いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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344:劇場

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月が昇る前に皆がそろう。
湿地の二人もやって来た。
リグナとナルガもだ。テン達とスー達も。

リンゴとお茶葉、カンランも出す。
おいしい水もだ。

「いらっしゃい。モウモウ劇場にようこそ。
今日は泣いて、笑って、おいしいものを食べていってくださいね。」

総勢15人なので、長方形のタイプを5つ作る。今回は掘りごたつだ。
外だからね。月が昇ってもいいように、砂は念のため省いた。
むき出しの土の上にウッドデッキを敷き詰める。

湿地の2人をセサミンから紹介される。
一応初対面だからだ。

「兄上、アバサネとルコールです。姉上2人の息子です。
わたしたちからすれば、甥ですか。いまはコットワッツの領民です。
そして樹石の研究者ですね。よく頑張ってくれています。」
「マティスだ。こちらは唯一の妻のモウ。
セサミナは叔父にあたるが領主だ。
期待には応えたいものだが、無理はするな?
できることはできるが、できぬことはできぬのだ。
それが分かれば相談すればいい。」
「そうそう、漠然としているときはおいしいものたべて、
ゆっくり寝ればいい。そうすれば、大丈夫。
食べること、寝ること、うふふふ、誰かを思うこと、大事だよ?」
「「・・・はい。」」


少し下を向きながらの返事だった。
緊張しているのかな?

「じゃ、今日は楽しんでいってね?」
「あ、あの!」
「ん?」

視線がわたしとマティスの指先、指輪で止まっている。
ああ、指輪を見ていたのか。
赤い塊の2人と気付いたのかな?

口に人差し指を充て、しーというと、
あのこっぱずかしい相談をしたのがわたし、おんなだとわかったのだろうか、
顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

「あはははは!わたしの故郷では普通なんだよ?
認めている国もある。認めてない国でも、否定はすくない。
わたしは理解しているよ?そういうこともあるのだろうと。
逆に、認めない人たちを否定するのは間違っているんだ。
お互い様だな。
理解を強要するものでもないだろ?まずは自分たちの心持だ。
前にも言ったが、理不尽なことが起きれば相談に乗るし、助けもしよう。
それを忘れるな?」
「「はい!!」」





こたつ初心者はドキドキしながら入っている。
師匠も掘りごたつも気に入ったようだ。座布団型クッションも。
布団は羽毛をすべて使った。
焼肉の時はこの布団は外す。絶対に汚す。わたしが。

そこに、お茶とジュース、コーヒー。
キトロスとポテトチップ、リンゴチップ、御餅をあげたもの、おかきだ。
お醤油と塩味。クッキーももちろんある。
晩御飯は焼肉とラーメンだから食べすぎると、
お肉が食べればくなるよーっと子供たちには注意する。
スペシャルチョコレートパフェは最後だ。




「ささ、少し肌寒いですから、暖を取りながら見ていてください。
その前に初めての方々もいるようなので、簡単に紹介させていただきましょう。

皆さまが暖かいと絶賛していただいているこたつ。
この中にあるのは樹石です。その研究をしている2人、
アバサネ殿とルコール殿。セサミナ様とマティスの甥御にあたります。
幼きときから価値があると研究をしていたのです。
樹石研究の第一人者と言っていいでしょう。

そして新しく資産院に入ります、ツイミ殿。
彼はセサミナ様や、軍部ガイライ殿も目を付けていたという逸材。
それを我が師匠、ワイプが射止めました。さすがです師匠。
そのご兄弟、カップ君、チュラル君、ルビス君。
お三方もワイプ師匠の配下となります。
さすがです。しかし、ちょっとどうなの?ということも多々ある師匠なので、
困った時にはこの一番弟子モウか、末席マティスに相談を。
ちなみにカップ君の先生はマティスです。
なんの?はははは!恋愛だそうです。

一気に大所帯となった我が師匠、ワイプ。
これはもう賛美しかありません。さすがです。
あ、マティスのとげが刺さる。
はいはい。我ら夫婦の武の師匠です。尊敬しております。

そして槍使いのニック殿。ニバーセル軍部、副隊長へと復帰なさいました。
これからの活躍、軍部の育成が素晴らしいものになりましょう。
わたしも手ほどきを受けました。
まだまだお相手叶いませんがいずれお願いしたい。

