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543:しょんぼり
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ニバーセル王都、大門前に移動して、正式に入ってきてもらう。
大きな荷車だ。
馬は途中で逃げたことになる。
わたしたちは中で待機。
「問題なかった?」
「嫌な感じはしたな。俺の名前を聞いて、後ろの奴に報告していた。」
「用事は素直に?」
「そうだ。コットワッツの館の改修って。荷台の中までは見なかったがな。」
「それを見るんなら問題だよね。現地調達の縛りはなくなってよかったよ。
じゃ、行こうか。」
ガラガラ引きながら館に向かう。
マティスと2人で。重いコンダラ状態。
鍛練してないからね。
着いた後さっそく中の改修。
それはマティスとトックスとソヤで。
わたしは庭を作る。
反則だけど、緑の石を使って、
芝生を作り、こんもりとした生垣も作っていく。
セサミンの館の中庭にある植物群をスカウトした。
生垣の迷路っていいよね。
バラに相当する花もあるので、
それも植える。
もう、お願いしまくり。
わたしが配置すると、センスのなさが露呈するので、
皆さんの希望を聞き持って植えていく。
あの地下への入口当たりにバラね。
アンダーザローズだ。
緑の石で根付かせていくけど、
水があれば、見た目にもわかるぐらいにぐんぐんな大きくなった。
噴水は?循環させて、フィルター付けて、
砂漠石に風を出してもらおう。
風を出すのが一番長持ちなのだ。
排水もきちんとね。
ここで、お弁当を食べるのが楽しみになるくらいの
ふわふわな芝生だ。
んー、むいむいは?
うん、きっとわたしがいないときに来る。
虫の声は好きなんだけどな。
鳴く虫はいないのかな?
あと鳥とか。メジロみたいな。廻りは緑豊かだ。
ぐるりと大きな木が植わっている。
それが2重になっているのだ。
流石旧王都。守り安い。
4階はどうしようかな?
音響を重視するかな?
ミニシアターみたいな?
いや、上演するものがない。
畳の部屋とか?
台所は昨日作ったしね。
ボーリング場とか?ピンポン置くかな?
うむ。それは別だ。球戯場は別に作ろう。
露天風呂もだ。
やっぱりブラスを植えちゃおうかな。いや、岩肌が見えるようなのがいいな。
庭は広いんだ。
ソーンごとに作っていこう。
4階はクッション敷き詰めて、
演奏会とかできるようにしよう。
パタパタアニメもできるかな?
4階いじったり、トックスさんの手伝いをしたり、
庭のバランスのアドバイスをもらったり、
みんな入り乱れて改修工事を頑張った。
途中、ご飯を食べたり、
そのタイミングで師匠たちや、ガイライ達が来て
やっぱりトックスさんの指示に皆がてきぱきと働いた。
まさに監督だ。
来客を意識した2階は、まさに高級サロンだ。
笑い方、座り方も意識しないといけない。
大宴会場も完備。振る舞いができる。
セレブの番組で見るような衣装室もある。
大きな鏡も置いた。
ここで、最新のドレスの合う宝石を見せて売るのだ。
商談の部屋もある。
「ま、こんなもんだろ。」
1階のみんなが出入りする食堂が一番落ち着く。
ここにおこたも設置した。
イグサってあるのかな?畳が欲しい。
ひと段落ついて、おやつタイムだ。
折角なので庭で。
噴水も動かしてみた。
3人はなんだ?という感想だ。
「いや、今はちょっと肌寒いからあれだけど、
暑いときは涼しくていいよ?」
そうだよね。水を噴き上げてどうなの?ってことだ。
決して噴水がしょぼいわけではない。
ライトアップしたらいいかも。
そんな噴水を見ながら、
カンターウォーマーのコーヒーを飲む。
予約受付中だ。
資産院には5つほど。
トックスさんも予約してくれた。
ソヤはミートパイとアップルパイを絶賛してくれた。
「ミートパイには豆ソース使ってるんよ。」
「うまい!!」
「愛しい人?ここの守りはどうする?」
「それね。ここってもともと旧王都でしょ?
