いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
401 / 869

401:情報

しおりを挟む
マティスはすぐに皆に連絡している。
イリアスでの話もすべて。
ガイライはニックさんに確認を取るようだ。
あの宿屋の兄さんが強盗団と護衛団をやっているのは間違いないが、
あの何とか様かどうかはわからない。
信仰の対象のような言い方だった。
しかし、守衛は強盗団の親玉だと言った。
首輪のことも報告。マティスは絵にかいて飛ばしていた。

(兄さんたちが移動ができることは知らない。
人が移動できるなんて。しかし、わたしが領主の力でできるという話は
隠していない。姉さんもオート殿とルカリ殿を運んでいる。
石を使ったとしても、その力、欲するはずです)
(実際石を使えばできるんだからすればいいのにね)
(それは無理でしょう。あの情報は月が沈む少し前に入りました。
イリアスの港の方が速い。各地にわざと流してますね。
それを聞いて、コットワッツか王都に来るのを待っているということですよ)
(そうか、なるほど。じゃ、問題なくこのまま、間の砂漠
ピクト、山脈と行ってくるね)
(モウ、無理はしないで)
(ガイライ、心配しないで?ちゃんと呼べたでしょ?
何かあったらまた呼んで?いつでもいいからね?)
(はい、モウ、ありがとうございます)
(うふふふ。楽しんでるから。
そうそう!予告だよ!おいしいチーズを仕入れたんだ。
魚料理もいいけどこれはピザだね!薄いパンに熱々のチーズ!
ピザだよ!とろけるよ!!)
(いつ!いつ戻るんですか!!)
(決まってるのは来月の混合いはじめにボルタオネ。
会合前にルポイドだけ。うまくできたら届けますよ。
お楽しみに!)

心配して呼んでくれたけど、
話終われば皆の頭の中は、ピザでいっぱいだ。
生ハム、チーズ、じゃがいも!
わたしも楽しみだ。

それにしても懸賞金とは。

「しかし、本物だったら最後まで分からないんでしょ?
仕留めたとして、お金はいらないんじゃ損じゃない?」
「だから本物だったら最後までわからないんだ。
それで、ガセなら必ず報復される。
金を払わないと自分が殺されるからな。」
「へー。マティスと赤い塊は気を付けないとね。
ティスとモウはまずは海老を食べよう!!」

小さなエビというが。わたしにしてみればイセエビ級だ。

が、表面は焦げているけど中は生だった。
仕方がない、半分に割って、窯にいれる。
すでにキッチンは展開しているのだ。

これがおいしい!!


「おいしい!これはいいね!
大きな海老もおいしいけど、これぐらいがいいね。
味が濃い!」
「そうだな!
ここの魚は白身だな。ジットカーフは赤身だった。イリアスも。
これも半日干せば臭みが抜けるか?」

炙っただけのものはダメだった。
完全に火を通さないと食べれない。
火を通しても生臭い。

「たぶんね。おいしいのに、この臭みがダメだ。
ムニエルはきっとこっちのほうがおいしいよ。
魚のフライにしようか?臭みも飛ぶかな?」


牛乳に浸せば取れるという話も聞いたことがある。
しかし、その後の牛乳の処理は?
小学校時のあの給食にでた牛乳瓶の残りを、
一本にまとめる作業というのがあった。
これがいやでいやで。
家には牛乳がなかった。
母も嫌なのだ。
単独で飲むなんてとてもとても。
牛乳パックを洗ってゴミに出すという作業も嫌だった。

ここではそんなことはない。
いつでもきれいにできるから。
勝手なもんだ。
いや、実際おいしいと思う。
濃いのだろう。



「ここでは、海老と塩だね。それとお魚。この近くで取れるのかな?
情報を買わないと。」

ウニは同じような感じだ。
そう言えば、エビフライを食べていない。
余りにも大きいので思い出さなかった。

「マティス!おいしいもの作ってあげる!」

揚げ物はもう大丈夫。
火加減がプロフェッショナルだから。
海老の下準備もできる。
魚の切り身もフライにしよう。


タルタルソースもマティスは気に入っていた。
師匠と2人で作ったからね、といえば、
この世の終わりのような顔をした。
ふふふ。師匠は卵の殻を剥いただけだよ。


トマトとモッツアレラを交互に挟んだ奴、なんていうんだっけ?
結局2人で料理をする。
海の見える部屋で2人で料理。いいな!これ!!