その軍部の頂点、ガイライ殿。
若手が増えた軍部。気苦労が多いが遠慮することは一切ありません。
大丈夫、問題ありません。
拳術の高みを2人で目指したい。


次はトックス殿!
彼の作り出す衣装はコットワッツの大いなる資産となりましょう。
そして世界を渡ってこられた知識。これもまた素晴らしい。
我ら夫婦は旅先で見つけたものは、
セサミナ様か、トックス殿に必ず相談をと厳命されております。
そしてその手先の器用さ。
できればあとでお披露目していただきたい。

セサミナ様お傍付きとして筆頭ルグ、次席ドーガー。
彼ら無くしてコットワッツの発展もありません。
コットワッツのルグ、文武両道ですね。ドーガーは武はもちろんですが、
柔軟性がある。色遣いが素晴らしいとおもっています。
ちなみに、ドーガーはトックスさんの弟子です。なんの?というのはまたあとで。

そして我らがセサミナ様。
言わずと知れたコットワッツの賢領主。
これまた素晴らしいという言葉しか出ません。
ねーちゃんは大好きです。
ああ、我が夫、マティスは愛しているのですよ。うふふふ。
そしてこのあと、2人の兄弟の楽器演奏がございます。お楽しみに。

その兄、マティス。
我が夫でございます。剣のマティスと2つ名がございましょうが、
拳、槍、棒と相当なもの。
しかし、なんと呼ばれましょうが、わたしのマティスなのでございます。

そして最後、わたくし、モウ。
異国の石使いでございます。このコットワッツの砂漠に流れ着いて、
マティスと巡り合い、契をかわしました。唯一無二の半身でございます。
なかなかに未熟者2人でございますが、あ、常識的にね?
これからもよろしくお願いいたします。

さ、そんなところで、
今から演じますもの、我が故郷のお話でございます。

どうぞお楽しみを。」




ここで、舞台だ。
一人芝居というのはだれが何を演じているかが明確になればいい。
声の抑揚、体の向き。
ナレーションも、表情を変えずに声を出せば、
本人が口から発している言葉でも、第三者に聞こえる。
ま、大丈夫だろう。
途中で落語の猫皿も入れる。猫はいまだ見ていないからアヒルだ。
アヒルの説明もさりげなく入れる。
これで、青いアヒルのときのおひねりはばっちりなはず。

ちょうど月が昇る前のすこし薄暗い時。
海峡石で光の当り具合も調整する。


扉君も出てもらい、扉を出す音を出してもらおう。
さ、始まりだ。






─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘










ここは大陸の端のそのまた端。
戦場では最前線。
その戦が終われば、ここに住むものはいない。
荒れた土地、崖下上がる潮風で、かろうじて生える草木は塩の結晶を咲かせる。

その土地に小さな家。小屋だ。
月が沈めば、崖下から塩水を汲む。
それを土に撒く。塩田だ。
平らにならし、乾燥。そして集めて、また海水を流し込む。
窯で煮詰め、にがりと塩を取り出す。

それを月の半分。残りの半分で山を越えた村まで売りに行く。
男の塩は塩なのに甘いと評判だ。
裕福ではないが、不幸でもない。
貯えができるわけでもないが、日々の暮らしが過ぎていく。
それが幸せなのだと、この年になってやっと気が付いた。


今日は一段と冷える。風も一層吹き荒れる。
これから乾季に入る。海は荒れ、水をくみ上げるのも一苦労だが、
いつもよりもうまい塩ができる。
それを楽しみにしていると笑う村人が、手付だと酒を分けてくれた。
ああ、楽しい。生きているのだ。

人の気配か?いや、こんな辺境に誰も来ぬ。
枯れ枝でも転がっているのか?ふふ、難儀なことだ。


ドンドンドン。ドンドンドン。

・・・人か?しかし、物の怪の類かもしれぬ。
いや、それでも久しぶりの客人か。

「どなたか?」
「この風に難儀しております。
わたしは諸国修行中の者、ご迷惑はお掛けしません。
軒下をお借りできますか?」

男か?気配は人だ。
うむ、こういうときの物の怪は女と決まっているのだが、残念だな。


戸を開けてみれば、旅の僧という風体だ。
体はしっかりとしているが、この風では進むこともままならぬだろう。

「それは難儀なことですな。どうぞ、軒先と言わずに中に。
何もありませんが、暖かい火はありますから。」

盗賊のような悪い気は纏っていない。
気の良しあしはわかる。

この家の主は昔は名の知れた騎士だった。
戦がある間は、手柄を取り、名を上げ、
褒美をもらい、戦場で名を知らぬものなぞいなかった。
が、戦が終わり、世が平和になると、
気の良さが災いしたのか、あれよあれよというまに一族に
資産は取り上げられ、何もない土地に追いやられ、
残ったのは、この小さな家と年老いた馬と報酬にもらった香木。
塩の作り方は、昔、昔、酒の席で聞いたのだ。
いつどこでなにが役に立つかはわからぬものだと、
男は、平和な世を喜んでいた。