守りはしやすい。ここに入ってこれるのは向こう正面だけだからね。
そこに門はつけるよ。」
「出入りは自由に?」
「うん。迷いか返しを付けたほうがいい?
大丈夫なんじゃないかなって思ってるんだけど。」
「それはな。が、客が来るぞ。」
「セサミナ様はお帰りになっている。
わたしたちは館の改修に来ているだけ。
それでいいんじゃないかな?害のあるものはそもそもこの土地には入れないよ。」
あったらとっくに館はなくなってるし、地下の貯蔵庫も使われている。
「ここの館の者か?」
みんなラフな格好だ。だって、這いずり回ってきれいにしていくからね。
いわゆる作業着。
頭はタオルを巻いている。職人スタイル。
汗がぬぐえるからいいのよ。
ここは年長者のトックスさんが応対してくれた。
「ええ。なんでしょうか?」
向こうは何も名乗っていない。
だから平伏する必要もない。
「コットワッツの滞在館だな?領主セサミナ殿はいらっしゃるか?」
「セサミナ様は領国にお戻りです。」
「?ではお前たちは?ああ、我らは院のものだ。」
(院?どこの?)
(院は院だ。王関連だ。)
(あいつ関連か?食べ過ぎでおなかこわしたとか?あ!生でプニカ食べたとか?)
「わたしたちは館の改修をまかされたものですよ。
御用事でしたら戻り次第お伝えします。
お急ぎでしたら、蛇を飛ばしてください。
次にセサミナ様がこちらにいらっしゃるのは、
混合いはじめの月の日でございます。
それまで、館には誰も入ることはできません。
我らも、そろそろ帰るところですから。」
こっちの話せる情報を矢継ぎ早に説明していった。
問答する必要はないのだ。
「そ、そうか。」
馬車の中の人と話をしている。
今、トックスさんと話をしたのは御者だ。
わたしたちは一番ふかふかに育った芝生の上に布を置き
そこに座っていた。
トックスさんだけが立上り応対。
「じゃ、片して帰ろうか!」
「おう!」
今日は泊りの予定。
どこに泊ろうか?
雨の日に向けての食料確保ということもあり、
ベリアバトラスの荒野に行って肉狩りだ。
それからタトートに。
そんな予定を立てて、広げているものは
背負子に片付けていった。
馬車からいかにもお偉いさんが出てくる。
「少し聞きたいことがあるのだがかまわないか?」
「いえ。急ぎますから。」
「え?いやすぐ済む。」
「いえ。失礼します。」
「え?ちょっと!」
下手に出ても、それに応じるとは限らない。トックスさん強いなー。
ソヤも感心している。わたしもだ。
そしてさっきからわたしを呼ぶ声がうるさい。
(おーい!おーい!)
(・・・・・)
(ダメか?いや、反応はある。おーい!おーい!)
(・・・・・)
(うむ。では、これは?ウィン ディズ ブロ ウィンフロム ディ エーイ ジャーン)
「ぶひゃははははははは!!!!」
卑怯な!
「愛しい人!」
「奥さん?」
「ねーちゃん?」
1人で笑ってしまった。
おなかを抱えて。
「あれでか?何がおかしいのだ?」
マティスにも聞こえているのだ。
「いや、ほんと、ダメ、ぶひゃははははは!」
(おお!笑ったな?聞こえているな?そこにいる従者の話を聞いてくれ)
(・・・聞くだけだけなら聞いたことにしてくれ)
(!いや違う!相談に乗ってくれ)
(それは誰の相談だ?又聞きの相談は受けないことにしている)
(いや、あれの相談だ)
(ん?セサミンに?)
(いや、あなたにだ)
(知らない人の話は聞いてはダメだと言われている)
(誰に?)
