いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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430:砂漠の花

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「お前!無礼であろう!下がれ!」
「なぜ?」
「そんなこともわからぬのか!
我らは、ニバーセル王族スダウト様配下だ。
おい!お前たち!こいつをつまみだせ!」
「「無理です!」」
「役立たずが!!」
「ロコロ、かまわん、用があるのはこの男だけだ。
連れていこう。」
「なりません!本人が拒否している。
犯罪ですよ!」
「黙れ!たかが領国の配下が口答えするな。
ここの領主にはしばしとトックス殿を預かると言っておけ。
お前らごときが領主と話せるかどうかも疑問だがな。」


「あはははは!!
で、ルグとドーガーはどうしたの?」
「どうもこうもないですよ、奥方様。
こたつをけ飛ばす勢いだったので、そのままお眠り頂きました。
そこに転がってますよ?」
「あ、ほんとだ。」
「人を呼んでますので、牢に入って頂きましょう。
悪いが、領主の方が立場は上なので。
それにルグとドーガーは筆頭と次席です。とやかく言われることはない。」

すぐに迎えが来たので、そのままお持ち帰りに。
セサミンが起こすまで寝てもらう。

それから雑炊をわたしたちもお呼ばれした。
もちろん作ってくれたのはマティスだ。
具材も追加だ。エビと蛇。カニも少々。
うまうまである。

「トックスさん?タトートの刺繍布、
買ってきたんだ。見る?」
「見る!!!おい!ここを片付けろ!」

暖炉に樹石がはいってる。

おこたつに入らなくても温いので、
皆で片付けた。

「良し、出せ!」
「へーい。」

買ったものを出していく。
セサミン達も興味津々だ。
「知ってるの?」
「もちろん。さすがですね。きれいだ。
女性のあこがれと言われるのもうなずける。
しかし、これは姉さんが移動で持ってきたからですよね?
次の月が沈むまででしたっけ?他国では月が昇り沈むまでだ。」
「それさ、おかしくない?その時の王様がさ、
自分の国の品物が不当に扱われることがないようにって願ったからって聞いたよ?
これをただザクザク切ってしまうのなら、刺繍がほどけて
穴だらけの布になってしまうっていうのならわかるよ?
でも、ここからいろんなものができる。
昔と違って縫製技術も格段に上がっている。
不当に扱っていない!」

『汝らに問う!
他国の地で羨望のまなざしで見られることを厭うのか!
可愛らしき小物に感嘆の声をあげるのを疎ましく思うのか!
はじめて作った小さな小物を、
不器用ながらも丁寧に作ったものを、
歪だからと卑しめるのか!
我が母のように、笑いながらでも、
生涯使ってくれるものもいるというのに。
それすらも許さないのか!
かつての王の言葉をはき違えるな!
汝らに問う!その身を作り上げた作り手の苦労をなかったことにすることの理不尽さ。
その身を他国の者にゆだねるときのあの切なきまなざし!
それを知らぬというのか!!

心を込めて新たなる姿にすることを誓おう。
失敗することもあるが、できるだけ少なく。努力をさせておくれ。
月が沈むとも、その身はその美しきままに!!
かつての王の真の願いもそのままに!!』





「お、奥さん?いまのでいけるのか?」
「んー王の言葉がほんとに国外禁止だとしたら仕方がない。
そうでないことを願おう。」
「姉さん!姉さん!姉さん!!」

セサミンが久々に飛び込んできた。
マティスにすぐはがされたが。



布はどうなるかこのまま並べておく。
また、真ん中におこたをもどして、おやつタイム。
飲み物は土蜜のホットワイン割。
ラスクはすぐになくなった。


「そうだ!砂漠の花って知ってる?」
「知ってます!」

ドーガーが手を挙げた。
以外と言ったら失礼か。

「病を治すという石ですよね?父が闘病をしているときに
そういう嘘のような話に縋ったことがありまして、探しに行くと言ったんです。
父に大笑いされました。
それで、それで、十分なんだって。
自分は幸せ者だと、言ってくれて。
母も妹も笑ったあと泣きました。
できるだけゆっくり逝くから、家族で過ごそうって。
それから休みをいただいて、毎日ほんとに楽しく。」
「ドーガー。こっちに。」