「さ、ここに。粥も作りましょう。
久しぶりの客人です。どうぞ、ごゆるりと。」

この男は有るだけの食料を振舞い、いつもなら、ちびりちびりとのむ酒もだし、
旅の僧の見聞きした話を楽しく聞き入った。
旅の僧も、心からのもてなしを喜び、旅先での面白い話を大げさに、
身振り手振りで楽しく聞かせた。


「ええ、そうなんですよ。私が、茶屋で一息ついていますとね、
その茶屋で飼っている、アヒル。そう、あの赤い大きな。
そうですよ、海からやってきて体が小さくなったと。
そのアヒルが餌を食べておりました。
もちろん別に珍しくもなんともないんですが、その器がですね、
陶器で有名な作家の物なんですよ。
ええ、私も少しそれに接したことがありまして、
決してアヒルの餌皿にはしないものです。
ま、人それぞれ、とやかく言うまいと、もう少し茶を飲んでおりました。
すると同じように横で茶を飲んでいた男もその皿を見つけております。
まさか、盗むのではあるまいな、と、茶を飲みつつ横の気配をうかがっていました。
いや、ご主人!決して暇ではないのですよ?ええ、そうです。
盗みはよろしくないと。ええ。
そうしますと、その男が、その茶店の主人を呼ぶのです。
なんだ、きちんと話をして皿を譲ってもらう気だな、と。
なんだか、ほっとしましてね、饅頭をもう一つ頼みました。
いや、ご主人!決して暇ではないのですよ?ええ、そうです。
この茶店の主人が騙されては大変だと。ええ。
そうしますと、その男は皿ではなく、アヒルを見ていたんですね。
なんてかわいいアヒルなんだ、是非に譲ってくれと。
アヒルですよ?しかももう大きくなっている。
ここで買わなくてもアヒル屋で買うほうがよほど安く手に入る。
ああ、よほどこのアヒルが気に入ったんだと。
ま、人それぞれ、とやかく言うまいと、もう少し茶を飲んでおりました。
もちろん、聞いておりましたよ?なんと30リング!
アヒルをです。ええ、破格ですよね。
茶屋の主人はそれはそれは喜びました。
男もほくほく顔です。
さっそくアヒルに乗って出立しようとしますと、
スッとさっきまで餌を食べていた皿を指さします。

主人よ、アヒルというものは皿が変われば、
餌を食べなくなると聞いたことがある。
良ければその皿を譲ってくれんか?と。

しまった!この男!これが目的だったんだと!
茶屋の主人に忠告せねばと腰をあげますと、
その主人もスッと、皿を指さします。

あははは!あなたはご存じないかもしれませんが、この皿は王都で売れば
300リングは致します。
どうぞ、そのアヒルはどんな器でも食べますのでご安心ください。

男は顔を真っ赤にして去っていきました。
茶屋の主人はかわいがってもらえよーっと大きく手を振っております。
アヒルもクーアーと返事をしておりました。
私は、腰を浮かせたまま、その様子を見ておりました。

振り返った茶屋の主人がこう言うのです。

アヒルのエサ皿にこの器を使いますと、
旅人が20リングでアヒルを買ってくれるのですよ。
ありがたいことです。
今回はあなたも皿の価値に気付いたご様子、
それであの男は急いで手に入れようと
30リングも出しました。
ほんに、ありがたいことです。

上には上がいると、教訓になりました。」



「あははははは!なんておかしな話なんだ!
こんなに笑ったのは久しぶりだ!」


そうやって夜は更けていく。
しかし、寒さは増すばかり。

「今宵はなんと楽しいのだ。」
「ええ、私もです。ご主人の心からのもてなしを感謝いたします。」

薪は無くなってしまうが、止める暇もなく、置いてあった小さな木を火にくべる。

「ご主人!それは大変高価なもの!
それを売れば、王都で家を構えることもできるものだ。
皿の件で、価値は人それぞれだと言いましたが、これはあまりにも!!」
「そうだ、物の価値は人それぞれだ。
昔にもらったものだ。未練なのだろうか、売ることもできずにとっていた。
しかし、今はこのような香木よりも、暖を取ることの方が大事だし、
なにより、貴殿の話をもっと聞きたい。」
「・・・ご主人は、騎士殿か?」