(旦那と師匠と母親だ)
(・・・・)
「よし!帰ろう!」
しつこく言い募ることなく、
無礼だということもない。
なんだか、しょんぼりしているようで、申し訳なかった。
「・・・・。手短に。」
「あなたが?よかった!声をかけるものに相談しろと言われまして。」
「手短に。」
「ええ。名は明かせませんが、わたしの主がですね、
欲しがっているものが有りまして。
それはわたしにはわからぬものでして。
主の説明だけで、用意をしましてもすべて違うと。
しばし待てというので、お待ちしていますと、現物をどこぞから
調達なさって来たのですよ!主自ら!
すこし頂いたのです。それの、うまいことうまいこと。
さすが、我が主!
このような美味たるものを調達、尚且つ、我らにお与えしていただき、身に余る
「手短に。」
「え?ああ。それで、あっという間にまたすべて食べてしまったのですよ。みなで。」
「・・・。」
「また調達に赴かれる主に次はわたくしめが必ず調達してまいりますと
こちらに伺ったわけです。」
「主を止めたのは正解でしたね。そのうまいものはセサミナ様がお持ちなのでしょうか?」
分かっていても聞かないと。
「いえ。ただ、いま流行りのうまいものは全てコットワッツからと聞き及んでおりますので
相談にと。」
「我らの主は、いま、領国に帰っております。
その旨お伝えしておきましょう。」
「それでは遅いのですよ。本日の茶会に必要だと。」
「・・・我らの知っているものでしたらお返事できるかもしれませんね。
どのようなもので?」
「丸いのです。赤いものと黄色いもの。
砂糖をまぶしているのようで。あと同じような赤くまるいものはみずみずしいもの。
分かりますでしょうか?」
「・・・・黄色いものはリンゴですね。
リンゴの実です。それの砂糖漬けでしょう。
赤いものはプニカの中の実です。みずみずしいものは一度湯がいているもの。
それを砂糖漬けにしたものですね。
プニカはコットワッツ、ティータイの食の祭りで
食べ方のお披露目がありました。」
「おお!やはりご存じなのですね。プニカ!あの?
腹下しでは? 」
「皮はね。中身ですよ。これは、くれぐれも気を付けてください。
プニカ!あれか!わーいって丸ごと食べれば、一日中便所の住人です。」
「・・・・。」
「?」
「はははははは!便所の住人!ははははははは!
そこに住むということ?プニカ!腹下し!あははははははは!」
院の連中も沸点低いのか?
「あははははは!住みたくない!!」
後ろでトックスさんとソヤも笑っている。
ここの死因のTOP3に笑い死にが入っているとおもう。
「ひー、ひー。なるほど。気を付けましょう。
それで、それはどこに売っているのでしょうか?」
「プニカはコットワッツ、ティータイで、
リンゴはマトグラーサの端の村の特産品です。
これも食の祭りでありましたから。」
「それはいいですね。しかし、今、欲しいのです。」
「資産院ワイプ様にお聞きになっては?
プニカもリンゴもお気に入りなようで、確保していると思います。
資産院ツイミ殿のご実家はマトグラーサですし、
ワイプ様はティータイの食の祭りの運営の手伝いをしたと聞いております。」
「ワイプ!あれか!なるほど!
あ、あと一つ!黒い水というのは?塩辛いそうなんですが?」
「豆のソースです。最近、生産院で隠匿を掛けてもらったものですね。
先行販売分がありますから、これはお売りできますよ?」
「素晴らしい!ああ、これで安心だ。」
「それと、プニカとリンゴは季節ものです。常にあるということはないですよ?」
「え?そ、それはそうだ。しかし、わたしは常に、主の好むものを用意することが仕事なのです。
どうすれば!」
「・・・どうするもこうするも、その時々に出回る旬のものを出せばいいだけ。
1年中同じものでなくてもいい。ないものはないんだから。
ああ、これが出回る季節になったのかと、それを楽しむことができる。
はやくあれが出回らないかと、待つ楽しみができる。
いまはデオプロマが出てくる。あのチューチュー吸う奴。
最近はそれの蜜もルポイドで売っていますよ?
