いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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476:白磁

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ナソニールを抜けてメジャートへ。
がっつり90リング納めました。
その分商売しようねってことですよ。

そこから街に。軍曹のいる陶器の街だ。

「主人はおられるか?」
「あ!領主さんだ!コットワッツの!親方!えらいさんが来たよ!!」

ここの主人とセサミンはラーメン鉢のことで打合せている。
そのお弟子さんたちも同席しているから顔も覚えているわけだ。

「あ!来てくれたんですか?呼んでもらえたら伺いますのに。」
「いや、王都の会合に行く途中だ。
ここで、ラーメンを食べていこうと思ってな。
おすすめの店を教えてほしい。」
「ああ!それならうちの赤柄を使ってる店に行ってくださいよ!
案内しましょうか?」
「親方!もうすぐ窯を開けるよ!」
「ああ、そうか、じゃ、うちの奴に。
おーい!ナーチア!コットワッツの旦那だ!
カバスの店に案内してくれ!」
「はーい。」

奥から軍曹が出てきた。
あ!中コート持ってきてるよ。

「奥方か?初めまして。コットワッツ領主、セサミナだ。
それはトックスのコートだな。髪色に合って、よくお似合いだ。」
「きゃー!!!」
「え?」
「ちょっと!あんた!聞いた?これぐらい言えないと!
へーとか、ホーとかじゃダメなんだからね!」
「へいへい。」
「そればっかり!」
「食の祭りでラーメンが成功したのは、ご主人の頑張りがあったからこそ。
ゴムの型抜きの発注もありがたい。
これは奥方の采配だとか。改めて礼を。ありがとうございます。」
「いえいえ!そんなこと!」
「なにか困ったことがあればいつでも頼ってください。
あ、もちろん、メジャート領主殿とは別に。
わたし達は商売仲間なんですから。」
「そう、そうですね。ええ、困ったことがあれば、その時は。」
「軍曹?先にわたしに言え。それからセサミナ様だ。」
「!え?あ!隊長!!」

胸に飛び込んでくる。
テムローサに聞いたが、安定感があって安心するそうだ。
わざわざ、クジラ下着を外した後また抱き付いて来たから。
わたしも体感したいな。ドロインさんに頼もうかしら?

「困ったことが起きてそうな口調だったな?
ん?いまはセサミナ様の護衛だからな、このような格好で、このしゃべりだ。
一度崩すと、ぼろが出る。」

先に話を聞くことに。

「来ました。アガッターが。
このコートを見てすぐに、来たのかと。
拠点はなく、ダカルナに向かうようなことを聞き出したと話しました。
それと白磁の相談をされたことも。その日はそれで帰りましたが、
その日、盗みが入りました。白磁です。やられたと気付いたら元に。
窓もすべて元に。これが隊長が言っていたことなんだと納得できました。
次の日は、他の物が壊されないように、納屋に。
同じように盗られ、気づくと元に。
その次の日また、アガッターがやってきて、その白磁を譲ってくれと。
2回も泥棒に入られた話はしました。気づいたら戻ってきたという話も。
アガッターはまじないがかかっているのだろうと。
わたしが手放すことを承諾すれば大丈夫だと。
それはできない、これの研究もしないといけないからと、それは断りました。
しかし、10万リング、出すと。」
「それで?」
「承諾しました。」
「さすが軍曹だ。あれは軍曹の物だ。好きにすればいい。
でも、土は取られてないんだろ?」
「それは話していません。」

『戻っておいで、ナーチアの白磁。
身代わりを置いて戻っておいで。
お前の仲間を作り上げてくれるナーチアの元に戻っておいで。
身代わりはお前を連れ去った首謀者が誰かに見せると同時に砕け散る。
夢幻の白磁だ。夢は見せてやろう。一人で眺める分には許してやろうか?
10万リングの夢だ。高くはないな。
さ、この中に戻っておいで。』

柄物布の風呂敷鞄の中にずっしり重さを感じた。

「軍曹。怖い思いをさせただろう?
これはわびだ。こっそり楽しむ分には見つからないだろう。
身代わりも置いてきた。自分で壊すことになるんだ。
んー。意地悪してる?なんでだろ?近いうちに話してみようか?
どう思う?」

