
調査隊を派遣した後の報告を聞いてまた大騒ぎでしたよ?
20年分の石は魅力的でしょうね、王都にとって。」

砂漠石が目的なのか?

「海峡石も少なくなってる?ジットカーフは海峡石ではなく砂漠石を使ってたよ?」
彼女がワイプに聞いてみる。
「ええ、海峡石がジットカーフで取れなくなったのは20年ほど前からです。
我が国ニバーセルから石を買っていますよ、ジットカーフは。」
「そうか、じゃ、工業国スパイルはどこから石を調達してるんだろう?」
「姉さん、我々も調べたんですが、結局わからなかった。
特使を派遣することも、産業に関することで利があるとにおわせても
乗ってこなかった。現物を見せてはいなかったのでそのせいかもしれないが
話さえも聞いてもらえない。領民間では問題ないのに。
国対国がだめなようです。」
「ふーん、いろいろあるのかな?領民レベルで取引ができるのなら
ま、良しとしとこう。コムのひとも言ってたけど、便利なものが使えなくなると
暴動がおこるって。へたに禁止しないほうがいいんだよ、きっと。」
「はい。まずは、領民間で使ってもらえるようにしていきます。」
「うん、頑張って。じゃ、雑炊にしようか?」

かに鍋のあとの雑炊もうまかったが、
うに鍋のものもうまかった。
ワイプはクツクツのあとの飯が気に入ったようだ。

体にしみ込むカニの匂いを取るために皆をもう一度風呂に案内する。
彼女が片付けをするので、私にも入ってくるようにという。
お前は?というととりあえず”きれいに”するからいいと、あとでゆっくり入ったときに
洗ってくれればいいというので、任せておいた。
冷酒、軽いあて。これらをもって風呂につかる。

「これはいいですね、ゆったりできる。あー、うまい。」
「風呂上がりにあいすがあるぞ。」
「それは楽しみだ。そうそう、王都のはんばぁぐ。残念でした。
うまいことはうまいのですが、物足りない。ああ、コットワッツのプリンはいいですね、
いろんな店で食べることができる。それぞれで味が違うのですよ。
今回で半分は制覇できたのでね、戻ってから残り半分めぐるつもりです。」
「それが目的なんだな?」
「ええ、もちろん。ああ、ザバス殿の飴も買いますよ?
ただ、あの、ぷりん、少し金額が高いように思います。」

セサミナが笑顔で答える。
「ええ、今はね。原材料が高いのです。もうすぐ安価で出回ります。」
「それはうれしいですね~。」

メーウーの飼育はうまくいっているようだ。

「ワイプ様!ぷくぷくしてもいいですか?」
ルグとドーガーが聞く。
ワイプが酒を飲むので待っていたのだ。
「ええ、してください。あれは楽しい。」

ボタンを押すと細かい泡が上がってくる。
それが大きくなったり小さくなったり、変化を付けたのだ。

子供のようにはしゃぎまくった。
男同士はすぐに子供に戻る。
くだらない下品なことで大笑い。
袋の後ろに泡をあてることから始まって、泡をいかに大きくさせてまたの間から出す競争など、
これは彼女には話せない。


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