あれはコーヒーに入れるとおいしいですよ。」
「おお!それも素晴らしい!!」
「そこでお客様!これですよ!」
「へ?」
お試しにコーヒーを入れた。
わたしたちもだ。
笑いすぎて喉が渇いたというから。
5つ予約販売完了。
御者の人は個人的に1台買ってくれるという。
資産院に配送するから入荷したら受け取ってくれということに。
テオブロマの蜜は特別に売った。かなり高めだ。
「あとは、すわりっぱなしのお仕事でしょ?
このクッションはお勧めです。」
クッションは3つ売れた。
ちょっとした即販売会になってしまった。
いいよね?タオルとか知ってたもの。
「はー。なんて素晴らしい日なんだ。
主に礼を言ってもらえるし、うまいものも食べれた。
コーヒーも薫り高い。
良きものも買えた。すべての物が素晴らしいものにみえる。」
「ははは!この素晴らしき世界ですね。そうか、自分がうれしいから
些細なことでも素晴らしいって思えるのか。悲しい歌じゃないんだ。」
「歌ですか?」
「ええ、故郷の歌に、ほんの日常の風景を歌った歌があるんですよ。
皆が素晴らしい歌だと言います。確かにわたしもそう思うのですが、
なんて悲しい歌なんだろうって。
造られた時代背景を考えれば、当然なのですが。
普通にあるものが素晴らしいって思えるほど、その人は
いままでどんなつらい目に合ってきたんだろうって。」
「・・・・。」
「日々に感謝する歌なんですね。きっと。
ありがとうって、言うのが当たり前、言って当たり前ではなくて、
こころから感謝しないと。そして、それに応えたいですね。」
「・・・・主に初めて礼を言われたのですよ。
いままでそんなことはなかった。それは悲しいことだったんでしょうか?」
「わたしにはわかりません。逆に、あなたはその主に感謝していますか?」
「・・・・。」
「難しいですね。主とは仕える相手。感謝も何も、仕事です。
でも、この主に仕えることができてよかったと思える主に仕えたいですね。」
「・・・・。」
「さて、では、我々はこれで帰らないと。
あー、コットワッツ商品お買い上げ、ご予約まことにありがとうございました。」
「いや、こちらこそ。時間があるのなら、その歌を聞いてみたかったが、
こちらも急いで調達しなければ。」
「・・・ワイプが来るぞ。」
ドドドドドとスー兄に乗った師匠がやって来た。
騎乗している師匠はかっこよさ倍だ。
あ、スー兄がかっこいからね。
「レメント殿!まだここにいらっしゃったか!
探しましたよ!」
「はは!これもまた素晴らしい!向こうから来るとは!
伺おうと思っていたところですよ!」
「師匠?」
「ああ、呼べばよかった。
これ関係は気が動転しますね、精進せねば。」
「?」
「まわり廻って、あなたにレメント殿を紹介るようにと言われたんですよ。
ああ、だれにとは聞かないで。先にレメント殿を見つけて、
ここにお連れするつもりだったんですが、まだいたなんて。てっきり、追い返したとばかり。」
「いや、あまりにしょんぼり顔だったんで、話を聞いてもいいかなと。」
「しょんぼり?わたしがですか?ん?どのような?」
「え?こう、斜め45度下を見つめて、唇を尖らせて、むーってこんな?」
真似したら、御者と師匠が下を向いてしまった。
弱冠震えている。
そうなると、トックスさんは追い打ちをかける。
「こうか?」
「こうだよ?」
と、ソヤもだ。
うん、
「こうだね。」
むー。
3人並んで、斜め45度下向きだ。
はははははは!そっくり!!
