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404:塩
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ずっしりと重い。
エビはまだ匂いはしない。
生きてるのもいるしね。
裏通りに入って、真空にして、そのまま収納。
白身の魚はどうしようか?
今回はいいか。
化粧水屋の前まで戻り、そこから気配を消し、また裏通りに入った。
しばらく進んで、通りに戻れば大丈夫。
大きな塩屋さんの前にでた。
「すいません。海水から作った塩をください。」
「いらっしゃい。はじめてだね?ピクトで売るのなら、これだ。」
3種類。一番安い塩を勧められた。
皆が知ってる話なんだな。
「この横のは?」
「これより、高い。金に余裕があればこれは王都で売れる。」
「その横は?」
「一番高い。が、一番うまい。ここの者しか買わない。」
「おいしいんでしょ?王都では売れない?」
「ふーん。1銀貨で教えてやろうか?」
「お願いします。」
「ここで扱っている塩は作っている場所が違う。
場所が違うってことは作り方が微妙に違う。
それと距離も違う。そうなると乾燥具合も違う。
一番うまい塩はここで食うからうまい。王都に運んでいく間に、
真ん中の塩と同じ味になる。」
「ん?じゃ、一番おいしい塩をピクトに持っていったら、
中間位のおいしい塩になる?」
「そうなるな。だが、ピクトの連中は味覚がおかしいのさ、
この一番安い塩がうまいという。物を知らない連中なんだ。」
要は乾燥具合と味の好みか。
「難しいですね。」
「そんなことはない。ピクトで売るか、王都で売るかだ。
ここで食べるならこれ。簡単だろう?」
いやいや、どこが?
「んー、じゃ3種類、ください。」
「おい、こっちは親切で教えてやったんだぞ?金はもらったが。
始めたんだろ?買って損するぞ?」
「物は試しですよ!この背負子にそれぞれ3種類。
同じ量でください。」
「は!勝手にすればいい。それの背負子か。
全部で120リングだ。」
やはり高いな!
「高いですね。ちなみにお安いのだけだと?」
「60」
「真ん中の全部だと?」
「120」
「お高いの全部だと?」
「180」
んー?
3、2、1なんだよね?
で、3は時間が経てば2になると。
3、2、1は確保したい。
「すいません、今の無しで。」
「そうだろ?」
「お高いのを4つ。あとは真ん中の1つ。お安いのは1つ。
「・・・・。」
「いや、乾燥を防げればいいのではないかと。
この魚の袋を使えばおいしいまま、王都に運べる。
ピクトまでは持たないかもしれないけど、持てば儲けもので、
珍しくて買ってくれるかも。ね?試す価値あるでしょ?」
「これで?ああ、なるどな。魚の皮ね。毛は処理してるんだ。
王都までは、そうだな。いいかもしれない。
だがピクトはダメだと思うぞ?あいつらは物を知らないから。」
「王都で売れれば売り切ります!」
「ま、がんばれ。この袋、数はあるのか?」
「ええ。10袋ほど。」
「6つだな。のこり4つの袋は売ってくれるか?」
「1つ2リングですよ?」
「かまわない。」
魚の皮は1枚5銀貨だ。2枚使っているから1リング。
毛の処理と手間で1リングだ。
他の人がすればもっとかかるだろう。
塩で150リング。袋を8リングで売ったから142ングだ。
今度ここに来るときに袋があれば売ってくれと言われた。
化粧水の瓶と魚の袋。
もう一度来るのことになるな。
もう月が昇って半分だ。
誰もいない境界を抜けて、ひたすら歩いていく。
途中何台かの荷馬車が追い越していった。
月が沈むと同時にダカルナの王都に入れるのだろう。
歩きでは月が昇る頃か。
ニバーセルの大門は月が昇れば閉まるが、
ダカルナは港町同様24時間体制だそうだ。
塩、3種類は収納。これは売らない。
他はそれぞれを魚の皮にいれて乾燥具合を確かめないと。
まじめに歩いて王都に向かっている。
「寝ずに大丈夫か?」
「そうだね、よくないね。この頃不規則だ。
だけど、頑張るよ。王都の守衛に宿を紹介してもらって、
そのまま寝ずに商売をしよう。
半分くらいで様子を見よう。売れれば良し、売れなければ、砂漠に向かおう。
合わさりの月の日までには砂漠を超えたほうがいいでしょ?」
「そうだな。コットワッツ同様、砂漠石の回収をしているだろうからな。」
「だよね。あまりよそ様に見られるのも嫌だろうから。超えたら、いったん、
コットワッツに戻ろうか?化粧水の入れ物と、魚の袋を作っておく?」
「魚はイリアスの東の海でいいだろう。・・・気になるか?」
「ああ、送ったところだね。ううん。そんなことはない。
あの外壁がいい餌場になってればいいと思うよ。うん、魚はそこで。
瓶は形は考えてあるんだ。単純だよ?細長くすればいいだけだから。
絵にかけばすぐ作ってくれるかな?」
「出来上がれば、引き返すのか?」
「それなんよ。魚の袋はいつでもいいかな?あれを見本に作ればいいしね。
たぶんあまりよろしくない仕上がりだと思うけど。
化粧水の瓶はいいと思うんだよね。
あの例のオイル入れにもなる。ガラスの瓶はまだ普及してないでしょ?
