いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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267:ダメではない

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魚なんかいない。
いるんだったら海にもいるだろう。

「愛しい人。生き物だ。なにかはしらない。見るか?」
「それを事前に聞くということは、G案件?」
「いや、念のため。」
「見ます!」

どん、と見せてもらったものは、石?

「?生きてるの?動く?」
「動いていた。こちらを見ればいい。」

腹の部分を見せてもらう。

「うー、あー、うん。生き物だ。見たことあるな?あ!ナマコの下処理前!」
「え?これが?」
「うん、それに似てる!海にいるんだけどね。ここでは川か!
いっぱいいた?」
「いる。その陰に。石かと思ったが、ほとんどがこいつだ。」
「おお!下処理の仕方は見たことあるんだ!
一度やってみたいと思ったの!」
「え?食べるの?これを?」
「え?わたしの好きなナマコかもしれない!
違うかもしれないけど、姿かたちは似ている。大きさは違うけど。」
「え?腹がすいてるのか?作り置きはたくさんある。
何か食べるか?」

「え?食べちゃダメなの?」
「これをわざわざ食べなくていいだろ?」
「え?ダメ?」
「ダメではない。そう、ダメではない。」

「んー、ナマコは好き嫌いがあるけど、んー、1匹だけ試してもいい?」
「試すのか?」
「うん。そこらへんはどん欲に。」
「お前は生き物を殺して食べないというのが一番ダメだと言っていなかったか?」
「言った!だから試す!それで食べられなかったら謝る!」
「謝るのか?その前に食べなければいい。」
「んー、でも、食べたらおいしいかもしれない。」
「やはり、食べるのか?」

「え?食べちゃダメなの?」
「これをわざわざ食べなくていいだろ?」
「え?ダメ?」
「ダメではない。そう、ダメではない。」


この問答がかなり続きました。


結局、1匹だけ。わたしが下処理をして、実食まで行く。
その間マティスは砂漠石の膜を作ることにチャレンジするとのこと。

うん、わかるよ、見たくないものはあるし、
食べたくないものはある。
これが虫だったら、同じだ。
おいしいと言われても食べない。
でも、これはナマコ、川ナマコと名付けよう。
おいしいものセンサーが立っているのだ。

唐辛子がないのが残念だが、
お酢もお醤油もある。
なまこ酢とだし巻き卵、これで日本酒。熱燗だ。


この日はそのまま、渓谷で夜を過ごすことになる。
カエルは寝たままなのか、カエルの皮が効いているのか
姿を見せなかった。よかった。


扉君を出して家に戻る。

川ナマコと一緒に小石、これは普通の石を数個拾っておいたものだ。
生臭くはない。ワタも食べられそうだが、
今回はやめとこう。
これでおいしかったら大量にとって塩漬けを作るべし。


うまくワタは外れた。
残りは大きいので切って取り除こう。
割りばしにさらしを撒いてする方法はちょっと抵抗がある。
塩をまき、石と一緒にざるを延々と振る。
運動場にいてるはずのマティスの視線を感じる。
ふふ、心配しなくていいのに。
しかし、石かナマコかわからん。

ぬめりをブラシでとる。
もうこのブラシはナマコ専用。
ピンセットも作った。下処理は丁寧に。

汚れたものはいつものように徹底的に処分。

大根おろしをつくる。紅葉おろしにしたいが仕方がない。
昆布醤油とお酢。

うすく切って、盛り付ける。
あ、ゆずがないからレモンの皮で。

どうだ!
ちょっと味見。おいしい!コリコリ!

これだけ食べるわけにもいかないから、
さらご飯と、魚を焼いて、だし巻き卵をつくる。
お澄ましもだ。
足らないかな?あとで、これをあてに晩酌をすればいいか。

うん、家の晩御飯だ。
旅館の朝食のようだけど、うちでは晩御飯。
豪華だ。



「マティス~!ご飯できたよ~。」

わたしがご飯の合図を送ることができるとは!
すばらしい成長だ!

「愛しい人!」

すぐに移動でやって来た。

「流れで晩御飯も作ったよ。」
「ああ、ありがとう。また、あなたの飯が食えるとは。
はは、やっぱりあれはあきらめたんだな?」
「ん?それだよ?」

食卓にあの姿のナマコがあったらわたしも嫌だ。

「え?これ?」
「そう。なまこ酢。酢のものね。あ、これは好き嫌いがあるからね。
食べられなくてもいいのよ?
お酒のあてでもいいけど、それでご飯を食べるのも好きなの。
お魚も焼いたよ?一夜干しって感じだね。生臭くないのがいいよ。
これはわたしの家の普段の晩御飯。豪華な部類。
さ、召し上がれ。」


