いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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346:防風林計画※

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食の祭りまで15回月が昇りそして沈む。
その前にまた会わずの月の日が来る。

ここサボテンの森で過ごすか、イリアスの海に行くか。
呪いの森に行くか。渓谷に行くか。湖の温泉も捨てがたい。


「イリアスの北の海には行ったことないから、前の日から行こうか?
湖の温泉に前泊して、海に行こう。
最初の村も行っとこうか?情報は早いほうがいい。
ニックさんの都合はどうかな?」
「あの20人のことで忙しいだろう。といっても、1日かかる用でもないか。
前々日だな。そのときに行こうか?都合は聞いておこう。
ダメならまたいつでもいい。」
「そうだね。それまで1日も長いし、新作の甘味も作らないとね。
しってる、あのバリバリ、おかきって名前だったんだけど、
ドーガーがバリバリっていうからそれで定着した奴。
あれをね、ちょっと小さく、細長くして、辛めに味付けするの。
メイガの赤粉でもいいかな?それにチョコをからますのよ。
そしたら、危険なお菓子が出来上がる。
あの種以上だよ?」
「あのキトロスの種よりか?」
「そう!キトロスの入手方法考えないとね。
種として数個とってるから、植えてみようか?南国の植物園として。
テオブロマも育ててみよう。
あの渓谷の大きな葉っぱの木も一緒に育ててみようかな?
もしかして、温かいところだったら実がなるかもしれない。」


翌朝、朝風呂に入りながら話している。
扉君の家でだ。
サボテンの森の家で寝ていたが、月が沈むときに吹く風で
家が半分砂で埋まっていた。
なにか大きな木を育てないといけない。防風林計画だ。
その話をしていたのに、会わずの月の日の話になり、また植物の話に戻った。


「渓谷に行こう。あの大きな葉っぱの木。もっともらってこよう。
それと川ナマコ!
あとはマトグラーサの渓谷側の砂漠の資源を頂いちゃおう。
うん、もちろんちょっとだけだよ?」
「ああ、わかっている。まずは、作り置きの食料を補充しておこう。
あのラーメンも湯をかけたら食べれるようにするんだろ?」
「そうだね。じゃ、食料づくりだ!」


その日と、次の日はそうして終わる。
作り置きと甘味の大量製作。
簡単麺もだ。

その夜は、チョコレートプレイも入ってしまい、
おおいに盛り上がってしまった。
早い話が、溶けたチョコレートを体に塗って舐め合うのだが、
舐めてほしいところ、舐めたいところに塗るから、ますます恥ずかしい。

緩めにしたチョコで、人肌温度のチョコレート。
それを上から垂らしていく。
四つん這いになった背中に落とされる。それだけで感じるわたしは変態だろうか?

「あ、あ、あ!マティス!流れてく!舐めて!舐めて!」
「ああ、本当だ。」
「あー、もう!そこじゃないの!あ、あ、あ、あ!チョコ!おしりんとこ!!」
「ん?ここも甘いよ?ああ、ここ?」
「んーーーー!!」


完全に遊ばれている。ちょこは下にぽたぽた落ちてる。
けど、背中にたまっているという感じがする。動けん!!
マティスは後ろに陣取り楽しんでいる。

甘さが2種類だな?おまえの白いチョコが好き!

ばーかばーか!!変態!
なんてこっぱずかしいこと言ってるんだ!!


「愛しい人?時々いう、ばかというのは?」
「もう!!マティスのこと!!ばか!!!」
「ん?それはちょっと違うな?意に添わぬことをいうのか?」
「ちーがーうー!!お間抜けというか、んー、愚か者というか、いろいろ。
馬と鹿という動物がいてね、ん。
ここだったら王様にそれを操ろうとする人が、んん。鹿を献上して、
これは馬ですっていうのね、ん。
いや、違うだろう鹿だろ?って廻りに聞くの。王様が。あん。
で、王様の味方や、権力に屈しない人は鹿だっていう。
で、その操ろうとする奴になびく奴は
馬って答えるの。あれ?逆だったけ?んーーーー!!
そういう愚か者をその動物を2つ合わせて馬鹿っていうの!!あー!!もう!」


ぺろぺろ背中を舐められながらバカの通説を説明させられる。馬鹿はわたしだ。


「もう!!マティスは声出しちゃダメ!」

時間を掛けて、一滴落とし、ぴっとなめる。それの繰り返し。
マティスは正直に声をあげない。
ん、ん、んって。
そこには触れない。ピーチクオンリー。

ホワイトチョコを出すまでお預けだ!う!!下品だった。
自分で恥ずかしくなり、残りを一気にそこに上から落とす。


「ーーーーーーー!!!」

あとは舐め尽くすだけ。

「ふは!!」

そこからは一方的に攻められた。



「今度は私の演奏だけで踊っておくれ?」
「ああ、しかし、踊りを見惚れていたら奏でられないな。練習しよう。」
「メイガの服も考えないとな。」
「メイガを狩って、カエルもだ。」
「ああ、生きているな。」

わたしは喘ぎっぱなしだ。


「マティス?」

何が不安なんだろう?