愛しい人!かわいいぞ!!
大きな荷車だ。
馬は途中で逃げたことになる。
わたしたちは中で待機。
「問題なかった?」
「嫌な感じはしたな。俺の名前を聞いて、後ろの奴に報告していた。」
「用事は素直に?」
「そうだ。コットワッツの館の改修って。荷台の中までは見なかったがな。」
「それを見るんなら問題だよね。現地調達の縛りはなくなってよかったよ。
じゃ、行こうか。」
ガラガラ引きながら館に向かう。
マティスと2人で。重いコンダラ状態。
鍛練してないからね。
着いた後さっそく中の改修。
それはマティスとトックスとソヤで。
わたしは庭を作る。
反則だけど、緑の石を使って、
芝生を作り、こんもりとした生垣も作っていく。
セサミンの館の中庭にある植物群をスカウトした。
生垣の迷路っていいよね。
バラに相当する花もあるので、
それも植える。
もう、お願いしまくり。
わたしが配置すると、センスのなさが露呈するので、
皆さんの希望を聞き持って植えていく。
あの地下への入口当たりにバラね。
アンダーザローズだ。
緑の石で根付かせていくけど、
水があれば、見た目にもわかるぐらいにぐんぐんな大きくなった。
噴水は?循環させて、フィルター付けて、
砂漠石に風を出してもらおう。
風を出すのが一番長持ちなのだ。
排水もきちんとね。
ここで、お弁当を食べるのが楽しみになるくらいの
ふわふわな芝生だ。
んー、むいむいは?
うん、きっとわたしがいないときに来る。
虫の声は好きなんだけどな。
鳴く虫はいないのかな?
あと鳥とか。メジロみたいな。廻りは緑豊かだ。
ぐるりと大きな木が植わっている。
それが2重になっているのだ。
流石旧王都。守り安い。
4階はどうしようかな?
音響を重視するかな?
ミニシアターみたいな?
いや、上演するものがない。
畳の部屋とか?
台所は昨日作ったしね。
ボーリング場とか?ピンポン置くかな?
うむ。それは別だ。球戯場は別に作ろう。
露天風呂もだ。
やっぱりブラスを植えちゃおうかな。いや、岩肌が見えるようなのがいいな。
庭は広いんだ。
ソーンごとに作っていこう。
4階はクッション敷き詰めて、
演奏会とかできるようにしよう。
パタパタアニメもできるかな?
4階いじったり、トックスさんの手伝いをしたり、
庭のバランスのアドバイスをもらったり、
みんな入り乱れて改修工事を頑張った。
途中、ご飯を食べたり、
そのタイミングで師匠たちや、ガイライ達が来て
やっぱりトックスさんの指示に皆がてきぱきと働いた。
まさに監督だ。
来客を意識した2階は、まさに高級サロンだ。
笑い方、座り方も意識しないといけない。
大宴会場も完備。振る舞いができる。
セレブの番組で見るような衣装室もある。
大きな鏡も置いた。
ここで、最新のドレスの合う宝石を見せて売るのだ。
商談の部屋もある。
「ま、こんなもんだろ。」
1階のみんなが出入りする食堂が一番落ち着く。
ここにおこたも設置した。
イグサってあるのかな?畳が欲しい。
ひと段落ついて、おやつタイムだ。
折角なので庭で。
噴水も動かしてみた。
3人はなんだ?という感想だ。
「いや、今はちょっと肌寒いからあれだけど、
暑いときは涼しくていいよ?」
そうだよね。水を噴き上げてどうなの?ってことだ。
決して噴水がしょぼいわけではない。
ライトアップしたらいいかも。
そんな噴水を見ながら、
カンターウォーマーのコーヒーを飲む。
予約受付中だ。
資産院には5つほど。
トックスさんも予約してくれた。
ソヤはミートパイとアップルパイを絶賛してくれた。
「ミートパイには豆ソース使ってるんよ。」
「うまい!!」
「愛しい人?ここの守りはどうする?」
「それね。ここってもともと旧王都でしょ?
