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227:桃
しおりを挟む朝のおじやは最高です。
これは素直にスプーンで。卵ものせるよ。
ドーガーはすき焼きを母上に食べさせてやりたいと、
こっそりレシピを聞きに来た。
お醤油と砂糖、日本酒があればできるからね。
日本酒はお裾分け。
「ドーガー、こういうの知ってる?」
「なんでしょう?」
「孝行したい時に親はなし、ってね。わかる?」
「・・・はい!」
「うん、喜んでもらえると思うよ?」
「はい!」
月が昇るまでまた皆でごそごそ。
ルグとドーガーはマティスと最後の調整。
戦う前にへばらないようとだけ注意した。
師匠は忙しそうだ。
わたしとセサミンは、トックスさんの着せ替え人形。
慰労会は本選にはでていないが、おそらくわたしは出ることになると。
その時のドレスはマティス作でいく。
本選、領主席の横で座るわたしのドレスはトックスさんが任せてほしいとのこと。
色は赤、その他ものもろの禁止事項を守る約束で、
その他はトックスさんのデザインでOKとのこと。
「トックスさん、すごいですね。兄さんが許すなんて。」
「そうかい?ま、腕を認められてるってことだろうよ。
さ、次はこれだ。着てみてくれ。」
わたしとセサミンはお揃いのようでお揃いでない?
難しいバランスが大事だと言っていた。
「慰労会の時は旦那と対だが、領主さんとはあくまでも
主と護衛だな。そこだよ。」
ほー、なるほど。
軽く腹ごしらえをする頃には師匠も戻ってきてました。
「本当に無役になってよかった。」
「そんなに大変なんですか?」
「ええ。身内の恥をさらしますが、まー、出るわ出るわで。」
「やはり、今は無役だが、当時の副院長として責は負うべきだ。」
「もちろん。だから無役のままで。」
「さすがです!師匠!」
「また、愛しい人は!甘い!甘すぎる!!」
「わたしが一番甘やかすのはマティスだよ?
マティスはそれ以上にわたしを甘やかすから
甘々競争はいつも負けるけどね。」
「ん?まぁ、そうだろう。うん、仕方がないことだ。」
「でしょ?だから、ほかの人を甘やかす訓練をしとかないとね。
これ、頑張ってる資産院の皆さんで。昨日作ったクッキーです。もらってください。」
「これは助かりますね。抑え込むだけではダメですからね。
これを餌にさらに頑張ってもらいましょう。」
「お、奥方様?我々のは?」
「ん?もちろんあるよ。水筒にくくれるようにした小袋も作ったから。
その中にね。マティスとトックスさんも水筒と小袋。
ドーガー以外はコーヒーを入れてるから。ドーガーはお澄ましね。
セサミンはわたしと一緒に応援席で食べよう。」
「はい!」
「やはり、甘い!甘すぎる!!」
「ふふふ。マティスのかっこいいところ見せてね?
