いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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298:威圧

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ニックさんが大門の前に立つ。

「かいもーん」

ものすごく声に威圧感がある。

ガラガラと軽く門は開く。
鉄のレールも円を描くように敷いてある。

戸車は木のようだ。
まだまだ試作段階のようだが、用途はなしている。
よかったねー。


『もんどー
汝、どこからきて、何用でニバーセルが王都の門を叩くか!』


「我、元ニバーセル国軍部、副隊長補佐、ニック。
隣国イリアスより軍部隊長ガイライ殿の召集により馳せ参じた。
門戸を開き、我を通せ!」

「え?ニック殿?え?」
「通せ!!」

『承知!通りませー』


なんか、肩書ってだいじよねーって気がした。
そして門が閉じる。あの時の門番ではなかった。


「これさ、かいもーんっていうときから威圧しとけば、
あっさりと通してくれそうじゃない?ニックさん簡単にはいったよ」
「そうか?ニックだからだろ?ニックは有名だ。20年前で退いたといえど、
槍使いといえばニックだ。当然、ルグもドーガーも知ってるぞ?」
「なるほど。」
「さっさと済まそう。私が言おう。お前に行かぬように、圧をかければいいのだろ?」
「それだ!!」



「かいもーん」

いい声だわ。

また門が開く。

マティスが出てきた門番にものすごい中途半端な威圧を掛けている。
こっちに来たよ、ビビらしてどうする!!

ごはん!ごはん!!


『もんどー
汝、どこからきて、何用でニバーセルが王都の門を叩くか!』

「我ら、コットワッツ領の砂漠から来た、砂漠の民、ティスとモウ。
我らが師匠、資産院ワイプ様を訪ねてやって来た。
門戸を開き、我を通せ!」
「は!師匠?ワイプがか?なんの?」
「棒術の師であり、武の師でもある!通せ!!」
「ははは!」
「通せ!!」

『承知!通りませー』


なんなの?こいつ?



待っててくれたニックさんと合流する。
「あははは!モウちゃんお怒りだな。
いいんだよ。ワイプはそう見せてるから。知ってるものは軍部でも少ない。
見抜けるものも少ない。鍛錬のワイプで有名だが、実力はないってことになってる。」
「そうなんですが。」
「愛しい人がそこま怒るのは珍しいな。やはり、ワイプは死ぬべきだな。」
「もう!マティスが変に脅すから、あの人こっちに来たんだよ?
マティスは気の種類の練習をすべきだ!」
「うむ、確かに。あれ以上強くすれば気を失うからな。
なるほど。」
「モウちゃん、いいこと言うね。ティスちゃんはそこらへんは下手だからな。
ガイライはうまいぞ?気を読むのも出すのもな。
でなきゃ、長年音なしでやっていけなかったからな。」
「・・ティスちゃん。」
「へ?だって、ティスだろ?」



「「モウ!」」


師匠とガイライがあらわれた。
あらわれたという表現でいいだろ。移動だもの。
廻りには気配を消していたと思うだけだ。

「モウ、ニックもよくきた。」

マティスはわたしを抱きついているので、
さくっと無視されている。

「モウ、いらっしゃい。マティス君は相変わらずですね。」
「師匠、お迎えありがとうございます。
今回は砂漠の民、ティスとモウです。師匠の弟子夫婦ですよ。
師匠に会いに来たといったら、あの門番に笑われました。」
「それはいいことですよ。武の大会でちょっと力を見せてしまいましたからね。
あとで、資産院で示し合わせていたという噂を流してるんですよ。」
「ああ、そうだったんですか。なんの師匠だときかれ、棒と武だと答えたら笑われたので。
ムカつきました。」
「ふふふ。鍛練が足りてませんね。常に平常心ですよ?」
「はい!」
「まずは、わたしの家に行きましょう。あれから月が沈んだ後にかるく飯を食べる習慣がつきました。
食材は買ってありますから、ティス君?なにか作ってください。」
「お、ティスちゃんの飯か。俺も食いたいな。ワイプの家ってどこだ?」
「ティスちゃん、いいですね。わたしの家はかなり奥ですよ。
呪いの森の手前、館があったでしょ?あの跡地です。」
「ニック、それは後だ。先に軍部に顔を出してくれ。」
「ガイライ?そのあと来れる?」
「ええ、モウ、伺います。ニックがいるので馬車になりますが、必ず。」
「うん。待ってるね。」
「ええ。」