もらったのは貴重なものだったんだ。
それでも、密封性がないからね。」
ゼムの奥さんがくれたときは、貴重なものだとは思ったけど、
そこまで希少性があるとは思っていなかった。
結婚のお祝いの最大級の物だったんだ。
「とにかく、まじめに歩くよ。荷重かけて。
出ないよニックさんに笑われるからね。」
「そうだな。走るか?」
「いや、人目がある。まじめに、まじめに。
そうそう、塩を運ぶロバ、んーここでは駱駝馬かな?
その話をしてあげようか?」
「どんな話だ?」
「んーとね、商人がいて、荷物を駱駝馬に運ばせているの。
その荷は塩ね。どこの世界でも塩は貴重だ。
遠い場所か街に塩を運んでいる。
毎日重たくて重たくて、駱駝馬は川の近くでよろけてしまったんだ。
するとどうなる?塩は水に流されて、積み荷は軽くなった。
馬は思ったね。
はっはーん、水に入れば荷は軽くなる!
覚えたぞ!!ってね。
商人は余りにも重い荷を持たせたことを反省したんだ。
半分以下に減った塩を何とか売りさばいて、今度はそこで綿を仕入れた。
綿花の方だね。
詰め込んで詰め込んで、塩と同じぐらいに大きさにしたけど、
荷は比べ物にならないほど軽い。
これで、よろけて川にはまることはないだろうってね。
行きではまった皮に近づいた。
馬は思ったね。
また川にはまったら荷は軽くなる!
どっぼーん!
どうなったと思う?
商人が慌てて引き上げようとしても、
綿が水を含んで重くなったる。落ちないようにしっかり結わえてある。
とうとう馬はおぼれ死んだって。
狡いことをしたらダメって話。」
「・・・・。」
「ん?突っ込みどころ満載?」
「いや、なんというか、商人も災難だな。」
「ああ、そっちか。そうだね。良かれと思ってやったことが、
真逆になったら困るよね。
どうすればよかったのかな?」
「そうだな。この荷は綿だから水を含むと重くなるから気を付けろと注意する?」
「・・・ここではそうなるか。馬と意思の疎通ができるもんね。
故郷ではダメだな。各々が勝手にそう思ってるんじゃないかって。
人間だけが分かってないかもしれないけどね。」
「愛しい人は?故郷では?」
「わからんよ。こっちに来てから。動物全般はどっちかというと苦手だったかな?
考えていることが分からないから。」
「人もそうだろ?」
「そうだよ?でもわかる必要がないって思ってたの。人はね。
でもさ、犬とか猫とか。ああ、小さな動物ね、彼らはなんか訴えてるんよ。
でも、分からなかったの。だから余計に申し訳なくて苦手だったな。」
「そうか。」
「うん。」
そんなくだらない話をしながら進んでいく。
月が沈んでもひたすら進む。
旅の話は、イソップ物語。
ガチョウと黄金の卵も、鳥と話し合えばよかったのに、となった。
なるほど。
あの鳥も食べるから意思の疎通は行はないが、
大事にしている、ペット的な立場だとわかり合えるんだ。
イソップ物語の人と絡む話は全てダメになるな。
金の斧と銀の斧も素早く奪えといわれた。
なるほど。
「そういえばさ、櫓宿で買った若かりし頃の剣のマティスの武勇伝は、
実際どうなの?」
「遠征にはガイライ、ニックの隊にいた。そんなことを許すと思うか?」
「常に10人ほど侍らせるっての?んー、ガイライもニックさんも一緒にとか?」
「・・・ないな。それ、ガイライが聞けば泣くぞ?」
「ん?その間は何?」
「侍らせてはいないが、宿営地には押しかけていた、女が。」
「おお!!」
「なぜ喜ぶ?」
「きゃー!マティス様がこっちを見たわ!!って?」
「!!聞いたのか?」
「おお!その人たちは今どうしてるんだろうね。
今のマティスを見てもわからないのかな?」
「どうだろうか?あの宿の女将もその時代を知っているが、
分からなかっただろ?話だけなんだろうな。」
「そうか。・・・そのさ。」
「・・・みな、嫁に行ってる。子も、孫もいるだろう。」
「え?そんな年齢?ああ、そうか、そうだね。
そのだれも訪ねてこなかったの?その話はだれから?」
「誰も来なかった。話はタロスからだ。
もともと砂漠には誰も来ない。」
タロスさんが守ったのか?