マティスとセサミンに聞いてみる。

「まだいいのでは?姉さんから動くことはないでしょう?
向こうが正式に話がしたいというなら、
それなりに手段はありますよ?捕らえるとかではなくてね。」
「力づくでどうにかしようというのが気に入らないんだろ?
こちらからかまうことはない。」
「そうだよね。うん。ほっとこう。」

「隊長?」
「ん?ああ、セサミナ様はマティスの弟だ。だからわたしは姉だ。
旦那はマティス。
マティスは剣のマティス、わたしは赤い塊のモウと呼ばれている。
石使いもどきだ。ちょっとだけ石をうまく使えると思っておいて?
あー、口調が戻る。」
「!!!」
「あ、これは内緒だよ?行商の夫婦がそれだっていうのはね。」
「はい。隊長は隊長なので。」
「ふふふ、さすが、軍曹。」
「白磁の研究も続けていいですか?」
「それは願ってもないことだ。でも、無理はしないで?
今回のことぐらいだと連絡は来ないけどね。
どうにもならない状態ならたぶんわかるから。
それまでは軍曹の采配で。」
「わかりました。ナーチアの白磁。いい名前です。
そう呼ばれるものを完成させたい。」
「いいね!それはゆっくりね。
それより先にコーヒーポットを作りたいんよ。」

ルポイドでのコーヒーウォーマー話をする。
要はそこが平らなもの。
できれば、中に凹んでいて、
そこに熱源がはまるような?
絵を書いてとりあえず作ってもらう。洗いやすくね。で、フタ付。
それを10コほど。1つ1リングで10リング。
残量が見えるように透かし入り。

そのあいだ、マティスとセサミンはご主人と窯出しの絵付けをまた見学して
器の説明をしてもらいつつ、
タオルを売っていた。さすがだ。

「ではそろそろ行こうか?」

半分になったので、メジャートのラーメン屋さんに。
一区切りついたので、皆で行く。
10人も入ればいっぱいだ。
そこを占領。

軽く食べるのにちょうどいいようだ。
ラーメンとギョウザ。皮がおいしい。
薄くてパリッとしている。わたし達が作ったものはもう少し皮が厚い。
このタイプも好きだ。

店の店主はラーメンの本家コットワッツの領主が来たと喜んでいる。
タオルも買ってくれた。ラーメンの絵だ。赤柄ね。

「おいしいですね。うちも負けてはいられない。」

2人で握手して別れた。
軍曹とも、無理せずにともう一度ハグ。
月無し石も残ってもらうから何かあればわかるだろう。


─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘





ずっと外で待っててくれたコクをブラッシングして出発。
3人乗れる?
余裕だ。
が、また順番でもめる。
セサミン、わたし、マティスだと、セサミンがわたしにもたれることになる。
自分もしたことがないのに!とマティスが却下。
セサミン、マティス、わたしとなった。
わたしがマティスに抱き付く格好だ。いいな!これ。
思う存分匂いを吸い込み、
背中に口づけてぶはーと熱い息を送る。

「・・・姉さん?固くなるのでやめていただきたい。」

・・・セサミンから苦情が入ったのでやめた。

街道に出て、一気に王都へ。
後を付けていた3人組が前に飛び出してくる。

「止れ!」

止まるわけがない。
ドドドドドドドと俊足馬より速いのだから。


(いいの?相手しなくても?)
(いいだろう)
(誰から聞いての行動か聞いておいた方がいいのでは?)
(そうだな)
(コク、ごめん戻って)

はは!親切なんだな



コクはすぐに引き返してくれた。
これもまたあっという間。

どうするんだともめているところに戻ることになる。


「すまない!気付くのが遅れたようだ。
なにか我らに用があったのか?」

きりりとわたしが応対します。


「も、戻ってきた!」
「ん?用があるのでは?ないのなら我らは急ぎなのだ。
失礼する。」
「ま、待て!剣のマティスと赤い塊モウだな?」
「そちらは?」
「俺たちは、賞金稼ぎよ!」
「そうか!で?」
「お前は生け捕り!マティスは死んでもらう!」
「待て!なにか勘違いをしているぞ?
我らも賞金稼ぎなんだ。その話は聞いたぞ?
しかし、2人を生け捕りにすれば100万だと聞いたが。違うか?」
「100!本当か?いや!お前たちがマティスとモウだろ?」
「どこからそんな話が出たんだ?
本物だったら命を狙われてるんだろ?立ち止まらずに走り去るよ。」
「タット!お前どこから聞いたんだ!」