あまり頻繁に移動をしていると、なぜに気配を消しているんだ?と廻りが疑問を持つので、
ある程度人気のないところまで場所を移し、移動することになった。
そこで、一時解散。
ちなみに王都に入る前ににおい消しのための気は張っている。
ニックさんも習得済み。


鶏館が建つスペースの奥に師匠の家がある。
スーとホーは資産院の厩にいるので、挨拶は後だ。

師匠の台所は、きれいなままだった。使っていない。
するとしても炒めるだけ、ゆでるだけ。
マティスが何も言わずに、もくもくと作業しやすいように変えていく。


「マティス君はほんと働き者ですね。ここに住んでくれないでしょうかね。」
「ダメですよ、師匠。マティスはあげません。」
「モウ、あなたもここに住めばいい。いつでも鍛錬できますよ?」
「魅力的です!が、イリアスの温泉に入りながら雪をみることは決まっているので。
雪見酒です。」
「すばらしい!そのときは誘ってください。」
「ええ、もちろん。」
「愛しい人!まずは2人で楽しんでからだぞ!!」
「はーい。」
「それで?米かパンか?」
「両方で。」
「師匠?やはり収納庫作っておきましょうか?そしたら作り置きもできますよ?」
「ダメですよ。あれば、あるだけ食べてしまいますからね。」
「なるほど。」


マティスのつくる朝ごはん。
ホットケーキに、サンドイッチ。
さらご飯と焼き立てのパン。
あとは卵焼きに、デイで仕入れたハムのハムエッグ。
お魚も焼いて、ソーセージも焼く。煮卵、塩卵、温泉卵。
昆布醤油はお裾分け。
今回はハム類が豪華だ。
もちろん、リンゴジャムも。
ツナマヨのおにぎりも作っておく。

だいたいができたところで、馬車がやって来た。
ガイライとニックさんだ。

5人も座るテーブルはないので、
わたしたちが使うデッキのテーブルを出す。
広々とした食堂は酒蔵のようになっていた。

「お疲れ様、ガイライ、ニックさん。」
「遅くなりました。ワイプ、邪魔するぞ。」
「いい家じゃないか!さすが副院長だな。」
「ああ、わたしはいま平ですよ?院長は若手のオート君です。
元院長とその妹君の元副院長と筆頭石使いは横領で外されました。」
「なんだ、その面白い話は?詳しく教えてくれ。」
「詳しくといっても、そのままですよ。」
「あの石使いさんもですか?」
「ええ、指示されたとはいえ、
実際に石と交換したのは彼女ですから、同罪ですよ。」
「厳しいね。」
「甘いほうですよ?横領分と利息を返せばそれでいいんですから。
ただ、すぐにはないのでね、納めればいずれ戻ってくるんじゃんないですか?」
「それは甘い。」
「中央院のお達しですよ。さ、こんな話はもういいでしょ。
こんなにおいしそうなものが並んでいるのに。
頂きましょう。」


師匠はリンゴジャムが気に入ったようだった。


「これがリンゴなんですね。しかし、まだイリアスでは時期ではないでしょう?」
「あー、マトグラーサとの国境検問を飛び越えて、森へ。
あの検問はなにか特殊なことをしてますか?問答みたいに?」
「砂漠石を使って、制限を掛けていますね。犯罪を犯さない。
マトグラーサ領に不利益なことはしない。
イリアスに入るのは自由ですよ。イリアスの一番近い村に守衛がいるぐらいですね。」
「よかった、通らなくて。勝手にリンゴ取ったもの。いや、だれもとらないところでよ?」
「だったらいいんじゃないですか?見つからないように。」
「はーい。」

「モウは食に貪欲ですね。」
「当然。おいしいもの食べたいでしょ?それがちょっとした手間で食べられるのなら
努力するよ?マティスが。」
「ああ、マティスがね。」
「くふふふ。」


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