いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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232:真珠

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「姉さん、少し休憩が入る様です。
王族と貴族が入場するようで、また紹介から始まりますよ。」

だれか来たかと思ったらそういう伝令が届いたようだ。

「そうなんだ。だるいね。みんなどうするんだろ?」
「領国、院はそれぞれで食事などをとる様です。
一般の客は外に露店がでてるようですね。」
「ははは!どこも一緒だね。
セサミン?どうしようか?ここでなにか食べようか?
家に戻ったらなにか連絡来たときに困るしね。」
「ええ、ここで。」
「じゃ、なにか作ろう。マティスいい?」
「ああ。」
「最初の試合はルグだからね。ルグ?何食べたい?
軽いものだよ?」

「異議あり!」

ちょっとしたブームだ。

「なに?ドーガー?」
「食後の甘味はわたしが選びたい!!」
「ルグに聞いてみ?」
「いいですよね?」
「なんで肯定なんだ?別に構わんが。」
「やった!!アイスがいいです!」
「はいはい。じゃ、デザートはアイスね。
デザートが先に決まったよ。ルグ?」
「あのかれえ、米にきいまかれですか?あれが食べたいです。」
「ああ、そういえばあれから作ってなかったね。
じゃ、それで。それなら、わたしも手伝えるからよかった。
準備があるから、いったん帰るね。マティス帰ろ?
何かあったら呼んで?わかるとおもうから。」

月無し石は3つほど袋から出ていっている。

ガイライさんもいないから家に移動した。







「マティス!!」


家の台所に戻ると、彼女が飛びついてきた。

「よかった!マティス、ほんとにどうもない?
だるいとか、熱は?
ご飯はわたし作れるから、ちょっと寝よ?
ここにお布団持ってきていいからね?
水分はとっとこう、ね?」

ああ、悲しませてしまったんだ。

「愛しい人。大丈夫だ。何ともない。本当に。
2度とはないから。悲しまないで?」

「ごめんね。剣技が見たいなんて言わなきゃよかった。
マティスはどんな時でも強くてかっこいいんだから。」

抱き付いて頭をぐりぐりと擦り付ける。
きれいに流しているのに、ぐしゃぐしゃになってしまった。

顔を上げさせ、口づけをすると、少しは落ち付いたのか、
またピッタリと抱き付いた。

「マティス!マティス!
わたしも慢心してたんだ。どう見てもマティスの方が強い。
負けるわけないと。知らないことがいっぱいだ。糸だって。なんだろうね。
糸を出す動物なんて、蚕か蜘蛛ぐらいしか知らないよ?
ちょっと前に流行ったって。知ってる?」
「知らない。」
「師匠が言ってた。強くても経験不足はどうしようもないって。
怖いね。わたしの中でも、何かあっても何とかなるって思てた。
でも、マティスが倒れたの見て、何もできなかった。怖かった。」

経験不足か。
確かに、何も知らにない。
学問は習った。砂漠で生きるすべも。
しかし、刻一刻と変わる、武器、兵器、接しないと知りようがない。

「いろんなことをこっちから知る必要はないとは思うけど、
どんな時でも油断しちゃダメなんだ。」
「そうだな。」
「うん。」

また、ぎゅっと抱きしめられて、軽い口づけをもらった。

「ふふふ。はい、これで反省会はおわり。
次は一撃必殺で行こうね。さ、ご飯を作ろう。
さらご飯は炊かないとね。すぐに炊ける状態で収納してるから。
その間に、お肉ごろごろのカレーを作ろう。
これも、もう少し研究しないといけないけどね。
アイスはまだあったよね?作ったモモのコンポートを添えよう。」

そうだ、次は一撃だ。



米が炊けるまでにかれえを作る。
彼女はモモの中身をぐよぐよ触っている。


「これ、なかになんかある。骨?なんだろ?」


切れ目を入れるようにナイフを入れると、
小指の先ほどの石が出てきた。

「わ!真珠?きれい!桃色だ。」
「しんじゅ?」
「うん。貝がね、なんか、体の中に異物を取り込んじゃうと、
体を守るために、貝殻と同じ成分を出して守るのよ、たしか。
うわー、きれいだ。こういうの見たことある?」
「ない。」
「そうか、あとでセサミンに聞いてみよう。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥ってね。わからんことは聞くべし!」
「いい言葉だな。」
「うん、知ったかぶりが一番よくない!
過信、慢心、知ったかぶり、絶対だめ!



入っているものと入っていないものがあるようで、
大きさもそれぞれで違う。
全部で8個。

身の方はオショウユで煮込むそうだ。
いいにおいが漂う。かれえの香辛料の匂いに負けていない。

大体のものを作り終えて、
服についた匂いを消臭し、セミナたちのもとに戻る。



「遅くなってごめんね?
なにもなかったよね?あ、ガイライさんもお帰りなさい。
食事一緒にしましょうか?」

急に現れた私たちに驚いたようだが、セサミナたちが
食事だとうれしそうにしているので、何も聞かれなかった。
ガイライも彼女を受け入れている。

「トックスさーん、ご飯だよ?」

ソファーでは食べにくいので、テーブルと椅子を出す。
一人掛けのソファーに座っているトックスに声を掛ける。

「え?ああ、奥さんか?飯?ん?試合は?」
「ん?今は休憩中で軽くご飯食べようかっって。
カレーだよ?甘味はアイス。
辛いのは大丈夫?」
「ああ、なんでも。」





とりあえず、皆で飯だ。



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