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しおりを挟む一通り笑い終えて、タオル地のローブに袖を通す。
セサミナはこれも売れると嬉しそうだ。
「たのしそうな笑い声だったね。
デザート、アイスを用意してるよ。こちらにどーぞ。」
彼女が用意したのだろう、食事の時につかったテーブルはなくなり、
柔らかな床に体が沈みこむようなゆったりとしたクッションが並べたあった。
それぞれに小さなテーブルと小さな明かり。
アイスには甘めの酒がかかっている。
冷たい水とあたたかなコーヒーが並んでいた。
ワイプはよろこんで酒と甘味の組み合わせに感動していた。
ルグとドーガーもだ。
「姉さん、兄さんも。今日はほんとうにありがとうございます。
そこかしこに商品化の道筋がある。
今回、財産譲渡の件もあり、変動後の会合です。なにを要求されるか。
ワイプ様のお話しくださったこともあります。
ルグとドーガーが頼りになることにでしょう。
なのに、王都に行く前にこれだけこころ穏やかになれたの初めてです。
ここでのことが、これからのことに力を与えてくれる。
ありがとうございます。」
「ふふ、そんなかしこまらなくてもいいよ。
あのね、よかったら王都までいっしょにいきたいんだ。
王都見学もしたいしね。海の幸は堪能したし。住むつもりだったけど、
あまりにわたしのしってるものと違ったからね。そこら辺を知りたいんだ。
いいかな?」
「姉さん!姉さん!!」
また、セサミナが彼女に胸に飛び込んでいく。
そのまま押し倒す体勢になる。それは許さん!
『セサミナは向こうへ行け』
セサミナをルグとドーガーの間に移動させる。
呼び寄せではない、まさしく移動だ。
「え?」
「ふんっ。抵抗できずか?気が緩みすぎだ、セサミナ。」
セサミナの居た場所に私が納まる。この場所はわたしの場所なのだ。
「ほぉ、おもしろいですね。セサミナ殿?どのような感覚でした?」
「え?いまですか?気付いたらここに。
あ、一瞬、ほんの一瞬向こうにいけという兄さんの声?がしたように思います。
で、ここに。」
「ほぉほぉ。マティス君、いまの私にもやってください。」
「お前は抵抗するだろ?無理だ。」
「いえいえ、受け入れますよ?」
いらぬことをした。彼女を見上げると、いいんじゃない?と笑っている。
『ワイプ、ルグ、ドーガー、クッションと一緒にセサミナのところへ』
クッションと一緒に男4人の山を作った。
「なるほど!一瞬の問いかけがありますね。もう一度お願いします。」
ルグとドーガーは目を丸くしている。この2人も緩みすぎだ。
『ワイプ、向こうへ』
「ああ、抵抗したな?」
「ええ、もう一度。ここはむさくるしいですから。」
『それぞれ、最初に位置へ』
もとに位置にそれぞれを戻す。
「これは石を使っているわけではないですね?
モウ殿?」
なぜ彼女に聞くんだ?
「ふふふ、そうだね。石は使っていないね。」
「姉さん!」
「ん?セサミン?大丈夫だよ?ワイプさんは疑問に思っていることを聞いているだけだ。」
「ええ、セサミナ殿、ただ疑問に思っていることです。
これ、わたしにもできますかね?」
「え?奥方様!我らにもできますか?」
ルグとドーガーも乗り出して聞いている。
「んー、ルグとドーガーは石を使っての気配消しはできるんだよね?
セサミンは?えっとあの力で?」
「ああ、領主の力というのがあるというのは皆が知っていることです。
内容はそれぞれですが。ええ、領主の力を使って気配消しはできます。」
「で、ワイプさんは石を使わず気は消せるよね?それをルグとドーガーもできるようになった。
そうだよね?」
「ええ、そうです。」
「うん。じゃ、できるんじゃないかな?