守りはしやすい。ここに入ってこれるのは向こう正面だけだからね。
そこに門はつけるよ。」
「出入りは自由に?」
「うん。迷いか返しを付けたほうがいい?
大丈夫なんじゃないかなって思ってるんだけど。」
「それはな。が、客が来るぞ。」
「セサミナ様はお帰りになっている。
わたしたちは館の改修に来ているだけ。
それでいいんじゃないかな?害のあるものはそもそもこの土地には入れないよ。」
あったらとっくに館はなくなってるし、地下の貯蔵庫も使われている。
「ここの館の者か?」
みんなラフな格好だ。だって、這いずり回ってきれいにしていくからね。
いわゆる作業着。
頭はタオルを巻いている。職人スタイル。
汗がぬぐえるからいいのよ。
ここは年長者のトックスさんが応対してくれた。
「ええ。なんでしょうか?」
向こうは何も名乗っていない。
だから平伏する必要もない。
「コットワッツの滞在館だな?領主セサミナ殿はいらっしゃるか?」
「セサミナ様は領国にお戻りです。」
「?ではお前たちは?ああ、我らは院のものだ。」
(院?どこの?)
(院は院だ。王関連だ。)
(あいつ関連か?食べ過ぎでおなかこわしたとか?あ!生でプニカ食べたとか?)
「わたしたちは館の改修をまかされたものですよ。
御用事でしたら戻り次第お伝えします。
お急ぎでしたら、蛇を飛ばしてください。
次にセサミナ様がこちらにいらっしゃるのは、
混合いはじめの月の日でございます。
それまで、館には誰も入ることはできません。
我らも、そろそろ帰るところですから。」
こっちの話せる情報を矢継ぎ早に説明していった。
問答する必要はないのだ。
「そ、そうか。」
馬車の中の人と話をしている。
今、トックスさんと話をしたのは御者だ。
わたしたちは一番ふかふかに育った芝生の上に布を置き
そこに座っていた。
トックスさんだけが立上り応対。
「じゃ、片して帰ろうか!」
「おう!」
今日は泊りの予定。
どこに泊ろうか?
雨の日に向けての食料確保ということもあり、
ベリアバトラスの荒野に行って肉狩りだ。
それからタトートに。
そんな予定を立てて、広げているものは
背負子に片付けていった。
馬車からいかにもお偉いさんが出てくる。
「少し聞きたいことがあるのだがかまわないか?」
「いえ。急ぎますから。」
「え?いやすぐ済む。」
「いえ。失礼します。」
「え?ちょっと!」
下手に出ても、それに応じるとは限らない。トックスさん強いなー。
ソヤも感心している。わたしもだ。
そしてさっきからわたしを呼ぶ声がうるさい。
(おーい!おーい!)
(・・・・・)
(ダメか?いや、反応はある。おーい!おーい!)
(・・・・・)
(うむ。では、これは?ウィン ディズ ブロ ウィンフロム ディ エーイ ジャーン)
「ぶひゃははははははは!!!!」
卑怯な!
「愛しい人!」
「奥さん?」
「ねーちゃん?」
1人で笑ってしまった。
おなかを抱えて。
「あれでか?何がおかしいのだ?」
マティスにも聞こえているのだ。
「いや、ほんと、ダメ、ぶひゃははははは!」
(おお!笑ったな?聞こえているな?そこにいる従者の話を聞いてくれ)
(・・・聞くだけだけなら聞いたことにしてくれ)
(!いや違う!相談に乗ってくれ)
(それは誰の相談だ?又聞きの相談は受けないことにしている)
(いや、あれの相談だ)
(ん?セサミンに?)
(いや、あなたにだ)
(知らない人の話は聞いてはダメだと言われている)
(誰に?)