旅の僧は部屋の隅にある、古い、それでも手入れされた甲冑を見ながら聞いた。

「ああ、騎士だ。死ぬまでな。
一族に騙されて、落ちぶれたと言えど、
国を守る騎士として、
国に一大事が起きれば、
古びたと言えども甲冑を身に付け、
錆びたりとも槍を持ち、 
老いたりともあの馬に乗り、
一番に王都に 馳せ参じ
一命を投げ打つ所存。」

僧は返す言葉もなく、ただただ何度も頷いていた。

「ご覧のような者でたいしたことはできないが、
もしも訴訟などで王都に来られたら、何かのお力になれるはず。
王都には天秤院というものがあることをお忘れにならぬよう。」
「はははは!世が平和ならそれでいい。
これも君主様のお力だ。
それに一族の恥をわざわざいうこともあるまい!」

男はただ笑うだけだった。
僧もそれ以上は何も言わずに、
良き香りが漂う中、またおもしろい話を語って聞かせた。
香木は、二人が寝入るまで、良い香りと暖かい火を出し続けた。
そして僧は月が沈むとまた旅立っていく。


やがて乾季が終わり、雨の日も終わった次の日に、
国から緊急の召集令が届いた。
まさに、「いざ、王都へ」と、
各地の騎士は先を争って王都に駆け付けた。
その中に、当然、かの男の姿がある。
だが、ひと昔前の古びた甲冑、
日常では使わなくなった槍、
その姿は、平和になり武具を装飾品とした他の者たちの中で、
あまりにもみすぼらしかった。

やがて君主が広場に姿を現し、
皆が膝をおり、臣下の礼をとる。


「そこな男、前に!」

かの男に前に出るようにと、近衛兵が声を掛ける。
廻りのものはそのみすぼらしい姿をあざけり笑い、
きっと、外につまみだされるのだろうと笑い声をあげた。

しかし、そんな騎士たちの前を
悪びれることなく男は進む。

「お召しにより参上仕りました。」
「面を」

そこで、初めて顔をあげると、目の前にいる君主、初めて見る君主の顔は
あの時の旅の僧、その人だった。

この人物こそ、戦国の世を終わらせ、平和というものをもたらした名君主。
諸国をまわって現状を知る旅の途中でかの男の家に泊ったのでした。

男は驚き、気付かなかった無礼を謝りました。


「いや、謝るのはこちらのほうだ。国の為に戦った騎士が
あのような不遇にあっているなぞ、許しておくれ。
訴えに来るかと待っていたが、来ぬでな、それで召集をかけた。
そなたはあの言葉通りに馳せ参じてくれた。
あの香木は一等殊勲に与えられるもの。
それを暖をとるために惜しげもなく使ってくれた。
まさに価値は人それぞれなのだ。
礼をいう。私の君主としても価値は貴殿のようものがいてこそなのだ。
ありがとう。」
「はっ。ありがたきお言葉。あの香木よりもそのお言葉が、
 わたくしめの一番の褒美でございます。」


君主はこの男に奪われた資産をすべて戻し、
側近として傍に置きました。
そうしてこの国は長く平和を保ったのであります。





─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘











彼女が舞台中央で、椅子に座り、いつもと違う声でその男のあらましを話し出す。
塩?海水から作るのか?くみ上げて、地面に撒く。
そして集める。

酒をもらったのか?
嬉しそうに手に持ったであろう酒樽を見つめていた。


また、椅子に座り、語りだす。
左手になぜかある扉君を見つめ話し始める。
その扉がドンドンドンと音を出した。
扉君の演技という奴だ、なぜか悔しさがでる。
目線につられてそれを見ていたから、みなが一様にびくりとなった。


