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207:違和感
しおりを挟む「お待ちください!セサミナ様!」
誰かが追いかけてくる。
(セサミン、来たよ?)
(はい!、監督)
「これは研究院の方々ですね?なにか?」
「そ、その水筒を見せていただきたい!」
「これは、コットワッツに伝わる秘宝です。おいそれと見せるわけにはいかない。
今回は特別だったんですよ?」
「ええ、わかっております。しかし、そのような袋は初めて見ました!
是非に研究させていただきたい。それに、先程目に当てていたものも!
それで、見ることによって不正が分かったんですよね?」
「いいえ?これは、ただの飾りですよ?」
「そうおっしゃらずに!その2つを見せていただくだけでいいのです!」
「この袋の中にリングが納まってるのは見てましたよね?それを渡せと?
疑いたくはないが、資産院が今回しでかしたこともある。
王都の院に対して、何もかものが信用できないのですよ?」
「研究院は資産院とは違います!」
「では、この2つを貸して、もし損傷などがあれば保証できるのですか?
1140万リングを研究院が保証してくれくれるのですか?」
「そ、それは・・・」
「セサミナ殿、それは中央院が保証しよう。」
ここでまた、お偉いさんが登場。
会合で進行役をしていた人だ。
皆が一斉に礼を取る。
わたしとマティス以外。
そのマティスとわたしを、上から下まで見る。
「あなたの兄は優秀な護衛となっているようだ。
変動はそなたの領にとっては不幸な出来事かもしれないが、
お前たち兄弟には良きことだったな。」
「はっ、ありがたきお言葉。
中央院ジング院長にそういって頂けるのは、我ら兄弟の誉れでございます。」
ん?セサミンが本気で喜んでいる。
マティスもセサミンの言葉に頷いている。
兄弟のことより、領地、領民のことが大事だろ?
あれか?飲んべえ長屋の大工の熊吉は腕はいいが大酒のみだっていうのと、
大酒のみだが、腕のいい大工だ、っていう程度の違いなのか?
しかし、胡散臭い。
「それで、横の女性がマティスの伴侶なのか?
紹介してもらえるか?」
マティスがわたしの手を引き紹介しようとする。
なんだ?この違和感。
(マティス!!セサミン!この人おかしい!しっかりして!!
小さい声でいいからあのまじないを!水筒も渡しちゃダメ!)
マティスはわたしを呼び寄せようとした手をまた後ろに組み、
セサミンの横に控える。
セサミンは下を向いて、ちちんぷいぷいぷいとつぶやいている。
「ジング様、申し訳ない。この2人は今はわたしの護衛なのです。
また、機会がありましたら、兄と姉として紹介させていただきたい。」
「そうか、それは残念だ。では、いずれは紹介してもらおう。
では、この水筒と、その飾りを貸してもらえるか?保証は中央院がするぞ?」
「いえ、これはコットワッツの秘宝。リングを保証してもらえるからといって
我が手から離すべきものではありません。ご容赦を。」
「そうか、仕方がないな。研究院よ、あきらめてくれ。」
「は、ジング様がおっしゃるのでしたら。」
研究院の2人は後ろ髪をひかれつつ帰っていった。
ジングという人も。
いずれ、ゆっくり話をしよう、だって。
「姉さん、わたしは?」
「愛しい人、私はまた操られていたか?」
「そこまではいかないけどね。違和感に気付いたらそれでいい。」
とにかく、帰ろうと出口に向かうと、
他の領主が声を掛けてくる。
いや、痛快でしたとか、無事に受領出来てよかったですね、とか。
ぜひ、うちで開催する夜会に出てほしいというのもあったが、
今回は、遠慮させてもらうが次回はぜひにと、社交辞令のオンパレードだ。
なかなかの好感触だが、腹の中で何を考えているのかはわからない。
でも、次につながるだろう。
出口近くでワイプ師匠が囲まれている。
当然、マティスはさくっと無視してセサミンを外に誘導する。
わたしとドーガーは少し遅れてしまい、やり取りを聞く羽目になってしまった。
「ワイプ様!われわれはどうすれば?」
「どう?ああ、わたし、さっきの終了宣言で副院長からただの一職員になりましたから。
新しい副院長はルタネ様、ルタネ副院長ですよ?
指示は副院長か副院長補佐のあなたがしてください。」
「え?いま、この時に?そ、それで、ワイプ様は?」
「様はいりませんよ。
わたしはコットワッツ一行の護衛を引き継いでやるので、このまま彼らについていきますよ?
家も引き払わなくてはいけませんしね。当分の間は院にはでません。
ああ、ルタネ副院長は引継ぎ無しで業務をなさるそうですから、皆さまも頑張ってください。では」
「そ、そんな!!院長は腑抜けになってるし、指示できる人間はいないじゃないですか!」
「しりませんよ。第一、5000リングをすり替えるような職員は窃盗罪で捕まればいいし、
なんですか?2リングずつちょろまかすって?これ、詰め込み作業をした全員でしてますね?情けない。
そんな人たちがどうなろうとしりません。そうそう、クッションを盗んだ人間も。返さなければ
次に会った時はどうなっているかとかいうような伝言をもらっています。確かに伝えましたよ?」
師匠はすがる元部下たちを完全に見放したようだ。
そりゃ、数字変態の師匠からすれば、2リングを1箱ずつちょろまかしたことは許せないのだろう。
5000リングすり替えた人に対してより、そっちの方に対してい怒っているのが分かる。
ダートは燃え尽きたように真っ白だ。
新しい副院長のもとにわらわらと指示をくださいと職員が群がっている。
これらは一般人のグループなんだろうか?
早く窃盗の犯人も見つけないといけないのに。なにやってるんだ?
そんな中でやっと気を取り直したルタネさんがこっちに向かってきた。
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