関わりを絶ったのか?
タロスさんは謎だな。
「だいぶたってから街に出入りしてたんでしょ?
知ってる顔というか、その人たちと会うことはなかったの?」
「ないな。ゼムのところか、本屋か石鹸屋。ザバスのところ。
そこだけだからな。声を掛ける娼婦も腕と眼帯で、
ダメだとわかる。」
「おお。これは、どうなんだろう?」
「?なにが?」
「んー、マティスには災難だったけど、わたしは良かったなって。
人の不幸を喜んではダメなんだけど、こればっかりは。うん、よかったなって。」
「それでいい。私もあなたが来てくれてうれしいのだから。」
「そっか。うん。よかったね。」
「ああ、よかった。」
心から良かったと思ってしまった。
誰かが、通っていたとか、街に行ってあったとか、
そんなことは聞きたくないけど、知りたいと思ってしまう。
なんて嫌な女だ。
わたしは逆に聞かれても困らないからか?
数えるほどの相手との話。
付き合っていたと、言えるかどうか。
その場の雰囲気でそうなったこともある。
好きだ、愛してるなんて言ったことも言われたこともないな。
ああ。
「マティス?」
「どうした?」
「マティス、わたしはあなたが好きだ。愛しています。」
「!私もだ。愛しい人を愛している。」
「うふふふふ。」
「愛しい人。もっと言って?」
仕方がないな。
一休さんの替え歌を歌った。
もちろん、マティスには大うけだった。
あーあー、なむさんだー。
エビはまだ匂いはしない。
生きてるのもいるしね。
裏通りに入って、真空にして、そのまま収納。
白身の魚はどうしようか?
今回はいいか。
化粧水屋の前まで戻り、そこから気配を消し、また裏通りに入った。
しばらく進んで、通りに戻れば大丈夫。
大きな塩屋さんの前にでた。
「すいません。海水から作った塩をください。」
「いらっしゃい。はじめてだね?ピクトで売るのなら、これだ。」
3種類。一番安い塩を勧められた。
皆が知ってる話なんだな。
「この横のは?」
「これより、高い。金に余裕があればこれは王都で売れる。」
「その横は?」
「一番高い。が、一番うまい。ここの者しか買わない。」
「おいしいんでしょ?王都では売れない?」
「ふーん。1銀貨で教えてやろうか?」
「お願いします。」
「ここで扱っている塩は作っている場所が違う。
場所が違うってことは作り方が微妙に違う。
それと距離も違う。そうなると乾燥具合も違う。
一番うまい塩はここで食うからうまい。王都に運んでいく間に、
真ん中の塩と同じ味になる。」
「ん?じゃ、一番おいしい塩をピクトに持っていったら、
中間位のおいしい塩になる?」
「そうなるな。だが、ピクトの連中は味覚がおかしいのさ、
この一番安い塩がうまいという。物を知らない連中なんだ。」
要は乾燥具合と味の好みか。
「難しいですね。」
「そんなことはない。ピクトで売るか、王都で売るかだ。
ここで食べるならこれ。簡単だろう?」
いやいや、どこが?
「んー、じゃ3種類、ください。」
「おい、こっちは親切で教えてやったんだぞ?金はもらったが。
始めたんだろ?買って損するぞ?」
「物は試しですよ!この背負子にそれぞれ3種類。
同じ量でください。」
「は!勝手にすればいい。それの背負子か。
全部で120リングだ。」
やはり高いな!
「高いですね。ちなみにお安いのだけだと?」
「60」
「真ん中の全部だと?」
「120」
「お高いの全部だと?」
「180」
んー?
3、2、1なんだよね?