味見しながら、冷やしたワイン。
どこの世界の料理ショーだ?

「さ、召し上がれ。」


さっくり、プリプリ。

「うまいな!!」
「おいしい!!」


天丼もいいかもしれない。


「もっと小さい海老があればいいね。
子供とかじゃなくて、小さい種類。」
「大きいほうがいいだろ?」
「いや、小さいのは小さいのでいいのよ。
大きいと切って炒めてってことになるか、焼くかでしょ?
かき揚げとか、天ぷらとかね。これも聞いたら教えてくれるかな?
お金をたくさん持っとかないとね。」

教えてもらうことをかき出しておこう。
後だしで聞いてもお金を取られるから。

・塩の売っているところ
・化粧水、油の売っているところ
・小ぶりな海老が売っているところ、もしくは取れるところ
・ダカルナの流行り
・ピクトとの交流関係



「最後の2つは必要か?」
「一応ね。お金で買える情報で、どこまで有意義かは分からんけどね。
きっと懸賞金の話もここから来てるんだよ。
聞いてみる?賞金稼ぎティスとモウの誕生だよ?
追うのは剣のマティスと赤い塊だ。」
「それは面白いな。
追うものがいるという話が広まれば、
その話を流したものが接触してくるかもしれんな。」
「接触されても困るけどね。」
「ははは!それもそうだ。」

月が昇るまで、海を見ながらこれからのルートを確認したり、
海老料理のいろいろ、ピザの話、
賞金稼ぎの名乗りのセリフやポーズも練習した。

「必要なのか?」
「もちろん!しどろもどろだと、嘘だってばれるよ?」

ま、これを名乗ることはないだろう。
わたしだって人前でいうのは恥ずかしい。





ここは船を利用する客も、陸路で移動する客も両方相手にするので、
いわば、24時間型の街だ。
だから情報も入りやすいのだろう。

下に降りていくとここの女将さんに、
さっそく話を聞くことにする。

「女将さん!おいしかったです。
これ、隣に返してくればいいんですか?」
「・・・あんた、あの小エビどうしたんだい?」
「え?食べましたよ?」
「あの半生の物は?」
「もちろん!おいしかったです。」

油で揚げれば臭みも飛んだ。
タルタルソースがよく合う。

「そうかい。皿はこっちで返しておくよ。お金はいらないから。」
「そうですか?おいしかったと伝えてください。」
「ははは!なるほど。嫌味だね。わかった、伝えておくよ。」
「?」
「それで?荷支度しているが、泊まらないのかい?」
「ええ、ちょっと休憩したかっただけなんで。
このまま、仕入れるものを仕入れたら出発します。」
「宿賃は返さないよ?」
「もちろん。それで、ここの街は初めてなんで、いろいろ教えてもらいたいんですが?
お金は払います。」
「へー、わかってるんだね、情報価値が。
なんでも先に仕入れるのがいいのさ。それをあたしに聞くってのが、
賢い選択だ。では、そっちに行こう。
たったまま話すようなことを聞くわけでもないんだろ?」
「はい。6項目ほど。」
「まとめてきたんだね。ますます、賢いね。」

なぜか、小さな部屋に通された。
「さ、聞かれたことを金で答えるが、その話を外部に漏らしたくなければ、
石を使えばいい。
こっちも他に聞かれたくない内容なら石を使うから。」