大前提はわたしを受け入れてることなんだけどね。
セサミンはもちろん、ルグとドーガーも、おトイレも露天風呂も
わたしが作ったと思ってるだろうし、それを受け入れている。
今回の料理も、お酒がでてくる管も、すごいなーって。」
「マティス君ではないのはわかります。モウ殿の故郷のもの、石使いと似て非なる使い方、
そう理解しています。」
ルグとドーガーも頷いている。
セサミナは不安そうだ。
「うん、それであってるよ。まったく同じにようにできるかってのは、
それこそ、育った環境が違うからどうしようもないけどね。ここでは石を使うでしょ?」
「膨大な石を使えばそりゃできるでしょうね。」
「うん、大きな石ね。でも、石を使って気配を消せる、で、鍛錬で持ってる気は消せる、
じゃ、気配も消せるよね?見える、見えないじゃ全く違う?そうじゃない。
気配を消せるときって別にそこから消えてなくなってるわけじゃない。
感じさせないだけ。気を感じさせないのと一緒。ね?おんなじ。
ほら、じゃ、これに関しては石はいらない。姿が消える、認識できない。
石を使わなくてもできる。
じゃ、次は、移動だ。
石を使わなくてもできることがわかたんなら、ものの移動ぐらいできそう。
むこうのお菓子がこっちにきたら、すぐ食べられる!便利!便利!という気持ち。
じゃ、自分も移動できる?人も?
抵抗した人間を運ぶのは難しいから、そういうのは同じ。
声を出して、やってみよう。緊急時は仕方がないけどね。
生きた人間から血だけを抜くのができないように、それはできない。
できないって思うことはできない。じゃ、できるとおもえば?それは無理だ、人としての倫理がある。
人のものは取れない、盗めない、知らないものは、ないも同じ。
倫理がないような殺人狂ならそもそもわたしを受け入れないし、
『わたしが受け入れない』」
「「「「怖い!」」」」
私も含め皆、震えが来ている。
時々彼女の発想は恐ろしいものがある。
「ああ、そういう発想はないのね。ごめん、ごめん。
要は鍛錬次第かな?人間やればできるってことで。」
「なるほど、わかったような、わからないような。
モウ殿を受け入れている?ええ、それはもちろん。
このように良くしていただいて、どうして拒否ができましょうか。
もちろん、おいしいものが食べることができたからだけではないですよ?
あなたは、マティス君の奥方だ、マティス君が幸せなら、それだけでいい。
それで、モウ殿もわたし、わたしたちを受け入れてくれている。
マティス君の知人、弟、その配下として。
それはマティス君を受け入れているから。
それが条件だとして。うむ。なるほど。」
ワイプはきょきょろとあたりを見渡し、
軽くつまめるものを置いたテーブルからラスクを見つける。
『ラスクはわたしのもとへ』
「ほぉほぉ、これは便利だ。」
「あ、さすがだね、すぐできた。
ルグとドーガーもできるよ?向こうにおいてるのはちょっと甘めのお菓子。みんなの分。
呼んでみ?セサミンも?」
彼女の許可がでて、彼女が呼べという。
受け入れればできるだろう。
「「おお!」」
「あまい!おいしい!」
ドーガーはさっそく食べている。
「ね?物が移動できた。
呼んだときどうおもった?こっちに来いって?
言葉だったら、物は自分の物だったら問題ない。くれるってわかってるものも。
人のものは窃盗だ。知らないものはないも同じ。
じゃ、人は?人は受け入れてくれる人は来てくれる。
ワイプさんは1度目は受け入れると宣言している。2回目はなんなく抵抗できた。
普通はそうだ。
セサミンとルグとドーガーは完全にこの空間でリラックスしていて、呼んだのがマティスだったから。
じゃ、こっちが向こうになって、来いではなく行けとなったら?
物は向こうに行くよね。それが自分ならもっと簡単。向こうに行こう、ほら。
声を出して、やってみて?」
彼女が誘導していくのが分かる。
ワイプはまずクッションを右に移動させ、次に自分も移動した。
『すこし、横に。わたしも同じく。』
「おお!これはすごい。どこまで移動できるんでしょうか?『風呂』
と、言った途端に姿が消え水音がした。
風呂に移動して落ちたのだろう。
『『『風呂?』』』
セサミナたち3人もだ。
恐らく水音を聞いて、風呂まで行けるのかと考え、自分たちも
同じように行ってみたといったところか。
単純すぎる。
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