軽くハグして、頭を撫でた。

「ありがとう。話してくれて。」
「いえ。奥方様は?どこで聞いたのですか?」

結構皆が知ってる話のようで、
コットワッツではここではないどこかの砂漠、そこにあるらしいと
緑の目の涙の話よりももっと嘘くさい話だそうだ。
それを真剣に探していくといった息子を
父親は笑って止めるしかないだろう。
寿命が長いこの世界。
なのに、皆の父や母はなくなっていることが多い。
何事もなく過ごせればいいが、一度寝込むとただの風邪でも不治の病となるんだろ。
砂漠石を使うのも知識が無さすぎる。


「タトートの警備隊長さんに。
実際の話っぽく聞いたよ。」

簡単に説明した。

「一日姉さんたちを石使いとして拘束?
尚且つ、石が見つかったら3000リングって舐めてますね。」

セサミンはそっちの方でご立腹だった。
あと痛風と水虫の話。


「え?じゃ、公衆浴場も?」
「毎日掃除してるでしょ?タオルも普及していけばいいし、
たぶんここまで来てないよ。
来たら困るけど、その菌が皮膚に入る込むまで時間がかかるっていうから、
毎日清潔にしけば大丈夫、たぶん。」
「たぶんなんですね。」
「んー、もし、そういう人が現れたら教えて?」

早めに部長がいいといっていた竹酢液は作っておこう。

「そのつうふうというのは?」
「肥満はよろしくないってことだね。昔は贅沢病って言われてたの。
毎日3食ラーメンとか、毎日飲むとか?
脂っこいものばっかりとか、魚の卵もダメって聞いたけど、
だこれも大丈夫・・・師匠まずいかな?」
「・・・ワイプの運動量は他と比較にならないぞ?」
[おお!そうだそうだ。運動してるんだもの、大丈夫だし、太ってないよね。
さすがマティスだ、師匠のことよくわかってる。
あ!トックスさんも野菜食べてるよね?うん、じゃ、大丈夫。」
「ラーメンの普及に影響ありますか?」
「どんな食べ物でも食べすぎたらダメってことだからね。
けど、野菜もおいしく食べましょうってもっていくのはいいとおもう。」
「そうですね。カンランがいいですね。」
「うん、ああ、また話がそれたけど、
やっぱり砂漠の花って嘘っぽいのかな?」
「なんとも。実際にそのような効果があるのでしたら、
もっと話も広がってるでしょう。
ただ、今のタトート王の話なんですよね?
もっと前からある話ですよ。
それにその石使いが便乗したと考えるほうが自然ですね。」
「なるほど。昔からあるのなら信憑性はあるな。」
「そうですか?」
「そうそう。じゃ、今日はこれで解散だ。
布がもしダメなら刺繍がほどける様も見たいしね。
花が散るように散っていくのかもしれない。
それはそれで見ごたえがある。
あと、小物も作りたい。
トックスさん?ああ、マティスと夢中ですか。そうですか。」


静かだと思ったら、2人してスケッチに没頭している。
うん、好きにして。

セサミンたちも先に牢に入っている2人の処理もしなければいけないので
戻ることになった。
忘れてましたよ、っていうのは冗談じゃなくて本気だったと思う。
もともとここに来る用事は5銅貨タオルの染についてトックスさんに
助言をもらうためだったそうだ。
ループしたところは染めにくいので、平織り部で。
うん、たしかそんなだったと思う。
染はどうしてるだろうね。
板を抜いて、刷毛でさっと塗るのかな?
ハンコ方式?

「なるほど。両方試しましょう。」

ドーガーと出発するにはまだ数日あるから、
今日は寝ずに刺繍布の観察。


それまで、裏地付きの巾着作ろう。
もう、手慣れたもんだ。
お母さんにあげたら喜んでくれただろうな。






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