(旦那と師匠と母親だ)
(・・・・)
「よし!帰ろう!」
しつこく言い募ることなく、
無礼だということもない。
なんだか、しょんぼりしているようで、申し訳なかった。
「・・・・。手短に。」
「あなたが?よかった!声をかけるものに相談しろと言われまして。」
「手短に。」
「ええ。名は明かせませんが、わたしの主がですね、
欲しがっているものが有りまして。
それはわたしにはわからぬものでして。
主の説明だけで、用意をしましてもすべて違うと。
しばし待てというので、お待ちしていますと、現物をどこぞから
調達なさって来たのですよ!主自ら!
すこし頂いたのです。それの、うまいことうまいこと。
さすが、我が主!
このような美味たるものを調達、尚且つ、我らにお与えしていただき、身に余る
「手短に。」
「え?ああ。それで、あっという間にまたすべて食べてしまったのですよ。みなで。」
「・・・。」
「また調達に赴かれる主に次はわたくしめが必ず調達してまいりますと
こちらに伺ったわけです。」
「主を止めたのは正解でしたね。そのうまいものはセサミナ様がお持ちなのでしょうか?」
分かっていても聞かないと。
「いえ。ただ、いま流行りのうまいものは全てコットワッツからと聞き及んでおりますので
相談にと。」
「我らの主は、いま、領国に帰っております。
その旨お伝えしておきましょう。」
「それでは遅いのですよ。本日の茶会に必要だと。」
「・・・我らの知っているものでしたらお返事できるかもしれませんね。
どのようなもので?」
「丸いのです。赤いものと黄色いもの。
砂糖をまぶしているのようで。あと同じような赤くまるいものはみずみずしいもの。
分かりますでしょうか?」
「・・・・黄色いものはリンゴですね。
リンゴの実です。それの砂糖漬けでしょう。
赤いものはプニカの中の実です。みずみずしいものは一度湯がいているもの。
それを砂糖漬けにしたものですね。
プニカはコットワッツ、ティータイの食の祭りで
食べ方のお披露目がありました。」
「おお!やはりご存じなのですね。プニカ!あの?
腹下しでは? 」
「皮はね。中身ですよ。これは、くれぐれも気を付けてください。
プニカ!あれか!わーいって丸ごと食べれば、一日中便所の住人です。」
「・・・・。」
「?」
「はははははは!便所の住人!ははははははは!
そこに住むということ?プニカ!腹下し!あははははははは!」
院の連中も沸点低いのか?
「あははははは!住みたくない!!」
後ろでトックスさんとソヤも笑っている。
ここの死因のTOP3に笑い死にが入っているとおもう。
「ひー、ひー。なるほど。気を付けましょう。
それで、それはどこに売っているのでしょうか?」
「プニカはコットワッツ、ティータイで、
リンゴはマトグラーサの端の村の特産品です。
これも食の祭りでありましたから。」
「それはいいですね。しかし、今、欲しいのです。」
「資産院ワイプ様にお聞きになっては?
プニカもリンゴもお気に入りなようで、確保していると思います。
資産院ツイミ殿のご実家はマトグラーサですし、
ワイプ様はティータイの食の祭りの運営の手伝いをしたと聞いております。」
「ワイプ!あれか!なるほど!
あ、あと一つ!黒い水というのは?塩辛いそうなんですが?」
「豆のソースです。最近、生産院で隠匿を掛けてもらったものですね。
先行販売分がありますから、これはお売りできますよ?」
「素晴らしい!ああ、これで安心だ。」
「それと、プニカとリンゴは季節ものです。常にあるということはないですよ?」
「え?そ、それはそうだ。しかし、わたしは常に、主の好むものを用意することが仕事なのです。
どうすれば!」
「・・・どうするもこうするも、その時々に出回る旬のものを出せばいいだけ。
1年中同じものでなくてもいい。ないものはないんだから。
ああ、これが出回る季節になったのかと、それを楽しむことができる。
はやくあれが出回らないかと、待つ楽しみができる。
いまはデオプロマが出てくる。あのチューチュー吸う奴。
最近はそれの蜜もルポイドで売っていますよ?