わたしは、尊敬するワイプ師匠の一番弟子で、
わたしとコットワッツが理想のお父さんルグ、いたずら仲間のドーガーが主とする
かわいい弟セサミナの兄にして愛しのマティスの半身、赤い塊モウなんだから。
応援席で自慢させてね?ルグもドーガもだよ?」
「愛しの・・もちろん。」
「お父さん・・。」
「いたずら仲間・・・。」
「ね?」
「「はっ!」」
「異議あり!!」
出発前、最後まで手を加えていたドレスが完成した。
サイズはぴったりだろう、マティスも最終工程で参加していたから。
赤いドレス。大人びたドレスを想像していた。
赤ではない、薄いピンク。こちらでこの色のことは何というか知らないが。
かわいい。それが最初の印象。
20歳そこそこの花嫁さんが結婚式の2次会に着るようなミニドレス。
レースがのお花が裾から胸元に散らばっている。
もちろんその花の中心にはルビー。
血の色ほど価値があると言われるが、そこまで行かない薄い色。
それがまたかわいい。そう、かわいらしすぎるのだ。
「トックスさん?試着していた、あのシンプルな赤いドレスは?」
「ああ、あれな。ほれ、護衛だろ?で、拳術だろ?もし領主さんになにかあったら
奥さん守るだろう?そうすると、ドレスが破れるんじゃないかって。
じゃ、短くしよう。でも、旦那の禁止事項に足は見せないってのがあったからな、
こう、皆の目線を上にあげればいいと。そうすると奥さんのその胸に目線がいく。
これまた旦那の禁止事項に胸元に視線が行くのはダメだと。
じゃ、花飾りを付ければいい。しかし、真っ赤な花は1つあればいいいと俺はおもうわけだ。
それが奥さんの唇だと旦那が言うから、残りの花は、こうなると。
な、旦那?」
「そうだ。なにも問題ない。さすがトックスだ。素晴らしい。」
足元も胸元もかなりの露出ですよ?
「でだ、領主さんが旦那と比べれば幼いんだ。
そこにあの赤は浮く。だから、薄めのモモ色だ。」
ああ、桃はあるんだ。
「桃?食べ物?」
「そうだ。うまいぞ?俺もすきなんだ。
この頃は打ち上げられるのが少ないからな。
入荷したら届けてもらえるようにはなってるんだ。そしたら分けてやろう。」
海の物なんだ。
いや、そんなことよりも!!
「いやなのか?どうして?」
「マティス、これほんとにおかしくない?」
「ああ、お前のかわいらしさが引き立つ。」
「かー、かわいいのが問題なんだよ。いい年したおばさんがこんなの着たら笑われるよ?」
「おばさん?姉さん、我が妻の一人は姉さんと同じ年です。
こんな感じのドレスを着ております。おばさんというのはちょっと早すぎるのでは?」
「あー、そうだね。そうだ。うん。こう、精神的なもの?それね。それならわかるよね?」
「ああ、それなら。あ、いえ、良く似合っていますよ?」
「ははは。そうーですか。うん。わかりました。うん、おかしくないならいいよ。
トックスさん、ありがとう。こういうのも一度は着てみたいと思ったんだ。
ここで、それが叶うとは思わなかった。ありがとう。」
「お、おう!これからどんどん着ていけばいい。」
「そうだ。あまりに実用性にばかり目が言っていたものな。
これからたくさんこういうのを着ていこう。」
「いや、これだけで十分なので。結構です。いいですね?」
「「はい。」」
はっきり断っておかないとこちらが困る。
上から羽織る毛皮もこのドレスに合ったものだ。
靴も。マティスとトックスさんはいつ寝てんだろうか?
「セサミン?トックスさんは今日も一般席?いっしょに座れない?」
「ああ、そうですね。昨日はなにも考えていなかった。
トックス殿、どうぞ、コットワッツ領の来賓として座ってください。
服は着替えてもらいますが。」
「え?いやだよ。俺は服を作るのは好きだが、自分の服は楽なのがいいんだ。」
「ふふふ、トックスさーん。着替えようぜ?な?」
「え?奥さん?」
「ルグ、ドーガー、セサミンの衣裳の候補で、薄いグレーの服がある。
それを!サイズは合うだろう。靴はドーガー、貸してやって!」
「「イエス!マム!」」
「奥さんの気持ちが分かったよ。
服はいいんだ。ただ、自分の中でこれはどうなんだって?」
「でしょ?廻りが褒めれば褒めるほど、引けないしね。
ま、開き直ってしまえばいいのよ。」
「馬車が来たぞ。愛しい人、その恰好で走るか?」
「あ!走れるけど、なにごとかって思われる?」
「そうだな、大丈夫だ。行こう。」
「え?大丈夫なの?」
マティスに抱きかかえられて馬車に乗りました。
いざ、本選です。
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