「お魚、どうかな?大根おろしと、お醤油かポン酢で。」
「ああ、いいな。なるほどな。愛しい人が好きだというのがわかる。
ご飯がすすむな。それに生臭くない。」
「うん。干したのがいいみたい。これは画期的だよ?
照り焼きとかもできるね。煮るのはやっぱり生姜が欲しいな。
ネギでいいかな?作ってみるね。」
「ああ、楽しみだ。いいな。この晩御飯は。」
「そう?よかった。でもたまにだからだよ?やっぱりお肉食べたいもの。」
「ははは!そうだな。会わずの月の日の飯は肉をたべような。」
「うん。それで、マティス君?やっぱり、ナマコはダメですか?
さっきから視線は行くけどお箸はでないね。」
「いや、せっかく愛しい人が作ったんだ。食べたい、とは思う。」
「うふふふ。大丈夫。わたしが食べたいだけだから。
おいしいものを食べてこれを食べてもらいたいっておもうものでもないから。
置いといて。今日は少な目だから、あとでお酒を飲もう。
日本酒。熱燗にするから。あても、いろいろ作るよ。」

結局、手を付けずに晩御飯は終わった。
さっくり片付けをした後に晩酌だ。


熱燗、それと、なまこ酢、カニみそ、
カニ身とサボテンの酢の物。砂トカゲの干し肉、
ポテトサラダにオイル付けにした魚、シーチキンだね、それをあえたもの。
すこしずつ作っていく。
マティスは台所のテーブルで座ってもらっている。
なんか、いいな。


「さ、呑もう!」
「ああ、呑もう。」

少し大きめに作ったぐい飲みでまずは一杯。

「はー、おいしいね。
これはね、初めてお店で熱燗を頼んだ時に出してもらった奴。
名前は忘れたけどね。これがおすすめですよって。
うん、おいしい。ほんとおすすめだ。」

コリコリとなまこ酢を食べる。

マティスの飲みっぷりは男らしい。うん、また惚れてしまう。
砂漠石で作った徳利なので温度はキープ。
空いたら、バッカスの石で継ぎ足し温度を保ってもらう。
熱燗とぬる燗、交互に呑んでいく。
たまに冷酒。

「たべてみる」
かなり速いペースで呑んでいたのでもう酔いが回ったのか、
しゃべり方が幼い。
「ん?これ?食べるの?」

取っておいてよかった。

マティスが恐る恐る口に入れる。
問題は元の姿だけで味はポン酢だ。食感が面白いだけかもしれないけどね。


「・・・・うまい。」
「ふふふふ。そう?お酒と合うでしょ?」
お酒を注いでやる。

「うん。」
「よかった。これのね、腸の塩漬けも珍味なんだ。
今回は作らなかったけどね。」
「どうして?」
「ん?だって、1匹分じゃできないよ。これは大きいけどね。
でも腸なんて知れてるでしょ?もっとたくさん取らなきゃ。
それにちょっとはつけておかないと、すぐには食べれんのよ。」
「今から狩りに行こう!そうすれば会わずの月の日に食べられる!」
「え?そうかな?今から?月が昇ってるよ?光は差すかな?
ああ、夜の目があるか。マティスがいいなら行こうか?
明日は高台作らないといけないしね。
よし、行こう!」

月明かりのした川でなまこ狩り。


「そっちに行ったぁ!!」
「よっしゃぁ!!」

なまこたちは夜に活動するようで、ものすごく速い。
意思が強いようで移動も効かない。

網を作り、川上から追い込む。

最初の1匹目はすぐつかめた。それからが大変だった。
残りが一斉に散ったのだ。
そこからの追いかけっこ。速い!

仕方がなく網での追い込み漁となった。
これは酔いと夜のテンションだからできたのだと思う。

なまこにとっては恐怖だっただろう。
いままでこんな目にあったことないんだから。
笑いながらなまこを狩る夫婦。
あははははは!


大方狩ったあとは、このテンションのまま下地処理。
家でするには大量なので、川辺で台所を展開。
わたを取りる作業は黙々と。
後は大きな籠を作り、二人で石となまこを振り回した。
あははははは!

ブラシでこするのは大変なので、

『汚れ、不純物、なくなれ!』

素晴らしい。
これで、腸もきれいに。

半分はそのまま、半分は合わせ酢に。このわたも塩で丁寧に洗い、
水分を出し漬け込む。
時間停止しない収納袋をつくりそこに入れる。
良い感じになれば時間停止をかければいい。
素晴らしい!!


よごれをこのまま川に流すのは環境破壊になるほどの量なので、
お持ち帰り。
なまこがいなくなって環境破壊になるほどは狩っていないと思う。
うん。

砂漠に戻り、また2重にした膜の中、
今回はマティス作のなかに扉君を設置して、お風呂に入っておやすみだ。







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