あれはコーヒーに入れるとおいしいですよ。」
「おお!それも素晴らしい!!」
「そこでお客様!これですよ!」
「へ?」
お試しにコーヒーを入れた。
わたしたちもだ。
笑いすぎて喉が渇いたというから。
5つ予約販売完了。
御者の人は個人的に1台買ってくれるという。
資産院に配送するから入荷したら受け取ってくれということに。
テオブロマの蜜は特別に売った。かなり高めだ。
「あとは、すわりっぱなしのお仕事でしょ?
このクッションはお勧めです。」
クッションは3つ売れた。
ちょっとした即販売会になってしまった。
いいよね?タオルとか知ってたもの。
「はー。なんて素晴らしい日なんだ。
主に礼を言ってもらえるし、うまいものも食べれた。
コーヒーも薫り高い。
良きものも買えた。すべての物が素晴らしいものにみえる。」
「ははは!この素晴らしき世界ですね。そうか、自分がうれしいから
些細なことでも素晴らしいって思えるのか。悲しい歌じゃないんだ。」
「歌ですか?」
「ええ、故郷の歌に、ほんの日常の風景を歌った歌があるんですよ。
皆が素晴らしい歌だと言います。確かにわたしもそう思うのですが、
なんて悲しい歌なんだろうって。
造られた時代背景を考えれば、当然なのですが。
普通にあるものが素晴らしいって思えるほど、その人は
いままでどんなつらい目に合ってきたんだろうって。」
「・・・・。」
「日々に感謝する歌なんですね。きっと。
ありがとうって、言うのが当たり前、言って当たり前ではなくて、
こころから感謝しないと。そして、それに応えたいですね。」
「・・・・主に初めて礼を言われたのですよ。
いままでそんなことはなかった。それは悲しいことだったんでしょうか?」
「わたしにはわかりません。逆に、あなたはその主に感謝していますか?」
「・・・・。」
「難しいですね。主とは仕える相手。感謝も何も、仕事です。
でも、この主に仕えることができてよかったと思える主に仕えたいですね。」
「・・・・。」
「さて、では、我々はこれで帰らないと。
あー、コットワッツ商品お買い上げ、ご予約まことにありがとうございました。」
「いや、こちらこそ。時間があるのなら、その歌を聞いてみたかったが、
こちらも急いで調達しなければ。」
「・・・ワイプが来るぞ。」
ドドドドドとスー兄に乗った師匠がやって来た。
騎乗している師匠はかっこよさ倍だ。
あ、スー兄がかっこいからね。
「レメント殿!まだここにいらっしゃったか!
探しましたよ!」
「はは!これもまた素晴らしい!向こうから来るとは!
伺おうと思っていたところですよ!」
「師匠?」
「ああ、呼べばよかった。
これ関係は気が動転しますね、精進せねば。」
「?」
「まわり廻って、あなたにレメント殿を紹介るようにと言われたんですよ。
ああ、だれにとは聞かないで。先にレメント殿を見つけて、
ここにお連れするつもりだったんですが、まだいたなんて。てっきり、追い返したとばかり。」
「いや、あまりにしょんぼり顔だったんで、話を聞いてもいいかなと。」
「しょんぼり?わたしがですか?ん?どのような?」
「え?こう、斜め45度下を見つめて、唇を尖らせて、むーってこんな?」
真似したら、御者と師匠が下を向いてしまった。
弱冠震えている。
そうなると、トックスさんは追い打ちをかける。
「こうか?」
「こうだよ?」
と、ソヤもだ。
うん、
「こうだね。」
むー。
3人並んで、斜め45度下向きだ。
はははははは!そっくり!!
愛しい人!かわいいぞ!!
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