で、3は時間が経てば2になると。
3、2、1は確保したい。
「すいません、今の無しで。」
「そうだろ?」
「お高いのを4つ。あとは真ん中の1つ。お安いのは1つ。
「・・・・。」
「いや、乾燥を防げればいいのではないかと。
この魚の袋を使えばおいしいまま、王都に運べる。
ピクトまでは持たないかもしれないけど、持てば儲けもので、
珍しくて買ってくれるかも。ね?試す価値あるでしょ?」
「これで?ああ、なるどな。魚の皮ね。毛は処理してるんだ。
王都までは、そうだな。いいかもしれない。
だがピクトはダメだと思うぞ?あいつらは物を知らないから。」
「王都で売れれば売り切ります!」
「ま、がんばれ。この袋、数はあるのか?」
「ええ。10袋ほど。」
「6つだな。のこり4つの袋は売ってくれるか?」
「1つ2リングですよ?」
「かまわない。」
魚の皮は1枚5銀貨だ。2枚使っているから1リング。
毛の処理と手間で1リングだ。
他の人がすればもっとかかるだろう。
塩で150リング。袋を8リングで売ったから142ングだ。
今度ここに来るときに袋があれば売ってくれと言われた。
化粧水の瓶と魚の袋。
もう一度来るのことになるな。
もう月が昇って半分だ。
誰もいない境界を抜けて、ひたすら歩いていく。
途中何台かの荷馬車が追い越していった。
月が沈むと同時にダカルナの王都に入れるのだろう。
歩きでは月が昇る頃か。
ニバーセルの大門は月が昇れば閉まるが、
ダカルナは港町同様24時間体制だそうだ。
塩、3種類は収納。これは売らない。
他はそれぞれを魚の皮にいれて乾燥具合を確かめないと。
まじめに歩いて王都に向かっている。
「寝ずに大丈夫か?」
「そうだね、よくないね。この頃不規則だ。
だけど、頑張るよ。王都の守衛に宿を紹介してもらって、
そのまま寝ずに商売をしよう。
半分くらいで様子を見よう。売れれば良し、売れなければ、砂漠に向かおう。
合わさりの月の日までには砂漠を超えたほうがいいでしょ?」
「そうだな。コットワッツ同様、砂漠石の回収をしているだろうからな。」
「だよね。あまりよそ様に見られるのも嫌だろうから。超えたら、いったん、
コットワッツに戻ろうか?化粧水の入れ物と、魚の袋を作っておく?」
「魚はイリアスの東の海でいいだろう。・・・気になるか?」
「ああ、送ったところだね。ううん。そんなことはない。
あの外壁がいい餌場になってればいいと思うよ。うん、魚はそこで。
瓶は形は考えてあるんだ。単純だよ?細長くすればいいだけだから。
絵にかけばすぐ作ってくれるかな?」
「出来上がれば、引き返すのか?」
「それなんよ。魚の袋はいつでもいいかな?あれを見本に作ればいいしね。
たぶんあまりよろしくない仕上がりだと思うけど。
化粧水の瓶はいいと思うんだよね。
あの例のオイル入れにもなる。ガラスの瓶はまだ普及してないでしょ?
もらったのは貴重なものだったんだ。
それでも、密封性がないからね。」
ゼムの奥さんがくれたときは、貴重なものだとは思ったけど、
そこまで希少性があるとは思っていなかった。
結婚のお祝いの最大級の物だったんだ。
「とにかく、まじめに歩くよ。荷重かけて。
出ないよニックさんに笑われるからね。」
「そうだな。走るか?」
「いや、人目がある。まじめに、まじめに。
そうそう、塩を運ぶロバ、んーここでは駱駝馬かな?
その話をしてあげようか?」
「どんな話だ?」
「んーとね、商人がいて、荷物を駱駝馬に運ばせているの。
その荷は塩ね。どこの世界でも塩は貴重だ。
遠い場所か街に塩を運んでいる。
毎日重たくて重たくて、駱駝馬は川の近くでよろけてしまったんだ。
するとどうなる?塩は水に流されて、積み荷は軽くなった。
馬は思ったね。
はっはーん、水に入れば荷は軽くなる!
覚えたぞ!!ってね。
商人は余りにも重い荷を持たせたことを反省したんだ。
半分以下に減った塩を何とか売りさばいて、今度はそこで綿を仕入れた。
綿花の方だね。
詰め込んで詰め込んで、塩と同じぐらいに大きさにしたけど、
荷は比べ物にならないほど軽い。
これで、よろけて川にはまることはないだろうってね。
行きではまった皮に近づいた。
馬は思ったね。
また川にはまったら荷は軽くなる!