「マティス?新年のこと?」
「・・・・。」

マティスはわたしを抱きしめ動かない。

「なに?」
「・・・あの言葉は?りんね?」
「ああ。死生観が違うからね。ここは生きた証がのこればいいんだっけ?
それがなくなったら、それはそれでいいと。」
「そうだ。タロスの石はなくなった。
しかし、着道楽のタロス、タロスの木、タロスの家。
まだなくなりはしない。」
「なるほどね。わたしのところの考え方はね、輪廻転生っていうのがあるの。
べつにそこまでわたしも何かを信心しているわけじゃない。漠然とね。」


そこから簡単にわたしがもってる死生観の話をする。
持っていただな。いまは死んだらそこで終わりだと思っているが、
あの言葉、お経などはそれを送る側が納得するための言葉だ。
母の時の葬儀は直葬ですませた。わたしが思っておけばいいからだ。
伯父、母の兄さんがなくなった時が物事を自分で考えられる年齢での葬儀だった。
その前の祖父や、祖母は覚えていない。
ただ、親戚がいっぱい集まったということしか覚えていない。
その伯父を送るお経の中で、
三途の川を渡るときに自分はなんとか上人の一番弟子で
大変に功徳を積んだ人物であると名乗りをあげよというのがあった。
不確かだが、子供心にはったり上等!とはすごいな、と記憶している。
それを聞いていた母も、
ああ、これで安心だ、よかったと、涙していた記憶がある。

あの言葉はわたしとツイミさんが納得すればいい言葉だ。
おそらく、あのなかに知っている人物が埋まっていたのだろう。
へたしたら師匠が埋まっていたかもしれないところに。
蜘蛛がいたんだ、糸関連だ。リグナもマトグラーサの馬だ。



「ツイミが愛しい人に感謝していると言っていた。」
「そう。そういってもらえたらよかったよ。」
「その輪廻というのはだれもが巡るのか?」
「んー、そこはいろいろ。人間なるか動物かわかんないってのがあったとおもう。
その死後の世界っていう考え方は、
人間が死の恐怖から作り出したものだとも言われてて
そこから宗教が生まれているってね。
だからいったでしょ?わたしにとってここは死後の世界かもしれないって。
恐怖で都合よく作り出した世界かもしれないって。
ああ、違うというのはわかってる。だって、マティスがいるもの。
もし、作り出した世界だとしても、
よくできましたってもんよ、マティスがいるからね。
うふふふふ。
でもさ、こういうのって誰でも考えることなのよ。
んー、何の講義だったか忘れたけど、
えらい先生がね、生徒さんにね、
この世界は自分が考え出した世界だと考えたことがある者はいるか?
って質問するのよ。そしたら、何人かの生徒は手をあげるの。
もちろん笑いながらよ。
そしたらその先生はさ、深いため息をついてさ、
はー、情けない。この世界はわたしが作り出した世界だというのにって。
あはははもちろん冗談だよ?それほどだれもが考えることなの。
でも現実は違うでしょ?だから頑張れるし、生きていける。
あのまま黙って海に送っていれば、わたしもツイミさんもいろいろ考えてしまう。
だから、あの言葉なんだ。あの中にだれがいたかはわからないけど、
あの言葉で納得したかったんだよ。だから、ツイミさんが感謝してくれたのなら
よかった。礼を言うのはわたしだよ。」
「そうか。」
「ん?」
「私はあなたと一緒にその旅路に出たいと思ったんだ。」
「もちろん、そのつもりだよ?」
「うん。新年に記憶が飛んだとしても、あなたがいればいい、すぐに思い出す。
でも、あなたが故郷に戻ることは?」
「ああ、それはないな。新年の王のやらかしでわたしが元に戻るなら、
こっちに来たのもその力が働いていることになる。
そんなことが出来るならここの世界はもっとよりよい世界だよ?
わたしがこっちにいるのは偶然だ。
だから、故郷に戻ることはない。
偶然が何回も起きればそれは必然だ。
そうなればそういった話がどこかに残っている。
わたしの故郷にはないと言い切れる。
物語としてはあるけどね。」
「・・・その物語が真実なのでは?」
「ぶははははは!俺TUEEEEEEE!が?ないない!想像力の産物だよ?
ま、ただ、たまたま起ったことが、他所でも起きてないとは言い切れない。
確率の問題だね。800年周期で変動が起こるのではなく、
800年周期で誰かが他所からきてるかもしれないね。
スパイラルに誰かが来て工業が発展したのかもしれない。」
「・・・スパイラルが発展したのはここ100年だ。
100年前?」
「んー、独立したのは300年前だよね?
なにかないと独立しようなんて思わないから、300年より前?
そうだとしてもちょっと技術進歩は遅いな。いや、そんなもんかな?んー。
あははは!ほら、またかもしれないはなしだ。
キリがないよ?いいんだよ、そんなことは!
2人で長生きしておいしいもの食べようって話だけなんだから。」
「そうだな。」
「そうだよ。」
「さ、お風呂行こう。香木いれて、長生きを祈願しよう!」
「炙ってみるか?」
「そこまではいいかな?ゆるりとお気軽にというのがいいからね。」
「はははは!なるほど。」
「うふふふふ。」


マティスがやっと笑ってくれた。
それだけでわたしは長生きできる。






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