いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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244:落胆

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人目があるので移動することもできず、
ドレス姿なので、ますます身動きができないので、
帰りの馬車の手配をお願いすることになった。
帰りはマティスの膝の上。酔うこともなく到着。
ただ、抱きしめられると背中の宝石があたって痛いので、お尻だけを支えてもらう。
マティスはご不満だ。
心の友ドーガーは親指手品をマスター中。
どこを目指しているんだ?一発芸だということを念押ししておく。
とりあえずトックスさんに見せるようだ。
んー、トックスさんは職業柄手先が器用だし、
洞察力もあるので驚きはしないだろう。



戻るとトックスさんは何事もなく過ごしていたようで、
糸の特性を研究していたようだ。操ることは別にして。
師匠がマトグラーサを問いただしたが、知らぬ存ぜぬだったようだ。
懇親会にも領主は当然来ていたが、従者は少なかった。
ほとんどが、大会で負傷したようだ。
あのおじ様たちでは貴族の女性陣には不人気だったであろう。

とにかく、タオルもドレスも宝石も紹介できた。
次回の会合では展示即売会になるだろう。


「そうかい、そうかい。好評だったか。
 糸の方もな、旦那の使った砂漠石の糸のようなことできねーかって、
やってみたら、大体のことはできる。
思うに、砂漠石の成分が入ってるんじゃないかと。」
「砂漠トカゲみたいに砂漠石を食べてるのかな?砂漠蜘蛛?」
「砂漠で蜘蛛?見たことはないですね。兄さんは?」
「私もない。話に聞いたこともない。
大抵のことはタロスに聞いているつもりだったが。
コットワッツの砂漠ではない別の砂漠か?」
「では、マトグラーサの砂漠?」
「その線でしょうね。本当に枯渇して模索、
くまなく調べて蜘蛛を見つけたのかもしれませんね。」
「じゃ、砂漠トカゲの肉も何らかの砂漠石の成分を持ってたのかな?」
「どうでしょうね。
蜘蛛が糸を作り出すために摂取しているだけかもしれませんし。」
「じゃ、いま、師匠のところにいる蜘蛛の食事は砂漠石?」
「一般的な蜘蛛の食べ物と砂漠石を与えてみましょう。」
「あのさ、ここに蜘蛛の子を散らすって言葉ある?」
「意味は分かりますが、そうのような言い回しはしませんね。」
「うー、蜘蛛ってさ子供が袋に入ってるんだって。それを破ると、
ぶわーっと小さな蜘蛛が散っていく様を言うんだけど。
その蜘蛛、お尻に袋もってなかった?」
「姉さん、鳥肌立ってますよ!わたしもですが。」
「うん、ぶわーってなった。」
「まだ、完全に糸のなかから出してないのではっきりとは。」
「うん、そういうこともあるから気を付けてね。」
「ええ、モウはあれですね、嫌いな割には生態に詳しい。」
「いやいや、習うのよ、学校で。さらーっとね。
その時の先生の教育方針で、実物を見せられた。
一見は百聞に如かず、って記憶に残る勉強法だけど、
それで虫全般に拒否反応がでます。」
「学校でそこまで。なるほど。」

蜘蛛の糸で砂漠石の糸と同等のことが出来るなら、
防弾性のあるものもできるかもしれない。


とにかく休憩だ。こういうときこそ、妖精のおやつだ。
ガイライもすぐにでもこっちに来るだろう。

「今回の不始末のすべての責任は軍部の副隊長のわたしが取ることになりました。
中央院の通達です。
進退等の決定権はコットワッツ、セサミナ殿に一任されています。
銃で負傷したメジャートの従者は目を覚ましました。
女神の声を聞いたと。
応急処置をしたのが資産院のワイプと教えられ負傷以上の落胆ぶりです。」

ぶは!声は聞こえてたんだ。
マティス以外は聞こえていなかったのに。
当事者には聞こえるのか。次からは気を付けよう。

「あれは、モウ殿ですね?」

ああ、ここにもいた。

「ん?それを聞いてどうする?」
「いえ、ただ・・」
「ふふ、後でね。セサミンに一任ってのも投げやり感があるね。」
「わたしに一任ですか。ではそのまま軍部にいてください。
 ここで、あなたを辞めさせてもコットワッツにはなんの利益もない。
中央院院長の違和感が分かっただけでも良しとしましょう。
それにあなたは姉さんの臣だ。わたしと同じ。
コットワッツに引き抜いてもいいが、軍部につながりがあるほうがいい。
それでよろしいか。」
「ええ、わかりました。そのように。」

「じゃ、おやつね。ちょっと頑張った時に食べる奴。
はい、召し上がれ。」

「!」
「!」

初めて食べるトックスさんとガイライはあっという間に食べてしまった。
なくなった皿を見つけても復活することはないよ?
セサミンたちは、頑張って味わうように食べている。
わたしたちもだ。

「これは、すごいな。食い物をくってここまで驚くとは。
うまいとかうまくないとかで言えば、当然うまいんだが、
驚くっていう言葉しか出ねえな。」
「うん。わたしたち、謁見前に食べたんだ。
毎日食べたいものでもないし、これがあるから頑張ろうってこともないんだけど、
でてきたら、やったーっておもう食べ物かな?」
「ああ、そんな感じだな。なんせ、驚いた。」
「ふふふ。じゃ、違う系統で驚いてもらおう。
ドーガー見せあげたら?」
「はい!!」

屋上の大きなテーブルでおやつタイムだったのだが、
さっきからドーガーがうずうずしだしたので急遽のマジックショーだ。
あまりかまえて見るものでもないがいいだろう。

「ガイライ様、トックスさん、ここに注目してくださいよ!
よっ!ほっ! じゃじゃーん!!」

トックスさんは食いつきがいい。

「な!ん?まて!もう一回だ!」
「はい!よ!ほ!どうですか!」

ガイライは最初からにやりと笑っている。
トックスさんはテーブルの下で、手を数回動かしてにやりとした。

「よーし、次は俺だ。見てろよ?」

ああ、もうマスターしたんだ。さすがだなと、
皆が注目した。

ギャー!!!
一同大絶叫だ。もちろんわたしもガイライも。

次々指が離れてはくっつき、あらぬ方向に曲がる。
それが流れるような動きだ。
マジシャンここに誕生!!



「かかかか!どうだ?
 俺は手は大きいし、指も長いからな。それに、ほれ。自在に曲がる。」

ギャー!!!

人の指はそんな方向に曲がりません。


ドーガーはトックスさんに弟子入りした。






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