リーダー格が1人を責める。
「道具屋の前で人が集まったんだ。
あれが、コットワッツ領主らしいって。で、護衛がマティスとモウだって。
みなが言ってたんだ!」
「みなが言ってたからってそれを信じるのはどうかと思うぞ?」
「うるさい!」
「それで?そもそもの賞金首という話は?どこから?」
「あ?そんなことを答える必要はないだろ?」
「そうりゃそうだ。じゃ、別に用はないんだな?
失礼する。」
「え?待て!金目のものすべておいていけ!」
「なんだ?それでは強盗ではないか?」
「強盗だよ!」
「なるほど。」

あて身3発。

「・・・よくこんなんで強盗なんかしようと思ったね。
修業が足りんよ?」

あっという間だ。
縛りあげて話を聞いてみる。

マティスとセサミンは、お茶の準備だ。


「じゃ、質問に答えてね?ご職業は?強盗とかいうなよ?
もちろん賞金稼ぎっていうのもだ。」
「・・・・酒だ。酒造のほう。」
「へー。出身は?メジャート?ナソニール?」
「タフトだ。ピクト近くだがな。川沿いだ。」
「ああ。きれいな川あるんだよね?
この街道のすぐ横に流れてる川じゃないよね?」
「・・・それだよ。川が汚れた。酒は造れない。」
「いつから?」
「・・・コットワッツ砂漠変動の後だ。水が濁った。」
「そういうのよくあるの?」
「いままでではじめてだ。」
「地面が揺れたんだ。地下水が濁ることもあるし、
流れが変わることもあるだろうね。どうだろう?」

セサミンに聞いてみる。
「あり得ますね。が、次の雨の日でまた流れが変わるかもしれません。
いまは何とも。
1年で使う水が雨の日の雨量で賄うのですから、湧き水が出る位置も
毎年変わると聞きます。
水が濁った、酒が造れない、強盗というのは早計かと。」
「酒造りは今仕込まないとダメだ。早酒ができないとなると、
俺たちはどうやって食うんだ?」
「で、強盗?賞金稼ぎ?なんというか。
今は生活できるんだろ?先を見越して何かするっていうのはいいけど、
それが強盗、しかもその腕で?
んー?ん、ん、んー。
とにかく、強盗なんかやめとけ。別の仕事しろ。
雨の日が過ぎてから別の水源を探せ。それでだめなら領主に相談しろ。」
「領主?どこの?」
「タフトだろ?」
「俺たちはタフトに住んでいるが、領民じゃない。」
「税金払ってない人?」
「そうだ。」
「あー。なるほど。こういうひといっぱいの?」
「います。領土ははっきりしいますが、
領民というのはあいまいです。利益を生み出せば、
領主は抱え込みますが、それ以外は。」
「お酒を造るよ?むっちゃ保護しない?」
「なんとも。」
「んー。とりあえず、お茶しよう。」