移動を使っているのだろ、扉の内と外で会話が始まる。
旅人を招き入れ、また中央の椅子に座る。
1人なのに2人いるのだ。

話の筋は前回聞いたものと同じだが、
身振り手振りが、声の抑揚が愛しい人とは別人なのだ。

旅の僧が話し出す。
・・・・じゅげむやプリン問答と同じような話だ。

旅の僧が、本人、もう一人の客、茶屋の主人と変わっていく。


旅の僧の話が終わると、ちょっとの間。みなが一斉に笑い出した。
ま、間抜けだー!と子供たちも喜ぶ。


そこからまた男の話になる。

部屋の隅に甲冑なぞないのにそれが見えるようだ。


椅子から立上り、ダダンと床を鳴らす。


ああ、騎士とはそうだと私は思う。
この言葉をみなはどうとらえるのだろうか?
いや、人のことはいい。私には主にして半身、愛しい人がいるのだから。



今度は椅子を横に置き、その前で膝を折る。

椅子には君主が座っているのだろう。

片膝をついたまま、男と君主の会話が始まり、
最後、君主を見上げ、
また深々と頭を下げた。

椅子を正面に置き、その横に彼女が立ち、
長く平和を保ったというと、一礼をして芝居が終わった。








私とセサミナだけが先に拍手をする。
それに続いて皆が拍手をした。



うむ、号泣したのは私だけではなかった。



「いやはや、お粗末様でした。
ではでは、次はコットワッツ兄弟の演奏とわたしの舞で。
そのあともう一度音なしで舞います。
ご鑑賞あれ。」


さすがにこたつ入ったままの演奏はできないので、
前に出て椅子に座る。
いつの間にか月も昇っている。

「セサミナ?砂漠の夜だ。影響はないか?」
「ええ、ありませんね。ただ、姉さんの舞が見たい、うまく演奏したいとは思います。」
「それは私も同じだ。では、始めよう。」


彼女があのドレスを着て、舞台中央に現れた。
ダンと足を踏み鳴らすし、曲を始める。
リボンをくるりと廻し、裾が広がる。ああ、彼女が私の、ああ、セサミナもだが、
奏でる音で舞っている。
彼女が合わせているのか、私達が合わせているのか、
まさに舞だった。

ダン、とまた床を踏み鳴らす舞は終わる。

そのまま、演奏なしで、私に捧げてくれた舞を舞う。
誘惑は無しでだ。


生き物のようにリボンと裾が舞い、彼女が舞う。
ダ、ダンと、舞は終わり、彼女がカテーシーを取る。

惜しみない拍手だ。



「奥さん!すげえよ!やっとわかったよ!これはすごい!なるほどな!」
「姉さん!姉さん!!」
「さすが我が弟子ですね!!棒術にも取り入れましょう!!」
「モウちゃん、いいね、人の体がこれほどきれいだと思ったのは始めてだ。」
「モウ、素晴らしい。その言葉だけです。」

ルグ、ドーガー、ツイミたちも言葉なく拍手を送り、
湿地の二人も美しさを称賛していた。


「いやー、お恥ずかしい。しかし、コットワッツ兄弟の演奏は素晴らしかったね。
大道芸人青いアヒル一団に入ってもらいたいぐらいだ!
さ、次が本番!大道芸人青いアヒルだよ!
これは悪いが商売だ!こころが和んだら、ここにおひねりを入れてね?
さ、マティス!稼ぐよ~!!」

服を今回のためにあつらえた青い服に着替え、面をつける。
イリアスでもらった本物のアヒルの羽根もついていた。



左右から私たちが登場。


「どーもー、大道芸人青いアヒルでございます。
さて、みなさん?アヒルはご存じ?
ん?ツイミさんたちは知ってるよね?そうそう。赤いの。
ルグとドーガーは?ああ、知ってる?
アバサネ君とルコール君は?
話に聞くだけ?そうそう、よく知ってるよ!海から来たらしいね。
わたしは、イリアスにいって初めてみました。
そのときにふわふわの毛が舞っていましてね、
張り切って集めましたが、
まわりは、なにをやっているんだと
かわいそうな目でみられたのがいい思い出です。
ま、それが、その布団のなかに入ってるんですけどね。
これはいいものですよ?
ではでは、そんなアヒルたちの歌を聞いてください。」

歌を歌いながら左右対称の演武。
腕は2拍子3拍子を取っていく。私も練習をしてこれは物にしたのだ。



結果はわかっている。

子供たちは大爆笑。
ニックとツイミがひどい。死にかけだ。
アヒルに実際に接したことのある人間だ、辛かろう。
他の大人組も先ほどとは違った涙を流し、腹を痙攣させている。
私もつらい。

動けないのはこたつの為なのか、けいれんの為なのか?
おひねりを入れようとする気はあるようだ。

また時間がかかるのだろう。
彼女と2人で焼肉の用意をする。
各テーブルで食べれるように。
中央の板を外せばそのまま火口になるというのものだ。
肉は大蒜に付けたもの、キトロスに付けた骨付き肉、
そしてカンランを切ったもの。
生でも焼いてもうまいのは驚きだ。マヨもつける。
ご飯もだす。ビールもだ。子供たちは冷たいお茶かジュース。
最後はラーメンとぱふぇだ。
ラーメン鉢が足りないので、私たちとワイプはどんぶり鉢だ。
器屋には食べ終わってからすぐ持っていく。
鉢が3段入る入れ物は岡持ちというらしい。
それも2つ作ってある。

痙攣が納まるのを待つばかりだ。



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