本格的だ。

「えーと、最初2つは、そんなに問題ないかな?
塩、海水から作った塩を買えるところを教えてください。
女将さんおすすめのところ。
それと、化粧水、髪に付ける油を売っているところ。
これは出来たら女将さんの使ってるものを売ってるところがいいです。
素敵ですよね?その髪に艶。肌もぷりぷりですもん。」
「・・・あんた、それに金を払うのかい?」
「ええ。街で探してもいいけど、時間の無駄でしょ?その時間を買うと思えば。」
「時間を買うか。いい考えだよ。それらまとめて、1銀貨だ。いいかい?」
「ええ。」
「塩はこの街で売っているのは一カ所だよ。
ふふ、損したね。しかし、金を出して買う情報だ、海の塩は3種類売っている。
仕入れる場所が違うのさ。そこで、一番高いものを買えばいい。
これは騙そうとかじゃないよ?全て買って味を比べればいいが、
それこそ無駄だ。一番高いものが甘味があってうまいのさ。
大抵は一番安い塩を買う。岩塩より安いからね。
しかし、それは間違いだ。それをよそでダカルナの海の塩だなんて
売るのは許せないね。」
「なるほど。料理に使うのはそのお高いのが一番だと?」
「そうさ。で、化粧水と、カメリの油だね。ふふん。
これもあたしに聞いたのは正解だ。
これはあとで地図を書いてやろう。
櫓宿のミフィルに聞いたと言えばいい。
一見さんには売ってくれないのさ。」
「おお!それは貴重な情報!!ありがとうございます!!」

こういう話はうれしい。
マティスがあきれているが、うるさい!
きっといいものに違いない。

「さ、次は?」
「これもわたしは聞かれても問題ないかな?
さっきの小ぶりな海老の仕入れ先、もしくは取れるところをおしえてほしいです。」
「・・・ああ。先に教えてやればよかったよ。
あの小エビは売り物じゃない。知らない客にああやって売りつけているのさ。
ここではだれも食べない、くずエビなんだよ。
小さいし、焼いても中は生だ。生でなくなるまで焼けば、身は丸焦げになるか
さらに小さくなってだべれたもんじゃない。
あんたたちは海のものは初めてなんだろ?
だからおいしかったって言えるんだよ。」
「そうなんですか?じゃ、売ってるところもないと?」
「網にかかるもんだからね。港に行けば売ってることは売ってるね。
海から戻る船から直接買えばいい。
隣は知り合いからタダで引き取ってるよ。
あんたたちみたいな世間知らずに売りつけるために。」
「おお!タダなんだ。」
「あんたたたちが売ってくれっていえば、そうだね、一山1リングぐらい
吹っ掛けてくるんじゃないか?それでもいいなら買えばいい。
どこで取れるかってのは、湾の真ん中あたりだ。あれを食べる魚を捕るんだから。」
「素晴らしい情報です。これも1銀貨?」
「ああ、いらないよ。これは。」
「いや、わたしには勉強料も含みます。納めてください。」
「そうかい?じゃ、次だ。」
「これも聞かれてもいい話です。
いまのダカルナの流行はなんでしょうか?」
「1銀貨だ。」
「どうぞ。」
「ドレスだね。青の。青い服が売れる。」
「へー。流行の色ってことですか?」
「フレシアの絹は知っているだろ?その青色を使ったドレスが、
ニバーセルの懇親会で素晴らしいものだったらしい。
なんでも、トックスという人の作だとか。
その人はジットカーフの人間だが、今はコットワッツにいる。
なかなか、その人の服がこっちまで出回ることはないから、
青いものだったらいいということだ。」

「ビンゴ!」

マティスが叫ぶ。
ああ、いいタイミングだね。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

大好きなおねえさまが死んだ

Ruhuna
ファンタジー
大好きなエステルおねえさまが死んでしまった まだ18歳という若さで

R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~

イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。 半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。 凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。 だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった…… 同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!? 一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!

修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。 しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。 修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!? 乗客たちはどこへ行ったのか? 主人公は森の中で一人の精霊と出会う。 主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...