ちょっと整理しよう。

「まずはお前たち誰に聞いた?懸賞金のことを?」
「・・・・。」
「金をもらっただろ?先に。
で、現状、困ってることを捕まったら言えって言われただろ?
殺されないし、必ず助けてくれるからって。違うか?」
「なんだそれは?」
マティスとセサミンが首をかしげる。
「腕に覚えのある人たちならそうなの?って思うけど、
この3人はダメだよ。殺気もないもの。」
「そうだな。気配も消さずにつけてきているしな。
しかし、街道で待ち伏せは賢いぞ?」
「そうだね。ここまでは必死さはあったけど、
あとは、来年どうしようっていう焦りだけ。
急ぎ働きはいかんのよ?火付け盗賊改め鬼の平蔵もおっしゃってる。」
「誰?」
「剣の師匠の一人?」
「おお!」
「それは置いといて、でだ。縛りあげられてほっとしてるのもどうなの?
え?そういうご趣味?」
「え?」
「あー、それも置いておこう。
だからね。これは、向こうがこっちがどう出るか調べてる。
今はいないよね?
でも、街道で待っておけばいいっていうののその人の入れ知恵だ。
自分が知らないところで利用されるのは嫌なんだ。
悪いけど、死んでもらうかな?」
「しかし、それは聞こえが悪い。コットワッツ一行が
街道にいただけの一般人を始末したということになる。
一般人ではなく強盗なんですが、前科はないでしょ?」
「なるほど。じゃ、毎回こんな素人をぶつけてくる?
次回からさくっと無視しよう。
初回は死んでもらおうか?」
「こ、殺されないと言った!コットワッツだろ?あんた!若いの!
領主だ!コットワッツ領主は慈悲深いって!」
「それは間違った情報です。こちらに益があるなら投資するだけですよ?」
「ご、護衛のふ、二人も人を殺したことはないって。」
「そんなことで護衛が務まらんでしょ?」

「来たぞ。」
「どこだろ?ナソニールか、メジャート?タフトかな?」

馬が3頭、連なってやってくる。
速いね。俊足馬だ。少し小柄?
速いけど、人を一人乗せるのがいっぱいか。
荷は引けない。

「失礼だが、コットワッツ領主、セサミナ殿か?」
「そちらは?」

わたしが応対する。
マティスだと威圧がきついのだ。

「タフト領国、衛兵隊隊長ラフルだ。」
「これはご丁寧に。ええ、コットワッツ領国領主、セサミナ様です。
我らは護衛の者。何か御用ですか?」
「・・・いえ。その縛りあげられているのは?」
「道を塞ぐように飛び出してきたので、なにかあったのかと、
引き返してみれば強盗だったんですよ。
で、どうしようかと。捨て置いてたら同じことをするかもしれない。
かといって、切り捨てるのもあとで何を言われるか。」
それで、とりあえずお茶を。」
「・・・・。こちらで引き受けましょう。」
「そうですか?
が、コットワッツ一行は強盗の始末もできないと言われたら困りますし、
これらが強盗だと、で、切り捨てたと。
えーと、ラフル殿?
なにかあった時に証言していただければ助かるのですが?」
「それはもちろん。」
「では。」

縄を切る。
当然逃げるな。
前に廻って、袈裟斬りです。

血が噴き出る。

「これ、ここに置いとくと邪魔ですね。
川に投げてもいいのかしら?」
「・・・どうぞ?」

3人を引きずって、川に。

結構流れが速いのか、あっという間に見えなくなってしまった。

「いまから王都へ?」
「ええそうです。そちらも?」
「そうです。ご一緒してよろしいか?」
「セサミナ様?いかかがされますか?」
「もちろん、かまいませんが、かなり小型の馬のようだ。
同じような速さが出せますか?
ここで時間を取ってしまったので、一気にかけるつもりなのですが?」
「知りませんか?これは西馬。俊足馬よりも速いのですよ。」
「それはすごい!では、出発しましょう。
ああ、もし遅れても、お気になさらずに。
こちらは3人で一馬のりなので。」

ということで、出発。


最初は3頭はゆっくり走っていたのか、
その後ろをついていく。
徐々に速さをあげる。

少し距離が開いたら、一人が後ろを振り返ってクスリと笑った。

(もういいかな?早くいかないと師匠がなんじゃこりゃー!って怒るね)
(ワイプ殿のところに?)
(うん。血糊は流れたと思うけど、ビショビショだから)
(どうするんだ?)
(日本酒!作ってもらおうと思って!)
(なるほど)
(じゃ、追い抜いて、一気に王都に)



「ラフル殿!この速さでは予定が狂いますので、
お先に失礼しますよ。」
「はは!遅れているのはそちらでは?」
「いえ、西馬の走りを見ていただけですよ!
西馬たちよ!きれいな走りだ!
時間が合えば、西のうまい食べ物の話を聞かせておくれ!
ではな!いいよ!」

コクがフンと息を吐き、一気にスピードを上げる。
はやいはやい。わたしはマティスに密着。
セサミンは完全に背をマティスに預けている。

あはははは!風が気持ちいい。


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