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208:昼ドラ
しおりを挟む「ドーガーお待ちなさい!話があります!」
ドーガーは震えている。よっぽど怖いんだろうな。仕方がない。
ダブルスパイをさすのは荷が重いか。縁を切っておこうかな。
『失礼、ドーガーに何用ですか?』
「あなた、赤い塊と呼ばれている女ですね?あなたに話をしておりません、どきなさい?」
『ドーガーは我の部下なので、御用があれば上司のわたくしが聞きますが?』
「あなたが上司?はっ!たかが護衛のくせに偉そうに!では、あなたに命令しましょう、ドーガーをしばらく貸しなさい。」
『あなたに命令されるいわれはないのですが?そもそもあなたはどなたですか?』
「なにを言ってるの?聞いていたでしょ?ああ、覚えられないのね。資産院副院長のルタネです。
覚えておきなさい。さ、早く!!」
『資産院副院長ごときが辺境領主直属の護衛に命令?わたしくしに命令できるのはセサミナ様だけだ。
そんなことも覚えられないものが資産院の副院長とは笑かしてくれる。
なんだ、資産院は今回のことと言い、笑いを取りに来ているのか?
それはいいが、少し方向性を間違っているぞ?笑かしているのではない、笑われているのだ。
ドーガー、お前はわたししの部下だ。そのお前が、こんな間抜けのいうことを聞くことはない。
金輪際だ。いいな?お前は強い、そうだろ?』
「はい!」
「ドーガー!お前は女の上司にかばわれて恥ずかしくないの?!こちらに来なさい!」
『あはははは!また、笑かしてくれる。ここでいうのなら上司にかばわれてだ、
この場合は女というのは関係ない。ご自身も女性ということを忘れるな?関係ないだろ?
しかも、上司が部下をかばうのは当たり前だ。基地外女に権力を振りかざされて迫っているのだからな。』
「なんという無礼なことを!いつわたくしが迫っているのですか?!」
『ちがうのか?コットワッツ領、領主セサミナ様お傍付き、次席ドーガーが貸せという意味がほかにあるのか?
資産院副院長が?』
「わ、わたくしは個人的に話があるだけです。」
『ん?やはり迫ってるではないか?なんだ?色恋沙汰なのか?
だったら、野暮なことをしているのはわたくしか?
ドーガーどうなんだ?』
「な、赤い塊殿!ひどいです!そんなことはありません!」
『あはははは!そうだな。すまん、からかっただけだ。しかし、こうもしつこく来るのはなにかあるんだぞ?
思い当たることはないのか?ここで皆の前で言ってみろ?かまわないから。』
「え?あ、ここで?」
『いいから。』
「はい、ルタネ様は、コットワッツに派遣されてすぐにお声を掛けていただきました。
そのころは、父が王都で闘病していることもあり、かなりの頻度で王都とコットワッツを往復しておりました。
ルタネ様は前領主様の奥方様だったということもあり、コットワッツの話を聞きたいということで
王都に戻った時はお話をさせていただいておりました。」
『コットワッツの話、例えば?』
ここで、ルタネの顔色は変わっていくが、いまさら止めることもできない。
「はい、セサミナ様のことや、一番お聞きになられたことは、セサミナ様の兄君、マティス様のことです。
そのころ、マティス様は砂漠の端に住んでおられて、その行動は報告が上がっておりました。
それをそのままルタネ様に。」
『ほう、我が夫マティスのな。なんだ、お前に気があるからでなく、マティスに用があったのか?』
「夫?」
『ああ、赤い塊とはわたくしの事、夫も赤い塊と呼ばれている。2人で赤い塊だ。
わたくしの夫がマティスだ。馬車の中から見なかったか?横にいただろう?わたくしが。』
「!」
『これは我ら夫婦の危機なのか?ドーガー?お前はセサミナ様のところに戻ってお守りしろ。
できるな?』
「はっ!」
『マティス!』
ドーガーをセサミンのもとに行かせマティスを呼ぶ。
マティスはずっとわたしのそばに気配を消している。もう!護衛の仕事しろよ!
ルグがいるからいいけどさ!
『呼んだか?愛しい人?』
白々しい!
廻りのギャラリーはドキドキハラハラだ。
昼ドラのような寸劇が目の前で起こっているのだ。
だまってどうなるか見守っている。
師匠はセサミンのそばに行ってくれたようだ。よかった。
『我が夫、マティス。資産院副院長が用がおありとか。そうですね?
どうぞ、我が部下を介さなくても直接お話しください。
いま、ここで。わたくしはどんなことになろうとも、マティス、あなたを信じております。』
『私にはない。』
『そうはいっても、面識はあるのでしょ?確か、あなたの兄上の母君だった方と記憶していますが?』
『そうだ、兄リプッツの母君だ。その兄はだいぶ前に無くなっている。』
『ああ!なんということ!!わたしくしが邪推したのですね!!
ああ、きっと若くして無くした我が子とマティスを重ねていたんだ!
母の目でマティスのことを知りたがっていたんだ!
それなのに!わたくしは何とよこしまな思いで抱いていたんでしょう!
ルタネ様、お許しください。
マティス、我が夫も許して?』
ここの人たちはこういう話に弱い。
兄弟劇場の次は母物語だ。
ほら、あちらこちらですすり泣きが聞こえてくる。
「そ、そうです。
リプッツを亡くした後は年の近いマティスの成長が我がことのようにうれしかったのです。
セサミナとの和解もうれしく思っております。それをドーガーから伝えてほしかったのです。」
便乗してくるのはさすがだね。
『その言葉、直接いただきました。ありがとうございます。
弟にして我が主、セサミナ様にもお伝えいたします。』
ルタネはわたしを睨みつけると、奥へと戻っていった。
オート君はそのあとを追う。この後始末、25000リングの補填の処理をしないと。
窃盗犯の追及もだ。その前を歩いている人がそうなんだけどね。
『よかった。マティス。』
『ああ、愛しい人。かわいらしい焼餅を焼いたようだな。
私の唯一はお前だけなのだ。ほかのだれでもない。
もし、お前以外で私の許嫁などと名乗るものがいれば、それは頭がいかれたものだ。
ここにいるものにも言っておこう。そんな輩が現れたら笑ってやってくれ。』
おお!と泣いた後にみなが笑っている。
よかった、よかったと。
なぜか拍手で送られて外に出た。
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