どっぼーん!
どうなったと思う?
商人が慌てて引き上げようとしても、
綿が水を含んで重くなったる。落ちないようにしっかり結わえてある。
とうとう馬はおぼれ死んだって。
狡いことをしたらダメって話。」
「・・・・。」
「ん?突っ込みどころ満載?」
「いや、なんというか、商人も災難だな。」
「ああ、そっちか。そうだね。良かれと思ってやったことが、
真逆になったら困るよね。
どうすればよかったのかな?」
「そうだな。この荷は綿だから水を含むと重くなるから気を付けろと注意する?」
「・・・ここではそうなるか。馬と意思の疎通ができるもんね。
故郷ではダメだな。各々が勝手にそう思ってるんじゃないかって。
人間だけが分かってないかもしれないけどね。」
「愛しい人は?故郷では?」
「わからんよ。こっちに来てから。動物全般はどっちかというと苦手だったかな?
考えていることが分からないから。」
「人もそうだろ?」
「そうだよ?でもわかる必要がないって思ってたの。人はね。
でもさ、犬とか猫とか。ああ、小さな動物ね、彼らはなんか訴えてるんよ。
でも、分からなかったの。だから余計に申し訳なくて苦手だったな。」
「そうか。」
「うん。」
そんなくだらない話をしながら進んでいく。
月が沈んでもひたすら進む。
旅の話は、イソップ物語。
ガチョウと黄金の卵も、鳥と話し合えばよかったのに、となった。
なるほど。
あの鳥も食べるから意思の疎通は行はないが、
大事にしている、ペット的な立場だとわかり合えるんだ。
イソップ物語の人と絡む話は全てダメになるな。
金の斧と銀の斧も素早く奪えといわれた。
なるほど。
「そういえばさ、櫓宿で買った若かりし頃の剣のマティスの武勇伝は、
実際どうなの?」
「遠征にはガイライ、ニックの隊にいた。そんなことを許すと思うか?」
「常に10人ほど侍らせるっての?んー、ガイライもニックさんも一緒にとか?」
「・・・ないな。それ、ガイライが聞けば泣くぞ?」
「ん?その間は何?」
「侍らせてはいないが、宿営地には押しかけていた、女が。」
「おお!!」
「なぜ喜ぶ?」
「きゃー!マティス様がこっちを見たわ!!って?」
「!!聞いたのか?」
「おお!その人たちは今どうしてるんだろうね。
今のマティスを見てもわからないのかな?」
「どうだろうか?あの宿の女将もその時代を知っているが、
分からなかっただろ?話だけなんだろうな。」
「そうか。・・・そのさ。」
「・・・みな、嫁に行ってる。子も、孫もいるだろう。」
「え?そんな年齢?ああ、そうか、そうだね。
そのだれも訪ねてこなかったの?その話はだれから?」
「誰も来なかった。話はタロスからだ。
もともと砂漠には誰も来ない。」
タロスさんが守ったのか?
関わりを絶ったのか?
タロスさんは謎だな。
「だいぶたってから街に出入りしてたんでしょ?
知ってる顔というか、その人たちと会うことはなかったの?」
「ないな。ゼムのところか、本屋か石鹸屋。ザバスのところ。
そこだけだからな。声を掛ける娼婦も腕と眼帯で、
ダメだとわかる。」
「おお。これは、どうなんだろう?」
「?なにが?」
「んー、マティスには災難だったけど、わたしは良かったなって。
人の不幸を喜んではダメなんだけど、こればっかりは。うん、よかったなって。」
「それでいい。私もあなたが来てくれてうれしいのだから。」
「そっか。うん。よかったね。」
「ああ、よかった。」
心から良かったと思ってしまった。
誰かが、通っていたとか、街に行ってあったとか、
そんなことは聞きたくないけど、知りたいと思ってしまう。
なんて嫌な女だ。
わたしは逆に聞かれても困らないからか?
数えるほどの相手との話。
付き合っていたと、言えるかどうか。
その場の雰囲気でそうなったこともある。
好きだ、愛してるなんて言ったことも言われたこともないな。
ああ。
「マティス?」
「どうした?」
「マティス、わたしはあなたが好きだ。愛しています。」
「!私もだ。愛しい人を愛している。」
「うふふふふ。」
「愛しい人。もっと言って?」
仕方がないな。
一休さんの替え歌を歌った。
もちろん、マティスには大うけだった。
あーあー、なむさんだー。
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